サンマルタンの看板娘

サンマルタンにある食器屋さん。そこの食器はすべてオーナーの趣味でなりたってる。
カラフルポップなお皿からメルヘンチックなティーカップまで。オーナーはいまだに魔法を信じてるんだって。
たくさんの客が訪れるその店の秘密は、ショーウインドの中に。
ちいさい窓のようなショーウインドに、オーナーがいま一番気に入ってる食器をおかれてる。
でも、秘密はそこじゃない。その横にちょこんと座った白い子ネコ。
いつ頃からか迷い込んだこのネコが、客を増やしているとかいないとか。
子ネコはそんなことおかまいなしにのんきにあくびなんかしてて。
食器とネコのコラボが客の気持ちをほっこりさせるらしい。

今日もイエローティーカップとかわいい子ネコ。若い女性たちがなにやら楽しそうにショーウインドをのぞいてる。
その女性たちが店内に入ってきて、オーナーのことを聞いていて。
バイトの男の子がオーナーを呼びにいって、そして、話し合い。
じつは彼女たち、有名な雑誌の記者さんなんだって。
ぜひお店を特集したいって。でも、オーナーはこれ以上忙しくなっちゃ困まるなぁって顔。
もったいないですよぅとバイトの男の子。
頭を抱えて、外で一服。
すると、子ネコがオーナーの方を向いてうなずいてる。そして、ひと鳴き。
気のせいかと、よく見ると、また同じ行動を。
不思議に思いながら、取材を引き受けることにしたんだ。
そして、雑誌が出たら、案の定たくさん客がやってきた。
ネコもショーウインドの中でまるで動物園状態。
みんなが疲れきっているある日、ひとりの紳士が店にやってきて。
驚いたことに紳士と白ネコはすでにお知り合い。
子猫の親の飼い主らしい。そして、食器アーティストなんだって。
不思議な模様を書き入れるのが仕事で、その模様がまたシャレてて心ほっこりさせるらしいのだ。
紳士もオーナーの趣味に共感して、カラフルな食器にデザインを書き入れることになった。
ちいさな町の食器屋さんは、一躍有名になっていって・・。
アジなデザインの食器は飛ぶように売れていったんだって。

お店の紹介はこれぐらいにして・・。
店のにぎわいはそれからも絶えることはなかったんだ。
いい看板娘だねぇ♪　いそがしいさなか、外で一服しながらオーナーの浮かべるほほ笑み。
その表情はこの店のしあわせのシンボルだったんだよ。