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安藤忠雄が語る未来 『未来をここからプロジェクト』

2020-10-27 | 今注目の話題

“暴走族的精神”安藤忠雄が語る未来「世界が変わる時、自分には何ができるか」2020/10/27

テレビ朝日が“withコロナ時代”に全社を挙げて取り組む初の試み『未来をここからプロジェクト』

本プロジェクトの先陣を切る『報道ステーション』では、10月26日(月)~30日(金)の5日間にわたり、「未来への入り口」というコンセプトのもと、多岐にわたる分野で時代の最先端を走る「人」を特集する新企画『未来を人から』を展開。

第2回に登場したのは、世界的建築家の安藤忠雄だ。

     “暴走族的精神”安藤忠雄が語る未来「世界が変わる時、自分には何ができるか」© tv asahi All rights reserved. “暴走族的精神”安藤忠雄が語る未来「世界が変わる時、自分には何ができるか」

大阪の下町で祖母に育てられ、家庭の経済事情から大学進学はせず、独学で建築家の道へ進む。

1976年に手がけた「住吉の長屋」が高く評価され、日本建築学会賞を受賞。その後も国内外問わずさまざまな建築を手掛け、イェール大学教授、コロンビア大学、ハーバード大学客員教授などを歴任する他、1995年には建築会のノーベル賞ともいわれるプリツカー賞を受賞など華々しい経歴を持つ。

しかし近年は体が病気に冒され、2009年にはガンが発覚し、胆のうと胆管、十二指腸を摘出。2014年にもすい臓がんが発見され、膵臓と脾臓を全摘出。

そんな苦難も乗り越え来年で80歳となる安藤に、建築物に込めた意思や未来を担う人々への思いを聞いた。

※YouTube完全版動画はこちら

ビデオプレーヤー: YouTube (プライバシー ポリシーご利用条件)

これまで数々の名建築を世に送り出してきた世界的建築家、安藤忠雄。さまざまな逆境と戦い乗り越えてきた彼は、80歳を目前にしてどのような未来を語るのか。

話を聞いた場所は、大阪府大阪市の児童向け図書施設「こども本の森 中之島」。安藤が設計し寄付をして、今年7月にオープンしたことで話題となった。「新聞や本を読まない子どもが増えているので、活字文化の大切さを伝えたい」との信念に基づく活動であるという。

     “暴走族的精神”安藤忠雄が語る未来「世界が変わる時、自分には何ができるか」© tv asahi All rights reserved. “暴走族的精神”安藤忠雄が語る未来「世界が変わる時、自分には何ができるか」 
     “暴走族的精神”安藤忠雄が語る未来「世界が変わる時、自分には何ができるか」© tv asahi All rights reserved. “暴走族的精神”安藤忠雄が語る未来「世界が変わる時、自分には何ができるか」

子どもが楽しめる絵本から、大人が読んでも楽しめる小説。学術書に漫画まで、蔵書は幅広い。

「おもしろいですよ。ここに来たら1日はじゅうぶんにいれますね。ここにある本は、どこで読んでもいい。外へ持っていってもいいんです」(安藤)

◆「コロナで人が集まれない。これは人間にとっていちばん大変なこと」


建築の世界においては、さまざまな思考の積み重ねの上に建物が出来上がるという。この図書館は、どのような考えの基(もと)に建てられたのか。

「(建築においては)考えていちばん良い答えをみつけないといけません。中之島は大阪のシンボルみたいなところ。そして、これからの大阪にとって大切なものはなにかというと、子どもなんです。我々がつくるのは宝箱みたいなもの。ただ箱と、本を用意しただけです。この施設にとっていちばんの宝はなんといっても利用する子どもたち子どもたちに元気よくなってもらうためにはどうしたらいいか、ということをまず考えました。そうしたら形はおのずとできてくる。

好奇心は大事です。いま子どもたちに元気がないのは、親がコントロールしすぎるからです。塾に行きなさい、一流大学に行きなさい、大きな企業に入りなさいというけれど、子どもが自分の考え方ができあがってくる時期は7〜8歳ですよ。みずから考えて行動できる大人になるにはこの大事な時期に本を読まないと。

自分の故郷の風景を心の中に刻むところをつくる。そして、あのとき見た本を読みながら、次の時代はどう生きたらいいかと考えられる子どもを育てることが出来れば、世界に通用すると思うんです」

