代替案のための弁証法的空間  Dialectical Space for Alternatives

批判するだけでは未来は見えてこない。代替案を提示し、討論と実践を通して未来社会のあるべき姿を探りたい。

八ッ場地すべり地形偽装問題

2011年09月16日 | 治水と緑のダム
 地質学者の竹本弘幸氏から、拙ブログのコメント覧に下記の論考をいただきました。多くの方々に読んでほしいので、再掲いたします。 日本地理学会で報告された論考で、学術的なものです。しかしがら八ッ場ダム建設がいかに危険か、止めるなら今というギリギリの段階にあって、政治的判断のためにも重要な検討事項です。

 八ッ場ダム建設に伴う住民の移転先代替地の一つである上湯原地区はダム建設で地すべり災害を誘発する可能性が高いとのことです。しかし国交省は、地すべり地形を「河川の蛇行地形」と偽ってきたとのことです。

 住民の反対運動を押しつぶして建設された、奈良県の大滝ダムは完成後に地すべり災害が誘発され、ついに住民が移転に追い込まれました。今回の台風12号でも大きな被害が出たそうです。地すべりによって、ダムの建設経費は当初計画の230億円から3600億円を超え、今後もさらに増える見込みで、完全に税金のブラックホールと化しているそうです。八ッ場あしたの会の下記記事参照。

http://yamba-net.org/modules/news/index.php?page=article&storyid=1340

 八ッ場ダムも大滝ダムの二の舞になる可能性があり、そうなれば建設費用は1兆円どころではすみません。先月8月7日の豪雨でも八ッ場ダム予定地はすでに地すべり疑惑の土砂災害が誘発されています。谷を埋め立てて工事をした場所で、排水がうまくできていなかったためと思われます。

 竹本氏が危惧するように、ダム建設によって浅間山の火山灰層が本格的に崩れ出せば、何千億円の税金がブラックホールに吸い込まれることになります。そして国交省は「予想できなかった」とシラを切ってだれも責任を取らず、ただ税金が湯水のごとく浪費されることになります。国交省にとっては、地すべりで事業費用が膨らんでも、彼らが使える予算が増えるだけで、何も困らないのです。
 
 こんな暴挙を許していたら国家財政は確実に破綻します。

 絶対に許してはいけません。勇気をもって全国の新規ダム建設をすべて凍結し、その予算を震災復興と福島第一原発事故の収束費用に回すべきです。それができないのなら、国民が増税要求には一切応じないと政府に訴えましょう。

 以下、竹本弘幸氏よりのコメントを転載します。



****引用開始********

ジャーナリストと国民は不正に立ち向かい敗北してはいけない 2011-09-15 12:06:31


 下記の講演要旨は、大震災のため電子資料として一般公開が遅れたものですが、ご一読いただければ幸いです。ご質問があれば、可能な限りお答えしたいと思いますので、下記までご連絡ください。
 関先生、コメント覧の利用をご容赦ください。

e-mail:
sanserite117@nifty.com (全角アットマークにしてあります)

 建設が実施された場合、建設推進に協力された地元自治体・流域住民の皆様が最初に被害を受けてしまう可能性が高いことを指摘しておきます。同時に、下流域住民の皆様にも大規模土石流のリスクを背負わせてしまう危険が高いダムであることを指摘しておきたいと思います。

 ダム官僚によるダム官僚のための事業で、群馬県の皆さん・利根川流域の皆さんを被害者にしてはいけない。
 群馬県選出の与野党議員の皆さん(歴代総理とその子弟議員の皆さん)、流域都県の知事の皆さん、地方自治体の公務員の皆さん、ダム官僚の不正・ねつ造に目を開き、正しい選択をして下さい。

 ジャーナリストの皆さん、記者としての誇りを持って調査報道を通じ、真実をお伝えください。原発事故と同じ過ちを繰り返さないでください。



(日本地理学会要旨集79巻 p242)

八ッ場ダム建設のため蛇行地形に偽装された上湯原の巨大地すべり  竹本弘幸(拓殖大学)

Ⅰ はじめに
 八ッ場ダム建設に伴う川原湯代替地:上湯原地区は,川原湯温泉再生の要として重要な移転先である.この地区の地形は,やや開析を受けた円弧状の急崖と前縁に広い堆積面を有する緩斜面である(図1).中村(2001)によれば,吾妻渓谷で貴重な土地ながら土砂崩れと落石が頻発することから,畑地利用が出来ず雑木林になっているという.この地を所有する豊田氏らの証言でも,過去に何度か土砂災害を体験・目撃しているとのことである.この地区は,国から地すべり調査の委託を受けた会社の報告でも,地すべり危険地帯22箇所の内の一つに挙げられている.

