吉村昭の小説

2011年07月16日 | 健康・病気

今朝の「ラジオ文芸館」(NHK第一08:05~08:40)は、吉村昭の小説「梅の蕾」だった。
朗読はNHKアナウンサーの黒沢保裕です。

岩手県三陸海岸のある過疎の村の村長の悩みは医師不在の村営診療所のことだった。
千葉県の癌センターに勤務するある医師が、その村の診療所を見に来る。
村長は、どうせ来てはくれないだろう、と最初から諦めていた。
しかし、医師は来ることを約束してくれた。
夫人が野草を摘むのが趣味で村で暮らしたいということだった。

村に来た医師は、適切な診察をして、村人の信頼を獲得していった。
男のお子さんが2人いて、長男が4月から村の小学校に入った。
奥さんは気さくな人で、村人とすぐ仲良くなった。
いつも山歩きをして野草を摘んでいた。
村長は、そうなったことに満足していた。
医師は、村の人から梅の木をもらいそれを診療所の庭に植えた。
その梅が毎年咲いた。

次男が小学校に入学した頃、奥さんの具合が悪くなった。
奥さんは村に来る前に白血病になっていた。
それで医師は、先の長くない奥さんの最後のときを、
好きな野草を摘むことが出来る村で過ごさせたいと思って村に来たようだった。
そして、医師の奥さんが亡くなった。
奥さんの静岡にある実家で葬儀をすることにした。
葬儀には、沢山の村の人たちがバスで参列した。
村長は、弔辞を読んだ。

葬儀が終わって何日かたった頃、村に医師がやって来た。
村長は、彼が村を出て行くのだろうな、と覚悟していた。
ところが、医師は村長にいった。
「子どもたちは妻の実家にあずけて、私は単身赴任でここで働きます」
「あなたは村を出て行くと思ってました」と村長がいうと、
「あんなに大勢妻の葬儀に村の人たちに来ていただいたのでは、
 私は村を出て行くわけには行きません」と医師がいう。
診療所の庭の梅に蕾が沢山ついていた。


こんなような小説でした。
私がラジオを聴いただけの記憶であらすじを書いたので間違っているかも知れません。
朗読の最後のところを聴いていて、私は涙が止まらなくなってしまいました。
「美しい岩手県三陸海岸が、大震災から早く復興することを祈ります」
と最後に小説を朗読したアナウンサーがいった。

「遠い幻影」(文春文庫)という本にこの短編はあるようです。
読んでみたいと思いました。
私は、吉村昭の小説をいくつか読んでます。
この人の小説は好きです。

コメント (6)
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