さまざまな人という宝を輝かせるための箱として、あらゆる試行錯誤を重ねて建物をつくる。それが建築なのだと安藤はいう。

「建築というのは、歴史的にもエジプトの時代からギリシャとずっとありましたけれども、お互いに対話をする場所をつくる行為なんです。例えばギリシャのアゴラという広場は人間が集まって意見を交わす場所です。ローマにある広場も、みんなが集まって考える場所です。

いまはコロナで集まれないじゃないですかこれは人間にとって大変なことなんですコロナも大変ですが、集まって心からの会話ができないのがいちばん大変なことそれを乗り越えていくためには、気持ちの持ちようが大事です

いまだからこそ、人が集い、考え、心を重ねることが大切――。安藤は力強くこう語る。

「心のありようってあるじゃないですか。近所に対する愛情、犬や猫や生きているものへの愛情、老人に対する愛情。そういうものを含めて、あらゆるものに対して愛情がないと乗り越えていけない。生きていくためのモチベーションは愛情だと思うんです」

コロナ禍により、インターネットを通じたコミュニケーションが世界中で加速する昨今。ネットを通じて簡単に人と“つながれる”といいがちな世の中だが…。

スマートフォンというのは、愛情のない機械でしょう私も使ってるけど全く愛情が感じられない(情報が)ぱっぱぱっぱ出てくるけど、迷惑な機械ですよ(笑)。(情報をただ受け流すだけでなく、)ちゃんと体で感じることのできる子どもを育てないといけない。子どもにスマートフォン、コンピュータを与えすぎなんです。お互いにしっかりと対話しながら生きていく。そのなかで初めて愛情が出るんでしょう」

◆ “情熱”で壁を乗り越えてきた「人生はどうにかなると思っていました」

   “暴走族的精神”安藤忠雄が語る未来「世界が変わる時、自分には何ができるか」© tv asahi All rights reserved. “暴走族的精神”安藤忠雄が語る未来「世界が変わる時、自分には何ができるか」

1941年に大阪で生まれ、祖母に育てられた安藤。学歴やコネはなかったが、下町の“愛情”と“情熱”が彼を建築家の道へと向かわせた。

「中学2年生のとき、自分の家を2階建てにしたんですよ。近所の大工さんが来て、働く姿に感動しました。昼飯も食わずひたすら働く。なるほど、ひたすら働けばなんとかなるんだな、と思いました。全力で走ることが肝心なんだと、そのときに思った。その大工さんの仕事を見て、建築の設計も面白いと思ったので、全力投球で自分で勉強しようと思ったのですが、この国はそれが難しかったですね。

学歴がない、社会基盤がない、周り(に友達)もいない、知的体力も低い。中学校の成績が3、4番くらいだった。下から勘定して3、4番(笑)。専門学校も大学も出ていないから、建築家になるためにはまず2級建築士の試験を受けないといけない。昼飯も食わずに一心不乱に勉強しました働きに行って、昼の休憩時間1時間勉強したら通りましたよ365日、1日1時間あるわけですから1回で通りました

1級建築士はその3年後にあり、この時も昼飯は食わない。みんなから『変わった奴や』って言われたけれども、自分の信念を貫かないと生きていけないと思っていましたから、気にならなかった。昼飯は食わない。これも1回で通りました」

    “暴走族的精神”安藤忠雄が語る未来「世界が変わる時、自分には何ができるか」© tv asahi All rights reserved. “暴走族的精神”安藤忠雄が語る未来「世界が変わる時、自分には何ができるか」

安藤の建築には、圧倒的な意思がこもっている。

実質的なデビュー作となったのは「住吉の長屋」。中庭には屋根がなく、雨が降るとトイレへ行くにも傘を差す必要がある。しかし、中庭を通して差し込む太陽の光や風が“自然のある生活の豊かさ”を教えてくれる。この作品は世界を驚かせ、日本建築学会賞を受賞した。

私は“暴走族”やと言っているわけですから、はみ出ているわけですけど、ルールは守るルールは守るけど、はみ出ている精神がはみ出ているわけです。大阪生まれの大阪育ちで大阪を拠点に仕事をしていますが、大阪の人には嫌われている。『あいつははみ出ている。勝手なことばかり言ってる』と。だけど、実はルールは守っていて、責任感はある。いちばん大事なのは責任感なんです。