 一方,国交省では上湯原地区は地すべり地形ではなく河川の蛇行地形で,裏付けとして地質断面図を公開していた(図2).本発表では,上記の全く異なる見解について,代替地の安全確保と防災上の観点から実施した資料検証と現地調査の結果を報告する.

Ⅱ 長野原町・群馬県・研究機関ほかの資料検証

 久保他(1993)は,上湯原地区を吾妻川の最高位段丘とし,応桑岩屑なだれ堆積物(OkDA)を崖錐堆積物が厚く覆うこと,中村(2001)は,同地区全体を覆う複数の崖錐堆積物の存在と昭和の土石流災害を報告している.倉沢(1992)「川原湯新温泉源の開発」の地質断面図では,OkDAが7mの崖錐堆積物を挟んで上下2層(群馬県,1991)に分かれていることを図示している(図3).

 2009年公開(独)防災科学技術研究所の全国地すべりマップによれば,上湯原地区は背後の円弧状急崖を滑落崖とし,2つの地すべり斜面移動体で構成されていることを明らかにしている(図1).竹本(2010)は,OkDAの堆積面高度が対岸の立馬に比べ30m以上低下した地すべり塊であることや河川局が公開した地質断面(図2)の誤りを指摘している.いずれの報告もOkDAが流下後,時間を置いて再移動した事実と上湯原地区の全体を覆う大規模な土砂災害が起きていたことを指摘している.

Ⅲ 国交省の蛇行地形と(独)防災研の地すべり移動体の検証

 次に,上湯原の災害履歴の検証結果を図4に示す.地点1(新駅建設地上)では,OkDA以降5回の大規模災害が発生した.地点2では,尾根地形直下から複数の地点で湧水が観察でき,群馬県(1991),倉沢(1992)の報告も同じである.上湯原でOkDAの堆積面高度が大きく低下し,層厚10m以上の崖錐堆積物が全域を覆った事実は,防災対策を考える上で重要課題の1つである.この大災害は,浅間テフラから約1.3万年前直後に発生していたことが確認できた.

 以上は,住民の安全を第一に,地すべり危険地帯を指摘した良識ある地質調査会社と防災科学研究所の地すべり見解を支持するものである.このような場所にダムを造り湛水した場合,活動中の移動体(林・白岩沢・八ッ場沢トンネル)と同様,地すべりが再活動する可能性が高く,代替地では深刻な事態を招くことに繋がるだろう.現状は,国交省河川局がダム建設のため,意図的に検証を怠ってきたとしか考えようがない.

 万一,地すべりが発生した場合,ダム推進を訴える一方で,住民の為の安全検証を怠った側に大きな責任が生ずるのではないだろうか.

Ⅳ まとめにかえて

 国交省・群馬県などの資料検証と現地調査から,上湯原地区はOkDA流下後,地すべりと土砂崩れを繰り返して形成された場所であることは明らかである.河川局は,多くの調査者と国の研究機関が災害リスクを指摘した上湯原の巨大地すべり地を『八ッ場ダム建設のため,河川の蛇行地形であると偽装公表して工事を進めてきた』と言わざるを得ない.既に,利根川流域の治水・利水計画の中で基本高水を操作していた事実を含め,河川局の環境アセスメントが,ダム建設に協力した住民の災害リスクまで軽視し,ダム建設だけを目的化していたことと同じである.

 国は,川原湯温泉街の再建を最優先で実施し,従来型の河川行政の誤りを認め,全面的見直しと情報公開を通じて真の環境アセスメントを実施することが急務ではないだろうか.

