goo blog サービス終了のお知らせ 

習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

iaku『はぐらかしたり、もてなしたり』

2025-07-13 05:59:00 | 演劇
横山拓也待望の新作は恋愛コメディ。『結婚しない女』という当時は衝撃的なタイトルの(もちろん中身も)映画が生まれてから50年。今ではそんなの当たり前になってしまった時代を背景にして、妙齢の男女の恋を描く。20代の若いふたり、40代になる男女。50代の元夫婦。3世代が入り乱れてまさかの展開が続く恋愛から結婚にまつわる物語。結婚、出産によって仕事を失った19歳だった若妻の20年後を演じた竹田モモコが素晴らしい。今回の8人によるアンサンブルは見事だったが、その核に彼女がなった。この作品は彼女がかつての職場の先輩(ひとり暮らし)の介護のために家を出るところから始まり、2年後、介護を終えて帰ってくるところから本格的に始まる。

4組の男女が展開する、離れて、つながって、また離れていくドラマ。お話はとてもよく出来ている。わざとらしくない。もちろん自然というわけじゃなくて、微妙なバランスで上手く作ってある。これは確かに恋愛コメディだ。テーマを明確にしない。エンタメ作品寄りの作品になった。だけど、今の時代の恋愛というものが、横山さんの視点から見事に描かれて設定力のあるお話に仕上がっている。

柴田隆弘による舞台美術、空間造形も見事。これまでだって何度か階段状の高低差を使った芝居はあったが、今回はここまでやる迷路のような空間がいい。彼らにとっての今、見えない気持ち、この芝居が描く迷宮を抽象化して象徴する。そこにはテーブルを置いたアクティングエリアが5ヶ所もある。階段を登って降りて立ち止まっての芝居もある。さまざまな局面をその空間に提示する。

間断を入れずに次々と彼らの今をほぼ同時進行で見せていく。ほんの数日のお話である。妻が出て行って2年。彼女が家に戻ってくる。それをどう迎えたらいいか、わからない夫の話がメインとなる。結婚して20年。娘も成人して家を出て行っている。妻がいなくなってひとりぼっちで寂しい。だけどそんなこと誰にも言えない。だからモト妻(彼は再婚)と連絡を取り、彼女とヨリを戻していた!

お話はモト妻の恋愛、娘の恋愛、妻の親友の恋愛を描く。タイトル通り、そこでは彼らが、はぐらかしたり、もてなしたりして、そんな恋愛を通して人生と立ち向かう姿が描かれる。

横山さんはこのこんがらがっていく人間模様を冷静に捌いていく。オムライスから始まってちゃんとオムライスに帰着する。ほろ苦いラストが心地よい。





コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 浪速グランドロマン『星の吐息』 | トップ | 『ゴーストキラー』 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

サービス終了に伴い、10月1日にコメント投稿機能を終了させていただく予定です。
ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。