http://jp.reuters.com/news/pictures/rpSlideshows?articleId=JPRTR22WE6#a=1
焦点:クリントン次期米国務長官、中東問題が試金石
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-35672320081231
[ワシントン 29日 ロイター] イスラエルが継続するガザへの空爆は、次期国務長官として中東和平問題を含む米国の外交を担うヒラリー・クリントン氏の手腕を試す試金石となりそうだ。
クリントン氏は、バラク・オバマ次期政権の国務長官として「中東問題に関して中立派でなくイスラエル寄り」といった、自身に対する一部アラブ世界の見方を覆すことが求められる。同氏は、上院議員(民主党、ニューヨーク州)を辞任して新たに国家の要職に就き次第、夫のビル・クリントン元大統領が在任中に取り組んだが果たせなかった中東和平合意の達成を目指すことになる。
メリーランド大学のシブレー・テルハミ教授によると、アラブ諸国でことし実施された世論調査で、ヒラリー・クリントン氏は夫と同様に中東和平を前進させる存在、との見方が大勢を占めた。同教授は、ヒラリー・クリントン氏が過去に行ったイスラエル支援は必ずしもマイナス材料ではないとした上で「ビル・クリントンには(ジョージ・W・ブッシュ現大統領と比べて)随分好意的なイメージがあり、ヒラリーにも同様のイメージがある」としている。
しかし、仮にクリントン氏が早期に和平仲介の役割を果たす準備を整えたとしても、武力衝突の急増と向こう2カ月間にイスラエルとパレスチナ双方で予定される選挙のため、実効的な交渉実施は遅れる見通し。テルハミ教授は「(中東和平問題は)単純な解決をするにはあまりに多くの血が流れ過ぎた」と語る。
一方、イスラエルとパレスチナの交渉をめぐって過去6人の国務長官に助言を行ってきたアーロン・ミラー氏は、ヒラリー・クリントン氏は中東地域で尊敬を集めているとして、同氏が「イスラエル寄り」との見解に異論を唱える。ミラー氏は、クリントン氏が先の大統領選挙を通して一層の強さと弾力性を身につけ、中東外交への適任性を増したと指摘。その上で「クリントン氏は重労働を行うこととなるが、彼女は(次期)大統領の支えで力づけられ、サポートされる必要がある」と述べた。
つまり、クリントン氏の仲介者としての手腕よりも重視されるのは、オバマ次期大統領自身が山積する諸問題の中、イスラエル・パレスチナの問題にどのような優先順位を付けて取り組むかということだ。
<危機による試練は未経験>
現在ワシントンのウッドロー・ウィルソン国際学術センターに籍を置くミラー氏はまた、先の大統領選挙での民主党の候補選びでオバマ氏に敗れたクリントン氏だが、能力を最大に発揮するには次期大統領との強いきずなが不可欠だと強調する。
外交に精通してはいるものの、クリントン氏はいまだ今回のガザ空爆のような危機によって手腕を試されたことはない。ワシントンワシントン近東政策研究所のジェフリー・ホワイト氏も「クリントン氏はアラブ世界の複雑極まりない交渉の経験は豊富でない」と指摘する。
ブッシュ政権はこれまで、ガザでのイスラエルの行動を支持し、パレスチナのイスラム原理主義組織ハマスに対してはイスラエルへのロケット弾攻撃を停止するとともに、停戦に合意するよう求めてきた。
米国の駐イスラエル大使と駐エジプト大使を歴任したエドワード・ウォーカー氏は、クリントン氏はできるだけ早い時期に中東地域を訪問すべきだと主張する。クリントン氏の国務長官への指名承認公聴会は1月半ばに行われる予定であり、オバマ氏が同20日に大統領に就任した直後に国務長官に就任する可能性がある。ウォーカー氏は「オバマ新政権がすべきことは、われわれはイスラエル・パレスチナ和平問題を優先課題として重視しているが、両者が合意の準備をしない限り両者に合意を強制することはできない、と表明することだ」と語る。
コンドリーザ・ライス現国務長官は、イスラエル・パレスチナ和平問題を過去2年間の優先課題としてきた。ライス長官によると、イスラエルとパレスチナはかつてなく合意に近づいているものの、イスラエルの存在を認めないハマスが常に和平交渉で蚊帳の外に置かれていた。
米政府は、パレスチナ自治政府のマハムード・アッバス議長をヨルダン川西岸を統治するパレスチナ側の「唯一合法な代表」として認めている。
専門家は、米国とその同盟国がこれまで孤立させ制裁を加えてきたハマスに対する米政府の姿勢の劇的な変化は予想しにくいと見ている。ウォーカー氏は「米国の政策に変更はないだろう。そして(新政権も)従来と同様の問題を抱えるのだ」との予測を明かした。
