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習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『グッドナース』

2022-11-17 10:53:09 | 映画
劇場公開中の作品だ。Netflixは時々こういう配慮をする。「これはよくできた映画だから劇場でも公開します」というサインだ。その場合僕は貧乏性なので、必ず配信で見て得した気分も味わう。というか、少ない情報でよく出来た映画を見つけ出すのは簡単ではないから、助かる。以前は鳴り物入りで『ローマ』とか『バワー・オブ・ザ・ドッグ』とかいう年間ベストテンレベルの作品もたくさん配信公開もされていたけど最近は不作 . . . 本文を読む
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『わたしのお母さん』

2022-11-14 20:21:43 | 映画
地味な映画だ。よくある漫画の映画化ではないし、オリジナル脚本。わかりあえない母と娘の確執を描く。こんな映画が商業映画として作られるのか、と驚く。しかも一応メジャー映画としてロードショーもされている。(でも公開初日の難波で客はたった4人だった)井上真央主演なのだが、重くて暗い映画だ。彼女はずっと無表情で暗い顔をしている。全く笑わない。(妹と3人で旅行した時、写真を撮るところで、示唆されてかすかに笑う . . . 本文を読む
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劇団大阪『空蝉が鳴いている』

2022-11-13 14:27:15 | 演劇
劇団創立50周年記念公演として、前回の「50周年記念戯曲募集作品」1位入選作品に続いて2位になったこの作品を上演する。なんだかそれって凄い。ふつう最優秀賞の作品が上演されるというのは当然のこととしてわかるが、2位作品を上演するなんていうのは破格の扱いだろう。そして出来上がった作品なのだが、前回の『医者の玉子』に劣らずこれも力のこもった作品になっていた。 今回、98歳の老婆を演じた名取由美子が素晴 . . . 本文を読む
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演劇集団よろずや『王征路』

2022-11-13 12:29:10 | 演劇
『王征路』という大きなタイトルが作り手の気合を感じさせる。寺田夢酔が「結成26年目にして初のシェイクスピア作品」に挑んだ大作がこの作品である。 昨年の『青眉の人』は素晴らしかった。これまでも何度となく見ている作品だが5年ぶりの再演となった完全版の完成度の高さには目を見張らされた。寺田さんは自分の作品を大切にして何度となく再演をくりかえす。そのたびに作品は新しく生まれる。大幅な改訂を加えることもあ . . . 本文を読む
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あうん堂『どうじゃろ いくまぁ』

2022-11-13 11:53:22 | 演劇
3年8か月ぶりの新作上演となるらしい。確かにそれくらいになるだろう。久々に見るあうん堂の芝居は胸に泌みた。ストレートでなんの気負いもない。自然体。さらりとした感触。そこには老人がこれから先、ひとりで生きていくことの寂しさがある。だけど、彼はそれに気づかないふりをしてそこにいる。静かな午後の日差しのようなお芝居だった。 杉山寿弥のたたずまいが素敵だ。老人を演じつつもそこには無理がない。演出の杉山晴 . . . 本文を読む
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岩井圭也『付き添うひと』

2022-11-13 11:24:59 | その他
いつもながらたまたま、だ。でもどこかで、なぜかつながる。これもまた昨日の『僕らはまだ、少し期待している』に続いて子供の虐待を巡る話。5話からなる短編連作スタイルの長編。5つの話を通して描かれるのは40歳になる弁護士、オボロの成長物語。少年犯罪の付添人弁護士としての彼の仕事を通して、彼自身が自分の過去と向き合い乗り越えていく姿が描かれていく。オボロは犯罪を犯した(巻き込まれた)少年少女を守り戦う。子 . . . 本文を読む
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木地雅映子『僕らはまだ、少し期待している』

2022-11-13 10:53:37 | その他
このタイトルは凄いと思った。「僕らはもう、ほとんど期待していない」ということの裏返しだ。そしてそこに込められたほんの少し残った希望。それにすがりつこうとする。いや、彼らはもうほぼ絶望しているのかもしれない。なのに、死なずに生きている。誰にも頼れない。なのに、誰かに頼ろうとしている。木地雅映子の小説を読むのはこれが初めてだが、このタッチはふつうじゃないなと思った。こんな不思議な感触の小説は初めてだ。 . . . 本文を読む
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額賀澪『ラベンダーとソプラノ』、吉田篤弘『それでも世界は回っている 2』

