
小さな熱帯魚さんを営んでいる社本。再婚した若い妻と、お年頃のいまどき娘がいる。適当妻の料理はすごい!弁当に冷凍食品の一品・二品はどうか許して!!と思っているのだが、ああいう食卓も可能なんだ、と目からうろこでした。
まずい食事を途中でぶん投げるのもわからないでもない。電話で呼び出され、すっ飛んで行く娘。いつもの風景のよう。そして、万引きをしたという電話がかかってくる。あせって娘を迎えにいく父と義母。平身低頭、ひたすら謝る親たち。そこに一人の救世主が現れる。娘の万引きを通報した男、村田。
愛想のいい村田は、店長をなだめて、ここは穏やかに・・・と場を納めてしまう。うーん、怪しすぎる。村田は大規模な熱帯魚屋を経営する辣腕の社長。同じ商売をしている何かの縁だと、娘を自分の店で勤めさせてやると言いだす。いきなりの話に戸惑う社本だが、村田の押しの強さにぐいぐい押されて、いつの間にか彼のペースになっていた。
ほとんど崩壊していた家庭に、突然の救世主が舞い降りた。劇的にいろんなことが変わる。これできっと人生が変わるかもしれない。なんだかちょっと未来が見えてきたかも・・・。そう見えてきた。それはとんでもない地獄の未来。変わった、それも劇的にとんでもない方に・・・。
強引で、無理やり自分のペースに引っ張り込む村田は、マジにやばい奴だった。金づるをうまく取り込んで、金を巻き上げると殺しちゃう。それも跡形もなくの技で。。。。普通の人代表の社本は、そのトンデモのあれこれに付き合わされる。なぜに自分がこんな目にあってしまったんだろう。どこでボタンを掛け違えたんだろうか。
自分でもわかっている。どうしようもなかった・・・じゃない。何とか出来たはずだ。その「なんとか!」の部分を村田に突かれる。ちょうど痛いところを突かれるもので、どうしようもない。にっちもさっちも行かなくなった社本の残された道は・・・。
ということで、真面目に飯が食えなくなくなるくらいのグロさにお目にかかったのは、お久しぶり。怖いとか、サスペンスの要素とかではなく、容赦ないただのグロさ。人を殺し、肉を切り刻み、骨を燃し、肉を川に流し、それを懇切丁寧、こと細かく見せてくれる。想像の余地などなし。いやおうなしに露骨に見せられ、見るものが抱いていてこんなもんだろう・・・という予想をはるかに超えて、グロさを見せ付ける。
そこはまったく監督の趣味の世界だろうと思うので、とやかく言う気はない。あたしにとっては、真面目にグロく、キモく、ウヘえ~という気持ち。ただ、怖さを見せるのが目的ではない。あたしが苦手なホラー・スプラッター系とは本質的に目的が違うと思う。それが事実なのだ。ただ、あのグロさ満載の中で、映画館にポップコーンを普通の食べてる音が響いた。あたしには、そっちの方がぞーーっとしたのだった。
こんなにいっぱい画面にでているでんでんさんを見たのは初めてではないかと思うくらいの熱演ぶり。いつも脇役でいい味は出してるものの、こんなに活躍するのは見たことない。ウざさというか、秘めた怖さというか、いかにもいい人らしい顔の裏側に露骨に見せる狂気は見事だったと思う。
日本で一番顔色の悪い俳優と思っている吹越さん。はまってたなあ。痛いほどにわかる。自分が導いてしまった現状に対して、どうにも出来ない情けない自分。いつの間にか流されている自分をどうにもしようがない。覇気があんのか、ないのかわからないようなおっさんが余りに痛い好演で、痛かった。痛さがこっちに十分伝わってくる。
ですが、ですが、ですが、やはりここは黒沢あすか様でしょう!やっぱ。彼女に尽きます。エロくて、可愛くて、迫力があって、みだらで、素直。。。これを同時にかもし出せる人は日本にはこの人しかいないんじゃないでしょうかね。「六月の蛇」が最高かな~と思ってましたが、こっちもかなりだわ。。。