(ロイター日本語ニュース 原文:Sue Pleming、翻訳:植竹 知子)
焦点:クリントン次期米国務長官、中東問題が試金石
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-35672320081231
[ワシントン 29日 ロイター] イスラエルが継続するガザへの空爆は、次期国務長官として中東和平問題を含む米国の外交を担うヒラリー・クリントン氏の手腕を試す試金石となりそうだ。
クリントン氏は、バラク・オバマ次期政権の国務長官として「中東問題に関して中立派でなくイスラエル寄り」といった、自身に対する一部アラブ世界の見方を覆すことが求められる。同氏は、上院議員(民主党、ニューヨーク州)を辞任して新たに国家の要職に就き次第、夫のビル・クリントン元大統領が在任中に取り組んだが果たせなかった中東和平合意の達成を目指すことになる。
メリーランド大学のシブレー・テルハミ教授によると、アラブ諸国でことし実施された世論調査で、ヒラリー・クリントン氏は夫と同様に中東和平を前進させる存在、との見方が大勢を占めた。同教授は、ヒラリー・クリントン氏が過去に行ったイスラエル支援は必ずしもマイナス材料ではないとした上で「ビル・クリントンには(ジョージ・W・ブッシュ現大統領と比べて)随分好意的なイメージがあり、ヒラリーにも同様のイメージがある」としている。
しかし、仮にクリントン氏が早期に和平仲介の役割を果たす準備を整えたとしても、武力衝突の急増と向こう2カ月間にイスラエルとパレスチナ双方で予定される選挙のため、実効的な交渉実施は遅れる見通し。テルハミ教授は「(中東和平問題は)単純な解決をするにはあまりに多くの血が流れ過ぎた」と語る。
一方、イスラエルとパレスチナの交渉をめぐって過去6人の国務長官に助言を行ってきたアーロン・ミラー氏は、ヒラリー・クリントン氏は中東地域で尊敬を集めているとして、同氏が「イスラエル寄り」との見解に異論を唱える。ミラー氏は、クリントン氏が先の大統領選挙を通して一層の強さと弾力性を身につけ、中東外交への適任性を増したと指摘。その上で「クリントン氏は重労働を行うこととなるが、彼女は(次期)大統領の支えで力づけられ、サポートされる必要がある」と述べた。
つまり、クリントン氏の仲介者としての手腕よりも重視されるのは、オバマ次期大統領自身が山積する諸問題の中、イスラエル・パレスチナの問題にどのような優先順位を付けて取り組むかということだ。
<危機による試練は未経験>
現在ワシントンのウッドロー・ウィルソン国際学術センターに籍を置くミラー氏はまた、先の大統領選挙での民主党の候補選びでオバマ氏に敗れたクリントン氏だが、能力を最大に発揮するには次期大統領との強いきずなが不可欠だと強調する。
外交に精通してはいるものの、クリントン氏はいまだ今回のガザ空爆のような危機によって手腕を試されたことはない。ワシントンワシントン近東政策研究所のジェフリー・ホワイト氏も「クリントン氏はアラブ世界の複雑極まりない交渉の経験は豊富でない」と指摘する。
ブッシュ政権はこれまで、ガザでのイスラエルの行動を支持し、パレスチナのイスラム原理主義組織ハマスに対してはイスラエルへのロケット弾攻撃を停止するとともに、停戦に合意するよう求めてきた。
米国の駐イスラエル大使と駐エジプト大使を歴任したエドワード・ウォーカー氏は、クリントン氏はできるだけ早い時期に中東地域を訪問すべきだと主張する。クリントン氏の国務長官への指名承認公聴会は1月半ばに行われる予定であり、オバマ氏が同20日に大統領に就任した直後に国務長官に就任する可能性がある。ウォーカー氏は「オバマ新政権がすべきことは、われわれはイスラエル・パレスチナ和平問題を優先課題として重視しているが、両者が合意の準備をしない限り両者に合意を強制することはできない、と表明することだ」と語る。
コンドリーザ・ライス現国務長官は、イスラエル・パレスチナ和平問題を過去2年間の優先課題としてきた。ライス長官によると、イスラエルとパレスチナはかつてなく合意に近づいているものの、イスラエルの存在を認めないハマスが常に和平交渉で蚊帳の外に置かれていた。
米政府は、パレスチナ自治政府のマハムード・アッバス議長をヨルダン川西岸を統治するパレスチナ側の「唯一合法な代表」として認めている。
専門家は、米国とその同盟国がこれまで孤立させ制裁を加えてきたハマスに対する米政府の姿勢の劇的な変化は予想しにくいと見ている。ウォーカー氏は「米国の政策に変更はないだろう。そして(新政権も)従来と同様の問題を抱えるのだ」との予測を明かした。
(ロイター日本語ニュース 原文:Sue Pleming、翻訳:植竹 知子)