これをどうしてもやり遂げたいという想い、それを支えていく“知的体力”と“肉体的体力”の両方を鍛えて、維持していかないといかんという思いがあります。難しいことはいっぱいありましたよ。うまくいかない。でも、そう言いながもなんとか乗り越えていく。山を乗り越えたらまた山が来る。また乗り越えたらまた山が来るんですから。前に山が立ちはだかるというのは慣れていますから人生はどうにかなると思っていました

目の前の山を乗り越えていくために必要なもの。それは“情熱”だ。

「好きでなかったら、なかなか前に進まないからね。いまは職業を自由に選べるじゃないですか。でも30年くらい前までは、あまり自由に選べなかったんですね。(成功するためには)一流大学に行くというルートが決まっていたから。昔はそのルートをなかなか乗り越えることができなかった。でもいまは乗り越えていけますから。その為には自分がやっている仕事を徹底的に勉強しないといかん」

◆これからは「自分で人生をプログラムしないといかん」


さらに安藤は、未来を担う人たちに対しても“情熱”が必要だと語る。

「昔は一流大学・一流企業に行って、60歳くらいで定年になって…と言ってきたけど、いまは人生95から100歳まで生きるわけですよ。そしたら自分がどう生きるかということを、自分でプログラムしないといけません。自分で考えるのが下手なんですよ、日本人は。だから年功序列、終身雇用が非常にうまくいってたわけですが、いまは違いますから。

自分で人生をプログラムしないといけません。そしたらね、けっこう面白いことがいっぱいあります。たとえば私は学歴がない、社会的な基盤がないといいながら手を差し伸べてくれる人もいるし、仕事を頼んでくれる人もいる。私のことを面白いと思ってくれる人もいて、いろいろな人たちと出会いながら、自分なりにやってきましたから。みんなにチャンスがあるんですよ。

いまは全ての人にチャンスがある。経済力のない方にもチャンスがあるその人たちは、自分なりの人生のつくり方を考えなければいけないそりゃあ頭がいりますよ

“情熱”を持ち、人生を自分でプログラムすることで、壁を乗り越えられるのだ。

「人生、面白い。なにかが起こる。起こったら考えると。考えていくとその先には必ず楽しいことがあるんですから。例えば病気にもなるし、会社がうまくいかないこともあるし、いろいろうまくいかないことがいっぱいあるでしょうけど。先はいいことあるぞと思えば、なんとかやっていけると思っています」

◆世界中が変わっていくときに、自分はなにができるのか


79歳の安藤が見据える未来とは――。

「ガガーリンが言ったように地球は青い。 “地球はひとつ”ということを考え続けて未来を見据えなければいけない。日本人はもっと科学、芸術、技術の分野をサポートして、世界に冠たる科学者、技術者、アーティストが多く存在する社会を目指して頑張らないと。それぞれが自分でものを考えることができるように誘導しながら、豊かな社会へと牽引していくリーダーたちを育てなければいけません。それを政府がサポートしなければならないのですが、(いまの政府は)そこをカットしているんですね。しっかりサポートしていかないと、次の時代はないと思いますよ」

「コロナは大変です。スペイン風邪など、もっと前から疫病はあるわけですが、この大変さをどう乗り越えていくのか。それは人間の知的体力の問題です。いくら日本だけがブロックしても、アメリカだけがブロックしてもダメなんです。

地球はぐるぐるみんなが回っているわけですから、どれだけ頑張って日本だけが感染を収束させても、終わらない。やっぱり地球はひとつ、地球は丸いんだという立体感覚をもって生きてほしいと思いますね

ブラジル、アメリカ、ロシアや中国と、国が分断しているじゃないですか。みんな自国主義。どこに乗っているんですか? 地球船という同じ船に乗っているんですよ。お互いに話し合える部分と、自分のところが頑張れる部分を認め合えば、もう少し分断されないで済むだろうと思います。地球がダメになったら、みんななくなってしまうわけでしょう」

分断された壁の向こう側の相手に対しては、どのように語りかければよいのだろうか。

「これは言葉じゃないんです。分断されることはいっぱいある。私はフランスとイタリアに行って仕事をしています。そこでは自分の情熱と気持ちを心から表さないと、相手はわからない。言葉で通じない心をどう伝えるかというトレーニングをしないといけません。

それは、愛情という力しかない。このコロナはものすごい時間がかかると思いますよ。世界中が変わっていくだろうというそのときに、自分はなにができるのかということをそれぞれが考えなければいけないと思う

