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「桜を見る会」問題の本質~安倍首相説明の「詰み」を盤面解説・( 郷原さん、この説明・お見事)

2019-11-27 | 報道・ニュース

記事  郷原信郎 2019年11月27日「桜を見る会」問題の本質~安倍首相説明の「詰み」を盤面解説

 

11月16日の土曜日の朝、【「桜を見る会」前夜祭 安倍首相の「説明」への疑問~「ホテル名義の領収書」の“謎”】で、「桜を見る会」前夜祭に関する法的問題を指摘した。翌週月曜日、安倍首相の「ぶら下がり」会見で「説明」したことに対して、【「ホテル主催夕食会」なら、安倍首相・事務所関係者の会費は支払われたのか】【最終盤を迎えた「桜を見る会」安倍首相“詰将棋”、「決定的な一手」は】と、さらに問題を指摘し続けたところ、安倍首相は、それ以降、「ぶら下がり会見」での説明は一切行わなくなった。それに代わって、菅義緯官房長官が、連日、内閣委員会での答弁や、定例会見での質問への対応を行っているが、菅氏の「説明」は完全に「破綻」している。それは、「桜を見る会」前夜祭に関して、安倍首相が「説明不能」の状態に陥ったということであり、将棋に例えれば、完全に「詰んだ」と言える。

 安倍首相の「桜を見る会」前夜祭に関する「説明」がなぜ詰んだと言えるのか。「将棋の盤面」の喩えで考えてみよう。

「桜を見る会」追及が始まった時点での盤面

 まず、「桜を見る会」についての追及が始まり、前夜祭の問題に及んだ時点の盤面が《盤面1》である。

《盤面1》

 

 「5八」に位置する安倍首相の「玉(ぎょく:王将)」を守る駒として、「3七」の位置に安倍後援会の「金」(斜め後方以外の場所に1マス動かすことができる駒)、「7六」の位置にホテルニューオータニの「銀」(左右と後方以外の場所に1マス動かすことができる駒)という「二つの駒」があった。

 安倍後援会が、安倍首相の指示どおりに動くのは当然であり、ホテルニューオータニも、絶大な政治権力を持つ安倍首相にとっては、動かすことが容易な「駒」だったであろう。

 当初は、前夜祭の夕食パーティーの1人5000円という会費が安過ぎるのではないか、実際にはもっと高く、その差額を安倍後援会が補填しているのではないか、そうだとすると、安倍首相の地元の支援者が多数参加している夕食会は、有権者に対する利益供与(公選法違反)に当たるのではないか、が問題にされた。

 この段階で、安倍首相が強く意識したのは、「公選法違反」の問題であった。直近で、同じ有権者に対する利益供与の問題で、菅原一秀氏が、就任間もなく経済産業大臣を辞任していたこともあって、公選法問題は、総理大臣辞任につながりかねない重大リスクであった。《盤面1》上の「敵の駒」としては、敵陣「2二」の位置にある「飛車」(縦横どこまででも動かせる駒)であった。

 しかし、「桜を見る会」前夜祭に関するリスクはそれだけではなかった。政治団体である安倍後援会が深く関わっていることは明らかであり、それについて、収支が発生していれば、政治資金収支報告書に記載しなければならない。しかし、その収支報告書には、過去に、「桜を見る会」前夜祭の収支が記載されたことはなく、収支の記載義務があれば、もろに政治資金規正法違反となる。《盤面1》で言えば「6二」の「香車」(きょうしゃ:前方にどこまでも走る駒)であった。

 そして、盤面の中央に位置する駒が、マスコミやネット上の安倍政権に対する批判の言論の「金」であり、これには、私自身も含まれる。

 つまり、《盤面1》の上で、「安倍王将」を守る駒が「後援会」(金)、ホテルニューオータニ(銀)、攻める方が、「公選法違反」(飛車)と「政治資金規正法違反」(香車)、そして、それらを背景とする言論(金)という構図だった。

