欅並木をのぼった左手にあるお店

ちいさいけど心ほっこり、French!テイストなお店♪

橋のたもとに置いてきた過去

2012-06-08 | une nouvelle
ちょっと馬車を止めて下さらない。
その声に橋の真ん中で蹄の音はとまり、
扉をひらいて下りてきたのは、黒いドレスの夫人。
外灯がともる橋のたもとにいってなにかを置いてきたのです。
もうよろしいのですか?
訪ねる馭者に目をやって、
いいのよ。わたしの思いは通じるはずだから・・。
黒い裾が扉の中へ消えると、ふたたび蹄の音がなりはじめ・・。
かなたへと消えていくのです。
そこへ夜更けを告げる聖堂の鐘。
橋のたもとには輝くものが残り・・。
はるか夜空の星と同じような輝きがいつまでも。まるでこの世界にいない愛する人へのメッセージのように。
過去のしあわせな思い出が夜の闇にゆらめいているのです。

輝きの共鳴のなかに聞こえてくるもの。
それはありし日の愛のささやき。
ふたりの笑い声が重なりあい、やがて、沈黙に。
ねぇ、わたしを連れて行ってくれる?
この遠征のあとに誓いをたてよう。
今はダメ?
かならず君のもとへ帰ってくるから。愛が僕たちを祝福してくれている。
そう言って髪に挿してくれたパールのヘアピン。

長い雨の後で訪れた訃報。
そして、時間とともに変化していく気持ちの揺らぎのなかで。
今は愛する人のもとでしあわせな時を過ごしているけど、あの頃の輝きがたまになにかを語りかけてくる。
馬車に揺られながらぼんやりと窓に額を寄せて。
ふと、見上げると無数の星・・。
あなたへの思いは橋のたもとに・・。
忘れたりはしないけど、心の奥底にしまってしまうから。
あなた、新たな生命を授かることになったのよ。
今はとてもしあわせ。あの頃の笑顔とはまた違ったわたしだけど、これからは愛するもののために生きていくわ。


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2 Comments

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戻らない、時 ()
2012-06-08 22:53:40
時は戻らない
懐かしい想い出と感じた全ては
置いてきた過去
それはまるで砕けたガラスを散りばめているかのように
記憶の中では煌めいて
でも、その硝子は手に取り触れてはいけない。
眺めて微笑むことだけが許される

・・・救われるような詩です。
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ジャズを聴きながら (makoto)
2012-06-11 21:24:59
この詩は創られました。
わたしはとても曲からインスパイアされることが多いのです。
また、良い曲に出会えて素敵な詩が書きたいものです
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