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第565回 21世紀への伝言by半藤さん4

2024-03-01 | エッセイ
 第4弾をお届けします(文末に過去分へのリンクを貼っています)。作家・半藤一利さんの「21世紀への伝言」(文藝春秋刊)がネタ元です。ちょっと仰々しいタイトルですが、ご安心ください。1960年代のお気楽で、興味深いエピソードをセレクトしました。どうぞお楽しみください。なお、<  >内は私なりのコメントです。

★現代版ロミオとジュリエットだ ★
 日本の映画界にはミュージカルは当たらない、というジンクスが根強くありました。それで、配給元のユナイトがプリント到着前につけた題名がなんと「ニューヨーク愚連隊」。
 「ウェスト・サイド物語」として1961(昭和36)年12月に封切られ、爆発的ヒットとなったこの映画にはそんな裏話があったんですね。映画の一場面です。

 ロングランはなんと511日に及び、観客動員152万人との記録が残っています。「なあに現代版ロミオとジュリエットだ」と酷評する人もいたようですが、ヒットさせたもん勝ちです。
<当時は珍しかったカタカナ入りのタイトルもヒットに貢献している、というのが私の見立てです。>

★ タダ酒は飲むな★
 戦後、新しい大学制度がスタートして、卒業式での総長、学長の告辞がなにかと話題になるようになりました。1954(昭和29)年の京都大学総長滝川幸辰の「タダ酒は飲むな」を聴かせたい人が、今時あちらこちらに居るような気がします。
 そういえば、1964(昭和39)年に、東大総長の大河内一男の「太った豚になるよりも、やせたソクラテスになれ」というのも随分話題になりました。
<近頃は、そのテの名言をあまり耳にしませんが・・・>

★給与支払いにつかうな★
 1万円札が初めて発行されたのが、1958(昭和33)年12月1日。戦後のインフレもあって、5年前から計画されていたのですが、大難産でした。
「そんな高額の札を出されたら釣りはどうする」
「インフレをいっそう助長するおそれがある」
「月給袋が薄くなって働く元気が失せる」などの意見まで出る始末。大蔵省は「一般の給与支払いには使わぬように」との指示を銀行に出したとか。
<昨今は、だいぶ有り難みが薄れたような・・・10万円札、なんて噂も耳にします。>

★ チョウのように舞い、ハチのようん刺す★
 不世出のボクサーといえばカシアス・クレイ(のちにブラック・モスレムに改宗して、モハメッド・アリ)。彼がリストンを破って、世界ヘビー級チャンピオンになったのが1964(昭和39)年2月25日。81年に引退するまで、3度ヘビー級チャンピオンの座についた唯一のボクサーです。数々の名言を残しています。
「オレはチョウのように舞い、ハチのように刺す」(リストン戦を前に)
「こてんぱんに殴ってやるさ、帽子をかぶるのに靴ベラがいるようになる」(パターソン戦について)
「大勢の黒人は地獄を見ている。連中が自由でなければ、オレたちにも自由はない」(1975年)

★ ゼニの顔見んと、走らんのや★
 競馬にはほとんど関心がない私ですが、「シンザン」の名前だけは覚えています。1965(昭和40)年12月26日、中山競馬場で第10回有馬記念レースが行われました。スタンド前からミハルカスがトップに立ち、逃げ切るとだれもが思った展開に、4コーナーの大外から鋭く追い込んで優勝したのがシンザンです。史上初の5冠馬が誕生した瞬間です。
 無敵のこの馬ですが、併(あわ)せ馬(芦坊注:調教のため、2頭以上で行う練習レース)をすると二流馬に負ける変な癖があったといいます。新聞記者が栗田調教師に訊くと、けろりとしてこう言った。「この馬はゼニの顔見んと、走らんのや」

 いかがでしたか?中高年の皆様には懐かしく、若い方々には「へぇ~」とお楽しみいただけたなら幸いです。なお、過去分へのリンクは、<その1><その2><その3>です。合わせてご覧ください。それでは次回をお楽しみに。
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