安倍首相にとって最大の「悪手」だった「6七玉」

 そこからの盤面の動きを示したのが《盤面2》だ。

 まず、野党側の追及は、ホテルニューオータニの鶴の間でのパーティーは最低でも「一人11000円」とされていることなどから、前夜祭の夕食バーティーが有権者への利益供与の公選法違反に当たるのではないかという指摘だった。「2二飛車」は「2八飛車成り」で、一気に、「3七金」の安倍後援会に迫った。これによって「飛車」は「龍」(もともとの飛車の動きに加えて、斜め前方と斜め後方に1マス動かせる駒)となる。

《盤面2》

 

 そこで、安倍首相側の意識は、公選法違反の「2八龍」の方に集中した。この局面で、安倍首相は、後援会側に動くことによる公選法違反のリスクを恐れ、反対のホテルニューオータニ側に都合の良い説明をさせる方針をとった。

11月15日、「ぶら下がり会見」で

「すべての費用は参加者の自己負担。旅費・宿泊費は、各参加者が旅行代理店に支払いし、夕食会費用については、安倍事務所職員が1人5000円を集金してホテル名義の領収書を手交。集金した現金をその場でホテル側に渡すという形で、参加者からホテル側への支払いがなされた。」

と説明し、18日の「ぶら下がり」会見でも、

「安倍事務所にも後援会にも、一切、入金はなく出金もない。旅費や宿泊費は各参加者が直接支払いを行い、食事代についても領収書を発行していない。」

と述べた。

 そして、安倍首相は、ホテルニューオータニ側が、1人5000円という会費の設定を行い、自ら参加者から会費を徴収したものだとして、「安倍後援会側に収支が発生しない」という説明をすることで、説明責任を、後援会ではなく、すべてホテルニューオータニ側に押しつけようようとした。

 夕食パーティーの参加費の価格設定も会費の徴収もすべてホテル側が行うという、「ホテル主催の宴会」であるかのように説明したのである。そうすれば、安倍後援会は一切関与せず、収支も発生しないことになる。つまり、「3七金」の安倍後援会ではなく、「7六銀」のニューオータニの方に寄ろうとし、「6七玉」という手を指したのである。

 しかし、それが、安倍首相にとって、致命的な「悪手」(あくしゅ:形勢が悪化するような指し手)であったことは盤面上も明らかだ。

 15日の夜、私は、【「ホテル主催夕食会」なら、安倍首相・事務所関係者の会費は支払われたのか】と題する記事を出した。安倍首相が説明するとおり、ホテル側が会費の設定を行い、自ら参加者から会費を徴収するのであれば、安倍首相夫妻、安倍事務所、後援会関係者からも当然会費を徴収しなければならない。支払った場合は、安倍後援会としての支出が発生するので、後援会に政治資金収支報告書に記載がないことが政治資金規正法違反となる。逆に、支払っていない場合には「無銭飲食」になる。もちろん、その「無銭飲食」は、ホテル側が「被害届」を出さなければ「事件」にはならないが、それは、ホテル側が「無銭飲食」を見過ごし、その分の支払を免除することで、ホテルニューオータニという企業が、安倍後援会に企業団体献金を行ったことになる。

 安倍首相には、違法にならない「説明」の余地はない。

 「6六金」という「王手」(おうて:次に相手玉を取ることができる状態)だった。政治資金規正法違反の「6二香車」が効いており(玉で「金」を取ろうとしても、前方に一直線に動ける香車にとられてしまう)ので、「6六金」の王手で、完全に「詰み」なのである。

ニューオータニにとって最悪の「詰み」の盤面

 こうした、安倍首相が、致命的な「悪手」を打ったことの結末は、単なる「詰み」にとどまらない。

 翌11月19日朝に、私が出した記事【最終盤を迎えた「桜を見る会」安倍首相“詰将棋”、「決定的な一手」は】では、安倍首相が、ホテルニューオータニ側に便宜を図ってもらったような説明をすると、ホテルニューオータニが、安倍首相の職務権限による「何らかの見返り」を期待する関係にあった疑いが生じると指摘した。実際に、安倍首相が長を務める内閣府は、皇位継承に関連する行事に関して、都内の有名ホテルに多額の発注を行っており、ホテルニューオータニも、今年10月23日に、約1億7000万円の予算で開催された内閣総理大臣夫妻晩餐会を内閣府から受注し、「桜を見る会」前夜祭と同じ「鶴の間」で晩餐会が開催されている。