文献:中村(2001)群馬評論,87,77-82.久保他(1993)長野原町の自然.1-89.群馬県(1991)川原湯新温泉源の開発.77p.倉沢(1992)地熱29,33-50.防災科学技術研究所(2009)全国地すべりマップ.草津.国交省河川局HP:地すべりについて.竹本(2010)第四紀学会要旨集40.4

国土交通省河川局が偽りの地質解釈公表している証拠(下図)

http://www.ktr.mlit.go.jp/yanba/info/question/zisuberi/imgs/zu-11.pdf
応桑層(2.4万年前)
その下に分布する地層(崖錐)は、1.3万年前の地層である。

上の地質断面図は、1万年以上新しい崖錐地層の上に2.4万年前の応桑層が堆積しているにもかかわらず、河川の蛇行地形と説明している点

★地層が上下逆転していることから、地すべりを否定し、蛇行地形を裏付ける証拠とした地質断面図が地すべりを証明している。

http://www.ktr.mlit.go.jp/yanba/faq/jisuberi.htm

↑ダム建設予定地の地質説明には20箇所以上このような出鱈目なデータが公表されています。

☆防災研 地すべり地形分布図データベース
http://lsweb1.ess.bosai.go.jp/
(右上の赤枠に地名入力すれば確認可能)

http://lsweb1.ess.bosai.go.jp/lsweb_jp_new/gis/map_blue.html?x=138.70510949999993&y=36.5514162&s=50000&a=川原湯

参議院で代表質問をされていた中曽根さんはじめ、ダム推進を訴えている議員の皆さんこそ、真摯に検証をし、支持者の皆さんを将来の被災者にしないでください。

保坂氏作成のDVDの内容を知りながら、逃げている若手議員の皆さんも同じです。国民の生命と財産を守る真の政治家なら、ダムをつくるという党の方針に従う必用があるのですか?
自ら立ち上がって戦わなければ、国民の代表などといえません。


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3 コメント

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関東地方整備局の公式見解にみる疑問点・誤謬 (竹本弘幸)
2011-09-18 00:16:04
(諸悪の根源=縦割行政と村体質)

 同じ吾妻川を扱い,同じ河川局関係部署でありながら,利水・治水を扱うダム部門と土砂災害を扱う砂防部門が今でも情報交換や連携をしていないという話を聞き,耳を疑いました.その後,双方の関係者に聞くと,昔から縦割り・セクショナリズムの衝突があり,今でも連携に乏しい犬猿の仲だということを先学の方から聞きました.

八ッ場ダム問題の再検証でも,砂防や地質の問題が会議の場で俎上にのぼらず,議論もされなかった事実がこれを裏付けています.国交省関東地方整備局と国交省出向組で占める各都県の土木整備部長による検討会議も同じです.
 森林の成長に伴う保水力の向上の評価もなされなかったことも同じです.吾妻川・利根川流域の地質・地盤・森林の効果は,河川局ダム村にとっては無視してよい存在だということになります.

「原子力村の雛形」はダム村が起源とする説があります.日本学術会議(土木・建築部門)による今回の検証作業が,そのようなものと受け取られないためにも,新たな部門検証が行われること,良識ある研究者の声があがることを願ってやみません.既得権益の検証・情報公開が進まなければ,国難の今でもこの国は変われないでしょう.

 下記は,国土交通省関東地方整備局の公式見解として「ダム建設予定地の地すべりリスクについて」質問をした一般の方に対する回答文と私からみた疑問点です.

 浅間火山の活動履歴と応桑層(岩屑なだれ,土石なだれ)の流下した影響を研究している立場から検証した結果,わずか5ページの回答文中に20箇所以上も説明に疑問符が付く誤謬・誤分析・偽りの見解などが認められました.
国家プロジェクトがこれほどズサンなかたちで進められてきたことに愕然とし,多くの疑問と問題点がありますので,指摘しておきたいと思います。

同時に,流域住民の生命と財産を守るべく国・自治体の議員の皆様,川原湯新駅を利用する観光客・住民の安全を最優先で守るJR東日本の技術者の皆様,道路整備に関する国・県・町の土木技術者の皆様,真摯に検証をお願い致します.
 これ以上,長野原町はじめ流域住民の皆様(とりわけ,川原湯温泉の皆様)を犠牲にしないでください.ダム官僚らの不正に気づいて正してください.

