ドゥテルテ氏、反米筋金入り 背景に市長時代の事件 日本経済新聞 電子版
宗主国だった米国は軍をフィリピンに駐留させていたが、反米世論の高まりなどを受け1992年までに撤退した。南シナ海での米軍の存在感が低下すると、中国が海洋進出の動きを加速。米比は2014年、米軍の事実上の再駐留を可能にする防衛協力強化協定を結んだ。
そんな米国に対して、ドゥテルテ氏が厳しい姿勢を持つきっかけになったのが、市長を務めていたダバオ市で02年に起きた爆発事件とされる。
米国人男性のマイケル・メイリン氏が宿泊していたホテルの部屋で、爆発が起きた。比当局は部屋にあったダイナマイトが原因と指摘した。
ドゥテルテ氏の説明によると、米連邦捜査局(FBI)のバッジを付けた人物が数日後、けがをしたメイリン氏を病院から連れ出し、米大使館が用意した飛行機で許可なく海外に連れ出した。メイリン氏はFBIの一員との情報もあった。
26日のドゥテルテ氏の主な発言 |
・中国が大きくなってくれば米国との間に衝突の可能性がある※ |
・独立した外交政策を追求すると宣言した。今後2年ほどで外国軍は出ていってほしい |
・中国の友人になりたい |
・米国は「犯罪者をかむのをやめないと、エサをやらないぞ」と言っている(自身を犬に例えて) |
・米国は我が国を50年間統治し、ぜいたくしてきた |
・自分の命は失ってもいいが、我々の尊厳や名誉が国際社会に踏みにじられるのは許さない |
・生活の質は落ちるかもしれないが、米国の支援なしに生き残っていける |
(注)※の発言は日本・フィリピン友好議員連盟との会談時、ほかはフィリピン経済フォーラムでの講演
「当時の米大使は徹底的に調査をして私に説明をするといったが、いまだに何の連絡もない。米国は我々を侮辱した」。ドゥテルテ氏は訪日前の21日、同事件について記者団にこう語った。「許せないのは国際社会で尊厳と栄誉が踏みにじられることだ。フィリピン国民には尊厳があるということを米国に証明したい」。26日の東京での講演でも触れた。
自身の麻薬犯罪対策に対して米国が非難したことにも言及。麻薬問題の深刻さを強調したうえで「オバマ米大統領や欧州連合(EU)が虐殺事案として国際司法裁判所に私を訴えると脅してきた」と怒りを爆発させた。
父が知事、母が教師という家庭で育ったドゥテルテ氏。社会主義思想に共感を持っているとの見方もある。ドゥテルテ氏はベトナム戦争を巡って反米運動が広がった1960~70年代前半に大学生活を送り、左翼系団体にも所属していたようだ。大学ではフィリピン共産党創設者のシソン氏からも学んだ。
こうした経験が礎となり、今でも反米思想を抱いているとの指摘もある。ドゥテルテ政権には、共産党が推薦した閣僚もいる。
フィリピンと米国の軍は24日に開く予定だった高官レベルの協議を延期したと明らかにした。ドゥテルテ氏の止まらない反米発言が影響した可能性がある。