 ホテル側が、前夜祭の夕食パーティーで、参加していた安倍首相夫妻や事務所関係者から徴収すべき参加費を徴収しなかったとすると「利益の供与」であり、それは、安倍首相とホテルニューオータニとの「癒着・腐敗」の疑い、極端に言えば、贈収賄の疑いさえ生じさせることになる。

 《盤面3》が、安倍首相の「詰み」の最終の盤面である。「安倍王将」と「ニューオータニ銀」とがくっついて「癒着した」形での「詰み」という最悪の盤面となっている。

《盤面3》

 

このような盤面のまま長期間放置されることは、日本の一流ホテルであり、上場企業のホテルニューオータニにとって、耐え難いことなのではないだろうか。今のところは、安倍政権が揺るがないとの前提で、「安倍王将」と「くっついた状態」に甘んじているのであるが、もし、安倍内閣が危うくなってきたと認識した場合には、上場企業のコンプライアンスという観点からの決断を迫られることになるだろう。

「桜を見る会」問題に関わった経緯とその後の展開

 私がこの問題に最初に関心を持ったのは、11月15日の夕方、【山口県からご一行、桜を見る会へ 首相夫妻と記念撮影も】と題する朝日のネット記事を見た時だった。

 それまでも、「桜を見る会」や前夜祭の問題について、野党が国会で追及していることは知っていた。しかし、私自身、2013年と2014年に、総務省年金業務監視委員会の委員長として「桜を見る会」に招待されて参加した際、広大な新宿御苑の中に大勢の人が集まっていて、飲食物もほとんどなく、ほとんど「儀礼」に近い「質素な会」という認識を持っていた。誰が招かれようと、特に騒ぐような問題ではないし、前夜祭の会費5000円が安過ぎるというのも、ホテル側の裁量の範囲内で価格設定されたと言われれば、選挙区内の有権者への利益供与を立証することも難しいだろうと思っていた。

 ところが、上記記事によると、「桜を見る会」の開場は午前8時半なのに、安倍後援会関係者は、午前7時ごろ、新宿御苑に向けて貸し切りバスでホテルを出発。「現地に着くと、手荷物検査もなくすぐに会場内に入れ、バラずしの弁当や焼き鳥などが振る舞われ、これらは繰り返し並べば何度ももらえた、酒やジュースなどは飲み放題だった」と書かれている。

 一体この待遇の違いは何だろう。本来、各界での功績、功労のあった人を慰労するというのが開催の趣旨のはずなのに、その趣旨に反し、安倍首相の地元の支持者・支援者の歓待を目的としているのではないか、という疑問を持った。

 その疑問をツイートしたところ、次のような返信があった。

郷原弁護士のツイートにしてはキレが悪いように思う。食べものにありつけなかったなどの思い出だけでなく、今回の件が法的に問題があるのかないのか分析してほしい。

 確かにその通りである。「食べ物にありつけなかったこと」はどうでも良い。開催の趣旨に反して、公金で安倍首相の地元の有権者を歓待することが目的になっているのであれば、何らかの法的な問題があるはずである。検察実務経験を有する法律家の私が行うべきことは、報道や安倍首相の説明から、法的な問題点の検討を行うことだと思った。

 それ以降、私は、立て続けに3つの記事を出し、公選法と政治資金規正法の関連から安倍首相の追及を行った。その結果、安倍首相の説明は、あっという間に「詰み」に至り、「桜を見る会」前夜祭について「説明不能」の状況に追い込まれたのである。

