第55弾は、<添(そ)わす>と<ホンマですか?>を取り上げます。どうぞお楽しみください。
<添(そ)わす>
ちょっと古くさい言葉を持ち出しました。「結婚「させる」」ということなんですが、大阪弁として使うには、いくつかルールがあります。
まずは、女性を男性のもとへ嫁がせる、という意味合いで使うのが基本です。男性に「より添う」「身を寄せる」というイメージから来ています。なので、この言い方には、女性側の両親が、その娘に、ある男との結婚を「許す、認める」という男性優位、やや時代遅れな響きがあります。
例えば「是非おまえに「添わしたい」と思うてるエエ男があるんやけど、会うてみるか?」のような使い方です。
女性も使えます。ただ、その場合には、「添わせてほしい」などと、女性が男性に「添う」ことを「認めてほしい」とのトーンになります。それで思い出すのが、「お百度こいさん」(歌:和田弘とマヒナスターズ 作詞;喜志邦三)という歌です。

♪あきらめられない この願い
泣いて船場の こいさんが
芝居の裏の雨の夜
お百度まいりの法善寺
くすり問屋のあの人に あの人に
どうぞ添わせて どうぞ添わせて
おくれやす おくれやす♪
お百度参りというのは、願い事がある人が、神社によっては置いてある「百度石」のまわりを、100回まわって行う「願(がん)かけ」を指します。こちらが「百度石」です。

そこまでするのですから、親からは結婚を強く反対されているのでしょう。道ならぬ恋に落ちた「こいさん」(商家のお嬢さん)。「添わせて、添わせて」と、神さんにお願いするしかない、という切ない思いが溢れています。
時代の流れの中で、「添わす」も、いまや死語同然となっているのは何よりです。
「あんたとやったら、一生「添い」遂げたいわぁ」・・・これだったら、一度でいいから言われてみたいです。でも、これってやっぱり男性優位の発想ですかね。
<ホンマですか?>
相手から意外な話や、あまり知られてない情報などを持ち出された時の反応の仕方はいろいろです。「ウッソー」「まさかー」「信じられ~ん」「ありえな~い」「ホントにぃ?」など、本来の意味からするといささか失礼な表現が、若い人たちを中心に定着しています。いまや驚きの気持ちを素直に表すマナーみたいに手軽に使われてるようです。
関西系のバラエティ番組なんかを見ていると、「ホンマですか?」というちょっと不思議な表現に出会います。どんなシチュエーションかというと、お笑い業界の先輩なんかが、後輩芸人に、自慢っぽい話をしたり、裏話めいたことを話題にした時なんかに使われます。共通語の「本当(ホント)」に当たる「ホンマ」で、まずは礼儀として驚きの気持ちを伝えます。それだけだと、疑ってるだけのようにも受け取られますから、「ですか?」と丁寧な言葉でフォローする・・・・そんな気を遣った言い回しだな、と感じます。
ちなみに、ネイティブ大阪人がカジュアルに、遠慮なく疑問を呈する言い方は、「ホンマかぁ?」「ホンマでっか?」あたりでしょうか。そして、相手の言ってることをアタマから信じてない場合は、「ホンマかいな?」という疑問形を借りた最上級の否定の出番です。
「なんやて、絶対に儲かる商売口があるてか?「ホンマかいな?」」のように。
いかがでしたか?それでは次回をお楽しみに。