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経済の最新情勢から、世界の裏側、そして大人の為のアニメ紹介まで、体当たりで挑むエンタテーメント・ブログ。

知っている様で知らない日本国債②・・・インフレは抑止出来るのか?

2011-01-20 06:48:00 | 時事/金融危機


■ 日本の本当の国債発行額 ■

JB PRESSの山崎 養世氏の記事は必読です。

「2011年、戦後最大の経済危機が訪れる3月危機を乗り切れるかが第1関門、次は6月・・・」

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/5170

① 予算案の国債費44兆円は新規発行額のみ
② 既存の国債償還の為の「借換債」は103兆円もある
③ その他「財投債」が15兆円ある
④ 2010年度の日本の国債発行額は162兆円

⑤ 2009年度の一般税収は37兆円

これだけ見ても、日本の財政は「終わって」います。
債務超過の企業が粉飾決算して、親戚からお金を借りまくってどうにか倒産を免れている状態です。

■ 企業と国家は違う ■

ここで出てくるのが、「企業と国家は違う。通貨発行権を持つ国家の借金(国債)は国家の資産である」という理論です。

上の山崎氏の記事も含め、リフレ派に多く見られる理論は次の様なものでしょう。

① 財政破綻が確実になたら日銀が銀行や郵貯の国債を全て買い上げる
② 新規国債を日銀が直接引き受ける
③ 長期国債の発行を止め下落リスクのない短期国債と金利連動国債にすべて切り替える。
④ 日銀のバランスシートは債務超過となるが、その分円を発行すれば良い。
⑤ 国債が円になるのだから、国の債務は国の資産である。

その根拠は第二次世界大戦後のアメリカにあるようです。

① 大戦後、アメリカはGDPの140%に上る債務が残った(軍債など)
② FRBは国債を全量買い上げた
③ 供給されたドルが旺盛な民間投資を生み出した。

■ 何故、戦後のアメリカでインフレが起きなかったのか? ■

何故GDPの140%にも上る国債をFRBが購入しても、戦後のアメリカはインフレにならなかったのでしょうか?

山崎氏の記事では次の様に書かれています。

<引用開始>

一方、金融機関に供給した資金は適切に吸い上げてインフレを起こさせない、という方針を立てた。

 当時の米国はその通りに実行した。FRBが金融機関から戦時国債を買い取った。一方、FRBから資金を得た民間金融機関は旺盛な民間投資を実行して、米国経済の黄金の50~60年代の高度成長が始まった。

 国債全量買取の終了時に生まれたFRBと財務省の合意がアコードだ。最大の危機は成長への大チャンスに変わった。米国のすごさだった。

<引用おわり>

しかしこれだけではインフレがどの様に抑止されたのか良く分かりません。

ここからは私の勝手な推測です。

① 金利によって銀行のドルをFRBが吸い上げる
② ブレトンウッズ体制確立の為、世界中から金を買い上げる過程でドルが金に変わる
③ ドルが国債決済通貨の地位を確立
④ 海外の旺盛なドル需要がFRBの発行するドルを吸収

はっきり言ってこれこそ現代の錬金術です。

■ 誰も要らないドル ■ 

FRBはQE2で国債の買取に踏み切っています。
又、戦後と同じように財政の危機を乗り切るのではないかと山崎氏は書いています。
しかし、当時と現在では国債を巡る状況が全く異なります。


① 第二次大戦のアメリカの戦時国債の買い手は、米国民。
② 現代の様な債権市場は存在せず、長期保有が前提であった。
③ 国債市場が未発達なため、国債の暴落は発生しなかった。