 安倍首相は、それ以降、前夜祭について、本会議の代表質問で、それまでの説明を繰り返した(前夜祭が「後援会主催」であることは認めた)以外は説明を全く行っていないし、野党側から衆参両院での予算委員会の開催を求められても、与党側が絶対に応じない。しかし、参議院規則38条は、委員の3分の1以上の要求があったとき「委員長は委員会を開かなければならない」と規定しており、少なくとも参議院で野党側の予算委員会開催要求に応じないことは違法となる。

 総理大臣という職にある以上、国会での答弁、記者会見でのマスコミ対応を行うことは不可欠なはずだ。しかし、説明が「詰んでいる」安倍首相には、それができない。このまま、予算委員会も開かず、記者会見も行わず、野党やマスコミから追及から逃げ続けることで、果たして、総理大臣という、日本という国の「王将」の立場を維持できるのだろうか。

「桜を見る会」問題は「安倍政権の支配構造の本質」に関わる問題

 「桜を見る会」の問題について、安倍支持者側からは、「政治が取り組むべき重要な課題が山積しているのに、なぜ『桜を見る会』などというくだらないことで大騒ぎしているのか。」というような声が聞かれる。確かに、一つの「行事」の問題だし、国費が投じられていると言っても予算の規模としてはそれ程大きくはない。しかし、この問題には、安倍政権による、日本の行政組織の支配構図と、安倍首相の「身内びいき」の姿勢という安倍政権の本質的な問題が端的に表れている。そして何より重要なことは、これまで「違法なことはやっていない」という安倍首相の唯一の「言い訳」が通用しなくなっていることである

 なぜ、本来、各界で功労・功績があった人達を慰労することを目的としているのに、功労者として招待された人間に対する接遇に気を遣うことはほとんどなく、一方で、安倍後援会関係者は、開場時刻前に何台ものバスで乗り付けて、ふんだんな飲食やお土産までふるまわれるのか。そこには、これまで、森友・加計学園問題でもしばしば問題とされてきた、安倍一強体制の下での「権力者への忖度」が影響しているのであろう。

 運営の実務を行う内閣府や官邸の職員には、「桜を見る会」が、安倍後援会側の意向で「地元有権者歓待行事」と化していることに違和感を覚えても、異を唱えることなどできない。傍若無人に大型バスで開場に乗り込んでくる安倍後援会側の行動を黙認するしかなかったのであろう。開催経費が予算を超えて膨張していったのも、後援会の招待者が増え、地元の参加者に十分な飲食の提供など歓待をしようとする要求に抵抗できなかった結果であり、内閣府等の職員達は、各界の功労・功績者の慰労という本来の目的との関係は気になりつつも、実際にはそれを考える余裕はなかったのであろう。

 そして、何と言っても、安倍首相の最大の「敗因」は、身内中の身内である「安倍後援会」側の「説明」によるのではなく、ホテルニューオータニという日本を代表するホテルを経営する上場企業の側に「説明」を押し付けようとしたことだ。森友問題では財務省に、加計学園問題では内閣府に「説明」を押し付けて、自らは「違法なことはやっていない」という言い分を通してきた。しかし、今回の問題では、安倍首相は、「身内」である安倍後援会を何とかして守ろうとした。その結果、「説明」を押し付け、泥をかぶってもらおうとしたのが、上場企業であり高いモラルが求められる一流ホテルのホテルニューオータニであったところに、森友・加計問題との最大の違いがあった。

 「桜を見る会」自体も、その前夜祭も、全体として、安倍首相の地元の有権者に対する、過度の接遇であることを否定する余地はない。問題はそれが、誰が誰の負担で行われたかである。「桜を見る会」は、内閣府等の担当職員の「権力者への忖度」によって国の負担で行われ、前夜祭は、安倍後援会又はホテルニューオータニ側が、自己の負担で行ったということになる。安倍後援会が負担することは、選挙区内の有権者に対する利益供与として公選法違反だが、その違法性のレベルは、同じ公選法違反でも、特定の選挙の当選を得る目的の買収と比較すれば、法定刑も低く、それほど重大なものとはいえない。一方で、内閣府からの受注業者であるホテルニューオータニからの利益供与、つまり寄附を受けることの政治資金規正法上の違法性(企業団体献金の禁止)は、「贈収賄」の疑いすら生じさせるものなのであり、その違法性の程度は比較にならないほど大きいといえよう。

