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第463回 あなたの日本語の語彙数は?

2022-03-11 | エッセイ
 だいぶ以前、幼児、子供が言葉を身につける能力とかプロセスを話題にしました(第259回 言葉を身につける(文末にリンクを貼っています))。私自身、日本語の習得に努力したなんて記憶はありませんし、親になって熱心に教えたつもりもありません。それでも、それなりに日本語が話せ、書けるようになっているのが不思議です。
 「日本語観察ノート」(井上ひさし 中公文庫)の「語彙数」という章を読んで、あらためてそんなことに思いが及びました。こちらの本です。



 それによると、満5歳になった幼児の持つ語彙数は、1050語前後(感嘆詞や固有名詞は除く)だというのです。
 根拠となっているのは、NHKラジオで1961年に始まった「ことばの誕生」という番組での調査結果です。全国から選んだ6人の0歳児の家に録音機材を設置し、テープは回しっぱなし。定期的に面接も行い、5年間追跡調査を行うという本格的なものでした。「幼児の用語」(1976年 岩渕悦太郎・村石昭三編 日本出版放送協会刊)所収の興味深いデータです。

 そこには、さらに「使用度数の高い20語」というデータも載っていて、上位から順に、「これ、居(い)る、ない、ここ、行く、する、いい、やる、くる、なに、ある、いや、こっち、こう、言う、どこ、取る、そう、なる、食べる」だといいます。今なら、「パパ」、「ママ」がランクインするはずですね。

 さて、1050語前後から始まった言葉の数が、成人になって、うんと増えているはずです。果たしてどれくらいまで増えているか、ご自身の語彙数(感嘆詞と固有名詞を除いて)をお知りになりたくはありませんか。
 同書によれば、なかなか面白い推計法が発案されたといいます。まずは、こちらの50の単語をご覧ください(便宜上、10ずつに区切っています)。

1.チャンピオン 2.祝日 3.爆発 4.ライン 5.さつま芋 6.毒ガス 7.枝豆 8.過ごす 9.朝風呂  
10.そもそも/
11.見極める 12.喜ばしい 13.本題 14.エンゲル係数 15.泊まり込む 16.預け入れる 17.言い直す 18.たしなみ 19.英文学 20.はまり役/
21.ごろ合わせ 22.労力 23.忍ばせる 24.勃発 25.宿無し 26.目白押し 27.請負い 28.塗り箸 29.気丈さ 30.茶番/
31.大腿骨 32.術中 33.泌尿器 34.血税 35.悶着 36.腰元 37.裾模様 38.旗竿 39.かんじき 40.すっこむ/
41.迂曲 42.告諭 43.辻番 44.ライニング 45.輪タク 46.懸軍 47.陣鐘 48.泥濘 49.釜がえり 50.頑冥不霊/

 これは、NTTコミュニケーション科学基礎研究所が作成した「語彙数推定50問」で、使い方は簡単で、井上もそれが気に入ったと書いています。
 例えば、NO.1からNO.10まで知っていて、NO.11以下はわからないなら、推定語彙数は8800語です。以下、
 NO.15までなら1万3000語/NO.20までなら1万8000語
NO.25までなら2万3000語/NO.30までなら3万語
NO.35までなら3万9000語/NO.40までなら5万語
NO.45までなら6万語/NO.50までなら7万語

 私は、NO.41の迂曲で引っかかりました。それに続く単語でいくつか知っているのはありましたが、概ね5万語といったところでしょうか。
 井上は、NO.46の「懸軍(けんぐん)」が分からず、自らの語彙数を約6万と判定しています。「後方の連絡がないまま、遠く適地に入り込むこと。また、その軍隊」という軍事用語ですから、無理もないですが、さすがの語彙力です。

 皆さんはいかがでしたか?成人なら少なくとも3~4万という単語を基礎に、「て、に、を、は」、動詞などの活用、文の組み立てなどのルールを縦横に使いこなして、書いたり、しゃべったりしていることになります。ひとつの言語を操るってスゴいことですね。
 趣味としての英語は続けながら、日本語にも「更に」磨きをかけ、ブログをより良いものにしていかねば、と決意したことでした。
 なお、冒頭でご紹介した「第259回 言葉を身につける」へのリンクは<こちら>です。

 それでは次回をお楽しみに。
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