しかし、現在は国債市場が発達し、国債の価格(利率)は投機的な取引によって決定されます。さらに、現在のアメリカ国債の所有者は、ほとんんどが外国勢です。

ドルの過剰供給が今でも問題なのに、FRBが国債の全量買取を決定すれば、投資家達も中国も米国債をわれ先に手放して、米国債は大暴落します。

1945年当時と違い、現在は誰もドルを欲しがらないのです。

■ 誰も要らない円 ■

現在のアメリカに比べれば、現在の日本の方が戦後のアメリカの状況に似ています。

しかし、円は基軸通貨ではありません。

① 日銀が国債を全量買い上げる
② 日銀に新規国債を全量引き受けて、長期金利を抑制する

ここまでは上手く行きそうです。
問題は市場に出回った円を上手く回収できるかです。

① 円の信頼が揺らぎ、国民は現物資産購入に走る
② 銀行に人々が殺到し、大量の円が市中にあふれ出す
③ インフレが発生する
④ 国債の発行額がウナギ上りになる

あれ、これはハイパーインフレじゃないですか・・・。

■ 預金封鎖と資産課税 ■

確かに戦後日銀と政府はインフレ政策を取りますが、それは年率400%程度で、ハイパーインフレと呼ばれるようなものではありません。

戦後日本では預金封鎖と資産課税でハイパーインフレを防ぎました。

① 日曜日の新聞紙面で預金封鎖を告知
② 翌日、月曜日から預金封鎖
③ 預金引き出し額を生活費程度に制限
④ 新券を発行して、市中の旧券を無効化、回収。
⑤ 資産課税20%により富裕層の資産を国家に供出させる。

簡単に書きましたが、詳しくは福島隆彦氏の「預金封鎖」を読めば良く分かります。

■ 紙幣は信用の上に成り立つ ■

リフレ派の主張には、「紙幣が信用通貨である」という観点が欠落しています。
確かに中央銀行は無限に紙幣を印刷できますが、そんな「紙くず」に信用はありません。
当然人々は貯蓄よりも、現物資産に変える為、インフレが発生します。

日銀や銀行が紙幣を回収しようとして金利を上げても、人々は預金を引き出して資産保全に走るでしょう。

何事にも閾値が存在しますから、ではどのくらい円を発行すれば適度なインフレで収まるのかはやってみなければ分かりません。

アメリカや欧州を見ても過剰供給された通貨は需要に結びついていません。

有効需要が不足する中で供給される通貨は、金融市場に流れ込み新興国でインフレという新たな危機を生み出しています。

■ FRBの国債買取は銀行救済 ■

QE2におけるFRBの国債とMBSの買取は、第二次大戦後の国債買上げとは意味が違います。

当時の国債の所有者は国民でしたが、現在は金融機関です。
QE2は金融機関を救済しているだけです。

QE2が終了して金融機関から米国債やMBSというリスク資産が消えた時、アメリカは堂々とデフォルトを宣言するかもしれません。

朝日新聞は地に落ちた・・・かつてここまで酷い捏造があったか?

2011-01-18 02:14:00 | 時事/金融危機


■ 日本の米価が中国の米価の1.4倍というウソ ■

先日「労働生産性は低い方が良い?・・・逆転の発想」を書いていて不思議な事に気付きました。

「日本の米価は12,000円/60Kgで、中国の最近の米価は10,000円/60KgだからTPPで関税を撤廃しても集約化が進めば日本の農業は大丈夫」という記述が色々なブログに現れる事です。

ちなみに旱魃で米価が急騰したと言われる2009年の中国の米の小売価格が4元/1Kg。17.5円/1元の現在のレートで換算して70円/1Kg、4,200円/60Kgです。

日本に輸入して輸送コストが掛かっても、10000円/60Kgにはなりません。10,000円/60Kgという価格は関税を掛けた後の価格でしょう。

さらに日本の12,000円/60Kgは生産者米価です。

■ 朝日新聞の社説がデマの元凶 ■

色々な議員の方もこの数字を使われていますが、色々探してみたらデマの元凶は朝日新聞の社説でした。

次のブログに詳しいので 転載させていただきます。

<引用はじめ>

http://www.juno.dti.ne.jp/~tkitaba/opinion/101221.htm

農業情報研究所 今日の話題:2010年12月20日

TPP参加と農業は両立できる 朝日社説が暴論

 今日の朝日新聞社説によると、例外なしの貿易自由化を実現するTPPへの参加と日本農業は、「米価維持のためにコメの需要減に合わせて水田の作付面積を減らす官製の生産調整策」を廃止し・「零細農家も補償」する戸別所得補償制度を改めることで「農業の大規模化によるコスト削減」を促す農業改革」で両立できるそうである。「本来、高品質で定評のあるコメは今後ふくれあがるアジアの富裕層向けに輸出できる潜在力がある。遅ればせながら農水省は今月上旬、中国の国営企業とコメの対中輸出について覚書を交わした。今後、大いに期待できる。778%というコメの高関税をなくし輸入米に門戸を開いても、日本のコメが国内市場から締め出されるようなことは考えにくい。反対論者が反対理由に挙げる内外価格差は接近してきた。国産米価格は60キロ当たり約1万3千円だが、中国産米の輸入価格も10年前の3倍となって1万円超だ。・・・・・・「農業が輸出産業の犠牲になる」という発想を乗り越えたい。グローバル市場を相手に日本農業を再設計すれば、貿易自由化はけっして怖くない」」ということだ。

