代替案のための弁証法的空間  Dialectical Space for Alternatives

批判するだけでは未来は見えてこない。代替案を提示し、討論と実践を通して未来社会のあるべき姿を探りたい。

本の紹介『自由貿易神話解体新書 ―「関税」こそが雇用と食と環境を守る』

2012年09月14日 | 自分の研究のことなど
 この間全くブログを放置しておりました。久々の投稿なのに手前味噌な話題になります。

 TPPに関連して、本を一冊出しましたので紹介させていただきます。本のタイトルは、『自由貿易神話解体新書 -関税こそが雇用と食と環境を守る』(花伝社、1500円)というものです。
 本書では、農産物と工業製品は財の性質が異なり一律に扱ってはいけないこと、自由貿易は失業と総需要不足をもたらすこと、穀物価格を不安定化させ飢餓リスクを高めること、熱帯林破壊や沙漠化や生物多様性の減少に帰結することなど、自由貿易論の諸弊害について理論的・実証的に論じました。その上で、グローバルな不均衡が破局的に拡大するのを防ぐ手段として関税は必要不可欠であることを訴えたものです。

 TPPが生み出す諸問題に関してはすでに多くの本が書かれてきました。しかしながら、自由貿易そのものを根源的に批判する本はまだ少ないと思います。本書では自由貿易システムに対する根源的な批判を試みました。
 また、これまでに出た自由貿易批判の本というと、ナショナリズムの観点から批判したものが多いですが、本書は自由貿易が日本のみならず全世界の労働者と農民と地球環境に与える破滅的な悪影響を論じました。グローバルな観点からの自由貿易批判です。

 無名の著者の本なので、あまり刷ってくれないですし、マスコミ報道を全面的に批判しているので、マスコミも書評したり紹介したりしてくれる可能性はまずありません。ふつうならば無視されて終わりという内容の本です。
 読者の方々の評価のみが頼りです。売れれば二刷りもしてくれると思います。「自由貿易って本当に良いことなの?」とか、「そもそも経済学って何かおかしいぞ」と疑問に思っている方々、ぜひご一読して下さると幸いに存じます。

 詳しくは、出版元の下記サイトをご参照ください。

 http://kadensha.net/books/2012/201209ziyuboueki.html

 以下、本書の構成を簡潔に紹介しておきます。

第1章「経済学と神話の信仰」:自由貿易に関する経済学の専門家とそれ以外の人々の認識は乖離しているという事実を確認し、なぜ乖離が発生するのか、その理由を考える。

第2章「自由貿易の神話と現実」:自由貿易を肯定するリカードやヘクシャー=オリーンの貿易論は、いくつもの非現実的な仮定の上に構築されており、非現実的な仮定のいくつかを現実的なものに置き換えるだけで、経済学者の主張する玉虫色の世界とは全く異なる不条理な世界が現れる。

第3章「関税自主権と産業保護をめぐる歴史的事実」:自由貿易と関税自主権に関する歴史を概観する。工業化を進めることのできた国は関税などの手段による保護措置が一定の期間にわたって存在した。他方で、関税自主権を奪われた国は植民地化され、一次産品のモノカルチャー経済構造になっていったという歴史的事実を確認する。

第4章「農産物貿易の自由化は飢餓と失業を生み出す」:農産物貿易を自由化してはいけない理由を述べる。農産物の自由貿易は世界中の小規模農家の経営破たんを促し、それが飢餓の増加と失業の増加を誘発し、農民のみならず先進国の労働者も大きな打撃を受ける。

第5章「自由貿易が生む環境問題」:自由貿易が熱帯林破壊や沙漠化等をもたらし、地球生態系そのものを存続の危機に追い込んでいるという事実を確認する。

第6章「自由貿易への代替案」:自由貿易システムに対する代替案の提示。



最新の画像もっと見る

4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
こちらの著書、今更ながら拝読させていだたきました (大久保隼人)
2021-08-25 02:17:15
 私は経済のことに関してはかなり疎いので、内容を完全に理解できたわけではありませんが、それでも、「自由貿易には多くの問題点がある」ということはわかりました。