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「怒り」が制御不能・脳損傷 脳卒中や脳外科手術の後などにも生じます

2020-10-20 | 報道・ニュース

事故による脳損傷で3割は「怒り」が制御不能に…注目される根治療法とは 

周知されない症状・日刊ゲンダイ ヘルスケア
 
 
写真はイメージ© 日刊ゲンダイ ヘルスケア 写真はイメージ

交通事故などで頭を打って脳に損傷を負った後、感情がコントロールできなくなるケースは少なくない。特に、「強い怒り」に対しては、これまで世界的にも手の打ちようがないとされていた。しかし、東京歯科大学准教授で精神科医の宗未来医師が開発したアンガーマネジメントが、脳損傷後の激しい怒りの制御に奏功した。この研究結果が9月に開催された日本精神神経学会学術総会で発表され、注目を集めている。

「交通事故などで深刻な外傷性脳損傷を受けた方の3割に激しい怒りが生じ、10年以上経ってもその問題が解消されないケースは少なくないのです」(宗医師=以下同)

バスが時刻通りに来ないからとバス停の標柱を蹴り倒し警察へ通報された。家族の態度が気に入らないと壁を蹴り穴を開けた。店員のささいな一言に激怒し暴言を吐いた……。すべて実例だ。

「そのような脳損傷患者は、一見普通の人と変わらないのに、怒りが爆発しやすい、頻繁にイラつく、いつまでも恨みが消えないと訴え苦しみ続けます。これは外傷だけでなく、脳卒中や脳外科手術の後などにも生じます。結果、対人関係が悪化し、離婚を切り出されたり、職場にいられなくなって患者さんは孤立に追い込まれがちです。脳損傷後の怒りには、従来のアンガーマネジメントでは歯が立たず、薬物療法の効果も限定的で副作用も出やすいのです」

■1回30分、全8回のプログラム

脳損傷後の怒りは脳の器質異常のために起こると医学書にも載るほどで、根治は半ばあきらめられていた。しかし宗医師らは自らの治療経験を通じ、脳損傷後の高次脳機能障害でも心理的アプローチで怒りのコントロールは可能と確信。独自の認知行動療法プログラム開発に至った。

プログラムは週1回30分のセッションを全8回で構成されている。治療の前半は、患者自身がどういうプロセスで怒りが生じたかを、時系列に見える化して分析する「感情すごろく」を練習する。これを繰り返すことで、怒りの構図を客観視することが可能になる。

「怒りを含め激しい感情の大半は、実は二次的に発生したフェイク感情です。その奥底には、感じるのに苦痛を伴うリアルな感情が存在します。たとえば交通事故で障害を負い、今まで通りの人生を送れなくなり、それを周りに理解してもらえない悲しみや不安の気持ち、これが一次感情です。でも、これがあまりにつらいと、人は怒りなどのフェイク感情に目をそらし逃げがちです。そこで治療後半では、怒りの背後に潜在する一次感情を直視する練習を行います。それができると、役割を失った怒りはもはや無意味となり、意識にのぼらなくなります」

40代の男性は、20代の交通事故後から怒りが制御できなくなり、一度キレると頭が真っ白になるほど我を失っていた。

当初は、感情すごろくでも「ワケが分からない」と混乱していたが、練習を重ねる中で「いつもなら激怒する場面で悲しい気持ちを感じられた」「深い感情に気づくことで、不安やエンドレスに繰り返していた自責的な苦悩も減った」と変化し、やがて怒りを感じることがなくなった。

「この方法は、従来のアンガーマネジメントのような生じた怒りを抑える対症療法ではなく、怒りそのものを生じなくさせる根治療法です。つまり、怒りは脳の損傷が直接原因ではなく、脳損傷を抱えて追い詰められたことにより生じた不健全だが正常な心理反応にもかかわらず、それを『脳の器質異常が原因だから治らない』と患者さんは信じこまされてきた可能性すらあるのです」

現在、宗医師らは並行して在籍する慶応義塾大学、および脳画像研究では国内最高峰とされる放射線医学総合研究所との共同研究を通じて、効果検証や病態解明を進めており、プログラムへの参加希望者を募集している。関心のある方は、東京歯科大学市川総合病院精神科の宗医師に連絡を(通院中の場合、主治医の許可と紹介状が必要)。

 

