旧統一教会(世界平和統一家庭連合)の解散命令請求に向けた文部科学省の調査が続いている。長期化している感は否めないが、手続きを粛々と進めるべきだ。
高額献金など教団の問題が再び浮上したのは、昨年七月の安倍晋三元首相銃撃事件がきっかけ。
岸田文雄首相が同十月、裁判所への解散命令請求に向けた調査を文科相に指示し、所管する文化庁が教団や信者の不法行為を認定した二十二件の民事判決を根拠に宗教法人法に基づく質問書を同十一月から計六回教団側に送った。
被害者らからの聞き取りなどが長引き、解散命令請求には至っていないが、事件後も教団の活動実態は変わっていない。
今年五月には韓国と日本で合同結婚式を開き、東京都多摩市では購入した土地に研修施設の建設を計画し、地元の反対を無視して既存施設の解体を始めた。
宗教法人格の剝奪を意味する解散命令は「信教の自由」を脅かすものではない。ただ法人格を失えば、公益性を前提とする税制上の優遇措置は受けられなくなる。
首相は教団を「社会的に問題が指摘される団体」と規定し、その公益性に疑問を示した。解散命令請求を目指すのは当然だ。文化庁は被害実態に詳しい弁護士団体とも協力し、瑕疵(かし)のない請求のために調査を尽くしてほしい。
教団の被害者を救済するには、教団の財産を保全するための立法措置を急ぐ必要もある。
仮に教団解散が命じられても、それ以前に教団の財産を国外に流出させたり、多数の関連法人に移したりすることを規制する規定が現行の宗教法人法になく、被害者救済が果たせないためだ。
懸念されるのは政治家が手続きを妨げようとすることだ。
特に自民党議員と教団との不透明な関係は十分に解消されず、教団の名称変更に政治家が介入した疑惑も解明されていない。自民党は教団との密接な関係で経済再生担当相を事実上解任された山際大志郎氏を次期衆院選で公認するなど、不問に付そうとしている。
今年四月の道府県議選では教団との接点を認めた候補のうち、無投票を含めて約九割が当選した。
教団を巡る問題が半世紀以上も続いてきた一因に世論の無関心もある。政治家の横やりを許さず、解散命令請求を実現するには世論の継続的な監視が欠かせない。
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