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映画・演劇のレビュー

『わたしのお母さん』

2022-11-14 20:21:43 | 映画

地味な映画だ。よくある漫画の映画化ではないし、オリジナル脚本。わかりあえない母と娘の確執を描く。こんな映画が商業映画として作られるのか、と驚く。しかも一応メジャー映画としてロードショーもされている。(でも公開初日の難波で客はたった4人だった)井上真央主演なのだが、重くて暗い映画だ。彼女はずっと無表情で暗い顔をしている。全く笑わない。(妹と3人で旅行した時、写真を撮るところで、示唆されてかすかに笑うけど)だからこれはよくあるようなホームドラマではない。ほのぼのとした心温まる家族映画ではもちろんない。ラストに至っても母との和解もない。でもふたりは喧嘩をしていたわけでもない。

母と娘のすれ違う想い。どうしようもない違和感を抱えて生きてきた。幼い頃から今でも、だから30年以上。母を受け入れきれない。嫌いなわけではない。まさか虐待されていたわけでもない。ほんとうは大好きだ。だけど、愛せないし、愛されていない、と思う。彼女は3人姉妹弟の長女だ。妹や弟は母に対して彼女のようなわだかまりは抱いていないようだ。

どうしてこうなったのか。わからない。直接母に気持ちをぶつけたらいいのに言えない。実の母親なのに、である。60代の母は明るい。誰とでも仲良くなれる社交的な性格だ。父の死後、3人の子供たちを一人で育てた。そんな母の娘なのに彼女は自分を表に出せない。母は息子夫婦と同居している。息子の嫁には遠慮して強く言えない。ボヤを出して自分の家なのに嫁から追い出される。仕方なく彼女のところにやってくる。そこから話が始まる。

見ていてもどかしい。ずっと暗い顔をしたままうつむいてなにも言わずにいる。そんな彼女の姿を見続けるのは心苦しい。ちゃんと自分の気持ちをしゃべれよ、と怒鳴りたくなる。伝わらなくてもいいから言葉にしてみろ、と思う。でもこの子はそれができない。母は彼女に言いたいことを言うのに、彼女は何も言わないで心に秘めておく。そんなのずるい。そして、ほんとうの気持ちを伝えられないまま、いきなり母は死んでしまう。終始もやもやがくすぶり続ける映画だ。でも、そんな映画なのになぜか嫌いではない。鬱屈する想いを受け止めてしまう。


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