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♯安倍政権継続内閣・菅総理

2020-10-08 | 報道・ニュース

菅首相が自賛するふるさと納税制度が「セコい日本人」を大量に生んだ 

「ふるさと納税」制度を導入した結果…(イラスト/井川泰年)© マネーポストWEB 提供 「ふるさと納税」制度を導入した結果…(イラスト/井川泰年)

 菅政権がスタートした。これからはコロナ対策と社会経済活動を両立していく舵取りが重要となってくるだろう。これまでの菅義偉氏の足跡を振り返りつつ、今後はどのような課題が待ち受けているのか、経営コンサルタントの大前研一氏が考察する。

 * * *

 菅義偉内閣の顔ぶれは、全くサプライズも新鮮味もなく、がっかりした。安倍晋三前首相の弟、秘書として仕えた代議士の息子、官房長官時代の官房副長官、同じ神奈川県選出の国会議員、初当選同期など、いわば「義理人情内閣」である。

 とはいえ、菅内閣への期待は高い。マスコミ各社の世論調査によると、内閣支持率は74~62%に達している。各地の知事からも「秋田出身の苦労人で、地方のことをよくご存じ」(静岡県・川勝平太知事)、「地方行政を十分知り尽くしている方」(長野県・阿部守一知事)、「地方創生の推進へ力添えをしてもらえる」(長崎県・中村法道知事)といった歓迎の声が報じられた。

 しかし、多くの人は誤解している。周知の通り、菅首相は安倍前首相の女房役として二人三脚でやってきた。つまり、アベノミクスの失敗をはじめとする安倍政権の「負の遺産」を7年8か月にわたって積み上げてきた人物であり、「安倍総理が進めてきた取り組みを継承していくことが私の使命」などと言っている。

 だが、安倍政権の負の側面を検証、反省、修正しなければ日本が21世紀の世界で繁栄することはできない。

 最もダメージが大きいアベノミクスの間違いは、20世紀の延長線上で考え、政府が市場経済に積極的に関与するニューディール的な政策を8年近くも続けたことだ。日本政府はデジタルディスラプション(デジタルテクノロジーによる破壊的で創造的なイノベーション)やDX(デジタルトランスフォーメーション/デジタル技術で人々の生活をより良い方向に変化させたり、既存のビジネス構造を破壊したりして新たな価値を生み出すイノベーション)などの新しい潮流に対応できる準備を整え、組織運営体系を大きく変えねばならなかったのに、20世紀を引きずった安倍前首相が長居しすぎたため、世界から8年も遅れてしまったのである。

 また、菅首相は「縦割り行政の打破」を唱え、それを官房長官時代に実現したことを自慢している。しかし、その事例は大雨時に下流の水位を下げるためのダムの事前放流、楽天を巻き込んで進めている携帯電話料金の引き下げ、農産品輸出の倍増、鳥獣被害対策と所得向上のためのジビエ活用の支援など、涙が出るほど矮小だ。もちろん、それらも重要なことではあるが、各省の担当課長に任せればよいレベルの話だろう。

 さらに菅首相は、総務相時代に官僚に大反対されながらも「ふるさと納税制度」を立ち上げ、今では年間約5000億円まで拡大した、と自画自賛している。だが、これは複雑骨折した大怪我に絆創膏を貼るようなものであり、そんな一時しのぎの方法で日本の歪んだ税制の問題を解決できるわけがない。しかも、お得さなどを競う返礼品競争と化したふるさと納税は“さもしくてセコい日本人”を大量に生み出しただけである。

 そもそも菅首相は、地方自治の根幹が理解できていない。かねて私が提言しているように、都道府県や市区町村は、憲法第8章の定めにより、単に「国から業務を委託された出先機関(地方公共団体)」でしかない。つまり、日本の地方に「自治」はないのである。

 だから、どれだけ予算を注ぎ込んでも地方は創生するどころか衰退し続けているのだ。憲法第8章を改正し、地方が経済的に「自立」できるようにして、現在の中央集権の統治機構を根本から変えなければ、日本は再生できないのだ。しかし、菅首相にそういう認識は全くない。

 では、菅政権は今後どうなるか? 当面は新型コロナウイルス対策と社会経済活動を両立していく舵取りが重要となる。しかし「Go Toキャンペーン」や「ワーケーション」といった陳腐なアイデアしか出てこないようでは、遠からず行き詰まるのではないか。キャッチフレーズは「国民のために働く内閣」だが、ならば「これまでの内閣は誰のために働いていたのか?」「安倍内閣はお友達のために働いていたのか?」と突っ込みたくなる。

