ニューメキシコ派との距離を設けるべく、空軍はネバダの機密区画を交際場として相手に提案する。
異星人がアメリカに駐留して始まる交際の規模は大型と既に空軍は認識していた。
空軍が、ネバダとの住所を相手に伝えた言葉は、“手前共が用意しております、このような場所はいかがでしょうか”だった。
それから三度目の面会時に米軍は返される、“その場所での交際に、いつでも参じるつもりでございます”。
約一カ月後、ネバダ地下は突如穿孔措置を受け、一週間で床や天井、壁の内装工事が無人進行で完了する。
“それでは、あちらネバダへ米軍が向かっても良い段階と見なしてよろしいでしょうか。”
“ええこちらは全く構いません。”
以降の段取りについては、現地での再会場所をお知らせする書簡以降、決めていく事にしましょう、とのやり取りになり、二者はネバダへ向かう。
三日後、連絡装置等、職務関連器具がネバダ地下の穿孔区画へどかどか転送されていく。
これらは、床、を認識しており、落下現象は伴わなかった。
間もなく、斥候役が一人、二人と、地球、月には属さぬ、職務意識が開闢せし異空間から降臨してくる。
まだ、地表との連絡孔はしつらえられてはいない。
空軍との連絡書簡が指定する日時での立ち話での面会がネバダ州内で回を重ねると、空軍が管理する機密基地領域での面会機会に、二者は同意する。
いわゆる“Area 51”へ面会場所が変わってから間もなく、地表への連絡孔が自動的に穿孔される。
異人種は、空軍を、駐留区画へと続くこの連絡孔の途中に設営されし、坂道ではなく平らな通路に案内する。
“この奥に、私達が駐留しており、あなた達との連絡を楽しみにしている、最中な領域が存在する。”
唖然とする空軍。
一体いつの間に工事を終えたのだろうか。
凄まじい科学段階だ。
空軍が異人種側へ提示した言質げんち、はこうだった。
“機密保持意識へ都合の良いとそちらが判定された、ネバダ州領域いずこを、ご自由にお切り取り下さい。”
アメリカ、治外法権領域、自由指定権を、確かに空軍は異人種へ譲渡していた。
平ら通路での二者の面会が続く。
日時を二者に画する書簡を空軍への郵送前に、執筆するのは、素性がいかがわしいと自認する大学准教授、自然科学者、天文学者達による、“異星人による叱責へ見せる反省の意”だった。
連絡孔での面会が続くと、二者の合意は、米軍側に電話交換機を連絡孔へ搬入させる。
この交換機は二者の関係がある時、米軍の物資保管庫に、突如転送してきた物で、米軍はいちいち相手に使用法を質問せずのまま、使用法を特定していった。
二百五十キロ、高さ七十糎、横一米程度の大きさのこの黒い箱状を、米軍は大型輸送車で四機、運搬してくる。
既に、これらはネバダに存在する機密区画、広域の部署への架電機能を設定されている。
重そうで運ぶのダリー。
そしたら重機が転送されてきてから、これを異人種は土方作業を操作し、地下へ運んでいったとさ。
こうして始まった、異人種によるアメリカでの駐留規模は、ニューメキシコ地下では類を見ない規模だった。
二者の関係は階梯を登っていく。
五十年台前半、空軍の機密職権者上層部広くが関係を知る。
こう、概括せざるを得ない組織構成人だった。
“ニューメキシコでの異星人達との関係が、遂に何らかの正統連盟所属なる異星人との交際を招来するに至ったようで、大いに慶ばしい事だ。
何に、ご関心をお持ちで地球をお選びになったのかは分からないが、とにかく丁寧に応接せねばならない。”
こうして、二者の関係に対する、染色が始まった。
ニューメキシコにまつわる、米軍が認めし、云うに云われぬ拙劣感、自己責任憤慨、不作法感が、憶測を通じ、想像せし異星人による侮蔑と、混濁していくが、成立せしは憶測ならぬ本物の劣等感だった。
ネバダ地下で異星人を向く空軍の視線は、暗くなっていった。
“何らかの、重量判定なる、叱責準備意識を、隠しているに、違いない。”