 このような、「桜を見る会」をめぐる“基本的な構造”を、安倍首相自身が全く理解できていないところには、根本的な原因がある。

 

AOの感想

>森友問題では財務省に、加計学園問題では内閣府に「説明」を押し付けて、自らは「違法なことはやっていない」という言い分を通してきた。しかし今回は、「説明」を押し付け、泥をかぶってもらおうとしたのが、上場企業であり高いモラルが求められる一流ホテルのホテルニューオータニであったところに、森友・加計問題との最大の違いがある、 「桜を見る会」は、内閣府等の担当職員の「権力者への忖度」によって国の負担税金である。・・・「桜を見る会」問題の本質~安倍首相説明の「詰み」を盤面解説 郷原さん、この説明・お見事

 

 


記事  東電事故(強制起訴)刑事無罪判決-見送られた津波対策・・・おかしな記事 

2019-11-25 | 報道・ニュース

記事     東電事故(強制起訴)刑事無罪判決-見送られた津波対策     山口利昭2019年11月25日

今年9月24日に、こちらのエントリー「東電事故刑事無罪判決-内部統制構築の虚しさを感じました」において、当時のNHK特集をもとに東京電力の組織的な課題について自説を述べました。私自身は未だ同判決は読めておりませんが、朝日新聞の奥山記者が同判決を読み、東電元幹部の方々への新たな取材を通じて連載記事を書いておられます(「見送られた津波対策」朝日新聞有料記事より)。

ちょうど24日に3回目の連載記事がWEB上にアップされましたが、奥山さんらしいツッコミの鋭い記事であり、やはりいろいろと考えさせられます。

前回のエントリーでも書きましたが、企業の内部統制や有事対応に関心を持つ者として、やはり東日本大震災に至るまでの東電と原電(日本電子力発電)との津波対策の差(実行力の差)に注目してしまいます。原電の2011年当時の社長さんは東電出身の方だそうですが、「できるところからやろう」ということで現実の津波対策に組織横断的に取り組んだ原電と、専門家チームが出した答えを経営判断で覆してしまった東電組織の差はどこにあるのでしょうか。

原電の組織は東電の数十分の一の規模なので、現場と経営陣との距離感が近く、現場の声が経営者に届きやすかった、ということが大きな理由かとは思いますが、9月24日のエントリーにコメントを寄せていただいたJFKさんが述べるように「想定しがたい高さの津波対策に数百億を投じるということについて、当時の国民から納得は得られなかったのではないか」ということも重要な指摘かと思います。

たとえ津波の専門家から危険性を指摘されていたとしても、「原発は安全であり、天下の東電が安全対策最優先で取り組んでいる以上は事故など起こらない」と認識していた国民の前で「想定外の事態への対処」に高額の資金を投じる合理的説明ができなかった(その結果として、裁判所は経営者に法的責任ありと評価することはできなかった)ということかと。

ただ、奥山記者の記事を読んでいると、原電は「できるところからやろう」「たとえ津波が防波堤を超えたとしても、事故の被害を最小限度に抑えよう」ということで「事故は発生する」ことを念頭に置いた総合的な安全対策をとっていることがわかります。決して「完璧な防波堤を作るためには多額の投資を惜しまない」という発想ではないのです。

一方の東電は「事故は発生しない」「絶対に発生させてはならない」ことを念頭に安全対策を考えているので、津波が防波堤を超えた場合の次善の安全対策ということは念頭になかったのではないでしょうか。つまり東電の場合、原電とは異なり「事故は起きる」ことを前提として安全対策を考えてはいけない、という思想が組織に思考停止を蔓延させたようにも思えます。