 Q.八ッ場ダムの貯水池周辺地すべり対策について 解説・記載・記述内容の疑問点と問題点
国土交通省八ッ場ダム工事事務所公表 ホームページ解説文 p1-5.URLと対照ください

http://www.ktr.mlit.go.jp/yanba/faq/jisuberi.htm

2.地すべり調査の体制 
芥川眞知委員長・渡 正亮委員・綱木亮介委員

(実態は,国交省が丸投げした民間地質コンサルタントの調査結果を検討した可能性が高いのではないか・・)

●疑問点1●
突発事変により埋積した吾妻渓谷の火山性堆積物が引き起こしている地すべりの要因について,3名の方に認識が本当にあるのでしょうか.岩盤クリープによるすべり面の抽出はご専門かもしれませんが熱水変質帯にOkDAが乗り上げ,山麓の基盤岩との間に挟まれた堆積物が不透水層を形成しているという認識は,この解説文からは全く読み取れません.はなはだ疑問です.

3.地質について
  応桑岩屑なだれ堆積物(OkDA)に対する認識の誤り部分
18行目 応桑岩屑なだれ(岩屑流)堆積物
「この地層は,崩壊によって出来た礫や砂、粘土など乱雑に含まれた状態で,締固まったものである」

●疑問点2●
上記の解説は,この堆積物の流動・堆積機構がわかっていない方の説明内容です.その結果,重要な意味を持たない分析がたくさん行われています。

岩屑なだれ(岩屑流)とは,火山体の不安定化(地震や噴火に伴うもの)により,山体を構成していた部分や山麓部分までが,火山噴出物など堆積した当時の元の状態をそのままの残した状態で流れ下る現象です.これは,接地面近くだけが流動層となって流れる現象だからです.
流下の過程で巨大ブロックは少しずつ引きちぎられて分割されますが,この中に新たに砂や泥が連続した地層として形成されることはありません(泥流化した場合を除く).流体物の中で衝突が起きたり,含まれていたわずかな水分で練られることで,細粒物質が形成されていくだけです.このため,岩屑なだれ堆積物(=岩屑流)の粒度組成は,はじめから不均質であり,不均質性を保持しているから細粒物がありながら大きなブロックを支えられ「流れ山」などが作られるわけです.
しかし,この特徴は,流下距離が長いほど途上で水分や流下域の物質を流動層が取り込み,練り上げる状況になると,間を埋めていた物質が均質となると,上位の大きなブロックなどは支えられなくなります.この結果,大きなブロックは自重で沈下してしまい,流れ山は作れなくなります.
応桑岩屑なだれ堆積物(OkDA)が分布する渋川以南では,一連の堆積物ですが,マトリクスの均質化が進んだため,ブロックとその間を充填する小礫や砂などでは支えきれないため,流れ山は実際に存在しません.巨大なブロックが地層の厚さを越えて,突き出ているものは「流れ山」とは呼びません.
もし,粒度分析をするのなら,大きなブロックとブロックの間を埋める土砂部分を分析測定しなければなりませんが,この方々は,ブロックの中を分析する過ちをしています.

表-2 地すべり検討上の留意すべき地質状況

●疑問点3●
この表-2を見ても,応桑岩屑なだれ堆積物(OkDA)の流下に伴う谷壁(基盤岩)との間の生成物・斜面を覆っている土壌層・火山灰や軽石層(BP:板鼻褐色軽石層)の存在を全く留意していない点が,致命的ミスとなっています.同時に,熱水変質帯へのOkDAによる荷重負荷による影響問題も扱っていない点も疑問です.すべり面の形成要因,不透水層直上がすべり面に変化した可能性の認識もありません.

