(産経新聞)
■地方のハート争奪空回り
民主党代表選の告示後初めての日曜日となった5日、菅直人首相と小沢一郎前幹事長はフジテレビとNHKの報道番組にそろい踏みで出演後、大阪・梅田で街頭演説した。地方議員票と党員・サポーター票の劣勢を挽回(ばんかい)しようと小沢氏は笑顔を絶やさず能弁に振る舞ったが、支持率アップの道は険しい。首相も弱気が見え隠れし、“小沢バッシング”は自重気味で演説も精彩を欠く。そんな中、小沢支持派によるサポーター票回収疑惑が浮上するなど水面下の攻防は泥沼化しつつある。(酒井充)
≪禅譲ほのめかす!?≫
首相は5日、弱気を見せた。1日に自らを支持するグループの会合で、小沢氏を、不平士族に担がれて西南戦争(明治10年)を戦い自刃した西郷隆盛になぞらえたが、フジテレビの番組「新報道2001」ではこう修正した。
「(明治維新という)革命を成し遂げるのは高杉晋作とか西郷隆盛だ。西郷さんは生き残り、高杉は亡くなる」
高杉を尊敬する首相は自らの内閣を「奇兵隊内閣」と命名してきただけに「次は小沢さん」と禅譲をほのめかしたとも受け取れる。
5日午後、大阪・梅田の街頭演説で、首相は小沢氏の「政治とカネ」の問題に直接触れなかった。会場には熱烈な「小沢サポーター」が集結。「必勝 小沢一郎」の幟(のぼり)が並び「小沢コール」が鳴り響く。首相が薬害エイズの話に触れると「おまえの自慢話はもういいぞ!」とヤジが飛んだ。
ただ、普段寡黙な小沢氏がテレビなどの露出度を増やせば、「異様な盛り上がりをみせ、勝利できる」と踏んでいた小沢陣営のあては外れつつある。
新報道2001が2日に実施した世論調査では、代表選で首相支持は61・0%だったが、小沢支持は15・4%にとどまった。前回調査(8月26日)は首相63・0%、小沢氏は16・6%で逆に微減している。
小沢氏の支持が広がらないのは「政治とカネ」の問題が影を落としているからに違いない。小沢氏もそれを意識し、NHKではこう強弁した。
「(政治資金で)不動産を購入している人は私だけではなく、たくさんいる。公平さを欠く報道だ!」
だが、現職国会議員の資金管理団体で土地を保有するのは小沢氏の「陸山会」だけだ。小沢氏は「何もやましいことはない」と潔白を強調するものの、その根拠はあいまいなまま。これでは何の説得力もない。
≪白紙用紙を回収か≫
首相、小沢氏の「空中戦」の裏側では「きな臭い」話も出始めた。
民主党秋田県連代表選管理委員会は4日、小沢氏支持の高松和夫衆院議員(比例代表東北ブロック)の事務所が一部サポーターに白紙の投票用紙の提出を求めた疑いがあるとして、党中央選管に調査を求める文書を送付した。
高松氏は「事実無根だ」と否定し、同氏周辺は「首相側近の陰謀だ」と憤るが、投開票日の14日まで両陣営の票獲得合戦はますます熾烈(しれつ)になる。すでに数々の権謀術数が巡らされており、両陣営の疑心暗鬼はさらに深まっていくだろう。
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