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共喰い

2013年11月19日 | た行 日本映画
芥川賞受賞の原作。受賞のときに、「もらってやる・・」の言葉に有名になった例の奴。ユニークな人だなあと感じたのだが、原作は読む機会を得られず、映画になってしまった。中身も登場人物も監督の知らずに鑑賞。でもって、椅子からずっこけそうになった。なんと監督は青山真治!!??

そう来たか・・。彼が選んだ物語とは!!と言うことで、がぜん興味がわいての鑑賞となった。

高校生の男の子の考えることなんて、あれしかない!いつの時代も同じようなもんだ。遠馬もご多分に漏れず、彼女・千草と神社の裏にて思いを遂げると。しかし、遠馬には懸念があった。彼の父親は、粗暴なところがあって、夜になるとそれが大いに発揮される。暴力変態親父に激変。女性を殴りつける性癖があった。

遠馬の母親は、それに耐えられず家を出た。近くで魚屋を営んでいる。戦争の時に左手を焼き、片手で魚を下している。遠馬は、父の愛人に対する暴力を毎晩耳にし、母のもとを訪れ、自分の恋人に対して、自分があの親父のようになるんではないかと半ば恐れていた。自分は紛れもなく、あの父親の血を受け継いでいる。

母も殴られ続けてきた。でも、父は子供を身ごもると殴るのを辞める。でも、子どもを産んでしまえばまた同じだ。母は、また妊娠したときに決断をする。この父親の血を引いた人間をこの世に増やしてはならない。子供をおろし、去った。すべてを知りながら、己の中から沸き起こる衝動を抑えきれない遠馬。

自分を抑えきれないかもしれないと自覚した遠馬は、千草に会うのをやめた。きっと自分は千草をどうにかしてしまう。。。しかし、千草の思いは違っていた、遠馬を待っていたのだ。祭りの日、遠馬を社で待つと言った千草。しかし、そこで偶然出会ったのは、父親。そして・・・・・。

淡々としながら、時折感情を露骨にむきだしに表すのは、いかにも青山監督らしい見せ方だった。見たくないもの、見せるべきでないもの、そこをしっかと見せる絵は、昔の青山監督の作品を思い起こさせた。

とんでもないくそ親父を悲しく演じたのが、光石研。もうこの人か、佐藤浩市くらい、映画に出ている人はいないのではないかと思うくらい。ただし、三石親父の豹変ぶりは、すごすぎ。鬼気迫る切れっぷりだ。青山監督のと思うと、気に入れ方も半端ないのかもしれない。その動を受け止めるのが、元妻、遠馬の母の田中裕子。。。

いつものように若干舌足らずで、ゆっくりじっくりと遠馬を迎える母。静の演技。そして一転、今までの人生のすべてを込めたように突き動かす力。こっちの鬼気迫り方が、上を行った。背筋に何かが走った。

昭和の終り。世紀末ではないが、どこかに世紀末な空気が感じられたあのとき。天皇より、先には死ねない。悲劇の昭和を生き抜いた人間が持ってたわずかな矜持、、いや、負けず嫌いな気持ち?が表されてたが、若干違和感を感じた以外は、ねっとりとした汗ばんだ空気が伝わってくる。アタシ的には、とってもはまった作品。題名の「共喰い」をどう解釈すべきか、答えは見つからなかったのだが、なんとなく未来が見える作風になったのは、年取ったのかな~監督も。

◎◎◎◎

「共喰い」

監督 青山真治
原作 田中慎弥
出演 菅田将暉 木下美咲 篠原友希子 光石研 田中裕子


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6 コメント

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性に合わない~ (cyaz)
2013-11-19 17:22:27
sakuraiさん、こんばんは^^

僕には青山ワールドはどうも性に合わない感じです(汗)
原作も未読なので、この味わいが原作どおりなのか、
デフォルメされているのかもわからず・・・。
可もなく不可もなくって言ったところでしょうか?!
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違和感 (ナドレック)
2013-11-20 20:26:36
ありましたねぇ。
荒井晴彦氏らしいアレンジですが、昭和63年だからってそんなことを絡めなくても、と思いました。

前作『東京公園』同様、本作もなんだかんだ云って主人公はモテモテなんですよね。
私はそこに一番の違和感を覚えました(^^;
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>cyazさま (sakurai)
2013-11-28 12:42:59
性に合わない。。と言う気持ちもよくわかります。
これ大好き!!と言うと、はばかる気もありますもん。
でも、こうやってえぐられるように描かれると、快感な部分もあります。
自分が怖い。
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>ナドレックさま (sakurai)
2013-11-28 12:45:28
原作の方はどうなんでしょね。
図書館に入れてもらえたら読みますが、高校の図書館にはちょっと・・・・な、中身みたいで。

やっぱ主人公はもてる奴じゃないと。
青山監督のこっちよりな作風の感じが一番違和感かもです。
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Unknown (Nakaji)
2014-01-16 12:05:03
私にはあまりわからない世界でした。
原作を読んでないので、こんな世界なのか?
それとも青山監督がつくった世界感なのか・・・
って思いました。

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>Nakajiさま (sakurai)
2014-01-23 16:24:38
あんな世界なんでしょうね。
きっと原作のカラーだと思いますよ。
そんなに長くないみたいなんで、いつか読みます、原作。
でも、学校で買ってもらうのは、一寸なあ。
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