五十年台以前、米軍は既にニューメキシコで、多大な馬鹿をかましていた、と自認済みだった。
こうして二カ所、ネバダとニューメキシコを電話交換機は確かに繋いでしまう。
時を経て、ニューメキシコはいずれ不可避であった、大爛熟期を迎える。
刺激せし内分泌系は全て、アメリカ人の肉体衝動だった。
ニューメキシコ駐留組異星人は、アメリカ政経にとっての独立分泌系として、不可視なる軍事判断への隷従気質と特定していた。
彼らは、この茎の表面、朝露の眩しきを監視すべく、身を前に乗り出していた。
軍事方面に於ける判断、捉え方、雲上威光人印象を問う質問を陸軍高官に大量に投げ掛ける。
異星人は、対異星人緊張との礼装で、朝露の弾け飛び可能性を、陸軍の頭部内で、縛り付けるつもりだった。
ベトナム戦争に没入する陸軍の軍事拍動は、ニューメキシコでの異星人関係と直結していた。
ネバダ地下には現在既に、何者も眺望せずらしい、広大区画が開闢している。
ここが、現在の、アメリカが隠す異星人動態の唯一の本尊であり、一種ではない、複数の異星人種が代わる代わる、過去より駐留しており、未来にかけても、恐らくそうだと思われる。
ここを、交際場所として、異星人に案内したのは、空軍から選抜されし機密部隊だった。
“異星人知見を大量にばら撒かれながらの、肉体生理濃度濃き途方の溜息”。
これとの甚大指標に、月の裏の駐留区画で接したある異星人は、一切知的統御はせずで是、と放牧していた事態発生推移との隕石軌道に職務運命を委ねる。
そんな事が起きたとしても構わん。
ロズウェル事件を招来したのは、ニューメキシコ地下での、“米軍、異星人との乱交交際判定中指標”だった。
空軍は大騒ぎ事態により、これの内部へ、頭部ごと、閉じ込められる。
すると、つまりは異文明人とは、すべからく、これが可能な状態に至る。
“あなた達が陥っている事態が心配だ。
交際をして、安心をさせてやりたいところだ。”
この文を、送る。
“他者を馬鹿と見なし、交際を図っていく輩を気付いたかもしれぬ、との事態に至ったなら、とにかく同輩の棺が射出され、それによる大騒ぎに乗じ、馬鹿さ、を治療していく。”
一連の起点と実際行為とは、邁進あるのみ、たるべし。
自己の頭部を上から俯瞰し、評価や是正を適宜与えての、知的陶酔は伴わずべし。
空軍へ、挨拶書簡を送ったのは、“優秀な君への、謝礼と指令、亜混濁を互いに非弁別の時”を脳内に響く言葉と共に過ごしていった、ある軍事オタだった。
内容は、“貴軍にお会いしたい”。
書簡の交換が合意した、指定場所へ空軍が赴くと、夜空へ円形の発行体が降りて来る。
程なくすると、発行体が消えた地点から、複数の、小柄な異人種が歩いて来る。
緊張の空軍機密部隊、八名。
彼らは近づき、足を止める。
彼らの口の動きとほぼ同期し、頭に英語が響いて来る。
古典英語が駆使された、衒学な挨拶言葉だった。
“初めまして。
こちらは大量労働と、無駄な知的疲労に駆使される知性索引を繰る、文字の小枝の疲労折れを厭う者です。”
テキサス、ニューメキシコいずれかでの二者の面会は回を重ねゆく。
夜間、機密基地での立ち話は空軍の吐露を聞く。
“私達の社会の在り様は長らくそんなものですよ。
誰一人、疑問にすら思いません。
この概括を、疑う者は居ません。
私達の社会はこうも汚く、そして統御力が不足しているのです。”
“そうですか。
ならば、文明視野を提供致しましょう。
念を押しますが、私達は何も要りません。
返礼のお申し出があったとして、こちらはお断りするつもりです。
そちらからは、何も、要りません。”
空軍は彼らの口ぶりから、仕事への移行意思を察する。
“ニューメキシコに来られる異星人への反意は一切感じられない。
交際を始めたとしても、彼らへの不義理には当たらない筈。
ニューメキシコでの社会疲弊への言及を聞いたが、明らかにニューメキシコ派異星人との交際を憂いておられる。
根源は、社会の混濁なのです。
