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第590回 「ちょ・・」ほか大阪弁講座58

2024-08-23 | エッセイ
 第58弾をお届けします。タイトルにある「ちょ・・」は、「ちょ」がアタマにつき、大阪人がとりわけ好む様々な言葉を取り上げます、とのつもりで付けたものです。いささか尾籠な響きのある「屁のつっぱり」とあわせ、お気楽に最後までお付き合いください。


<ちょ・・>
 「ちょ」で始まる言葉で、日常的に広く使われるものといえば、「ちょっと」とか「ちょうど」などが思いつきます。大阪人はことのほか「ちょ」が付く言葉が好きなようで、バラエティに富んだのがいっぱいあります。思いつくままにご紹介してみます。

 量とか数が少ない、というのを基本的なイメージです。
「ちょびっと」というのが代表例になります。子供っぽい響きがありますが、大のオトナも堂々と使います。
 「なあ、もう「ちょびっと」安うなりまへんかなぁ?ほたら(そうすれば)買(こ)うてもエエんやけど・・・・」

 小さい頃、駄菓子屋の店先なんかで、「ちょぼ焼き」というのをオバさんなんかが焼いてました。タコ焼きのタコの代わりにコンニャクやら紅生姜やらを入れたもので、「ちょぼ」というのにふさわしく小ぶりで、安直な食べ物でした。こちらは「タコ焼き」です。

「ちょぼ」の系列では、「おちょぼ口」という言い方もありました。女の子の小さくて可愛い口を指して、オトナが使ってました。
 そうそう「ちょぼちょぼ」という言い回しを思い出しました。同じ程度ということなんですが、「ちょぼ」というくらいですから、レベルの低いところで、どっちもどっち、大した違いはない、と少々突き放したニュアンスの表現です。
「どっちが勉強できるかゆうてケンカしてるけど、二人とも「ちょぼちょぼ」や。ケンカしてるヒマがあったら勉強しぃ!」

 「ちょろ」系の言葉もあります。
 「ちょろちょろ」「うろちょろ」というのは、全国的に広く使われます。
 大阪弁だと「ちょろい」というのが代表選手でしょうか。ものごとが簡単、容易なことを意味します。
 「あんな試験「ちょろい」もんや。全部でけたわ」と自慢げに使えます。また、
 「宿題してきたかぁて訊くから「してきた」と答えたらそのまま信用してるねん。「ちょろい」先生や」のごとく、騙しやすいことを、すこしからかい気味に使う用例も思いつきました。
 「ちょろまかす」というのがあります。そう大した額とか量とかでないものをごまかすことです。「ちょろ」(少し)プラス「ごまかす」で「ちょろまかす」かなぁ、と思っています。
お使いに行って帰って来た子が親から詰問されています。
「なあ、計算が合わへんけど、アンタ、お釣り「ちょろまかし」てへんか?」

 「お」をつけて、「おちょくる」というのがあります。馬鹿にする、というほどキツくはないですが、相手の言動を軽くからかう時に使います。
「こっちは真剣に説明してますねん、いちいち「おちょくる」のは止めてもらえまへんか?」
「おちょける」というと、自分の方から、ふざけたマネなんかをすることです。小さい時から笑いを取ってナンボの精神が染み付いてるのが大阪人ですからね。
「またそんな変顔して。「おちょけ」とらんと、人の話をちゃんと聞き!」

<屁のつっぱり>
 いかにも大阪人が好みそうないささか品位に欠ける言葉ですが、小さい頃から親しんできました。
 「つっぱり」というのは、ものを支える支えるための棒、つっかえ棒のことじゃないかと想像しています。気体として出てしまった「屁」に「つっぱり」を入れても、何の役にも立たない、手遅れ、余計なお世話・・・・そんな想いを込めて「「屁」のつっぱりにもならん」と否定形で使うのがお約束です。
 「こっちは親戚中が集まっての法事で朝からてんやわんやで準備しとんねん。あらかた用意が出来た頃合いに来て、「なんか手伝うことないかぁ?」言われても。「屁のつっぱり」にもならんわ。ホンマ、あんたの父さんの親戚にはロクなんおらへんわ」
 小さい頃、親戚一同が集まるお盆の法事で、おふくろが、陰でよくこぼしてたのを思い出します。

 いかがでしたか?それでは次回をお楽しみに。