Rosa Guitarra

ギタリスト榊原長紀のブログです

岡山 番外編

2016-05-22 | ギターの栄養


5/22

起きて湯船に浸かって体を解し
コンビニで買っておいたサラダスパを食べながら
自然に頭が巡り始めました





昨夜は後記が上手く書けなかったなぁ…

終演後になかなか客観的に戻れなかったようです


後記にはただただ
楽しかった楽しかった
嬉しかった嬉しかった
と羅列したい衝動を抑えながら
それじゃあまりにだから
なんとか文章をまとめた感がある


この先年齢を重ねて
もっと自分が練れた爺さんになれたら
良いライブが出来た日にはたった一言
「最高じゃった」
と潔く済ませられるようになれるかもしれない


人生の最後の時にも
「最高じゃった」の一言を発せたら
自分にとっても残して行く人に対しても一番だろう

残りの人生でなんとかそこまで漕ぎ着けたいものだ


まあ...今はまだまだ理屈を捏ね回して語りたい盛りなので
心が動いた日のことは
言葉にして残しておきたいと思う自分が居るのです





客観性を取り戻して来た頭で思考は続く



しかし…
(自分で言うのも何ですが)
何故僕はこんなに一生懸命弾くのだろうか


それを大雑把に一言で言うならきっと
自分がこの世に生きた証丸ごとを
誰かの心の中に留めて欲しいから
だと思う


それはまた当然
全ての人が思うところだろうから
ライブでの奏者と聴き手の「気」や「心」の行き来は
双方を認め合うことで育って行く仕組みになっている
といえるのかも

良い表現者というのは
そこをちゃんと押さえているのだろうな


そしてもう1つ

奏者は音楽を使って
その日の交わりの司会進行をする役だから
まずは奏者の方から先に聴き手の存在を認めて差し上げることから
物語を始めなければならない

こちらが先に心を開き
人が皆持っている防衛本能、警戒心を解きながら
また楽器や喉のコントロール技術も駆使しながら招き入れ
「どうでしょうか?我々は仲良くなれそうでしょうか?」
と問い掛けるのだ


例えば昨日の月あかりコンサートのことで言ってみるなら
ステージ上の奏者からまず心を開き客席を導くより以前に
主催者の岡本さんご夫妻が
普段の人間関係やお付き合いの中から
お客様の心を柔らかく解くことを為さっていたから
我々奏者がステージに上がった時には
既に聴き手の心は解放されており
それ故に奏者はスキルを引き出されたのだ

普段より何割増しかの力が引き出された種明かしは
そこにあった

音楽によって人が愛を交わし合うための前戯が
主催者さんによって十分に施されており
そこに集う人達の心が
本番前には既に潤っていた…



プロの音楽家は
限られた時間枠の中でなんぼの結果を出せるのが
実力だと言われるが
その真意を取り違えている音楽家が
少なくないように感じることがよくあります


心が震えるものは
沢山の時間をかけて
想いを育て膨らませなければ決して出逢えない

そういった沢山の時間と想いをかけて育てられた場に
僕は昨日たまたま居合せる幸運に恵まれた、といえる


そして自分が時間をかけ育てた音しか
そういう場では通用しない


そういうことを黙ってコツコツ重ねた音楽家が
短時間でスマートに良い結果を出したように
表面的には見えるだけだ




。。。





支度を済ませちょっと早めにチェックアウト

「プロヴァンスの朝」に向かった




この辺の道って2車線で一方通行なんですね


一方通行ってそもそも1車線しか取れないような狭い道だから
一方通行にするんじゃないのかなぁ?