確かに、そう告白した。
お伺いしていく事としよう。
この方達が言われる、文明視野を。”
特務班に、処刑指標を示すのは、先行存在せし処刑指標だった。
一人として疑義を呈する事は出来ない。
処刑指標、始祖は、ネバダへの畏怖へ頑迷抵抗しつつ回る軍人組織の意識、ただこれだけだった。
これはまず、デンバー地下での勤務期間、これのみを条件として、処刑を推奨する。
二年半勤務していたならば、死んで下さい。
大した実務は期待されてはいなかったが、形式として、デンバー地下区画は司令官との役職が存在した。
海軍少将、陸軍中将、空軍大将が赴任している。
特務班は彼らに偽りの異動辞令を発行する。
あの基地へ異動する時期が訪れたので、身の回りを片付けて下さい。
司令官が睡眠中に、特務班は昏倒効能を備える化学薬剤を扉の下から噴霧する。
潰れて細い筒が操作により、白い霧を放つ。
ぷしゅー。
次に止めの薬剤を司令官に注射する。
二点共に、異星人が往来した履歴のあるユタ地下の物流区画へある時転送され、そして堆積していた、明らかに異星人文明意匠丸出しなる容器に包まれていた異星人文明由来薬品だった。
特務班は使用するこれらの処刑薬剤の素性を、“異星人に譲渡されたもの”と識別していた。
特務班はほぼ常に陸軍出身者で占められており、指揮官を大佐とする、少尉以上階級者で構成されていた。
海兵隊と空軍出身者が混じるのは稀だった。
軍人一人の処刑を審議するのは、大尉と中尉から成る四、五名単位による会議だった。
三、四票溜まれば、当人の処刑が決定する。
大佐、少将を、三十三以下である彼らは、ガンガン殺しまくった。
総務部区画の食堂には、有名な給仕が務めていた。
元海軍大将の内縁の妻らしいこの人は、料理の上手さと、稀なる人格の出来上がりぶりが食堂利用者に、大いに人気だった。
“会話の機会を得られただけで、大いに光栄だ”、“身の回りを心配する声を掛けられて嬉しい”、“家庭の話題を頭に宿す事の卓効と、その無害さを図る適切封筒を得る術を、巧妙に教えて貰い感動した、素晴らしい方だ”。
特務班は、機械的に彼女をこう評する。
“総務部で恐らく長らく、機密保持意識を地下から溶解しいく、無用な和み雰囲気を拡散する筆頭因子につき、要措置”。
“人間が非意図的に渇望する成長渇望意欲を人間ごとに見抜き、巧妙に養分をばら撒くかに見えて、自助努力を促す会話に終始し、正規任務貫徹意識に指向先をもたらす。
同類人間、培養花壇へと。”
五年間、食堂で勤務していた彼女は、新たに赴任してきた特務班職員、二カ月の審議により処刑が決定する。
“素晴らしいご評判に敬意を表したいので、応接室に来て頂けますでしょうか。”
彼女に勧めた高級茶には、異星人文明由来の薬効物が混入されている。
異常な速度で沸く睡眠欲に抵抗を始めゆく。
“どうしたんですか、大丈夫ですか。
ご病気をお持ちなのでしょうか。”
特務班職員二十九才は彼女、五十八才の死の寸前まで、職務に徹していた。
ネバダへの畏怖が在った。
そして、デンバー地下で、軍人組織が駆動した。
処刑指標は一度として、穏便化なされず続けだった。
機器は軍人が赴任してくるより先に、岩肌へ転送され済みだった。
そして、模擬街勤めの店員役を特務班が見逃してやった事実は、大いなる奇怪さを伴う。
勤続期間を咎め、さっさと殺さなかったのは何故か。
“模擬街の運営者については、別の特務班が処置の責任を有す、と信じていた”が答えらしい。
以上に、医療診断波形が存在する。
先行存在していた機器に、誘拐被害者を据え付けていった軍医意識を、最も簡明に言語で応える組織意識を診察した結果の。
デンバー地下区画へと続く昇降機は、区画の廃棄決定に伴う撤退時期に、下へ引き抜かれ、孔の上からモルタルを流し込まれている。
床には塗り固められたらしい形跡が残った。
撤退作業を担った軍人は、もはや特務班は仕事をせずの時期に在り、処刑はなされず、だった。