もちろん、こうやって重大な事故が発生し、「原発でも重大事故が起きる」という事実を目の当たりにして「社会の常識が変わった」からこそ指摘できる点もあるかもしれません(いわゆる「後だしジャンケン」の発想)。当時の国民世論からみて「東電が『事故は起きる』ことを前提として安全対策をとることなど決して許さない!」との声を無視できなかったこともあったと思います。

しかし、リーマンショックにせよ、原発事故にせよ、「起きないと思っていたことが起きる」のであれば(最近はVUCAの時代と言われます)、どんなに社会的に批判を受けるとしても「起きたときにどうするか」という思想で経営リスクに向き合うことも大切であり、また不可能ではないことを、今回の刑事無罪事件を通じて認識しなければならないように感じます。

また、企業のリスクマネジメントの在り方を変えるためには、企業自身だけでなくステイクホルダーの意識も変えていかねばならないのかもしれませんね。

AOのコメント

以下の話だが、そんな論理が通用するのか?おかしな話! >「想定しがたい高さの津波対策に数百億を投じるということについて、当時の国民から納得は得られなかったのではないか」

>一方の東電は「事故は発生しない」「絶対に発生させてはならない」ことを念頭に安全対策を考えているので、津波が防波堤を超え>安全対策を考えてはいけない、という思想が組織に思考停止を蔓延させたようにも思えます。・・・・・ こんな思想があるか?可笑しな論理だ!これでは原発事故は起きる事になる、恐ろしい話。無罪なんてありえない、日本の裁判官は恐ろしい。東電は有罪!た場合の次善の安全対策ということは念頭になかったのではないでしょうか。・・・そんな馬鹿な論理が通用するのか

 


日本では「お風呂で溺死する」人が多い 入浴時の「ヒートショック」意外な原因と対策は

2019-11-15 | 報道・ニュース

日本では「お風呂で溺死する」人が多い 入浴時の「ヒートショック」意外な原因と対策は

お風呂イメージ 画像:Pixabay

 

 「これ以上同じ悲劇が起きない為に」として、入浴時のヒートショックへの注意を呼び掛けるツイートが拡散しています。

[@you_0204_777        

 これ以上同じ悲劇が起きない為に 皆さん拡散お願いします リプ返せません
妹の死因は入浴時の ヒートショックでの脳出血です
予防方法 ・入浴前後に水分補給 ・食後1時間は空けて入浴 ・入浴前に飲酒しない ・部屋と脱衣場の温度差をなくす ・入浴時ゆっくり暖まる ・浴槽から急に立ち上がらない]

 

 実際に起きたこととすれば、ツイート主さんのご心痛はいかばかりかとお察しします。辛い記憶を、あえて注意喚起につなげようとするお気持ちに敬服します。

 さて、ここで言及されている「ヒートショック」とは、温度の急激な変化で体に起こる悪影響のことです。もう11月も中旬を迎えていますが、これから冬の時期(12月から2月)に増え、入浴時の事故や病気の大きな原因になります。

 実は日本は、国際的に見て「入浴中の溺死や病気による死亡」が非常に多いことが指摘されています。なぜなのか、そして、どんな人が注意すべきなのか、対策をまとめました。

入浴中に亡くなる人は年間1万9千人との推計も

 最新の人口動態統計(H29)によれば、1年間で「不慮の溺死もしくは溺水」で亡くなった人は8163人となっています。川や海などでおぼれた人も含めての数ですが、交通事故(5004人)より大幅に多いというのは意外ですね。

 ただこの数字には、入浴中にとつぜん脳卒中を発症して、死因が「脳卒中」となった場合などは含まれません。

 2015年の厚労省研究班の調査では、病気なども含めた入浴中の死亡者数は年間で1万9千人以上と推計されています。その多くは、自宅の浴槽で起きていると考えられています。

入浴中の事故が多い日本 高齢者は特に危険

 国際的なデータと比較すると、日本は入浴中に亡くなる人がとても多いことがわかっています。

文献1より 各国男性の年齢別の溺死率(10万人当たり、WHO2000-02データより作成)

