もうすぐ桟橋から船が出る時間

もうすぐ桟橋から船がでる時間。
待合室を離れ、船のそばでなにやらかわいい地図を眺めるご婦人。
その地図が子供が書いたようなヘンな紋章とか書いてあって、それでいてポップな色あい。
あまりにも気になって、ちょっとたずねてみた。
かわいい地図のようなもの、素敵ですね!
ありがとう。
大きなサングラスのご婦人はほほ笑んで。
これはね、主人と子供たちが書いてくれた宝の地図なのよ。
よく見ると、家のような間取り図の外に宝石のような輝きが。
これを帰ってから見つける予定なの。
楽しみですね。
そう。
ご婦人は海の方を眺めながら、
わたしね、仕事の関係で家にいる時間が短いのよ。でも、こうして手紙を送ってきてくれるのはとてもありがたいわ。
すばらしい家族♪
ほんとに、わたしにはもったいないくらい。今日わたしの誕生日なの。だからプレゼントをかくしててくれてるのかなぁ。
家に帰るのが待ち遠しでしょう？
そうね。でも、こんな家族を離れて仕事をしてていいのかなぁって、時々思うのよ。
ご婦人の憂い顔に、
そう、ですねぇ・・。
でも、これはね、今の主人から教わったことなんだけど、毎日の中でしあわせは寄り添ったり離れたりするけど、心が必要としているかぎりしあわせはいなくなったりはしないからって。いろんなことを流れに任せて、わたしはしあわせを大切にできる気持ちでいればいいんだって。
ステキな考えですねぇ。
なにか不思議なのよ。そんなことを考えて毎日を送ってると、そんな生活になっていくのよ。魔法みたいに♪
なんかいいことを聞いてうれしいです。
わたしもうれしいわ。こうして、地図がステキなあなたに出会わせてくれたんだから。これは宝物の地図だけど、わたしにはこの地図が宝物のような気がしているのよ♪