午後2時前、3月だというのに風が冷たい。数日前、上野公園は雪だった。
“没後400年 長谷川等伯 特別展”を東京国立博物館・平成館で見る。
Ⅰ 能登の絵仏師・長谷川信春。
長谷川等伯(1539-1610)は能登七尾に生まれる。父は染物屋。等伯は20代で寺に絵を納める絵仏師になる。七尾時代、彼は信春と名乗る。
「十二天像」(1、1564年)は最初期のものだが図像は精緻でキリリとしている。
「鬼子母神十羅刹女(ラセツニョ)像」(4、1564年)が色鮮やか。彼は法華宗の信仰があつい。「日蓮聖人像」(5、1564年)は色が美しい。
Ⅱ 転機のとき―上洛、等伯の誕生―
養父母がともに亡くなり1571年、数え33歳のとき彼は自身の才覚を試すため京に上る。その後、十数年、彼には不明の時期がある。当時全盛の狩野派などに学んでいたと思われる。
彼のデヴューとなったのが「山水図襖」(28、1589年)、等伯50歳の時の作品である。彼は住職が断ったのに勝手に寺の襖に描く。その優れた出来栄えが都で評判となる。唐紙の一面の桐の模様が雪に見立てられる。狩野永徳など狩野派への挑戦である。
Ⅲ 等伯をめぐる人々―肖像画―
「千利休像」(35、1595年)は利休の死の4年後に描かれた。顔の表情に厳しい精神性が示される。黒い衣服が印象的である。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/57/ad/423239cc6d7cc7c18fe337adaf231f38.jpg)
Ⅳ 桃山謳歌―金碧画―
国宝「楓図壁貼付」(41、1592年頃)は3歳で亡くなった鶴松の菩提寺の襖に秀吉の命により等伯が描く。狩野派を抑え長谷川派の全盛期がもたらされる。楓の周囲に秋の草花、萩・白菊などが細かく描かれる。抒情性を示し鶴松の魂を包み込むような優しさがある。
国宝「松に秋草図屏風」(42、1592年頃、2曲1双)は左右全体でまとめる意匠がモダンである。右側は松がダイナミックで下部の白い槿が美しい。左側は白、赤の菊が鮮やかである。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0c/c4/ad9739b13aa986cd389f219f74a786e1.jpg)
Ⅴ 信仰のあかし―本法寺と等伯―
「仏涅槃図」(48、1599年)は等伯61歳の作品である。息子を20歳でなくしその7回忌に制作された。縦10m、横6mと巨大である。釈迦の死を弟子、信者、動物、植物たちすべてのものが嘆く。
「日通上人像」(48、1608年)で等伯は亡くなった10歳年下の盟友を懐かしく描く。日通上人は法華宗の寺、本法寺の住職だった。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/67/a9/5ef6919bacdb974be830147b089f5faf.jpg)
Ⅵ 墨の魔術師―水墨画への傾倒―
50歳代半ばから等伯は水墨画の世界へ進む。
「山水図襖」(60、1599年)のうち、夏の図は松の下にいる人が団扇をもち涼しげである。春の図は梅が咲き家の中で人がくつろぐ。
「竹林猿猴図屏風」(69)は家族の手長猿がかわいい。
国宝「松林図屏風」(76)が描くのは霧の松林である。霧は描かれず、松のみが描かれその狭間に霧が浮かび上がる。日本の水墨画の最高峰であり幽玄を示す。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/01/12/dfa722688b8b10283a192d63f9e8c830.jpg)
見終われば上野公園はすでに午後4時。噴水のそばの避寒桜の赤い色がきれいだった。上野駅公園口まで歩く。
“没後400年 長谷川等伯 特別展”を東京国立博物館・平成館で見る。
Ⅰ 能登の絵仏師・長谷川信春。
長谷川等伯(1539-1610)は能登七尾に生まれる。父は染物屋。等伯は20代で寺に絵を納める絵仏師になる。七尾時代、彼は信春と名乗る。
「十二天像」(1、1564年)は最初期のものだが図像は精緻でキリリとしている。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/37/96/2f0f076445a36ef319e50705e517effc.jpg)
「鬼子母神十羅刹女(ラセツニョ)像」(4、1564年)が色鮮やか。彼は法華宗の信仰があつい。「日蓮聖人像」(5、1564年)は色が美しい。
Ⅱ 転機のとき―上洛、等伯の誕生―
養父母がともに亡くなり1571年、数え33歳のとき彼は自身の才覚を試すため京に上る。その後、十数年、彼には不明の時期がある。当時全盛の狩野派などに学んでいたと思われる。
彼のデヴューとなったのが「山水図襖」(28、1589年)、等伯50歳の時の作品である。彼は住職が断ったのに勝手に寺の襖に描く。その優れた出来栄えが都で評判となる。唐紙の一面の桐の模様が雪に見立てられる。狩野永徳など狩野派への挑戦である。
Ⅲ 等伯をめぐる人々―肖像画―
「千利休像」(35、1595年)は利休の死の4年後に描かれた。顔の表情に厳しい精神性が示される。黒い衣服が印象的である。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/57/ad/423239cc6d7cc7c18fe337adaf231f38.jpg)
Ⅳ 桃山謳歌―金碧画―
国宝「楓図壁貼付」(41、1592年頃)は3歳で亡くなった鶴松の菩提寺の襖に秀吉の命により等伯が描く。狩野派を抑え長谷川派の全盛期がもたらされる。楓の周囲に秋の草花、萩・白菊などが細かく描かれる。抒情性を示し鶴松の魂を包み込むような優しさがある。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2f/4f/034e57879db7590067972653dfea19c6.jpg)
国宝「松に秋草図屏風」(42、1592年頃、2曲1双)は左右全体でまとめる意匠がモダンである。右側は松がダイナミックで下部の白い槿が美しい。左側は白、赤の菊が鮮やかである。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0c/c4/ad9739b13aa986cd389f219f74a786e1.jpg)
Ⅴ 信仰のあかし―本法寺と等伯―
「仏涅槃図」(48、1599年)は等伯61歳の作品である。息子を20歳でなくしその7回忌に制作された。縦10m、横6mと巨大である。釈迦の死を弟子、信者、動物、植物たちすべてのものが嘆く。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/55/c9/f3b7209c480d94fad8c8d55ca8ff3e33.jpg)
「日通上人像」(48、1608年)で等伯は亡くなった10歳年下の盟友を懐かしく描く。日通上人は法華宗の寺、本法寺の住職だった。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/67/a9/5ef6919bacdb974be830147b089f5faf.jpg)
Ⅵ 墨の魔術師―水墨画への傾倒―
50歳代半ばから等伯は水墨画の世界へ進む。
「山水図襖」(60、1599年)のうち、夏の図は松の下にいる人が団扇をもち涼しげである。春の図は梅が咲き家の中で人がくつろぐ。
「竹林猿猴図屏風」(69)は家族の手長猿がかわいい。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/65/cd/e0d43683323e57c08e0046095431838c.jpg)
国宝「松林図屏風」(76)が描くのは霧の松林である。霧は描かれず、松のみが描かれその狭間に霧が浮かび上がる。日本の水墨画の最高峰であり幽玄を示す。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/01/12/dfa722688b8b10283a192d63f9e8c830.jpg)
見終われば上野公園はすでに午後4時。噴水のそばの避寒桜の赤い色がきれいだった。上野駅公園口まで歩く。