「学ぶ」ではありません。ロシア語の周辺の楽しい話題で「遊ぶ」という企画です。前回(第314回ー文末にリンクを貼っています)に引き続き、黒田龍之助さんのエッセイ「ロシア語の余白」(現代書館)から拾って来たエピソードでお届けします。どうぞ気軽にお付き合いください。
<聞き返す>
外国人と話してると、聞き取れなかったりしたのを聞き返す表現は必須です。
英語だと、"Pardon?"、"Excuse me?"、"Sorry?(主に、イギリス)"あたりでしょうか。
「すいません。よく聞き取れませんでした。もう一度おっしゃってください」のロシア語版が、紹介されてますが、日本語と同じく、ロシア語も十分長くて、とても紹介する気になりません。これがスラっと言えるくらいなら、聞き返すことも少なそうですし。
で、氏が、実践的に身に付けたのが、
”A?”(アァ?=なんですって)というもの。日本語の「えっ」に似て、簡潔ですけど、イントネーションが難しいのだそう。最初は低く始めて、急に上昇する感じだというんですけど・・・
これを、逆に、高く始めてから、下げて言うと、「なるほど!」(A!)という驚き、納得を表す表現になるというわけで、イントネーションさえ間違わなければ、便利そうです。
<ロシア人の質問>
旧ソ連時代、学生の身で、通訳をしていた黒田が、雑談中に何気なくされる質問(以下の★印)にも、国情が反映していたそうです。
★「兵役はつとめましたか」
徴兵制を前提とした質問ですが、日本には、徴兵制度がないことを説明しないと、兵役逃れをしたように誤解される、と書いてありました。
★「奨学金はもらっていますか」
旧ソ連では、奨学金を貰うのが当たり前だったそうで、ヘタに「奨学金をもらってない」と答えると「コイツ、成績が悪いからもらえないんだな」と誤解されるから、日本の奨学金の仕組みを説明してから、答えていたそう。
★「家族(スィーミヤー)はいますか」
「はい、父と母と妹と」などと、始めのうちは答えていたそうですが、どうも話が噛み合ない。
で、分かったのは、ここでの「家族」というのは、「世帯」に近い、ということです。
結婚してるか、してないかを、こういう訊きかたをするんですね。
さて、ロシアといえば、ウォッカです。画像だけですが、飲んだ気になっていただき、後半をお楽しみください。
<たかが「行く」だけど>
ロシア語では、「歩いて」行くか、「乗物で」行くかで、使い分けがあるんですね。
「私は、郵便局へ行ってきました」ですが、
徒歩だと、「ヤー・はヂール・ナ・ポーちトゥ」
乗物だと、「ヤー・イェーズヂル・ナ・ポーちトゥ」
「ヤー」は、「私は」、「ナ・ポーちトゥ」は、郵便局へ、という意味です。
徒歩で行くのを、「はヂール」、乗物で行くのを、「イェーズヂル」と使い分けるんですね。ただし、抜け道(?)というのでしょうか、どちらでも使える「ブィール」という動詞があって、ついついそちらを使ってしまう、と黒田先生も告白してました。語学の専門家たるものが、安易なほうへ流れてはいけない、と自戒してましたけど、気持ちはよく分かる。
<ソフトクリームを買う>
今のロシアはどうか分かりませんけど、旧ソ連時代の買い物は、どこで何を売ってるかが分からない、買う段になっても、支払いと品物の受け取りの仕組みが複雑、など面倒なことが多い、というのを見たり、聞いたりしたことがあります。
例えば、ソフトクリームを売ってる「店」なんてまず見つかりませんから、売ってる「屋台」を探すことになります。で、氏が紹介していたのは、こんな方法です。
まず、歩きながらアイスクリームを食べている人を見つけます(そう珍しくもない光景なんでしょうね)。そこで注意深く、その人が歩いて来た方向を溯るようにして、二人目、三人目と見つけていきます。とにかく観察あるのみ、という感じです。そうすれば、アイスクリームを売ってる源流である「屋台」に行き着ける、というのです。
もちろん、ロシア名物の行列が出来てますから、更に我慢強く待って、ようやくありつける、という次第。ロシア語とは関係ないエピソードですが、いかにも、と感心しました。前回(第314回)へのリンクは、<こちら>です。合わせてご覧いただければ幸いです。
いかがでしたか?それでは次回をお楽しみに。