★★★ 芦坊の書きたい放題 ★★★

   
           毎週金曜日更新

第345回 大阪弁講座-38「よういわんわ」ほか

2019-11-15 | エッセイ

 第38弾をお届けします。

<よういわんわ>
 この言葉で思い出すのは、戦後まもなく流行った笠置シヅ子の「買物ブギー」(作詞:村雨まさを)です。彼女のこんな写真が残っています。元気そうなオバさんでしょ。


サビの歌詞はこんな具合です(YouTubeで歌を聴けます。文末にリンクを貼っておきました)。

  何が何だかさっぱりわからず/どれがどれやらさっぱりわからず/何も聞かずに飛んでは来たけど/何を買うやら何処で買うやら/それがゴッチャになりまして/わてほんまによういわんわ(繰り返し)


 最後のフレーズを解説します。
 「わて」は自称です。男性が使うことが多いようですが、女性も「年配になると」使用可能になります。「ほんまに」は「本当に」、「よう」は「よく、うまく」、「いわんわ」は「言えない、説明できない」とでもなるんでしょうか。
 誰のせいでもない、自分のアホさ加減、ミスが招いた状況に、呆れ返りながら、「自分でもどう説明したらいいのか分からない」と、自虐的に発するのが本来の意味合いです。

 とはいえ、そこまで考えてるわけでなく、「しもた(しまった)」「ほんまアホやった」などの「気持ち」を反射的に表現して使うことも多いです。この歌でもその意味合いで使われています。しばしば「う」が脱落して、「よいわんわ」となるのは、大阪人におなじみの短縮グセです。

 自分に対してだけじゃなく、相手に対しても使えるんですね。大阪の漫才の締めの言葉の定番です。思いっきりボケた相手に「よういわんわ」
 「開いた口がふさがらん」とか、今風だと「コメントのしようがない」がぴったり。時に、「いい加減にしとき」とか「付き合いきれんわ」という「気持ち」まで表現できます。

 以上がいかにも大阪弁的な用法ですが、ごく普通の使い方もあります。例えば、「あの子、威張ってるから、面と向かってキライや言うたり」のような無理な要求があった時です。
「いやや。そんなん「よういわんわ」」
 とても言えない、言うのは勘弁して、という字義通りの使い方ですね。一応、付記しておきます。

<得心(とくしん)>
 広辞苑には「十分に承知すること。納得すること。」と説明があります。
 でも、関西以外で使われてるのは、あまり聞いたことがありません。古風な言い回しが、現役ばりばりで使われてるお馴染みの例になります。

 まずは、広辞苑にもあるように、「承知する、納得する」という意味での用法。

 「ワイの説明で、「得心」してくれたんやな。あとは、あんたが、自分でやるだけや」とか、「なんや「得心」でけへん(できない)いう顔してるけど・・・もういっぺん、最初から説明したろか?」
 「当然理解してしかるべきことを、理解なり承知する」というニュアンスを含んだ言い方で、ちょっと上から目線的、イヤミ的に使われることが多いように思います。

 もう一つの意味合いは、「十分に満足する、気が済む」ということ。
 「本人がそこまでやりたい、やりたい言うてんねんから(言ってるのだから)、「得心」いくまで、やらしといたらエエがな」
 ただし、こちらも突き放したような冷たい響きがありますなぁ。

 冒頭でご紹介した『買い物ブギー」のYouTube動画は、<こちら>です。

 いかがでしたか?次回をお楽しみに。


この記事についてブログを書く
« 第344回 司馬遼太郎の目配り | トップ | 第346回「反買い物運動」の伝... »
最新の画像もっと見る