 自民党総裁としての任期は来年9月までなので、野党が混乱し、内閣支持率が高いうちに衆議院の解散・総選挙に踏み切れば、自民党が圧勝するかもしれない。その場合は総裁選で菅首相が再選されるだろう。

 ただし、今回の総裁選で見送りとなった党員投票を行なうと、他の候補者が勝つ可能性もあると思う。今は「ポスト菅」候補として加藤勝信官房長官、河野太郎行政改革担当相、小泉進次郎環境相、茂木敏充外相らの名前が挙がっているが、よく言われるように政界は「一寸先は闇」だから、全く違うルートから有力候補が出てくるかもしれない。

【プロフィール】

大前研一(おおまえ・けんいち)/1943年生まれ。マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社長、本社ディレクター等を経て、1994年退社。現在、ビジネス・ブレークスルー代表取締役会長、ビジネス・ブレークスルー大学学長などを務める。最新刊は小学館新書『新・仕事力 「テレワーク時代」に差がつく働き方』。ほかに『日本の論点』シリーズ等、著書多数。

※週刊ポスト2020年10月16・23日号

 

[追伸]

見えてきた♯安倍政権継続内閣・日本学術会議メンバーの「任命拒否」問題と説明の問題

特定の政治目的を実現するための人事介入による官邸支配の強化

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安倍首相病気辞任劇の正体

2020-10-08 | 報道・ニュース

            安倍首相病気辞任劇の正体とは 「コロナ対策尽力」イメージが隠したもの

安倍首相病気辞任劇の正体とは 「コロナ対策尽力」イメージが隠したもの

(47リポーターズ)

 新型コロナウイルスに感染したトランプ米大統領の病状が、世界的な関心を集めている。大統領選のさなかとあって、主治医が語る病状や治療の内容がどこまで正確なのかについても、さまざまな論評がなされている。そんな報道に接しながら、それでも筆者は米国の状況をある意味うらやましく思う。そうだ、これが「当たり前」なのだ。為政者が病に倒れた時、病状について医学的な立場からの見解が示され、公務の継続が可能かどうかの判断材料が広く提供されることが。

 もはや誰も関心を持っていないようだが、ここで改めて、この夏の日本の政界の喧騒(けんそう)を振り返ってみたい。あの「前首相の病気辞任劇」とは、一体何だったのか。(ジャーナリスト=尾中香尚里)

 ▽体調不良説と同時に振りまかれたイメージ

 安倍晋三前首相が辞意表明の記者会見を行ったのは、わずか1カ月あまり前の8月28日のことだった。会見で安倍氏は「国民の皆様の負託に自信を持って応えられる状態でなくなった」と、時に目に涙を浮かべながら語った。

 その少し前から「安倍氏の体調不良」が、なぜか官邸サイドから盛んに喧伝されていた。通常は首相の健康不安を必死で打ち消すはずの官邸サイドからの情報発信が目立ったことは、ある意味異様だった。体調不良説と同時に「147日連続出勤」「少し休んでいただきたい」など「国民のために不眠不休で働く首相」イメージが振りまかれ始めた。

 28日の辞意表明会見では「秋から冬にかけての新型コロナ対策」も同時発表された。安倍氏の「置き土産」と言えた。対策がワクチン開発に頼った内容の薄いものだったことは、会見翌日の29日に公開した小欄「辞任会見で語ったコロナ対策は大丈夫なのか」で指摘した。内容はともかく、この対策発表が「最後までコロナ対策に尽力した首相」を演出する効果的な小道具になったのは確かだ。

 会見が終わった途端「安倍さんお疲れさま」と、まるで名アスリートの引退会見のような空気が出来上がった。直前まで3割を切る勢いだった内閣支持率は、多くの世論調査で10ポイント以上跳ね上がった。

 病気とあらば回復を願うしかない。しかし、そんな気持ちの一方で、どこか鼻白んでしまう思いを、筆者は抑えることができなかった。

 その安倍氏は今、国民の気持ちをくんで懸命に闘病しているのだろうか。

 ▽「点滴薬でほぼ回復」にわく疑問

 辞意表明からちょうど1カ月後の9月28日、安倍氏は東京都内で開かれた自身の出身派閥、細田派の政治資金パーティーに出席した。公の場への出席は、辞任後初めてだった。「一議員として菅(義偉)政権を支えながら、日本のために頑張りたい」などとあいさつし、自身の体調について「だいぶ薬が効き、回復しつつある」と述べた。