2022-11-10 12:51:42 | その他
額賀澪による初めての児童書。YA小説に限りなく近い作品はいくつも書いている彼女が本格的に児童書へ挑戦した。小学6年生の女の子の揺れる気持ち。クラブ活動と自分らしい生き方。大好きだった合唱、合唱部が嫌いになっていく。目標はクラブの中心メンバーとしてみんなを支えて全国大会で金賞を受賞すること。夢に向かい前進しているはずだった。なのにその至上命令がプレッシャーとなり、自分を見失ってしまいそうになった時、 . . . 本文を読む
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劇団未来『パレードを待ちながら』

2022-11-10 11:53:29 | 演劇
今回も2時間20分の大作だ。対面舞台で、中央に設けられた舞台は左右の壁に施された装置が見事。部屋の壁なのだが、この2方向に高く設けられた壁面と装置がこの部屋全体を象徴する。オルガンの置かれた下手側と祭壇やテーブルになる上手側。その2方向の間にアクティングエリアがある。5つの椅子を自在に動かすことで、登場人物である5人の置かれた状況や関係性が示される。今、彼女たちが何を思い何を感じているのか。前後か . . . 本文を読む
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劇団きづがわ『片づけたい女たち(再演)』

2022-11-10 10:45:01 | 演劇
いつものようにたった半年のインターバルを経ての再演である。これは近年のきづがわの必勝パターンだ。初演と再演というよりも同じ芝居を短い期間をおいて再上演する。1回目の公演を踏まえてそこでの経験を前提にして(新作のようにリニューアルするのではなく)しっかりとブラッシュアップして再上演するというパターンなのである。このパターンは2011年の『歌わせたい男たち』から始めて8作目となる。自分たちの作品を1本 . . . 本文を読む
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『パラレル・マザーズ』

2022-11-09 15:25:27 | 映画
これはなんだ? 内容はシリアスで重い作品になりそうな話なのにアルモドバルだからタッチは必ずしもそうではなく、激しくて勝手で散らかりまくっている。スペイン内乱と家族の絆。それをちりじりになった2人の母と娘の話を入り口にして描く。レイプにより妊娠し17歳で母親になる女と、39歳で不倫の子を産もうとする女。2人の子供が病院で取り違えられて、やがてそれに気づくも何もできない女と、そんなことに気づく間もなく . . . 本文を読む
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アケオーラコミンチャ『きのない月』

2022-11-09 15:01:56 | 演劇
昨年見た公演が素晴らしかったので、今回も楽しみにしていた。前作は1970年代を舞台にした少女漫画家ふたりのお話。今回もふたりの女がまるで漫才でもしているように延々としゃべくりまくるところからスタートする。このまま最後までどうでもいいようなことをしゃべるだけで終わるのではないか、と期待させる。だが、さすがにそれはない。平成さんと昭和さんがお互いの歴史の違いを語り合うなんていうお話。 2人の女たち。 . . . 本文を読む
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『窓辺にて』

2022-11-08 19:11:29 | 映画
今泉力哉監督の最新作であり、最高傑作。こんな地味な話なのに2時間23分の長編。だが最初から最後まで全く飽きさせない。それどころか、もうこれで終わりなの、と不満になるほど。さりげなく、あっけなく終わる。まだまだ見続けていたい。彼らのその後の動向をずっと見ていたい。それくらいに魅力的で飽きない映画なのだ。 とってもさりげない見せ方だ。そっけないほどに。でも目が離せない。こんな気持ちってどういうことな . . . 本文を読む
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山本文緒『無人島のふたり』

2022-11-08 18:11:12 | その他
人生最期の4か月の日記である。意識的に綴った。これが本当の声。作家として出来ることをする。というか、したいことをする。書き続けることが作家としての生き方だから。書いていたいと思ったんだ。毎日何を思い何を感じたか。フィクションではないほんとうのことを、ありのままに書く。今はもうそれしかできない。でも、それは彼女の書く最後の作品だ。自分のために書いている。自分と夫との最後の日々。自分が死んでも彼は残さ . . . 本文を読む
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益田ミリ『小さなわたし』

2022-11-08 17:37:42 | その他
益田ミリの自伝的エッセイ風小説。誰にでもあった小学1年生だった頃。その一年間の日々の思い出を綴る。でもそれは懐かしい思い出の記録(記憶)ではなく、まるで今、初めてそこにいるように鮮やかな時間。その日、その瞬間の数々が短いエッセイとして綴られていく。 春から始まり冬までの日々のできごと。「大人になれば今日のことを忘れてしまうのかな。」という冒頭の一文から一気にこの世界に引き込まれていた。ページを繰 . . . 本文を読む
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