4.貯水池地すべりについて
<検討経緯について>
写真判読・地形図・地質図・文献資料で抽出された地すべりの可能性がある22箇所を検討したことが述べられています.
このうち,湛水による地すべりの発生が考えがたい箇所として17箇所を分類したとされています.残り6箇所は,地すべりの可能性が高い箇所として,必要に応じて対策する箇所としています.

●疑問点4●
抽出地すべり ① 八ッ場沢トンネル西側
対策の必要性がないとされた1998年完成の八ッ場沢トンネルの上位には,応桑岩屑なだれ堆積物が分布しています.また,同トンネルの入口部分やトンネル内には多くの亀裂箇所と修復箇所が認められます.修復箇所は,天井アーチ部分最下部との接合面に多く認められます.また,コンクリートパネルの接合面は,地下水が豊富な場所では,炭酸カルシウム分の析出が顕著に認められます.しかし,このトンネルの西側では,パネル接合面以外の場所で縦や横にクラックが走り,そこからも湧水の染み出しと炭酸カルシウム分の析出が数cmレベルで起きています.これは,OkDAによる荷重負荷などが原因で出来た不透水層の上面が,すべり面となって動き始めている事例ではないでしょうか.もし,この現象の場所でダムに湛水した場合,抽出地すべり ①は,ダム提のすぐ上流側にあるため,大きく崩壊を引き起こす可能性が高くなります.
このようなもっとも身近に認められる現象まで,意図的に過小評価してまで,ダム建設を推進している国交省のダム官僚とOB官僚および八ッ場ダム工事事務所の姿勢には疑問を覚えます.
●疑問点5●
国交省では,地すべり=岩盤クリープとしての認識しか理解していないことも誤りです
特に,応桑岩屑なだれ堆積物(OkDA)の流下当時の堆積面高度が,数十から最大50mにまで大きく上下に変化している事実について認識ができていないことは,地形・地質調査の基本が守られていないことを示します.あるいは,意図的にこの問題を避けているのか,専門家の関与が低かったとしか考えようがありません.

<対策の必要性についての検討>

●疑問点6●
過去に起きた地すべり現象や滑り落ちたブロックについて,ダムに湛水することで再活動する可能性の認識が乏しいこと,連鎖的に地すべりが起きる可能性に言及していないことは,極めて疑問です.また,対策の必要性がある部分でも,ダム事業により買収し,管理することから地すべり対策の必要性がないとしていることも大きな問題です.
浅間火山の活動履歴を調査研究し,利根川の砂防事業に関心がある立場からみると,ダム建設に伴い小規模・中規模の地すべりが起こることを容認することは,砂防関連から見ても不適切な見解と言わざるを得ません.一見すると,ダムによって下流への土砂流出抑止になると考えがちですが,ダムを造ることで,砂防対策にもなるとしたダムが早く埋まってしまう原因まで容認すれば,ダム下流域の住民に対して,土砂災害リスクを高めてしまうこととなり,浅間火山の噴火に際しての土砂対策にもならないことを意味します.大きな矛盾です.そして,ダムの存在によって本来であれば被害にあわない規模の噴火による土砂災害でも,最初に罹災するのが代替地住民となります.

抽出地すべり ③ 川原畑 二社平
 地すべり対策の必要性が指摘された1つである
●疑問点7●
抽出地すべり ④ 川原畑 三平 (湖面1号橋 橋脚部分)
 熱水変質作用を受けた岩石部分に,厚さ60m余りの応桑岩屑なだれ堆積物(OkDA)が堆積したため,その荷重負荷で基盤となる地層で亀裂破砕と湧水が工事期間中に認められています.
 しかし,国交省八ッ場ダム工事事務所では,満足な施行管理と地すべり対策を取っていません.
抽出地すべり ④ブロックで,既に変形が認められた中,ダム建設工事を進め,湛水し④ブロックで地すべりが発生した場合,移転代替地でもある三平地区の住民の皆さんが危険にさらされてしまいます.このまま橋脚工事だけを進めて地すべり防止対策を採らなければ,代替地住民は今後も不安を抱き続ける生活を余儀なくされてしまいます.速やかに対策をとる対象のはずです.
<対策が必要と判断した地すべり検討箇所についての詳細>
③ 二社平
 八ッ場安山岩の弱層がすべり面となり,地すべりを起こしたものであると判断している.
この結果により,二社平の地すべり対策範囲を決定し,抑え盛土による対策工を予定している(図-5参照).