と、役者は本当にお見事。監督の(たぶん)無茶振り、とんでもない要求を見事に体現し、ぶっ飛んだ映画を作ってくれましたが、どう考えてもやりすぎでしょう。「愛のむきだし」を見逃したり、あとからの評判聞いて、惜しかったと思った人や、あれ見て、彼の映画なら!と一も二もなく食いついた人(あたし)をあざ笑うかのような彼流の映画。見せ方はきらいですが、話としてはわかる。なんとも複雑です。
◎◎◎○
「冷たい熱帯魚」
監督 園子温
出演 吹越満 でんでん 黒沢あすか 神楽坂恵 梶原ひかり 渡辺哲
まずい食事を途中でぶん投げるのもわからないでもない。電話で呼び出され、すっ飛んで行く娘。いつもの風景のよう。そして、万引きをしたという電話がかかってくる。あせって娘を迎えにいく父と義母。平身低頭、ひたすら謝る親たち。そこに一人の救世主が現れる。娘の万引きを通報した男、村田。
愛想のいい村田は、店長をなだめて、ここは穏やかに・・・と場を納めてしまう。うーん、怪しすぎる。村田は大規模な熱帯魚屋を経営する辣腕の社長。同じ商売をしている何かの縁だと、娘を自分の店で勤めさせてやると言いだす。いきなりの話に戸惑う社本だが、村田の押しの強さにぐいぐい押されて、いつの間にか彼のペースになっていた。
ほとんど崩壊していた家庭に、突然の救世主が舞い降りた。劇的にいろんなことが変わる。これできっと人生が変わるかもしれない。なんだかちょっと未来が見えてきたかも・・・。そう見えてきた。それはとんでもない地獄の未来。変わった、それも劇的にとんでもない方に・・・。
強引で、無理やり自分のペースに引っ張り込む村田は、マジにやばい奴だった。金づるをうまく取り込んで、金を巻き上げると殺しちゃう。それも跡形もなくの技で。。。。普通の人代表の社本は、そのトンデモのあれこれに付き合わされる。なぜに自分がこんな目にあってしまったんだろう。どこでボタンを掛け違えたんだろうか。
自分でもわかっている。どうしようもなかった・・・じゃない。何とか出来たはずだ。その「なんとか!」の部分を村田に突かれる。ちょうど痛いところを突かれるもので、どうしようもない。にっちもさっちも行かなくなった社本の残された道は・・・。
ということで、真面目に飯が食えなくなくなるくらいのグロさにお目にかかったのは、お久しぶり。怖いとか、サスペンスの要素とかではなく、容赦ないただのグロさ。人を殺し、肉を切り刻み、骨を燃し、肉を川に流し、それを懇切丁寧、こと細かく見せてくれる。想像の余地などなし。いやおうなしに露骨に見せられ、見るものが抱いていてこんなもんだろう・・・という予想をはるかに超えて、グロさを見せ付ける。
そこはまったく監督の趣味の世界だろうと思うので、とやかく言う気はない。あたしにとっては、真面目にグロく、キモく、ウヘえ~という気持ち。ただ、怖さを見せるのが目的ではない。あたしが苦手なホラー・スプラッター系とは本質的に目的が違うと思う。それが事実なのだ。ただ、あのグロさ満載の中で、映画館にポップコーンを普通の食べてる音が響いた。あたしには、そっちの方がぞーーっとしたのだった。
こんなにいっぱい画面にでているでんでんさんを見たのは初めてではないかと思うくらいの熱演ぶり。いつも脇役でいい味は出してるものの、こんなに活躍するのは見たことない。ウざさというか、秘めた怖さというか、いかにもいい人らしい顔の裏側に露骨に見せる狂気は見事だったと思う。
日本で一番顔色の悪い俳優と思っている吹越さん。はまってたなあ。痛いほどにわかる。自分が導いてしまった現状に対して、どうにも出来ない情けない自分。いつの間にか流されている自分をどうにもしようがない。覇気があんのか、ないのかわからないようなおっさんが余りに痛い好演で、痛かった。痛さがこっちに十分伝わってくる。
ですが、ですが、ですが、やはりここは黒沢あすか様でしょう!やっぱ。彼女に尽きます。エロくて、可愛くて、迫力があって、みだらで、素直。。。これを同時にかもし出せる人は日本にはこの人しかいないんじゃないでしょうかね。「六月の蛇」が最高かな~と思ってましたが、こっちもかなりだわ。。。