東に在った軍人用通路は、大きなトンネルが近くを走る車から、見えた。
大アクション事態を、デンバーの二つの小学校にまたがる、十一、二才の悪ガキ、十名が記録している。
中に、侵入しようとしていた。
別の日の夜を選び、“グループの中でのぶち抜け行為”を渇望した三名が侵入に成功する。
ハラハラドキドキ。
車両が、軍人が通って来る。
トンネル内の物資の影に隠れ、息を潜める三名。
ventilationが都合良く彼らを待っていた。
ここへ入り、身を屈めながら奥へ進むと、迷路の奥で決断を下す。
体一本しか入れない管で、上へ二米上がり、横へ進んでいく、と。
再び身を屈めながら奥へ進む彼らは、眼下の隙間の景色に気付く。
ターミネーターやらエイリアンで少年役が至っとらんかったっけ。
軍人が廊下を歩いている。
“異常なまでの緊張の表情が分かる”、が感想。
一人が寝そべってボケっとしとると、ついよだれを垂らしてしまう。
これが、垂れかけてのノビ、これを少年達は大いに咎めるが、声を上げてはならん。
やべーよどうしようこのアホが。
よだれは、下で立っていた軍人の帽子に、ゆっくりと着陸していった。
そして軍人は気付かない。
お前、カラスのフンか、ボケが。
この時既に別の軍人が声を潜め、天井に侵入者が居る、と耳打ちし合っていた。
少年、との素性に気付く。
四名で丁寧に声を掛ける。
何をやっているんだそこで、危ないぞ君達。
梯子を用意し、笑顔で迎えいれてやる軍人。
どんな作戦だい、これは。
俺達冒険してみようと思って、入口から入って来ました。
それから一週間、穏便な取り調べが続く。
そして特務班が出て来るまでもなく、彼らの処遇については、処刑以外の措置を、着想出来ない組織頭脳だった。
中を、見た。
中へ、入った。
次に、当惑する組織は、注入薬物を間違える。
少年達は深い狂乱に至る。
混濁意識の中、泣き喚く。
怒鳴り声が上がる。
お前達の仕事だろうが、さっさと処置を済ませろ。
次に、別の薬物を注射するが、量を多く間違えてしまう。
残り七名を、臨時に編成されし陸軍の機密保持部隊は殺すつもりだった。
地上でそれぞれの家庭を訪問し、何を知っているのか、質問していく。
判明、トンネルが在る事実以外は何も知らない。
“処刑せずであった、との判断履歴を残すとなると、存在を強固に確信している、特務班の視線がうざく感じる”、が処刑意思を構成していた。
七名を処刑する意思は、異界の者、高次存在が止めた。
終わり。
ある時、この医療室との関りを長らく望んでいなかった軍医が恐怖に駆られ、被験者の覚醒を調べずのまま、さっさとツマミを操作し、立ち去る。
十六才の少女が目を覚ますと、眼前には無数の刃が異常なまでに規則正しい空中配列で浮かんでいる。
“ドッドッドッドッドッドッドッドッ”
涙する少女。
ただ、悪意が辛かった。
この少女の場合、デンバー地下の一時拘留区画で、誘拐から一カ月半にわたり、多様な薬を飲まされたり、軍人との日常視野評価法を語り合ったりしたが、何が、どう、最悪だと評され続けた結果なのか、分からない。
十五秒後、少女の思考は時を止める。
何も考えられずに、至る。
刃が下へ、降りて、来ている。
少女は絶叫する。
室内には既に誰も居ない。
痛覚の開始から絶命まで要した時は、二十五秒だった。
死因は身体広域にて同時なる神経の甚大損傷による脳幹機能の停止だった。
デンバー地下の模擬街で析出される指標は長い洗練行程を経て、“若年者による軍人階級への献身的随行が不足しており、要対応”と唱えていた。
それに向けての義務、履行義務者、として徴兵されていくのは、軍事的恩典流入領域の、専門的学問分野、未決定段階にある通学中女子学生、らしかったがそれがカナダ人少女だった。
ベテルホースに据え付けられたのは、カナダ人の女子学生、またはカナダ人の中年期男性、との二属性のみだった。
十六才から二十三才、三十五才から四十七才。
