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レッド・バロン

2011年11月24日 | ら行 外国映画
第一次世界大戦中、ドイツ軍の戦闘機乗りとして最も恐れられたのが、「レッド・バロン」の異名を持つ、撃墜王マンフレート・フォン・リヒトホーフェン。貴族階級の生まれで、自機を赤に染抜き、縦横無尽に空を切り裂き、敵機を追撃。25歳で戦死するまで、80機を撃墜したという。

戦争が好きだ・・・などと言うと語弊があるが、人を殺戮する戦争は絶対に否定するのは間違いない。なぜにこんなことをするのだ。やっぱ男って!!と思う中で、この第一次世界大戦だけは、私のオタク心をくすぐってくれる。義理と人情がギリギリ残ってた最後の戦争という感じだろうか。

新型兵器がどんどんと発明され、この戦争から大量殺戮が可能になったといわれるが、その反面、ヨーロッパの騎士たちの伝統が、微妙に生かされている。塹壕を掘って、機関銃を撃ちまくり、大砲を避けて、戦車を走らせながら、銃剣もって突撃し、相手のヒーローを讃え、ただ殺戮するだけでなく、無用な殺生を避けるようなところが見えたりすると、きゅんとなってしまう。

戦闘機が導入されたのもこの戦争からだった。最初は砲弾を手にもち、目視で落としていったというアナクロなもんだった。戦争が長く続くことによって人間というのはみるみる技術を発展させていく。飛行距離をどんどんと伸ばし、機銃台を取り付け、空は戦闘機が飛び交うようになる。

B29のような無骨な戦闘機を見ても、さっぱり感慨など沸かないのだが、あの複葉機(でいいのかしら?)のうすっぺらの飛行機を見ると、どうにも心が躍ってしまう。


第二次世界大戦中のナチスの軍人たちの敬礼には辟易だが、ドイツ軍だってこうだったんだよなあ~みたいな普通の軍隊。かかとの音をたてて立ち止まる軍人に、「音をたてるなあ!」と注意するとこなんざ笑ってしまった。

なぜにドイツ人が出演してて、ドイツ人の監督で、英語で作ったのかは、解せなかった。英軍の軍人と遭遇したり、フランスの戦場の場面など、英語で話されると、シチェーションがわかりづらくなる。世界進出を狙ったのかは不明だが、ドイツ語で作ってもなんら支障はないと思った次第。

命知らずとよく言うが、そうじゃない。やみくもに突っ込むのではなく、きっちりと戦略を立て、相手の戦力を削ぎ、いかに帰るかを考えるのが正しい戦い方であるってことがわかる。レッド・バロンの仲間がまたいい。一人一人と、斃れていくがその描き方が泣かせるぜい。弟が加わり、血気盛んなボンボンは、やんちゃなところをいさめられる。でも、そいつが歴戦のつわものになり、成長して若いもんを導く風なんざ粋なつくりだ。

連戦連勝だったリヒトホーフェンを、不死身の軍神とまつりあげていく様子は、いかにもドイツが追い詰められているさまがわかる。彼の時折見せる不遜な部分は、貴族の御曹司なんだから当たり前の気もするが、普通の人代表の看護婦の存在が効いている。なんだかこの看護婦、見たことある・・と思っていたが、どう見ても「ターミネーター・クロニクル」のサラやん!!ゲルマン系には見えなかったかもです。

前半、登場人物の紹介っぽい作りで、少々もどかしい感じを乗り越えると、後はある意味レッド・バロンの成長物語になっている。ちょこちょこ出てくるグッズに萌えながら、私の第一次世界大戦オタクの、オタク心をくすぐってもらい、個人的にとっても満足な一本だった。

◎◎◎◎

「レッド・バロン」

監督 ニコライ・ミューラーショーン
出演 マティアス・シュヴァイクホファー ティル・シュヴァイガー レナ・ヘディ ジョセフ・ファインズ


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4 コメント

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Unknown (KLY)
2011-11-24 22:26:38
タイトルだけ見るとエネルギー飲料か、中古バイク屋かと思ってしまいましたが、どうして中々しっかりした作り。
何気に複葉機での空中戦てありそうであまりないですよね。
英語は私も同感。いくら日本人とはいえ英語とドイツ語の違いは瞭然なんで流石に?ってなりました。
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>KLYさま (sakurai)
2011-11-28 21:25:04
はいはい、予告見てなかったら、スルーしてました。
いやーーー、良かったです。とっても面白かったし、よく出来てた。
複葉機であんだけ実際に飛べたんでしょうかね。
でも、殺すのが目的なんじゃないってのが納得の戦いで、とってもスッキリしました。
なんで、英語にしたんでしょうね。
ドイツ映画は、ときどき変な演出に頭をかしげることが多く、最近はないなあと思ってたのですが、久々の???でした。
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エースパイロット (okako)
2011-12-04 22:28:00
レッド・バロン、面白かったようですね。
予告編を見ましたが、空中戦がほとんどCGだったので、航空ファンとしてはパスしてしまいました。
第1次大戦の空中戦では多くのエースパイロットが生まれ、仏ギンヌメールと独ウーデットとのエピソード等、騎士道が残った戦いは映画もたくさん作られたようですね。
かっては実機を飛ばして映画を作っていたのですが、さすがにもうレプリカもなくなってきたのでしょうか?
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>okakoさま (sakurai)
2011-12-05 22:46:43
はい、なかなかよく出来てました。
大味な、さらっとした戦いもんかな~と思ってましたが、大違い。
しっかりした作りで、中身も濃い。設定もきっちりしてて、見ごたえありました。
飛行機自体にさっぱり興味がないんんで、CGでも十分。
でも、CGとは思って見てなかったかもです。ちょっと情けない。
機会がありましたら、ぜひご覧になってください。
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