 報道によれば安倍氏の体調は、新しい点滴薬の効果でほぼ回復したとされる。「外国への特使などとして菅政権を支えるのでは」「趣味のゴルフに近く出掛ける計画も」。早くも公私ともども「辞任後の活動」が取りざたされている。

 ちょっと待ってほしい。

 安倍氏を「回復」に導いたというその点滴薬は、各国が開発に躍起となっている新型コロナウイルスのワクチンとは訳が違う。すでに存在していたと考えるのが自然だ。仮に辞任直前の時点でまだ使用可能でなかったとしても、使用できる見通しは立っていたのではないか。そんなに効果の高い新しい薬があるなら、辞任を避けるために、その薬の使用を含む積極的な治療はできなかったのだろうか。

 通常国会は終わったばかり。国会は事実上の夏休み状態だった(コロナ禍において会期延長をしなかったことの是非論は、とりあえずここでは置く)。落ち着いて治療するには良いタイミングだったはずだ。仮に治療薬の処方によって一時的に公務に支障が出る恐れがあったのなら、ためらうことなく臨時代理を置けば良かったのではないか。実際、麻生太郎副総理兼財務相は、それを安倍氏に進言したのではないのか。

 ▽実は首相として国会答弁できた?

 安倍氏が首相という公務を続けられる可能性について、あらゆる観点から検討した結果、どう考えても「国民の負託に自信を持って応えられない」(安倍氏)という判断があって辞任の決断に至ったのか。そう判断した客観的な医学的根拠は何だったのか。それを検証する十分な情報は、政権側からついぞ提示されなかった。

 安倍氏が辞任してから、国会はわずか3日間しか開かれていない。後任の菅義偉首相の所信表明演説すら、まだこの後半月以上先になる公算だ。そのこと自体、本来認められるものではないが、百歩譲ってこの状態を「もし安倍政権が続いていたら」に置き換えれば、現在「病から回復している」安倍氏は今、普通に首相として国会で答弁できたはずではないのか。

 「たられば」の話ではない。少なくとも外的状況が、それを疑わせている。

 日本は今コロナ禍の渦中にある。戦後最大級の国難である。確かに安倍氏も病に苦しんだかもしれない。だが、それに勝るとも劣らないほど、数多くの国民が直接の病によって、あるいは社会や経済が壊滅的な打撃を受けたことによって、そしてそれらに対する政府の対応の遅れによって苦しんでいる。夏以降の自殺者増加のニュースもたびたび聞かれるようになった。

 こんな状況下で首相の立場にある者は、よほどのことがない限り逃げることは許されない。どうしてもその任から離れるというなら、それ相応の理由がいる。一国のリーダーの進退の決断とは、それだけ重いものではないのか。安倍氏やその側近は、その重みを一体どれだけ感じていたのか。

 ▽結局投げ出し批判逃れ?

 一時の「安倍さんお疲れさま」機運が去った今、もう一度冷静にこの夏の安倍氏やその周りの動きを振り返ってみて、筆者はやはりこう疑わざるを得ない。

 安倍氏はコロナ問題において目に見える成果を誇示できず、国会で野党に対応のまずさを指摘されるばかりの状況に嫌気が差し、またも政権を投げ出したのではないのか。そして、第1次政権時のような「投げ出し批判」をかわすために、自らの持病を都合よく利用しただけではないのか。

 米国ではトランプ氏の退院をめぐり、主治医が記者会見で記者団からさまざまな質問をぶつけられている。発されている情報が正確かどうかは、ここでは脇に置く。トランプ氏が政治的アピールのために病状に関する情報をコントロールしていないかどうかを、報道を通じて国民がチェックする機会があるという、そのこと自体に意味があると考える。何しろ日本の場合、そんな機会すらなかったのだから。

 「病気だから」と首相を退任して、国会での答弁という「面倒」から逃れる。にもかかわらず外遊やゴルフといった「自分の好きなこと」には「回復したから」と喜々として取り組む。そんな立場の使い分けは、安倍氏には許されない。

 ▽参考人として国会に臨め

 安倍氏の退任から2日後の9月18日、家庭用磁気商品の「オーナー商法」を展開していた「ジャパンライフ」の元会長らが、詐欺容疑で一斉に逮捕された。元会長が、首相当時の安倍氏が主催する「桜を見る会」に招かれたことを顧客勧誘に使ったことが問題化したのは記憶に新しい。発足したばかりの菅政権を揺るがしている「日本学術会議」の新会員候補任命拒否をめぐる問題でも、政府が任命前の選考過程にかかわっていたことは、安倍政権当時からあったことが明らかになりつつある。

