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第418回 変わり者天国イギリス-1

2021-04-23 | エッセイ

 「変わり者の天国 イギリス」(ピーター・ミルワード 秀英書房)という本があります。一部のエピソードは、以前(第355回「とんでもない墓碑銘」ー文末にリンクを貼っています)ご紹介しました。是非お届けしたいネタがもう少しありますので、2回に分けてお届けします。どうぞお付き合いください。

 で、本書で採り上げられるのは、イギリス人の著者の目に「変なモノ」と映った建物、造作物、景観、看板、自然など。それらを「変」と思わないイギリス人って、やっぱり「変わり者」だ、というのが彼の主張のようです。

 まずは、本の表紙を飾っているこの画像から。

 

 表紙に持ってくるくらいですから、著者お気に入りの「物件」に違いありません。
 英国のほぼ中央部、ヨークシャーの広大な原野にポツンと立つ杭に、くっきりと"PRIVATE"(私有地)と書かれた看板が打ち込んであります。
 はたして、どの程度の効果を期待してるんでしょうか?まかり間違っても、ふらふらと迷い込むような人がいるエリアとも思えませんが。
 イギリス人というのは、個人主義の国民で、プラバシーと私有財産をとても大事にする国柄とは聞いていましたが、ここまでやるのはちょっと「変」かも。

 日本だったら、フェンスとか柵でぐるっと囲った上で、「私有地につき立ち入り厳禁」なんてトゲトゲしい看板を立てるところでしょうけど、さすがイギリス。不法侵入は許さないという毅然とした主張を、柔らかく包んだ「オトナの」仕掛けです。

 続いて、こちらの画像をご覧下さい。1階の上に、2階が、さらには、3階までがせり出して、大きく道まではみ出しています。両側の窓から手を伸ばせば届きそうなアブない光景です。

 
 
 場所は、イングランド北部の古い街ヨークのシャンブルズ(The shambles(肉売台、食肉加工場の意))と呼ばれる地区です。かつては、この先に、食肉加工場があったことから、こう呼ばれている繁華な通りです。
 中世の時代、ゴミや、糞便などは、窓から道路に投げ捨てるのが、当たり前でしたから、こんな構造の方が「便利」といえば「便利」だったんでしょう。でも、いまだにこんな建物を放置しておく方もしておく方で、やっぱり「変」。

 さて、こちらは、アイルランド島との間にあるマン島のカトリック教会のガラス窓です。

 

 ガラスに彫り込まれている人物は、もちろんキリストです。下の方が、濃い青色になっています。これは、アイルランド海そのものを「借景」として「ガリラヤ湖」(キリストが周辺で布教を行い、また、その水の上を歩くという奇跡を起こしたとされる湖)に見立てているわけです。こちらはちっとも「変」じゃなく、なかなか「粋な」仕掛けじゃないでしょうか。

 最後にご紹介するのは、風光明媚なことで知られる湖水地方にある1軒の民家です。

 

 左右の窓と見比べてもらうとお分かりのように、随分開口の低い玄関ドアです。本書には、サイズが書いてないのですが、1メートル20~30センチくらいじゃないでしょうか。
 ですから、その上の白木の板に注意書きがしてあります(右の拡大画像をご覧下さい)。
 "BEND OR BUMP"(かがみなさい、さもないとゴツン)と読めます。

 "B"と"B"で韻を踏み、簡潔で、力強い警告です。結構立派な庇(ひさし)とアーチを取り付けてますから、予算不足で、急遽ドアの高さだけをケチった、というわけでもなさそう。この警告看板が付けたい一心で、わざわざ小さくしたのかなと勘ぐってるんですけど、やっぱり「変」。

 イギリス人の「変」ぶりはいかがでしたか?パート2はいずれお送りする予定です。
 冒頭でご紹介した記事(第355回「とんでもない墓碑銘」)へのリンクは<こちら>です。

 それでは次回をお楽しみに。


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