政府が敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有を含む防衛力強化の方針を週内にも決定しようとしているのに対し、懸念を強める憲法や国際政治の専門家らがグループを立ち上げ、対案となる提言の準備を進めている。安全保障政策の大転換に警鐘を鳴らし、武力によらない道筋を国民の選択肢として提起するのが狙いだ。(柚木まり)
グループは「平和構想提言会議」。有志15人が10月に設立し、共同座長に学習院大の青井未帆教授(憲法学)、核廃絶や軍縮の活動に取り組む非政府組織(NGO)「ピースボート」の川崎哲共同代表が就任した。提言は、政府が改定を目指す「国家安全保障戦略」など3文書の対案と位置づけ、近く発表して国民を巻き込んだ議論を喚起したい考えという。
提言に先立ってまとめた骨子案では、敵基地攻撃能力の保有や防衛費倍増を検討する政府・与党の姿勢を「東アジアでの軍備競争を助長し、戦争を誘発しうる大変危険な動きだ」と批判。憲法に基づく「専守防衛」の原則がないがしろにされるだけでなく、防衛費が国内総生産(GDP)比で2%の水準となれば、世界3位の「軍事費大国」になると指摘する。
その上で、軍事的な「抑止力」に依存することは、かえって地域の緊張を高めるとして、憲法が定める「平和主義」の原則に立ち返り、外交面での取り組みを強化する必要性を訴える。
提言会議は政府・与党の議論の進め方も問題視。青井氏は「国民を代表する国会による議論ではなく、政府の有識者会議が道筋を定め、政策を進めることへのきな臭さを感じる。防衛政策は、決まれば国民の選択となる。政府に対し意思表明するのに遅過ぎることはない」と強調した。
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