 「病気が回復した」と言うのなら、安倍氏は外遊よりもゴルフよりもまず、参考人として国会に臨むべきだ。語らなければならないテーマは、山のようにあるはずだ。

 ここまで書き上げたところで、小さなニュースが一つ飛び込んできた。安倍氏が6日夜、自民党の二階俊博幹事長や岸田文雄前政調会長らと、都内の中国料理店で会食したという。二階氏が企画した安倍氏の慰労会らしい。

 もうため息しか出ない。

https://blog.with2.net/link/?id=1219620

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柿渋にコロナ不活化させる効果

2020-10-03 | 報道・ニュース

柿渋にコロナ不活化させる効果、奈良県立医大が確認…カギは濃度とウイルスとの接触時間

2020年10月03日 読売新聞

柿渋にコロナ不活化させる効果、奈良県立医大が確認…カギは濃度とウイルスとの接触時間

研究に使用されたカキタンニンの粉末(橿原市で)

 渋に新型コロナウイルスを不活化させる効果があることを確認したと、奈良県立医科大の伊藤利洋教授(免疫学)と矢野寿一教授(微生物感染症学)の研究チームが発表した。基礎的な研究の段階だが、アメやガムのような食品に仕上げることも想定している。

 発表によると、試験管内でウイルスと唾液を混ぜて人の口腔(こうくう)内と似た環境をつくり、そこに高純度で抽出した柿渋の主成分であるカキタンニンを加え、10分後に感染力のあるウイルスの量を測定した。その結果、1万分の1以下までウイルスの量を減少させた。カキタンニンを希釈すると、効果が薄れることも確認できた。

 柿渋は古くから防腐や防水効果のある塗料として使われてきた。カキタンニンは、インフルエンザウイルスを不活化させる効果もすでに確認されている。ウイルスの表面のたんぱく質にカキタンニンが付着することで、感染力をなくし、体内の細胞への侵入を防ぐ仕組みだ。新型コロナウイルスでも同じ要因が推測されるという。

 伊藤教授らは、不活化させるにはカキタンニンの濃度とウイルスとの接触時間が重要であると指摘。すでにカキタンニンを含むサプリメントなどが市販されているが、既製品を食べるだけでは、ウイルスを減らすことは期待できないとしている。

 伊藤教授は「効果は証明された。多くの人に還元するため、適切な濃度やウイルスとの接

時間を検証していきたい」と述べた。

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「第五のがん治療」と言われる「光免疫療法」が世界に先駆け、日本で実用化される

2020-10-01 | 報道・ニュース
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がん 新たな治療法の薬「光免疫療法」世界初承認で開発者会見

光に反応する化学物質と組み合わせたがんの薬を、患者に投与したあと光を当ててがん細胞を攻撃するという新たな治療法の薬が、先週、世界で初めて承認されました。
この薬を開発した研究者が記者会見し「がん治療のもう1つの選択肢になってくれればよいと思う」と期待を示しました。

アメリカの国立衛生研究所に所属する小林久隆主任研究員は、がんを狙い撃ちにする抗体を使った薬に、光に反応する化学物質を組み合わせたがんの治療法を開発し、先週、世界で初めて他の治療が難しい頭けい部がんの治療薬として、日本国内で承認されました。

29日、小林主任研究員と薬を開発した製薬会社「楽天メディカル」の三木谷浩史会長らが、東京都内で記者会見しました。
薬は、患者に点滴で投与され、体の外から近赤外線のレーザー光を当てると活性化されてがん細胞が破壊される仕組みで「光免疫療法」と呼ばれています。
小林主任研究員は、この治療法を数十年研究してきたということで「患者の手に届かなければ意味がなく、日本で承認されたことはうれしいかぎりだ。がん治療のもう1つの選択肢になってくれればよいと思う」と述べました。

また三木谷会長は「他の化学療法との組み合わせも可能になると考えている。なるべく早く患者に届けたい」と期待を示しました。

この薬は今後、医療保険を適用する手続きが進められますが、早期に承認されたことから販売された後も安全性や有効性について検証が進められます。
https://blog.with2.net/link/?id=1219620
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