迷宮映画館

開店休業状態になっており、誠にすいません。

小さいおうち

2014年02月03日 | た行 日本映画
昭和初期から、戦争へとひた走った頃の日本を、一人の女中の目から見た小さな歴史。山田洋次監督、82作目だそうですが、なかなかまとまった、切れのいい作品になっていたと思います。やっぱきちんとした原作があったほうが良いのではないでしょうか。もう一つよかったのは、配役。無理な年齢設定じゃなく、それぞれ年相応で、役にはまっていたと思います。吉岡君だけは、30前はむりやろ~と、内心突っ込んでましたが。

田舎から出て来た少女・・・ここ!!田舎の定番ともなりつつある、山形でございます!やっぱ田舎と言ったら山形でしょうか。猛吹雪の中を、母と歩いていく姿はまるでおしんを髣髴させてましたが、お母さん役のあきさんを見て、場内苦笑。。。

ほっぺの赤いタキちゃんは、東京の山の手あたりの赤い屋根が印象的な小さなおうちの女中さんとして働くことになりました。気のいいお父さんは、おもちゃ会社の重役さん、おかあさんは綺麗な、上品を絵にかいたような人。一人息子は小児まひにかかって、苦労しますが、そこもタキちゃんのおかげで乗り切ると。

何の苦労のなく、波風もなく、平和に過ごしていたおうちに波乱が起きたのは、ある人物がこの家にやってきたことから。お父さんの会社の若いもんの板倉という青年が小さなおうちにやってきました。びびーん!!ビビッとキテしまったのでした。お母さんと、タキちゃん、両方の女性に!!(ここだけは、納得いかん。吉岡君に一目ぼれはせんやろ~、、、という突っ込みは封印いたします)

浮気?不倫?これまた都合よく、天気が悪くなったり、板倉さんを家に招き入れたり、旦那はさっぱり関心ないし、どんどんと奥さまと板倉さんの愛は、燃え上がっていくのでありやす。それを見ているタキちゃんは、危なっかしいと思いつつ、妬みもあって、何とももやもやが募る。。。でも、自分は女中の身。身の程を知らないとならない。

しかし、戦争の魔の手はどんどんと押し寄せてまいります。優雅な暮らしもままならず、戦局はひどくなる一方。とうとう板倉にも召集令状が来てしまいました。お別れを告げにやってきた板倉、冷静に見送る家族たち。。。。でも、奥様には抑えがたい気持ちがあったのでありました。どうしても彼に会いたい、最後にお別れを告げたい、どうしても会わねばならない。。。。そして、奥様は?タキちゃんは?

ということで、小さな歴史の中に、二人の女性にとっては大きな、大きな秘密があったのでありました。タキちゃんは、それをずっと心に秘めたまま、平和で豊かで楽しかったあの小さなおうちを思いながら、一人で生きてきた。やるせない人生だったのでしょうかね。いや、幸せだったのか・・・・。

タキちゃんが亡くなり、彼女がしたためていた自叙伝を手にした親戚の青年、ブッキーが彼女の人生をたどっていくのでした。そのたどり方がいいですね。じわじわと秘密が起こって、その謎に迫っていく。いくらなんでも、葬式にスニーカーってのは、ないでしょう。さすがに。その辺のわざとらしい気遣いが逆にうざいという、いつもながらの山田節もちょこちょこ見せながら、全体的にはとってもいいバランスの作品になっていたと思います。

やっぱこれは、ひとえに松ちゃんのうまさにかかってました。作ったもんじゃない、にじみ出る品の良さは、彼女ならでは!です。そこに舞い降りてきた情念みたいな、煩悩みたいなもんを表すのが、本当にうまい!タキちゃんもうまかったですが、ここはさすがの松ちゃんでした。

着物や小物使いがまた粋!小粋な映画でした。そこにちらっと出てくる山形の田舎ってのは、いい対比になってるんですかね。タキちゃんの縁談相手の笹野さんの庄内弁!!うまい!庄内出身の私、お墨付きです。一点だけ難点をつけると、米沢を表すのは、もうちょっと下だったなあ。。。