2車線取れるのに一方通行、って…
関東ではほとんど見かけないので
どうも反対車線を走っている感覚に襲われてしょうがない

でもこういう旅先に遭遇する違和感て面白い






すぐに到着





少し早く着いたので車中待機でニギニギ
指を動かす筋肉を目覚めさせるのです



間もなくオーナー岡本さんがいらして早速中庭へ



今日はカラッと気持ち良く晴れたので
ほら
木漏れ日が揺れて


なんて素敵な空間なんだろう



椅子にもたれ小さな四角い空を見上げながらウォーミングアップを始めた

気持ち良過ぎて眠気に襲われる



おまけにそよ風に頬を撫でられなんざしちゃぁ旦那ぁ
もう終めぇでさぁ
こちとらとてもじゃねぇが
もう目ん玉なんざぁ開けておきゃぁしませんぜ





微睡みの世界に浸りながらゆるいウォーミングアップしてると
お客様が来たみたい


「今、練習中よ」
という声が聞こえる


いやいや…
練習してるフリを装ってるだけで
実は微睡みの国に魂が半分行ってしまっているだけなのです

でも聴いて頂けるならすぐにでも演奏を開始致しますよ

致しはしますが…

こんなに気持ちよく微睡んじゃって
ちゃんと弾けるか心配




お二人のお客様が入って来られました

昨夜のコンサートを聴いてくださった方が
聴けなかったお友達を連れて来てくださいました

光栄なことです



まだ十分なウォーミングアップが出来ていないので
慎重な指運びで弾き始めました

この「朝一番の音」というのは
まだ耳がピュアで
指が温まっていない1日の最初の時間にしか出ない音なんです


朝露に濡れた朝摘み苺のような
瑞々しく儚い音です

強く触れたら傷付けてしまいそうで
生まれたばかりの赤ちゃんをそっと抱くような音



音をしっかり出すことは
プロの現場では基本的なことでしょうが
僕にとっては
音以外の存在を吹き飛ばしてまで
聴け聴けとばかりに放たれる強い音には独善を感じてしまうのです



僕はもっと柔らかく在りたい

風に吹かれる心地良さまでも
強い音で吹き飛ばしてしまう音楽は僕は要らないな...

風や木漏れ日と混じり共存出来るような音や
それを生み出せる音楽家が好きだ

朝摘み苺の音はその要素を持っているのです

十分なウォーミングアップが為されたコンサート等では
音がしっかりしてしまい
それはそれで勿論良い音ですが
朝摘み苺の音はもう二度と出なくなってしまう

一度睡眠を取ってリセットしなければ
朝摘みの音にはもう出逢えない

だからなかなかお客さんお前で披露出来ない優しい優しい音なのです



今日たまたま早めに来店されてこの音に遭遇された最初のお2人と
その後に来られた3人の方は
貴重な音を聴いたのかもしれませんよ ^^







今日のこの中庭でのミニライブを終えて
これでやっと僕にとっての「月あかりコンサート」は終了です

主催の岡本さんご夫妻
橋渡しをしてくださった内海さん
一緒にステージに立った奏者の皆さん
朗読の皆さん
スタッフの皆さん
そしてお客様

本当にありがとうございました

幸せな時を過ごさせて頂きました











。。。。







ご挨拶して、この後は新見へ移動です

古い音楽仲間の山ちゃんこと山森洋さんがやっている
カバティーナという素敵なお店にちょっと寄らせてもらうことになってるのです






内陸に北上して行きます


僕は岡山から新見に向かうこのルートの
豊かな緑が深くなって行く景観が好き










1時間強で新見に到着
有料道路を降りる















間もなく到着




山ちゃんとの再会は何年ぶりになるんだったっけ

車を降りると空気が美味しく感じられた

山間の自然が残る地にカバティーナはあります


これ、店の周り360度パノラマ



店に入るとフリーライブデーということらしく
お客様が歌ってらした
皆さん、人の前で歌い奏でることを楽しんでらっしゃいました





料理を作りながら出番の人の回線やPAなどのセッティングを忙しくこなす山ちゃんです






僕も混じって数曲弾いては休んでまた弾いて
みたいにしながら徐々に日が暮れて行きました



自分も弾く山ちゃん




何度目かに弾いた後
火照りを冷ましに外へ出ると
表示に自分の影が映ってる

山ちゃんの店の前の強力なサーチライトで照らされ
表示に映ってるのは僕の影なんです


しかし何故個人店のライトで公共の表示を照らしてるのだろう?
1つの社会貢献活動なのかしら…
世知辛い東京じゃまず無いですよね、こういうこと



フリーライブデーは進んで行きます





そしてついに真打ち登場


僕も参加でセッションが始まった
ステージ上に黒光りする迫力の後ろ姿

この方ピストン黒田こと黒田さん
山ちゃんが信頼している仲間の方です

この方の歌ってるyoutube観ましたが
歌が相当上手いのです


セッションサポートにベース山ちゃん


ドラムスに若き学校の先生とそして僕のアコギで始まりました


2曲程やりましたが
歌心と歌唱力のスキルが高いから
演奏していて楽しい楽しい

僕はすっかりピストン黒田のファンになったのであります


見た目の強面(こわもて)とは裏腹に
ガラスの心の人だと山ちゃんが教えてくれました
そこがまたチャーミングで憎いねピストン

因にピストンは僕と同じ年でした

「黒田さん、一緒に写真撮りましょうよ」
って誘ってみた


僕も強面バージョンで



ジャン!