●疑問点8●
本来であれば,隣接する④ブロック(三平地区)の工事現場で,地盤の劣化が認識され,沢1本隔てた場所でも異変が認められことから,新たに地すべり対策の必要性を認識できなければなりませんが,全くありませんでした.

⑲ 林地区 勝沼
 この地区の地すべり発生のメカニズムとして「林層(基盤岩)内部の弱層があることをボーリングで確認し,これが地すべり面を形成していると判断した」と,記述されています.

●疑問点9●
上記の文章から,応桑岩屑なだれ堆積物(OkDA)による荷重負荷に伴う不透水層の形成も検証対象から除外しています(もしくは認識できなかったとおもいます).
八ッ場ダム工事事務所の管理体制や安全をチェックする国や県のチェックが今でもずさんなことを示しています.

<その他の地すべり対策箇所について>
⑧ 上湯原
 広い緩斜面は,蛇行した河川の跡である旧河岸段丘面の上に,崖錐堆積物と応桑岩屑流堆積物が覆って出来たものである.
ボーリング調査で段丘砂礫とその下の堅硬な岩盤を確認しており,地表にも滑落崖と思われる段差地形などは見られないことから地すべりではないと判断した(図-11)

●疑問点10●
吾妻渓谷は,隆起量の大きな急流河川であり,谷を深く直線的に刻んでいます.このような河川では,河床勾配が急激に緩やかにならなければ河川は蛇
返信する
同 つづき (竹本弘幸)
2011-09-18 00:18:13
行が起きたのでしょうか?全く説明になっていません.
背後に巨大な円弧状の地形が認められ,直下には新しい歴史時代の崖錐と最前縁に緩やかな斜面を伴う地形と急流河川である事実は,第一に地すべり地形とその後の侵食過程と見るのが一般の地形・地質研究者の見解です.なぜ,巨大地すべり地形を河川の蛇行跡にしなければならないのでしょうか.地すべりを否定するために記述した,段差地形も歴史時代の何度かの土石流や崩落で埋まっただけです.この報告は,過去の土砂災害履歴も調査していないことの証明です.

疑問点11
 国交省公表の地質断面(図-11)が正しいとするなら,OkDAの堆積面高度が標高580mにあり,対岸の立馬(だつめ)地区のOkDAの堆積面とほぼ同じ高さにあったものが,50mあまりも高度に落差を生じたのでしょうか?その理由は,どのように説明できますか?

疑問点12
また,崖錐堆積物を最初に覆う火山灰層は,約1.3万年前以降の浅間山噴出物で,これを覆って重なるOkDAの年代が,なぜ約2.4万年前のものなのでしょうか?新しい時代の地層の上に,なぜ1万年以上も古い地層が重なるのでしょうか?これでは,縄文時代の遺跡から「携帯電話」が出土したから,その時代に携帯電話が開発されていたという論理と同じです.後から何らかの理由で埋めたのか,土砂崩れで捨てられたものが出てきたかということでしか説明はつきません.
もし,図-11が正しいのであれば,まさに河川の蛇行跡ではなく,巨大地すべりによる崩壊が起きて,OkDAが地すべりでずり落ちて現在の位置にあることを示すことになります.

疑問点13
 国交省公表の地質断面(図-11)では,崖錐堆積物の上に応桑岩屑流(OkDA)が覆っているとされていましたが,この緩斜面の工事現場で露出した地質断面は,応桑岩屑流(OkDA)の上に崖錐堆積物が覆うという全く逆の関係でした.なぜ,このような上下関係を誤る基礎的な間違いが指摘されるのでしょうか.

