Rosa Guitarra

ギタリスト榊原長紀のブログです

「G」

2009-12-08 | ギターの栄養


「JIN -仁-」というドラマの再放送?を昼間見た

江戸時代にタイムスリップした主人公の医者が
現代では何でもない簡単な手術に、向こうで苦戦する姿を見ていてふと思った



ホモ・サピエンス(現生人類)としての人類が歩んできた年月だけでもおよそ20万年

それ以前の原人や猿人と呼ばれる人類の源流にまで遡ると700万年にも及ぶ年月

その中でも最近の、僅か「百何十年」という短い時間の中で科学は猛烈に発達し
下手をすると地球ごと破壊してしまうまでの力を持った

石炭文明から石油に移行し、あっという間にそれを食い尽くしてしまおうとしている
近代の科学技術の発達がこんなに急激なものであったことをあらためて思った



漱石が明治の時代における現代文明を既に「この世の終わり」のようにしきりに言っていた

便利ということを否定しないが
便利の影に隠れて見えない悪い方へと作用してしまう文明の盲点
その影が当時から感じられていたから漱石は言ったのだろう

日本人は漱石を、100年以上経って国語の教科書に載せ、1000円札にまでしたのに
彼の嘆きや啓示は、現代の科学に反映され市民権を得るまでにはなかなかならない




生きるために食べ物を調達することから生まれる文化の肌触りと
科学技術の便利がもたらす肌触りはまるで違う

森の中の何処に、あの美味しい木の実が生っていて
いつの季節には沢山穫れる
朝露に濡れた森の中を歩く時間は、自らを省みる心を起こさせてくれる

あの川のどこら辺には魚が群れていて
一日の中の何時くらいが穫れやすい
魚が捕れない日でも、冷たい川の水は喉を潤し生きる活力を起こさせてくれる

食べ物の器は、土を捏ねて焼く
それは土を知り、火を知ることになる

他の獣に襲われぬよう、本能が群れること教え
群れの中に協調の喜びと争いの悲劇が生まれ、求愛のドラマが生まれる
群れることが基本だから、群れない美も生まれる

そしてこういった自然に根ざした文化に触れることから活性化した生命力が育つ


こういったことは、どこかで沢山の人が飽きるほど言い尽くしたことだろうが
科学の便利は、僕等が自然と繋がっていることを忘れさせるように迫ってくる





何故、理屈ではわかっているのに改善されないのだろう?
人間が煩悩を克服出来ない精神的に非力な生き物だから?
釈迦が没して2000年以上経ち、末法思想のいうところの時代に入っているから?




文明開化以降の最近の百数十年の科学の発達の上昇カーブを
20万年を全体と見立てたグラフにしたら

横軸19万9千8百年以上かけて1%あたりまでゆっくり上がって来たカーブが
最後の横軸99.9992まで来た途端
発展度数である縦軸がいきなり100%近くまで跳ね上がったようなもの


長い長い緩やかな加速で滑走してきたプロペラ機が
飛び立つ寸前に、いきなりスペースシャトルのような動力となり
ほぼ垂直に離陸したようなものなのだ


この百数十年に僕等にかけられた「G」とは、相当なものだろうと思った


この「G」によって目が回っているうちに今生が終わってしまわぬよう
動体視力を身につけるべく生きたいと思うのだ


そしてその訓練場は必ず自分の内部にある








コメント
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