マイナンバーカードを健康保険証として使う人と、使わない人との違いや共通点は何か。
東京新聞などの地方紙18紙の合同アンケートでは、マイナ保険証やマイナカードについて、従来の保険証より便利と思うかなど6つのポイントで「当てはまる」か「当てはまらない」かを尋ねる質問をした。見えてきた傾向とは。(デジタル編集部・福岡範行)
◆持ち歩くかどうかで違いくっきり
アンケートに回答した1万2007人のうち、マイナカードを持っている人は7729人いた。その中で、マイナ保険証を使っている人や使う予定の人たち(計5026人)と、カードを持っているがマイナ保険証を使うつもりがない人たち(2703人)の回答を比べてみた。
違いがくっきり出たのは「いつもマイナカードを持ち歩いている」という質問への回答だった。
使う人たちはほぼ6割が「カードを持ち歩いている(当てはまる)」と答えた一方、使わない人たちは6割強が「持ち歩いてない(当てはまらない)」と答えた。
マイナカードについて、30代女性は「以前、病院の窓口で高齢の女性が『タンスに収めたまま』と言っていて、周りの高齢の方々も『そうそう』と言っていた」という体験談を寄せた。
マイナカードを日常的に持ち歩くことに抵抗感がある人たちがいる現状がうかがえた。
「医師などに過去の受診や薬の履歴を見せる機能を使いたい」かどうかの質問でも違いが見えた。
マイナ保険証を使う人たちの多くが、この質問に肯定的だった。質問に「当てはまる」と「やや当てはまる」と答えた割合は、計7割を占めた。マイナ保険証を使うつもりがない人たちの半数余りは否定的だった。
◆使わない人が拒否感を示したのは
「診察券など保険証以外もマイナカードに集約したい」かどうかの質問には、マイナ保険証を使うつもりがない人たちの7割強が拒否感を示した。
80代女性は「何もかもカードにまとめると、万一紛失した時に手続きが複雑になるのではないか?」と疑問視した。
30代女性は「コンビニで住民票をコピーできるのは助かります。でもマイナ保険証は必要ないです。何でもかんでもひとつのカードに集約する必要はありません」と書いた。
マイナ保険証を使う人たちは、半数余りが肯定的だった。
「確定申告など医療以外でマイナカードを使っている」かどうかの質問では、マイナ保険証を使う人たちの中で、回答が半々に分かれた。「使っている(当てはまる)」も「使っていない(当てはまらない)」も、いずれも3割強だった。
マイナ保険証を使うつもりがない人たちは、6割が「使っていない(当てはまらない)」を選んでいた。
確定申告にマイナカードを使っていると答えた人たちからは、「医療費が計算されるのは楽だとは思った」(40代女性)、「確定申告作業が早く終わるのが良い」(60代男性)などと、メリットとして挙げる声も目立った。
「確定申告で細かいデータが出るので便利と思ったが暗証番号を間違えて役所に出向かないと解除できず、申告のときにも結局活用できなかった」(50代女性)という体験談もあった。
◆使う人にも使わない人にも共通したのは
「自分の情報が漏れないか不安」かどうかの質問は、マイナ保険証を使う人たちと使うつもりがない人たちとの間で、違いが少なかった。使う人も使うつもりがない人も、多くが不安を抱えていた。
マイナ保険証を使うつもりがない人たちは、8割近くが「不安(当てはまる)」だと答えた。
マイナ保険証を使う人たちのうち4割弱が「不安(当てはまる)」、2割強が「やや不安(やや当てはまる)」だと答えた。情報漏えいのリスクを気にしないという人は少数派だった。
マイナ保険証を使っている人からは、「(読み取り機で受け付けする際に)暗証番号が後ろの人に丸見えな気がする」(50代女性)との体験談が届いた。
別の50代女性は「まだまだ個人情報の点で心配がある。国が本当に安心だと示してほしい。色々と問題があったりしたので、日本人は心配性な気がするので」と求めた。
◆マイナ保険証は便利?の答えは
「従来の健康保険証より便利だと思う」かどうかの質問には、「どちらとも言えない」と答えるケースが目立った。
マイナ保険証を使う人たちは、「どちらとも言えない」と答えた人が一番多かった。
政府は「マイナ保険証 まず、一度使ってみませんか?」「さまざまなメリットがあります」などと呼びかけている。
マイナ保険証を使っている人からは、「病院での受付がスムーズにできた」(50代男性)、「患者として処方薬がすぐに伝わるのは便利」(20代男性)、「お薬手帳を提示しなくても良くなった」(70代男性)といった声が寄せられた。
一方で、マイナ保険証を使っていても便利さを実感できていない人もいた。アンケートには、次のような声が寄せられた。
「別に診察には影響しなかったし、投薬はお薬手帳を提出。全くマイナ保険証は役に立っていない」(50代女性)
「しばしば端末機が故障し結局紙の保険証を携行するはめになる」(70代男性)
「はっきり言って、使いこなせない」(50代男性)
◆保険証廃止についての考えは
アンケートでは、現行の保険証廃止の政府方針に対し、
(1)現行の保険証をなくしてマイナ保険証に一本化
(2)現行の保険証を残して選択制に
(3)現行の保険証を残してマイナ保険証の導入をやめる
のうち、どれを支持するかも尋ねた。
マイナ保険証を使わない人や、マイナカード自体を持っていない人は、マイナ保険証の導入中止を求める人が多かった。
一方、マイナ保険証を使う人は、導入中止を望む割合は少なかった。ただ、現行の紙の保険証の廃止には否定的な人が多く、47.8%はマイナ保険証と現行の保険証の選択制を望んだ。
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マイナ保険証の合同アンケートには、多くの疑問や不安の声が届きました。東京新聞では皆様からいただいた声をもとに、Q&A形式の解説や検証記事などを随時、公開していきます。
マイナンバー問題の記事一覧ページに掲載します。
マイナ保険証の合同アンケート 東京新聞「ニュースあなた発」など読者とつながる報道に取り組む全国の18紙が8月9~18日に通信アプリLINE(ライン)などで呼びかけ、1万2007人から回答があった。多様な声を聞き取るのが目的で、無作為抽出の世論調査とは異なる。
回答者のうちマイナカードを持っている人は64.4%(全国では、7月末時点で74.5%)、保険証として使っている人は26.3%、今後使う予定の人は15.6%、カードを持っていても保険証として使うつもりがない人は22.5%だった。
回答者の年齢層は、30代以下が9.8%、40~60代が71.6%、70代以上が18.6%だった。
実施した18紙は次の通り。東奥日報(青森)、岩手日報、河北新報(宮城)、秋田魁新報、上毛新聞(群馬)、東京新聞、神奈川新聞、新潟日報、北陸中日新聞(石川)、福井新聞、信濃毎日新聞(長野)、岐阜新聞、京都新聞、中国新聞(広島)、西日本新聞(福岡)、熊本日日新聞、南日本新聞(鹿児島)、琉球新報(沖縄)
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