イランがイスラエルのテルアビブ近郊などをミサイルで攻撃し、イスラエルのネタニヤフ首相はイランへの報復を宣言した。パレスチナ自治区ガザでのイスラム組織ハマスとイスラエルとの1年近い戦火はイランや周辺国を巻き込み、中東全域に広がりつつある。
これ以上の犠牲は避けなければならない。国際社会は傍観せず、あらゆる外交手段を駆使して、報復の応酬を阻止すべきである。
イランの攻撃はレバノンの親イラン民兵組織ヒズボラの指導者、ナスララ師が爆殺されたことなどへの報復。極超音速を含む約180発のミサイルでイスラエルの三つの空軍基地などを攻撃し、一部は迎撃されず着弾したもようだ。
イスラエルはイランによる攻撃直前、ヒズボラ掃討を目的にレバノンに地上侵攻し、イランの友好国シリアの首都ダマスカスも爆撃した。挑発に乗ったイランの参戦で中東の戦火が拡大すれば、ネタニヤフ政権の求心力を高められるとの狙いがあるとみられる。
そうした意図を理解するイランは、イスラエルへの直接攻撃は自制してきた。しかし、親イラン民兵各派の中核であるヒズボラへの猛攻を看過すれば、民兵各派の信頼を損ないかねず、軍事、諜報(ちょうほう)拠点などに的を絞り、イスラエルへのミサイル攻撃に踏み切った。
イランのアラグチ外相は「さらなる挑発がない限り、攻撃を終える」と言明し、戦火不拡大の方針だが、ネタニヤフ氏は「(イランは)代償を払うことになる」と報復を明言するなど、緊張は一段と高まり、危険な状況にある。
イスラエルは公には認めていないが、中東で唯一の核保有国だ。イランが本格的に参戦すれば、核使用の危険性は増大する。
イエメンの親イラン武装組織フーシ派の商船攻撃で混乱する紅海に加え、物流の大動脈であるペルシャ湾でも航行が困難になれば、世界経済への打撃は甚大だ。
国連は安全保障理事会の緊急会合を開く。中東紛争拡大と激化の阻止に向け、国際社会として強いメッセージを発するべきだ。
米国のバイデン大統領は退陣を控え、中東情勢への影響力を失った状態にあるが、最後の力を振り絞って軍事援助停止などを打ち出し、イスラエルに強く自制を促してはどうか。戦火の拡大阻止とガザ停戦を実現すれば、大統領のレガシー(遺産)に十分なり得る。
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