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第429回 英国人は京都人 英語弁講座33

2021-07-09 | エッセイ

 一応、英語弁講座ですので、簡単な英語も交えながら、タイトルに適う中身に落とし込む予定です。気軽にお付き合いください。
 
 「イギリス英語は落とし穴だらけ」(スティーブ・モリヤマ 研究社)という本に目を通しました。イギリス英語特有の表現や言い回しが紹介されている中から、それらを使う状況も含めて、英国人気質が浮かび上がってきます。典型的な英国紳士といえば、こんなイメージでしょうか。

 で、気がついたのは、英国人て、京都人に似てるなぁ、ということです。でも、少し大阪人も入ってる気がします。まずは、自嘲的表現を好む、というのがそれです。
 
 "manage to ~" という表現があります。学校では、「(努力して)なんとか~する」 と教わりました。 "I managed to pass the exam.”(なんとか(がんばって)試験に合格した)のように。

 ところが、英国人は、失敗した時に使うんですね。
I've managed to miss the appointment.(約束をコテっと(すっかり)忘れてた)
I've managed to leave my passport at home.(パスポートを家に置いてきてもた)
I've managed to miss the train.(電車に乗りそこねてもた)
 大阪弁の訳がピタリとハマるのが不思議です。英国は紳士の国ですから、大阪的自虐ギャグまでは飛ばさないようですが。

 いよいよ京都人的部分です。まずは、なにごとも控えめで、大げさな表現を避ける、というのがあります。オープンで、フレンドリー、大袈裟なくらい感情を表に出すアメリカ人と好一対です。

 例えば、"a bit"をよく使います。本来は「ちょっと、少し」の意味です。でも、ホンネ(以下、京都弁訳の部分)では、結構重大と考えてるケースもあるから要注意です。

 Well,that's a bit of a problem.(ちょっとした問題ですねー>こらエラい事どすな)
I was a bit disappointed. (少し失望しましたー>ほんまにがっかりどす)

 また、自慢することを何より嫌う英国人が謙遜して使う定番表現が、
  "I am afraid so."です。「そうは思いません」と相手が褒めてくれた点をやんわり否定します。「いやいや、なにをおっしゃいますやら。私なんかとてもとても」との京都弁訳を当てたいところです。

 同じく自慢することを何より嫌う京都人も、謙遜しまくるのが美徳と考えているようなところがあります。その裏に京都人独特のプライドも見え隠れするんですが。
 「この程度の店構えで、ほん少ないお客さん相手に商売さしてもろてます。そないに褒められたら、ホンマに恥ずかしいどすわ」

 京都といえば「イケズ」(いじわる)。言葉の「イケズ」のひとつが、「皮肉」で、英国人もお好きなようです。

 まずは、"suppose"(思う、考える)を使って。しぶしぶ同意するニュアンスを込める手があります。
 "I suppose you are right."だと、「あなたが正しいと思いますー>(そこまでおっしゃるんなら)あんさんのおっしゃる通りどっしゃろな(でしょうね)」

 "surely"(確かに、確実に)を皮肉っぽく使う手もあります。
 "Surely,he is posh." (確かに彼は育ちがいいー>さぞかし、お育ちがよろしいんどすやろな) 

 「京の茶漬け」というのがあります。帰りかける客に「お茶漬けでも、どうどすか」と社交辞令で声掛けし、応じた相手を田舎者としてバカにするというものです。まあ、昔はあったかも知れませんが、いまでは都市伝説化してる気がします。

 英国でも、
 "You must come for dinner?"(是非、夕食をご一緒しませんか?)と誘われることがあるといいます。本当に誘われているのか、社交辞令なのかは、あとに日時の提案など具体的な中身が続くかどうかで判断する必要がある、と本書にあります。
 この老獪さ、やっぱり「英国人は、京都人」です。

 いかがでしたか?それでは次回をお楽しみに。