◎◎◎○●

「小さなおうち」

監督 山田洋次
出演 松たか子 黒木華 片岡孝太郎 吉岡秀隆 妻夫木聡


最新の画像もっと見る

12 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
まさか…… (hori109)
2014-02-05 06:52:14
メジャー松竹の勝負作で庄内弁と
内陸弁の違いを説明されるとは
思いませんでしたね(笑)
笹野よりも松金よね子が達者だったのには
笑いました。
返信する
内陸地方は・・・ (武子丸)
2014-02-05 17:17:24
sakurai先生、こんにちは。
実は私、山田洋次監督の作品て、寅さんシリーズ以外観たことないんですよね。
主演の二人に惹かれて、観てきました。
でもでも、吉岡さんに一目惚れは、???でした。それからもう一点、同じ山形でも、なかなか北村山地方は、登場しないですよね。やっぱり、なんにも特徴が無いからかな・・・?
返信する
>hori109さま (sakurai)
2014-02-07 17:55:11
ははは、正確にいうと、置賜ベンですがね~。
庄内弁をフューチャーしてくれた監督ですから、もうちょっと頑張っていただきましょう!
返信する
>武子丸さま (sakurai)
2014-02-07 17:56:48
うーん、さくらんぼ!!で、一発作ってもらいましょう。
あ、かの「おしん」があるじゃないですか。。。
山田監督らしなくないのが、よかったかもです。
いや、らしいはらしんんだけど、松さんがとっても良かったと思います。
返信する
米沢とな。 (kon)
2014-02-11 20:59:37
もうちょっと米沢弁を前面に出してほしかった。
ネイティブの側から言わせてもらえれば、いまひとつだ。
笹野さんと松金さんのシーンは完璧。
ま、それはそれとして、やはり松さん。原節子の再来ですね。
「奥さんお貰いになりなさいよ。」なんてセリフ、リアルに響かせられるのは彼女しかいない!
あと赤いお屋根の小さいおうち。あんな暮らしに憧れてしまいます。
キャストが『東京家族』とほぼ一緒ですね、同時進行で撮影したのかしらもしかして。
返信する
>KONさま (sakurai)
2014-02-16 10:06:21
置賜弁と山形弁の違いまでは、なかなかねえ。
そこまで要求するのは酷ですかね。
松金さんは、お見事でした。
合格点を上げるって、山形弁の映画じゃないんだけど、ついついそっちの方に!
原作はどうなんでしょね。
「東京家族」よりは、いいなあと感じたのは、やはり松さんの存在だったと思います。
返信する
こんばんは (はらやん)
2014-02-28 23:27:36
sakuraiさん、こんばんは!

松さん、人妻の色気というかそういうのが出ていましたよね。
それがまた危うい感じを醸し出していて。
また純朴なタキちゃんを黒木さんもいい味で演じていました。
確かに最近は山形が映画の舞台になること多いですね。
時代劇でも撮影によく使われますし。
映画県になってきましたね。
返信する
Unknown (mariyon)
2014-03-05 11:39:20
そうか!松たかこは地でいけるんだ。

あの時代の苦労知らずのお嬢様
結婚して、奥様になって子供ができても
やっぱり、どこかお嬢様なもんで、
どこが魅力かわからんような男にころっといっちゃう。

宝塚にあこがれるがごとく
神聖な気持ちで奥様を見ていたタキちゃんには
板倉への魅力より、奥様への気持ちのほうが強かった。

そのへんがじわじわと伝わってきて、ほんとおもしろかったです。
ブッキーの存在が、また最高です。
自叙伝を母に書かせる我が家の兄とダブりました。
返信する
>はらやんさま (sakurai)
2014-03-06 12:15:52
女優さんたちがとっても良かったですね。
適材適所。
ここで、吉永さんあたりを持ってこなかったのが山田監督も成長したかなっと。おっと偉そうだ、あたし。
撮影は当地ではなかったようですが、田舎が山形で・・ってのは、本当にいっぱい。どんだけ田舎なんだよ~です。
田舎ですが。。。
返信する
>mariyonさま (sakurai)
2014-03-06 12:18:32
まっちゃんが本当にうまかったですね、てか、まんま地で行けるし、嫌味がない。
「夢売るふたり」でぶっ飛んだ役もこなせるのは証明しましたが、こういう役がピタッとはまるのはさすがっす。

ブッキー、今どきの若者を体現してましたが、そろそろ年齢的に無理が・・・。
スニーカーで葬式に出させられてもね。
返信する

コメントを投稿