と、役者は本当にお見事。監督の(たぶん)無茶振り、とんでもない要求を見事に体現し、ぶっ飛んだ映画を作ってくれましたが、どう考えてもやりすぎでしょう。「愛のむきだし」を見逃したり、あとからの評判聞いて、惜しかったと思った人や、あれ見て、彼の映画なら!と一も二もなく食いついた人(あたし)をあざ笑うかのような彼流の映画。見せ方はきらいですが、話としてはわかる。なんとも複雑です。
◎◎◎○
「冷たい熱帯魚」
監督 園子温
出演 吹越満 でんでん 黒沢あすか 神楽坂恵 梶原ひかり 渡辺哲
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で、この映画のあと初めてでんでんさん観たのが、『死にゆく妻との旅路』なんですよ。その時はいつものような何気ないただのおっちゃんの脇役だったんですけどね。でももうインパクト強すぎてすりこまれちゃってて…(苦笑)
私は気持ち悪いホラーはほんと嫌いなんです、サム・ライミの作品観て笑える気持ちが解らないですから。でもこの作品の方が気持ち悪くないんですね。不思議なんですが、ここまで突き抜けてしまうとエンタテインメントになってしまっているのかもしれません。
『白いリボン』といい本作といい、嫌な気分になっちゃう映画ほど魅力的です。
これは不思議とグロさが胃に来なかった不思議な作品でした。なんでだろう?
何度も同じ作業シーンが映されたのは、監督のどういう意図なのか。まるでその行為をあざ笑うかのような。ある意味マンガのようでした。
実話がベースということで、元の事件を調べてみましたが、あんなひどい事をしていたとは。
無知でした。世の中恐ろしい事ばかり。
それにしても、黒沢さんですよね!
あの社本さんに嘘のレクチャーをしているシーン、好きです。いい声だ。
そして女としてのかわいさも素晴しい。
でんでんさん、ああいういっちゃってる演技も凄いですね。吹越さんの奥さんとのからみが一番怖かったかも。。。。ひょ~。
やはり気持ち悪いのは気持ち悪かった。ちゃんとそれを気持ち悪いと思う正常な自分もいたと、確認してます。
でも、見れた自分もいたこともなんか悔しいです。
いやああな気分まんさいで、ちょっとすっきりした映画が存分に見たくなりました!
事実はこうです。こうなると、人はこうなります!というように、容赦なく見せられたかして、怖さはなかったです。
でも、やっぱ気持ち悪いのは確か。
キモ、グロ!と感じれたあたしは、まだ大丈夫だよん。
黒沢さん、お久しぶりでしたが、こういうキャラをさせたら、天下一品。園監督の配役の妙は、いつも唸らされます。
ましたが、、、、。sakuraiさんの記事を
拝見して、村田の姿が蘇ってきました。
映画とは言うものの、これは実際にあった
埼玉愛犬殺人事件をインスパイアしたわけで
すから、、、。映画の出来がどうだとかは
別として、本作の中身に近いことが行われて
いたことは事実なのでしょう。そう思うと
単にエンタメなんだと片付けるわけには
行かないのかな?なんて思ったりしてしまう
のでした。
おっしゃるように、許されてはならない事
だと思います。何かまとまりのないコメント
ですみません!
んなこと人間が出来るんだ!と思った覚えがありますが、なんだか村田の弁を聞いてると、ちょっとうなづける部分もあったりして、空恐ろしくなりました。
痛いとこ、ついてましたもんね、また。
でも、こういうのを見て、気持ち悪いともう自分は。まだ大丈夫と思いこんでます。
上映後にロビーに出たら、小室等のコンサートが
まもなく始まるので(あまり妙齢とは言えない)善男善女が集まっているのでした。
映画に影響を受けて殺伐とした顔をしていたであろうわたしはちょっと微妙。
まあ、この映画見て、ニッコニコしながら出てくる人はいないでしょうからねぇ。
なんだか見て、すいません・・・と言うのもわかりますです。
小室さんかあ、久しく聞いてないなあ。