2010年 日本作品 139分 東宝配給
STAFF
監督:李相日
脚本:李相日 吉田修一 原作:吉田修一
CAST
妻夫木聡 深津絵里 岡田将生 満島ひかり 樹木希林 柄本明 宮崎美子
評判通りすごい映画だった。余韻に翻弄されまくり。
この「悪人」というタイトル、「人間」っていう言葉にも置き換えられる。「善人」に置き換えてもいい、と言っても過言じゃないかもしれない。
とにかく人間はすべて、善人であり悪人である。
視点や見る人の立場が変われば完全な「善人」も「悪人」も存在しないということ。
善意の塊とも言える人格の光代も、自分の欲だけで祐一の自首を引き止め、家族(妹)には多大な迷惑を与えている。
悲劇の主人公とも言える房枝だけど、視点を変えれば子育てを放棄するような娘を育て、祐一と正面から向き合わない。
パンフレットに載っている樹木希林のインタビューで、
「"騙される"ことによって、相手に罪を犯させてしまう」と、
悪徳業者の件ですら房枝を完全なる被害者とは扱わない視点は自分からは生まれてこない発想だったな。
なるほど、そういう考えもあるね。
ネタバレになりますが。
逮捕直前の祐一の行動は随分大胆な演出。
自分は、光代を完全な被害者に見せるため心を鬼にしての行動だったと解釈したけど、その真意は言葉では語られない。前後の祐一の表情からの予測にすぎない。
これは金髪に染めながらも温かい人柄がにじみ出てしまう役者妻夫木に、監督が賭けた演出だったとしか思えない。
モントリオール最優秀女優賞を受賞した深津絵里も良かったけど、妻夫木の演技にこそ脱帽でした。
二人とも二人共演した「ザ・マジックアワー」とは大違い。(笑)