カナダ、Winnipegから南西の、国境から近い領域一帯で、全員が誘拐、または米軍との深い関係へ懐柔されている。
誘拐を指示していたのは、陸軍所属の機密組織で、目的はただ“国家最重量事案への貢献”と認識しているまでだった。
当該組織は、指示の孫請けへ“被害者を一切傷つけぬよう”との条件を伝えていた。
誘拐被害者は、後に一人残らずが世から抹消されていく陸軍と昵懇の物流業者の手へ引き渡されていき、これによってデンバー地下へ被害者は連行されていった。
カナダ人達は、“戦地で傷付きし老兵”への若返り効能の輸血役を担っていった、とは言えなかった。
デンバー地下区画と関わった人間は、僅かを除いたほぼ全員が抹消されていったが、この指示の発行力は、デンバー地下が僅かに増幅したまで、だった。
ネバダ発の異星人動態への畏怖、を考慮しても、その僅か判定は、ほぼ全員の抹消結果を通じ、組織利益を米軍にもたらしておらず、その結果、大いに間抜けの相だった。
何故、デンバー地下への異動を命ぜられし米兵は、一人残らずが処刑されていったのだろうか。
処刑例と生存例を見てみる事にしよう。
模擬街
店員役:現在もデンバー地上で生存
清掃業者:地上で生存しとった
往来する軍人:総務部勤務
総務部
売店の店員:軍属関係を家系に持つデンバー市民だったが全員処刑
食堂の料理担当班:口の堅さで面接を通りし企業の秘書や軍人の妻、母、親戚が全員処刑
赴任してきた軍人:勤務開始から三年以内に全員処刑
軍医用居住管区
売店の店員:更に口の堅さで面接を通りし医療業界の事務だったが全員処刑
書店の店員:軍人家系人だったが全員処刑
軍医:四年から十一年以内に全員処刑
処刑担当特務班
ごく初期のみが空軍、海軍、海兵隊からの選抜組:二年半以内に、新たに赴任してくる特務班により必ず処刑
基本的な構成は以降、陸軍出身者:二年半以内に、新たに赴任してくる特務班により必ず処刑
死体処理部隊
ベテルホース清掃役:地下の居住区と地上の隊舎を往復しての生活を許容される程、機密保持意識をデンバー地下で信頼されていた。生活陸軍各基地から選抜されし、ほぼ全員がアラスカ州出身、オットセイと鯨解体業家系の北米へ十九世紀半ばに降臨してきた異界属性高し、全身これ倫理操作筋肉人:処刑されずのまま時を過ごし、六十台で精神疲労沈積死
何と今は、俺の傍で仕事しおった。
つえーぞこいつら。
合格だっ。
涙、逡巡、疲労による気持ちのぶれ、全てと毎秒、無言で戦う義務の出自を、自己の運命、と捉える際の言語操作を、他者を踏み潰しつつの陶酔文学上の涙と断じ、外界一切を、義務に利用せずべく、ただ毎秒、肉塊を用い、自己の肉のみを、何と強欲な事に、意志へと純化していく時を貪っていった。
涙すらなく、ただ、無言のまま、迷路の奥で、モップを動かす。
この人の人生は、ある日、ある夜、こんな地下深くで、絶叫を誰にも聞かれぬまま、ただ孤独に・・・・・・いちいち、文末を私が構成し、ピリオドを置いてはならない。
私の仕事の孤独を、この人の最期を利用し、モップを上に立て、体重をモップに乗せ、体重が自分の足から軽くなった、と笑顔を灯す事だ・・・・・・といちいち・・・・・・この人の最期の時が訪れたこの部屋で・・・・・・モップを動かす動きを頭で操作しつつ、毎秒確かにモップを動かす事だ・・・・・・。
人間にとって、仕事とは・・・・・・。
立ち向かうべき孤独とは・・・・・・。
何かを、教えられる機会を、一方的に得るとは・・・・・・。
運命の導き、国家が命ずる出征義務により、ある日ばらばらの肉塊へと変わってしまいし、少女の過去を想像し、涙を感じ、少女が抗えずであったらしい悲惨を、私がここで、空気でモップがけ仕草とのピエロを演じる事とは・・・・・・。
彼女に対し、今一方的に、生命拍動を主張している私の肉体とは・・・・・・。
これを用い、毎秒誠実に、悲惨な現実へ無力な道化へ、抵抗していくべくの手段とは・・・・・・。