 一つ根拠を質したい。「中国産米の輸入価格も10年前の3倍となって1万円超だ」はどこから出た数字なのだ。財務省貿易統計によれば、2009年の中国からの精米輸入価額は64億2300万円、輸入量は8183トン、従ってトンあたり輸入価額は9万4750円、60キロあたり5700円弱である。2010年の10月までの輸入についても同様にして5500円ほどだ。1万円超などという数字はどこから出てたのだろうか。ついでに言えば、将来はTPP参加が予想されるタイの精米の2009年の輸入価格は、60キロあたり、たったの1573円である。 TPP参加と農業が両立するためには、日本の農業の根幹をなす稲作が、「改革」によってこのようなコメの国際価格までの米価下落に耐えられるほどの「コスト削減」を実現せねばならない。前にも書いたように(TPPをにらみ農家の大規模化を促進 鹿野農相 日本農業破滅への道,10.11.20)、日本の米生産費は、農水省米生産費調査(平成21年)で知ることができる最大規模の15ヘクタール以上作付農家の平均でも1万円を超えている。平均1.5ヘクタール程度の1経営あたり作付面積を10倍に増やしても(245万ヘクタールの日本水田のすべてをたった245000/15=16万3333の経営が耕すほどに「改革」を進めたとしても)、中国米輸入価格の倍、タイ米輸入価格の7倍もの生産費がかかる。社説が暴論であることは明らかだ。

 社説は「農林水産省や農協は、TPP参加で高関税という防護壁を失えば、「国内農業は壊滅的打撃を受ける」と主張する。だが、改革による生き残りと再生への道を歩むべきではないか。 TPP問題が浮上するずっと前から、農業は改革の必要に迫られてきた。働き手が平均66歳と高齢化し、後継者不足も深刻で、あと10年もすれば国内農業は自壊しかねない。 こうなった要因の一つが農政の基軸だった減反政策だ。米価維持のためにコメの需要減に合わせて水田の作付面積を減らす官製の生産調整策である。40年間で総額7兆円の税金が投じられたが農業所得は20年前から半減した。 減反の最大の罪は、創意工夫と大規模化で自立しようと努力する主業農家の足を引っ張ってきたことだ」と主張する。

 TPPと農業―衰退モデル脱却の好機だ 朝日新聞 10年12月20日

 コメ消費減退からくるコメあまり・米価下落、その結果としての農業所得・雇用の喪失と農地潰廃・耕作放棄をいかに食い止めるかは農政の最重要課題であったし、今もそうである。このままでは、日本から田んぼが消えてしまう。だからこそ、減反、生産調整(と所得補償)、それで浮いた水田を農地として維持し続けるための転作奨励、水田への稲作付を維持するための飼料用等「他用途」米利用拡大策、規模拡大促進など、このような結果を回避するためのさまざまな施策が考案され、実施されてきた。それは、必ずしも成功を収めているわけではない。麦や大豆への転作の経済的・技術的条件は不備のままである。安価な輸入トウモロコシと競合する飼料用米の拡大の奨励(補助)は、財政を圧迫するばかりか、米国との深刻な貿易摩擦を引き起こす恐れがある。主食用コメ消費拡大のための努力も成果を上げていない。しかし、だからこそ、農業と農村の衰微、日本からの田んぼの消滅を防ぐためにはどうしたらよいのか、既存の諸施策の改善も含む真摯な農政論議が交わされてきたのである。