 そこで気になるのは、以前、枝野さんがnoteというサイトで保護貿易を鎖国(この呼び方も長州史観的であり、本来は適切ではないのでしょうが、他に良い表現が思いつかないので使わせていただきます)とイコールであると考えておられるかのような主張をされていたことです。
 該当記事が見つからず、引用できなくて申し訳ないのですが、確か、「日本は食料自給率が低く資源も乏しいので保護貿易では成り立たない、自由貿易でないと……」といった旨のことを書かれていたと記憶しております。
 
 私としては、立憲主義やベーシックサービスなどの路線から、立憲民主党を支持したいと考えていますし、枝野さん個人に対しても、安倍さんの薩長同盟を賛美する発言を批判し、「保守を自認する方は奥羽越列藩同盟から見た歴史にも興味を持って」と主張されていた件などで好感を抱いてはいるのですが、この点に関しては、どうにも腑に落ちないという印象を受けました。

 それとも、TPPは元々旧民主党が推進していた(そしてそれに反対という公約を掲げて自民党が政権を取り返した……すぐに反故にしましたが)ということを考えると、立憲民主党は今でも自由貿易を推進する路線を取っている、ということなのでしょうか。

 自民党も立憲民主党も自由貿易路線となると、一有権者としてはどうしたら良いのかわからずに戸惑うばかりです。
返信する
コメントありがとうございます ()
2021-08-28 15:33:18
大久保隼人様

 枝野さん、もともと弁護士なので、経済学には弱いですからね・・・・・。
 それと、江田のさんに限らず、日本のリベラル派の弱さは、自由貿易を無邪気に信仰していることだと思います。保守の方が、必要となったら平気で保護主義に舵を切ります。
 立憲民主がベーシックサービスを本当に実現する気があるのなら、食料、エネルギー、環境、医療、いずれもある程度の保護貿易主義を実施しないことには実現しないことを自覚すべきでしょう。

 EUが実施しようとしている国境炭素税、あれを導入するこそ持続可能な経済を実現するためには不可欠な措置です。
返信する
Unknown (12434)
2021-08-31 20:08:53
【立憲民主党・枝野幸男代表に聞く】政権交代で危機的農政を打破
https://www.jacom.or.jp/nousei/tokusyu/2018/12/181213-36897.php
JAcom 農業協同組合新聞

【国民民主党・玉木雄一郎代表に聞く】SDGsと整合性ある自由貿易体制づくりを
https://www.jacom.or.jp/nousei/tokusyu/2018/12/181205-36826.php
JAcom 農業協同組合新聞

【日本共産党・志位和夫委員長に聞く】自給率向上を突破口 亡国農政の大転換へ
https://www.jacom.or.jp/nousei/tokusyu/2018/12/181206-36839.php
JAcom 農業協同組合新聞

【社民党・吉川はじめ幹事長に聞く】地方議会から安倍農政をただす
https://www.jacom.or.jp/nousei/tokusyu/2018/12/181212-36888.php
JAcom 農業協同組合新聞

>大久保隼人様

上の4つのリンク先がある程度参考になると思います。見ての通り農政に対する野党の見解なんですが、興味深いのは、立憲民主の枝野さんと国民民主の玉木さんは「保護」という言葉を使っていない点です。逆に残りの共産党の志位委員長と吉川幹事長は「保護」を口に出してます。
よく考えみたら奇妙ものです。普通なら前者二人も、「ある程度の保護政策を容認して農業を守るべき」ぐらいはいった方がいいでしょう。まるで、産業に対する政策で「保護」という言葉を使うのがタブーになっているみたいです。

ようするに、行き過ぎた経済自由主義が浸透している日本においては基本的に、「競争=善」で「保護=悪」という固定観念が深く根付いているわけです。それに縛られない政党は残念ながら本当に少数派なんですね。

あと一つかなり参考になると思うのは、志位委員長の保護主義に対する見解です。志位委員長はどうやら、「保護主義と呼ばれるにも値しない程度の当然の権利の行使を、保護主義だというのは本当に馬鹿げている」と主張したいらしいです。全くの正論です。日本共産党は見方によっては、保守派の良い見本にもなり得ます。
返信する
Unknown (12434)
2021-08-31 23:10:04
脱字が多くてすいません。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。