与えられた仕事しかないのだ。
他に、いちいち、自分にとっての理想の仕事だ、夢の庭付き家屋だ、今この瞬間に、想像を運んで来て、誠実さを増幅してはならないのだ。
軍医は迷路に迷わない。
地図を、暗記していた。
“振り分け室”に到着した“献体”は若手の軍医、男性のみが、先の事態を知る権限には到達せず者が、昏睡中のカナダ人へ新たに昏睡薬物を注射し、四肢を拘束する。
両足首を、狂乱状態人用、捕縛紐で縛り、両手首は腰の裏で手の平を地面方向へ向かせつつ、縛る。
この段階から更に、別の素材の紐で上半身、下半身を可搬性を備える台に縛り付ける。
無数のとつが並ぶ操作盤が軍医の眼前に在り、一つを押すとそれに明かりが灯る。
寝ている人間、二人分のみが進む事が出来る空間へと続く高速滑車用線路に、カナダ人が載る台を乗せる。
発射指示のとつを押すと茶褐色の警告ランプが灯って回転し、ゆっくりと台は狭い空間へ進んでいく。
線路は直線、やや下降する坂道、湾曲、螺旋状下降を過ぎ去り、終着駅へと台を届ける。
“振り分け室”に投げ落とされた人間は、二割が昏睡中のまま、内臓摘出措置に逢い、殺害されていった。
四分が、“振り分け室”以前の薬物投与量を間違えたらしく、軍医会議の意思に反する事に、昏睡中ながらの、全身切断被害死に遭っていった。
残り、七割以上、全員がカナダ国籍人に選定された人数は、迷路の奥、ある医療室で昏睡から目が覚めた後、一時間から三時間もの、身体拘束感を味わった後に、死亡していく。
軍医、一名から九名は、担当を任ぜられた臨床例を知ると、総務部から連絡されている、おおまなか、到着時刻に担当する医療室を訪れ、献体の到着を確かめる。
大抵、一度目で到着に出会うので、担当軍医が、献体を機器に据え付ける。
方法は、壁から延びる線路の先の駅状で止まっている台の傍の大きなとつを、足でまず、押す。
すると車のジャッキ構造が、台ごと献体を上へ上昇させゆく。
上昇は機器の、寝台領域と平行の高さで止まるので、小階段を運んでくる軍医がそれに昇り、機器の寝台領域の手前側から、向こう側へ腕を伸ばし、献体を引き寄せる。
献体を縛る拘束帯を引っ張れば、容易と軍医は知っている。
この作業時、軍医は、沸く恐怖を、献体者のそれと比較し、消滅へ戦う。
“ドッドッドッドッドッドッ”
小階段の裏、機器の側面には、無数の細い孔が並んでいる。
“機器の駆動速度に、一度として高速性能発揮事例は存在しない”。
軍医は知っている。
操作ツマミは寝台の頭部領域と、自分からは遠い。
しかし。
しかし。
而して、そして、この接触上恐怖は本物。
厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ。
適当な間を置き、再び訪れゆくこの医療室で、軍医は機器を駆動させる。
「あ、やっと人が来たか。
おい、あんたら米軍関係者だろ。
何でだよ、何でだよ。
一ケ月以上おたくらに、あれだけ尽くして来たというのに、この仕打ちは何だよ。
何が気に入らなかったというんだ。
報酬だって、一度としてせびってはいなかったぜ。
俺は良客ではなく、良い仕事相手で、ずっとあんたらに・・・何か答えてくれよ。
俺をどうするつもりなんだよ。」
全裸で拘束され動けないカナダ人から見えるのは、一米ほど向こうに見える天井だけで、室内の様子は足音から察するしかなかった。
軍医はこの時、一度として口を聞かない。
しかし、被験者がまだ昏睡中との無言ぶりに室内で気付くならば、一団は踵きびす、を返し、立ち去っていた。
昏睡から覚醒済み、まだ、を調べる術は、適当、何も無し、だった。
一団は現況の指標に従い、機器駆動後も室内に残る、即座に退室する、を選択していた。
一人でツマミを、右へ、限界まで回す。
そして、退室する。
後の絶叫は、聞きすらしない。
機器の駆動期間、中期以降はこの段取りが通例となっていった。