 年代別に、おぼれて亡くなる人の割合を示したグラフです。他の国に比べて日本が多く、特に、65歳以上を示す赤のグラフが突出して高いことがわかります。日本は浴槽に体を沈める習慣があることに加え文献1より 各国男性の年齢別の溺死率(10万人当たり、WHO2000-02データより作成)入浴によるヒートショックが大きな要因と指摘されています。

 冬場の寒い時期に、寒い脱衣所から熱い湯船へ急に移動すると、その刺激で血圧などが大きく変化します。それが失神や脳卒中、心臓病につながり、お湯におぼれたり、脱衣所で動けなくなったりして命に関わる場合もあります。

 高齢になると、温度の変化にあわせて血液の流れを調整するなどの働きが衰えます。そして日本では熱い風呂に長くつかるのが好きな人が多く、それが事故につながっていると指摘されています。

 特に気温が下がって入浴時との温度の変化が大きくなる冬場(12月~2月)は、入浴中に亡くなる方が最も多くなります。ご高齢のかたの場合は気を付けたほうが良いかもしれません。次に示す「安全な入浴のポイント」を参考にしてみてください。

画像:いらすとや画像:いらすとや

安全な入浴のポイント

画像:文献2より引用画像:文献2より引用

(1)入浴前に脱衣所や浴室を暖める

 温度の急激な変化はリスクになります。入浴前に浴室や脱衣所を暖めておくことが体への負担を減らすポイントです。お湯を浴槽に入れる時にシャワーから給湯すると、蒸気で浴室の温度を上げることができます。

※脱衣所などで暖房器具を使用するときは、火事や熱傷に気を付けてください。

(2)湯温は41 度以下、湯につかる時間は10 分までを目安に

(3)浴槽から急に立ち上がらない

 入浴中、体にはお湯による水圧がかかっています。急に立ち上がると、体にかかっていた水圧が無くなり、血管が急にひろがって意識障害を起こすことがあります。浴槽から出るときは、手すりや浴槽のへりを使ってゆっくり立ち上がるようにするのがおすすめです。

(4)アルコール飲用後や、食後すぐの入浴は控える

(5)入浴する前に同居者に一声掛けて、見回ってもらう

 入浴中に体調の異変があった場合は、すぐに対応することが重要です。ただ意識を失った場合はもちろん、気分が悪くなったりして自力では浴槽の外に出られない場合もあります。

 ご家族などと同居している場合は、入浴前に一声掛けてからお風呂に入ったり、家族が寝ている深夜や早朝の入浴は控えるなどの対策が勧められています。

(以上、文献2より抜粋 全文はこちら

(参考文献)

※1 入浴関連事故の実態把握及び予防対策に関する研究: 厚生労働科学研究費補助金循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究事業[堀進悟], 2014.3平成25年度総括・分担研究報告書

※2 消費者庁ニュースリリース「冬季に多発する高齢者の入浴中の事故に御注意ください!」平成29年1月25日

※3 愛媛産業保健総合支援センターHP「寒い季節のお風呂で起こる「ヒートショック」のキケンを防ぎましょう


•東電原発事故刑事裁判、旧経営陣3人に無罪判決。「忖度判決、不当判決」と怒る被害者、避難者

2019-11-03 | 報道・ニュース

 

 記事    ビッグイシュー・オンライン   2019年11月03日

 東京地裁(永渕健一裁判長)は9月19日、東京電力の旧経営陣3被告全員(※1)に対し、「無罪」を言い渡した。3被告は東京電力福島第一原発事故後、福島県大熊町の「双葉病院」から避難した患者44人を死亡させたなどの業務上過失致死傷の罪で強制起訴されていた。

※1 勝俣恒久・元会長、武黒一郎・元副社長、武藤栄・元副社長

02年に地震・津波の可能性指摘。 安全対策を講じなかった東電、「予見可能性なし」と無罪に

 開廷直後、東京地裁前に集まっていた人々に無罪判決が伝えられると、「不当判決だ」「誰も責任を取っていない」「司法は被告を免罪するな」と怒りの声が次々に上がった。

 3被告はこの日も含めて一度も記者会見せず、一貫して無罪を主張。東京電力ホールディングスは「刑事裁判についてコメントは差し控える。福島の復興に誠心誠意、全力を尽くす」とコメント。

