迷宮映画館

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180°SOUTH

2011年04月27日 | わ行 映画
アウトドアとブランド品にさっぱり造詣のない私でも、「パタゴニア」と「THE NOUTH FACE」くらいは知っている。リュックくらいは背負わせてもらった。その創設者のイヴォン・シュイナードと、ダグ・トンプキンス。彼らは、1960年代に南米のパタゴニアへの旅を行い、その素晴らしい自然に魅了されたことをそれからの人生に大いに生かしていた。

商売は結果。自分が登山をするために作っていた道具が人気となり、そこから工房を作ってあの大きな会社となったが、儲けることが目的じゃなく、自分が好きなことをしている。自分の好きなことのために作る道具はいいものに決まってる。半端なものを作るはずがない。それが見事なブランド品を生み出したんだなあ~とものすごくよくわかる。

命を預ける道具に半端なことをするはずがない。さらに彼らは真のナチュラリストでもあり、哲学者でもある。すでに70歳という年齢になっているが、年は全然感じさせない。

彼らのフィルムを見て、強く感銘した青年、ジェフ・ジョンソン。自分でどこにでもある名前と言っていた。ごくごく普通の青年。サーフィンと登山を愛する彼は、二人のたどった道をたどろうと決意する。今までも登山とサーフィンをするために仕事をし、小金がたまれば旅をする。そのくりかえし。ここで一大決意。絶対にパタゴニアに行って、コルコトバ山に登るための準備をしていく。

サーフィン仲間、登山のエキスパートを誘い、パタゴニアを目指す。それは苦労と困難と感動の連続となる・・・。

まずヨットで南米を目指すのだがそこから!という苦労の連続。船酔いにはやられ、嵐は来る、おまけにマストは折れると、大変なことの連続。ほんとにご苦労様。ぽっきり折れたマストの修理のために、ラパ・ヌイ、いわゆるイースター島に立ち寄る。ちょっとの滞在の予定が、大幅に狂って、長いこと居つくことになる。この島の歴史がまた面白い。

イースター島といえば、何といってもモアイ像。摩訶不思議な石像で有名だが、島はモアイ像を作ることによって環境破壊を招いてしまった・・・という簡単なアニメで紹介してくれる。大きな石を刻むのになぜに環境破壊となったかというと、あの巨大な石像を運ぶために、コロにする木材が必要だった。部族間の争いのために石像が刻まれ、それを運ぶために木を伐採・・。そしてお決まりの環境破壊となってしまったという。

人間はいつもいつもあほな歴史を繰り返し、また同じようなことを繰り返す。はっきりいわれる。人間は歴史から教訓を学べない。学ぼうとしてない。それを知ることが歴史の唯一の教訓だ!と。悲しいけど、ごもっともだ。

しばらくイースター島に身をうずめた後、いよいよ真の目的地のパタゴニアに行くことになる。本来、山に登るのには、雪があった方が雪崩の危険がないことから、もうちょっとはやくに臨むべきところが、時期がずれてしまう。そこに到達するまでいろいろな現実を目の当たりにする。

自然豊かで、海からも山からもたっぷりの恩恵を受けていたはずが、海岸線は工場の廃液にまみれ、ダムを建設して、河をせきとめようとしている。ちょっと前の先進国がやってきたことを、今からやろうとしている。開発は必要だ。これまで多くの国がやってきた。でもやったことによって、どうなるかもみんな知っている。でもせざるを得ないジレンマ。

欠陥があるシステムをなぜ維持する必要があるのか。電気を起こすためにダムを建設し、その電気を都市に送る。そのために開発され、都市の犠牲となっていく村々。あまりに今日的で、ぞーっとしてしまった。これらのことを、ジェフと仲間たちは、この旅で見ていく。

結局、難関の山頂まではたどり着けないが、それが重要ではない。ここでも名言が登場。「聖杯は見つからなくてもいい。それを探す過程が大事なんだ!」と。

とにかくいろんな場面で、考えさせられた。まさに今われわれが抱えてる問題の根っこだ。サーフィンにあまり興味のないわたしは、サーフィンの場面が過剰に感じたが、いろいろと考えるいいきっかけとなる映画になると思う。撮ったカメラも凄い。剣岳も真っ青なくらいのカメラワーク。世の中には凄い人たちがいるもんだ。

◎◎◎◎

「180°SOUTH」

監督・脚本・編集 クリス・マロイ
出演 イヴォン・シュイナード ダグ・トンプキンス ジェフ・ジョンソン キース・マロイ マコヘ ティミー・オニール


180 South [DVD] [Import]
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Magnolia


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