僕はやっぱり迫力出ないか…?





夜も更けて行きお客様もぽつぽつ帰り始め

そこからは山ちゃんと積もる話を明け方近くまで延々としました


お客さんの心を掴んで離さないステージをやるための極意は
面白いMCに有り
というのが昔からの山ちゃんの持論です

僕は一晩中
とくとくと山ちゃんから諭されました^^

勿論、友のアドバイスを有難く受け取りました

出来るかどうかわからないけど
いろいろ考えてやってみるよ
山ちゃん


熱く熱くアドバイスをくれた山ちゃんと
思い出の記念撮影

山ちゃん
ありがとね

昔の苦節時代の音楽仲間だからね

オーナーになって大変だろうけど
元気で居てくれて嬉しいよ

昔山ちゃんがサラリーマンやってた時代の同僚という人にも
昨日の打ち上げでお会いしたよ
「元気でやってますか?
大変だと思うけど頑張って」って
伝言預かったよ


ほら、もうあんまり時間も無くなって来たからさ
酔って忘れないうちに
再会の思い出に写真撮ろうよ



心に残るようなショットにしようよ












パシャッ


















こらこら

ふざけないで撮ろうよ








頂いたアドバイス
肝に銘じて生きて行くよ

面白いMC出来るように努力するからね


お互い元気で
また再会しようよね






パシャッ














どこ触っとんじゃい








こうして明け方になって僕らはやっと眠りについたのでした




12時に起きて店の外に出てみると
朝イチ というか昼イチの空気はマイナスイオンたっぷりひんやりして
山の木々と土の甘い匂いに満たされてました




山ちゃんが動画撮ろうと言い出した

youtubeにアップするから
ファイナルファンタジーのテーマ弾いて、と言って
撮ってくれました

映像も編集してアップしてくれました

まだ寝起きでちょっと指がヘロってますが
https://www.youtube.com/watch?v=_IBoKkMHJcc&feature=youtu.be









13時
いよいよ出発です



途中で寄って
吉岡のお好み焼きお土産に持たせてくれた








山ちゃんが熱く語ってくれたアドバイス
マジにありがたく受け止めてよく反芻するよ





暖かい気持ちに包まれながら
昨夜フリーライブデーで歌ってらした方々の姿を
運転しながら思い出していました



誰でも歌うこと奏でることが好きなのだ

音楽が癒してくれ
また明日からの生活に力をくれている

人から歌うことを奪う行為は
最大の罪かもしれない


音楽は力押しで相手に聴かせるものではない

聴かせるよりむしろ
相手に歌い奏でさせる気持ちを起こさせることが出来るのが
真のプロの音楽家といえるのかもしれない




ブルースは奴隷だった黒人の悲哀から生まれ
現代まで残り定着し
多くの人間に知られまた愛される音楽となった

日本にはそんな意味でのブルースは無いと思っていたが
日本には日本の
岡山には岡山の
東京には東京の
新見には新見の生活や苦労があり
それを癒す音楽は
その人にとってのブルースなのだと思った

それはフォークソングでもポップスでも
ジャズでも演歌でもロックでも何でも良い

その人が好きであるものがその人にとってのブルース
神様と繋がることが出来るゴスペルなのだ



音楽が人を癒し
導き
そして人同士が繋がり
また支えあっているイメージが心の中にありありと浮かんだ



人間同士がいがみ合う場に遭遇する時、僕は
人間から離れ
木々や鳥土や風などの自然の者たちに包まれ
自分の心の健やかを守ろうとし
そして少し人間嫌いになる

しかし人間同士が和を持ち寄り
光を増す場に遭遇出来ると
やっぱり人間も素晴らしいと思わせてもらえる


岡山での3日間でたくさんのものを貰いました

僕は何を置いてこれたかな…

そんなことを考えていたら
鼻の奥にツーンとした感覚が走り涙が出てました


誰にも見られないから安心してそのまま運転したのでした


心が風呂上がりのように温まって
自分の中に「気」が満ちて行くのを感じていました





























コメント (1)
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