欅並木をのぼった左手にあるお店

ちいさいけど心ほっこり、French!テイストなお店♪

パーティーがはじまる前

2012-02-05 | une nouvelle
"アンや、これでは夜のパーティーまでにおもてなしの料理ができなくなってしまうわ。
お肉を切る、大きな刃物を納屋からとってきておくれ。"
"おばあちゃん、あの納屋はうす暗くて入りたくないけど、パーティーのためだものね。行ってくるわ。"
アンは家の離れにある、古びた納屋にひとりで入っていきます。
天井から下がった電球は壊れていて、小さな窓から入る光をたよりに、アンは大きな刃物を探します。
やがて、棚の奥に埃をかぶった木箱を見つけて。
アンが喜びの声をあげたのもつかのま、後ろにあやしく忍び寄る影が・・。
"お嬢さん、これから何の料理を作るのかな?"
びっくりして、アンが振り向こうとすると、獣の匂いがします。
"煙突からのおいしい匂いに誘われて、ここまでやってきたら、おいしそうな女の子が背中を見せて立っている。"
オオカミは後ろからアンの耳もとに近づいて、
"なにを取りにきたか知らないが、残念だったね。ここがお嬢さんの棺桶だ。
俺さまがおいしくいただいてあげるから、安心しなよ。"
しかし、身を縮めていたアンが、大きく息をついて、ゆっくりと。
"残念なのはオオカミさんの方よ。わたしを見るより自分の足もとを見てね。"
はっとオオカミが下を向いたのと同時に、アンは後ろの足場を蹴ります。
体勢を崩したオオカミの下に待っていたもの。それは、木こりのおじいさんが使う何本もの大きなのこぎりでした。
しかも、丁寧な仕事をするおじいさんは、いつものこぎりの歯をといで、地面で傷つかぬように、歯を上にむけて並べていたのです。
納屋から戻ったアンは台所で忙しいおばあちゃんに、
"おばあちゃん、今日の料理のお肉は足りてる? 
でも、あんなことを言うオオカミだもの。食べたらみんなのお腹がかわいそうね。"


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