 一方で、検察官役の指定弁護士(※2)は「忖度判決だ」、被害者の代理人を務めた河合弘之、海渡雄一両弁護士は「歴史に汚点を残す、ひどい判決だ。指定弁護士は控訴してほしい」と批判した。

※2 検察が不起訴処分後、市民による検察審査会を経た強制起訴裁判を行う場合、裁判所は検察官を担う弁護士を指定する

判決後、裁判所前では怒りの声が上がった(9月19日)

 指定弁護士は2002年に国の「地震調査研究推進本部(推本)」が大規模地震・津波の可能性があるとした「長期評価」を発表したが、東電は対策を先送りし、安全対策を講じなかった点を指摘。「3被告は津波を事前に予測することができ(予見可能性)、危険な結果を回避する対策を講じる義務があったのに怠った(結果回避義務)」とした。
子会社が試算した「最大で15・7メートルの津波が襲来する」という調査資料を得ながら、防潮堤の設置や原発への浸水を防ぐための水密化、発電機の高所設置など、できるはずの津波対策を講じなかった点も主張した。

 ところが判決では、推本の「長期評価」が国の中央防災会議の計画に取り込まれなかったことなどを根拠に、その信頼性や具体性を否定。「予見可能性はなかった」とした。結果回避義務については、指定弁護士の指摘を否定して「事故回避には原発の運転停止しかない」と限定し、「社会的な有用性が認められている原発の運転停止をすれば、地域社会に影響を与える」と判断。
「自然現象のあらゆる可能性に必要な措置が義務づけられれば、原発の設置、運転に携わる者に不可能を強いる」と原発停止の限界を認め、「仮に対策に着手していても、事故前に対策が完了できたかは明らかではない」といい、結果回避義務を認めなかった。

2度の不起訴後の「強制起訴」 東京地検の捜査資料が明らかになった意義は大きい

 本公判は2年3ヵ月前に始まった。住民からの告訴を受け、2度の検察の「不起訴」、2度の検察審査会での「不起訴不当」の裁決により、自動的に「強制起訴」されたもの。現実には「長期評価」の通りに津波が襲来し、多数の命が奪われ、今も避難生活を続けている人々がいる。「不起訴」とした東京地検が捜査の中で収集していた東電内部の資料が、指定弁護士の手で多数明らかにされた意義は大きい。

 筆者を含めて裁判を傍聴してきた人の多くが、原発の危険性、運転する企業の無責任さを改めて認識する公判になった。国民の生命や財産を守る義務を負い、東電に対策を強く求めていくべき国・原子力安全・保安院の弱腰も明らかになったが、この無罪判決により、政府が進める原発の維持や再稼働への拍車が懸念される。

 指定弁護士を務めた石田省三郎弁護士らは、専門家が学際的に議論してまとめた国の「長期評価」を裁判所が否定した点について、「科学的な問題に裁判所が介入していいのか」と指摘する。

 原発事故の被害者や避難者にも、さらなる苦しみを与えた。南相馬市から横浜に避難している唯野久子さんは「人をあんなに苦しめて、何年経っても元の生活に戻れない私たちがいて……、それでも被告は責任を取らなくてよいのか。裁判官はどこを見ているのか。私たちはもう、いっぱいいっぱいです」。

 東京高裁での審理継続を求める署名活動が福島県内外で始まり、忖度裁判へのピリオドに向けた市民の動きが盛り上がってきた9月30日、指定弁護士は無罪判決を不服として東京高裁に控訴した。刑事責任を問う審理は上級審で続くことになった。

(写真と文 藍原寛子)

あいはら・ひろこ 福島県福島市生まれ。ジャーナリスト。被災地の現状の取材を中心に、国内外のニュース報道・取材・リサーチ・翻訳・編集などを行う。 https://www.facebook.com/hirokoaihara