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第327回 「大阪発祥のモノ」語り

2019-07-12 | エッセイ

 大阪が発祥の商品とかサービスがいろいろあります。とにかく新奇なもの、珍奇なものに目がなく、面白がりが多いから・・・それもそうなんでしょうけど、商売として成り立っている(立った)からには、大阪的な何かがあるはず。
「はじまりは大阪にあり!」(井上理津子 清風堂書店)の情報も参考に、私なりの切り口で、その辺りを探ってみようと思います。

<最初から世界を視野に>
 今でも時々、無性に食べたくなるのが「チキンラーメン」。それが、世界初の「即席麺」として世に出たのは、1958年(昭和33年)です。当時、テレビの番組で、さかんに生CMをやってました。3分間で出来上がるのを実演するのですから、タレントさんもその間(ま)をどう保たせるかに苦労してたのを思い出します。当時のパッケージです。


 開発したのは、ご存知、日清食品の安藤百福(あんどう・ももふく)氏です。自宅の裏庭に5つの研究室を作って開発した苦労話は、朝ドラなどでもお馴染みでしょうから、省きまして、スープのベースはなぜチキンなんでしょうか?昔、テレビでこんな話を聞いたことがあります。

 開発に当って、安藤が考えたのは、世界で通用するスープの材料を何にするか、ということでした。「牛」だとヒンズー教徒の多いインドでは、売れません。「豚」はイスラム圏では絶対のタブーですから、これもダメ。で、結局、「チキン」になったというわけです。
 国民食から世界食へと飛躍した裏には、こんな世界戦略があったんですね。

<ず~っと先を読む>
 亡くなった私の父は、先の大戦中、満州で軍用トラックの運転をやっていました。昭和16年の開戦時、23歳で、今でいう大型免許を手にしていたことになります。
 その父が、ひょっとしたら通ってたかも知れないのが、大正8年に、日本で初めて、大阪で開校した「松筒(まつとう)自動車学校」です。

 その頃の大阪府内の自動車数は、わずか348台です。今なら、ジェット機を買うような金額だったはずのT型フォードを持つ大金持ちのボンボンの松本氏と、その友人で機械好きの筒井氏が手を組んで始めました(校名は二人の姓に由来します)。

 ちなみに、当時の運転免許取得は大変だったようです。授業料だけでも、中流の年収相当。自動車構造学や電気学など工業高校並みの授業がありました。自家用車などは考えられない時代です。 
 合格の暁には、職業運転手として未来が開けるだけに、生徒は、一族郎党の期待を背負って免許取得を目指します。もし不合格になれば、次の試験は半年先。不合格を悲観して、自殺を試みるものが続出した、とのエピソードまで残っています。
 当時最先端の自動車というものに騒いだ血を、「いずれ自動車の時代が来る」との信念に結びつけた格好の事例と言えそうです。

<食のハードルを下げる>
 「三宮(さんのみや(神戸の繁華街))にオモロい寿司屋が出来たから、連れて行ったる」と父親から言われたのは、小学校5~6年の頃だったでしょうか。「十円寿司」という名の店で、一貫10円が売りでした。目の前を寿司が乗った皿が通っていきます。自由に取って食べる事が出来る・・・・それまでロクに寿司など食べたことがなかった私には、衝撃の食体験でした。

 調べてみたら、その店は、日本初の回転寿司ではなく、その栄誉は、1958年(昭和33年)に開業した「元禄寿司」(本社 東大阪市)のものでした。

 カウンターをはさんで客の注文を聞いて、職人が握るという当時としては「普通の」寿司屋を経営していた白石善明氏に回転寿司のアイディアが浮かんだのは、料飲組合で、アサヒビールの工場見学に行った時のことだったそうです。

 ベルトコンベアの上をビール瓶が流れていき、ビールが注がれていきます。
「これに寿司を乗せたら、職人の手間も省けるし、お客も好きなネタを選んで食べられるんちゃうか」との発想がひらめきました。

 そんな都合のいいベルトコンベアはありませんから、イチから開発するしかありません。特に苦労したのが、コーナーをどうスムーズに回転させるかということです。試行錯誤の末、今もよく目にする半月形にすることで解決しました。「コンベヤー旋回食事台」という愉快な名前で、しっかり特許取ってるのは、さすが大阪商人。

 現在、全国にある回転寿司屋は、約4600軒といわれます。職人さんに気を使いながら、値段も気にしながら食べるのが当たり前だった「寿司」。ネタが新鮮で、値段もリーズナブル。そんな回転寿司チェーンも増えてます。かつては高級品だった寿司のハードルを下げて、庶民的なものにしてくれた白石氏に感謝。

 いかがでしたか?もう少しネタがありますので、いずれ続編をお届けできると思います。それでは、次回をお楽しみに。

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