疑問点14
 上湯原地区には,新川原湯温泉駅が建設中です.この場所の安全性確保は,川原湯再生の要の場所です.この場所は古くから農地や森林としての管理が進み,過去の土石流の発生頻度も減少して安定化し始めていました.森林植生の回復と土壌も少しずつ作られてきました.
しかし,新たな道路と付帯施設の建設で地盤は不安定な状態となっています.新たに移転させた墓所にいたっては,何度も崩壊や土石流が発生したすぐ脇に作られています.なぜ,土石流対策や予防のためと称して危険な場所で災害リスクを高める工事をするのでしょうか?
なぜ,地元や観光客が利用する公共施設の建設現場の土砂災害履歴を調べないまま,このような誤った建設整備が進むのでしょうか.全く理解に苦しみます.

疑問点10-14をみても,国交省のダム官僚と地すべりの専門家の方々には,地層の層序認識が全く出来ていないのか,初歩的ミスなのか,ダム建設の安全対策が万全であることを示すための意図的解釈のためかわかりませんが,これは不正の隠蔽と同じことをしています.
 建設される公共施設背後の斜面崩壊・土石流発生の頻度・被害状況の履歴の検証意識がないことは致命的です.

⑮ 小規模な地すべり対策例(小倉)
 横壁地区小倉では,平成10年の集中豪雨の影響で小規模な地すべりが発生しており,規模は大きくないものの道路の変状等の影響があったことから緊急に対策工を実施している(図-12,図-13,図-14).
疑問点15
この場所での地すべりの原因も応桑岩屑なだれ堆積物(OkDA)直下もしくは熱水変質帯にできた不透水層の存在が原因(配布資料21左下画像)であり,地質調査の基本が守られていないことの証明です.

5 ダム貯水池の湛水にあたって
 ダム貯水池の湛水にあたっては,見落としのない様に,事前に貯水池全域を対象に再検討を行い,委員会の意見を伺いながら,必要な箇所での動態観測等を実施する予定である.
また,湛水とは関係ない地すべりについては,これまで個別の調査・検討・対策を実施してきており,必要に応じ,今後も個別対応を実施する予定である.
疑問点16
この解説文では,ダム湖の湛水レベル以上のものについては視野に入れていないことが判りま
す.しかし,応桑岩屑なだれ堆積物(OkDA)の分布や高度の認識がない上,OkDAで地すべりが発生した場合,その上部の地盤は不安定化することになり,隣接した地すべりブロック塊は連鎖して影響を受ける確率が高くなります.
疑問点17
 このような解説文を掲載することで,たとえ地すべりが発生しても予知・予測できなかったものとして対応するための予防線にしか受け止められません.
 全国で認められるダム湛水後の地すべりの対策状況を見ても何も生かされていません.さらにずさんな管理の付けを住民に払わせ,移転を余儀なくさせる中で対策工事と称して,どれだけの無駄な税金が各地で使われているか現実が示しています.ダム官僚の調査・管理能力を疑わざるを得ません.

6.応桑岩屑流堆積物ついて (OkDA)
<すべり面について>
 この応桑岩屑流堆積物の性状を委員会で検討した結果,粘土層などの挟み層は見られず,地層を構成する粒子は不均質で,大礫や小礫・砂などの粗粒分が大半を占めている(表-3,表-4参照)ことから,「応桑岩屑流堆積物内だけにすべり面が形成されることは考えにくい」と結論された.

疑問点18
OkDAの産状と流動・堆積機構をわかっていれば,同層内に連続する粘土層の挟みなど存在したり,形成されることなどないことは専門知識があればわかるものです.
ただし,この解説文で大きく抜けていることは,長野原町史にも写真で掲載されている「嬬恋湖成層」の巨大ブロックなどが「流れ山」を作っている事例があること,中之条盆地や前橋・高崎地区でも,このような湖成層のブロックが確認されています.湖成層ブロックが,吾妻渓谷の移転代替地の地下に存在し,段丘を開析している支流や吾妻川本流の崖地に近い場所にあれば,不透水層の役割を果たし,ダムに湛水して地下水が豊富になれば,局所的にブロックすべりなどが起きる可能性は否定できません.

疑問点19
表-3,表-4の粒度試験結果について
岩屑なだれ堆積物(=岩屑流)とは,ブロック間のマトリクスが元々不均質であることが最大の特徴であることですから,その認識があればこの試験検証の作業そのものは,あまり大きな意味を持ちません.同時に,応桑岩屑なだれ堆積物(OkDA)は,浅間黒斑山頂から吾妻川まで続く山麓堆積物が大きなブロックとして崩れてきたものですから,充填物の粒度特性は,どこの部分をどうサンプルとして採取するかで数値は大きくばらつきます.例えば,土壌ブロック・溶岩流ブロック・溶結火砕岩ブロック・火砕流ブロック・河川堆積物ブロック・土石流ブロック・湖成層ブロックなど様々な部分で変化します.
この数値だけを見ると,火砕岩ブロックばかりを中心に採取したものと想定できます.

<水浸した時の性状について> 表-5
疑問点18・19で述べたことと同じです.どこを取るかで数字は大きく変わりますし,変形実験も火砕岩ブロック部分を採取したものと思われます.応桑岩屑なだれ堆積物(OkDA)堆積物の特徴が理解されていれば分析検証結果は,土質工学・物性は大きく変わりません.

<表層崩壊について>
応桑岩屑流堆積物の土質性状はよく閉まっているが,凝集力が小さいため,部分的には水浸すれば波浪侵食などで崩れやすくなると判断している.
 従って,このような箇所については,必要に応じて表層崩壊を防止する表面保護工を実施する計画である.

疑問点20
この解説文では,すべての箇所を保護しなければならず,実施する場合には莫大な費用がかかることになります.また,応桑岩屑なだれ堆積物(OkDA)中や直下にも地下水を貯留してしまうため,化石化していた不透水層まで復活させることとなり,水抜きと管理が不十分ですと崩落防止の工事が,崩落や地すべりを誘発させる可能性も出てきます.

疑問点21
現在起きている林地区東側の現成地すべりでは,折の沢部分を埋め立てて,国道145号線を建設しました.また,八ッ場沢・温井・穴山沢など,吾妻川に流れる支流河川の多くで,埋め立てと水抜きを実施して,代替地や平坦地を造成しています.このようなケースの場合,水抜きが不十分であったり,地下水脈にされた水のながれが強制的に変わってしまった可能性があります.
最悪の場合,OkDAの分布する谷壁や直下に多量の地下水が侵入することになり,ダムを造らなくても土砂崩壊が引き起こされる可能性があるということは考慮すべきではないでしょうか.

疑問点22
応桑岩屑流(OkDA)の特徴は,浅間山麓で堆積した当時の堆積構造をそのまま残したブロックから構成されており,ブロックごとに特徴が異なります.その一方で,流下中に取り込んだ水分やブロック中に含まれた水分によりブロックは分割されたり,練られます.下流域に達するものほどブロック間を埋める部分が均質化や細粒化します.このため,ブロック間を埋める土砂の粒度分析が重要となります.仮に,細粒化した部分がダムを作り湛水したことで流出するとブロックごとダム湖内に落下する可能性が高くなります.林地区のすぐ下を走るJR吾妻線では,過去に起こったブロック崩壊の爪あとが谷頭部の随所に円弧状・碗状の崩壊地形として認められます(つづく).
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疑問点10の欠損部修正 (竹本弘幸)
2011-09-18 01:01:05
●疑問点10●
吾妻渓谷は,隆起量の大きな急流河川であり,谷を深く直線的に刻んでいます.このような河川では,河床勾配が急激に緩やかにならなければ河川は蛇行しません.いつ,どうしてそのような蛇行が起きたのでしょうか?全く説明になっていません.

背後に巨大な円弧状の地形が認められ,直下には新しい歴史時代の崖錐と最前縁に緩やかな斜面を伴う地形と急流河川である事実は,第一に地すべり地形とその後の侵食過程と見るのが一般の地形・地質研究者の見解です.国の研究機関である(独)防災科学技術研究所の公式見解さえ十分な根拠もなく否定しています.
 なぜ,巨大地すべり地形を河川の蛇行跡にしなければならないのでしょうか.地すべりを否定するために記述した段差地形も,歴史時代の何度かの土石流や崩落で埋まっただけです.
 この報告文は,川原湯再生の要でもある新駅建設地の安全確保に必用な過去の土砂災害履歴を今も調査していないことの証明です.
 
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