 ところが、TPP参加はこうした論議をすべて無意味にしてしまう。米価を国際価格まで下げて何事もないなら、すべての問題はたちどころに解消する。しかし、そんなことはあり得ない。TPP参加は、「PP問題が浮上するずっと前から」続いてきた農業衰微に拍車をかけるだけである。国産米消費は減り続け、米価は下がり続け、麦や大豆への転作や飼料米拡大はますます困難になり、さりとて所得補償や奨励金支給を増やせば財政はパンク、否、そうなる前に、新たな協定はWTO以上に補助金支出に規制をかけるだろう。もはや、いかなる政策も、農業衰微を止めることはできない

<引用終わり>

■ 国民を騙す大手マスコミ?! ■

朝日新聞の社説のTPPの議論において、中国米の輸入価格と関税を掛けた後の価格を間違えるはずがありません。少なくとも、社説を書く様な人物がそんなバカとは思えませんし、朝日新聞にだって記事のチェック機構くらいはあるハズです。

では何故こんな社説が掲載されたのか?

朝日新聞は国民を騙してもTPPを推進したいとしか考えられません。

同様の情報操作は、「温暖化問題」や「新型インフルエンザ」でも見られました。

朝日新聞に限らず、日本のマスコミは「マスゴミ」と言われても仕方が無い存在になりました。


東京湾で蜃気楼

2011-01-17 11:32:00 | 時事/金融危機




昨日(1/16)は朝に晴天なのに雪がちらつくなど、とても寒い一日でした。

あまりに寒いのでジョギングをサボろうかとも思いましたが、午後3時に意を決して検見川浜まで往復20Kmのゆっくりジョグに出発。

風も強く、体感温度はかなり寒く感じます。直ぐに家に帰ろうかとも思いましたが、霞ヶ浦マラソンにリベンジを誓っているので、我慢して走り続けます。

そんな私に天は素敵なプレゼントを用意してくれました。
何と、「東京湾に蜃気楼」です。

千葉マリンスタジアムを過ぎて、海を見張らせる場所から浦賀水道の方を見ると、何やら見慣れない陸地が空に浮いています。さらには黒い雲の様な物も浮かんでいます。

「蜃気楼??」と一瞬思いましたが、まさか東京湾で見えるはずはありません。
しかし、見れば見る程不思議な光景で、カメラを持っていなかったのでしっかり目に焼き付けてきました。(上の写真はネットから拝借いたしました)

帰宅後ネットで検索すると、何と同じ光景が「東京湾の蜃気楼」として紹介されています。

昨日の様に大気が冷え込むと、海水に暖められた下層の大気と、上層の冷たい大気の間に連続的の屈折率の変化が発生します。この屈折率の変化が光を曲げて下位蜃気楼という現象が発生するそうです。

東京湾でも数年に1度くらい観測されるようです。



いずれにしても、寒さに負けずに外出した人だけが目に出来る自然からのご褒美です。

食料輸出大国アメリカの戦略・・・TPPとは何か?

2011-01-17 05:54:00 | 時事/金融危機


■ アグリビジネス ■

カーギル、モンサント、デュポンと聞いてピンと来る方は、国際情勢に興味をお持ちの方でしょう。この3社はアメリカの食料戦略に深く関わっています。

アメリカでは農業関連産業の事をアグリビジネスと呼びます。食物売買や加工はもちろんの事、種苗、農薬、肥料、備蓄など多くの産業を含んでいます。

■ 農業輸出大国 ■



上の表はアメリカの輸出の内訳です。

① 食品の輸出            8.9%
② 自動車の輸出           7.7%
③ コンピューター・周辺機器・半導体合計  7.1%
④ 航空機              3.3%

武器輸出がどこに含まれるのか不明ですが、アメリカの輸出において食品が占める割合が大きい事が良く分かります・

■ 戦略的食料輸出・・・兵器としての食料 ■  

キシンジャーはかつてこう語っています。

「石油をコントロールせよ。そうすれば諸国の政治経済を自在にコントロールできる。食料をコントロールせよ。そうすれば人口をコントロールできる」

アメリカの食料戦略が明確になったのは1954年に制定されたPL480「平和の為の食料」からです。


PL480法案(正式名称:農業貿易促進援助法)

1.アメリカ農産物をドルではなく、その国の通貨で購入でき、
 しかも代金は後払い(長期借款)でよい。

2.その国の政府がアメリカから代金後払いで受け入れた農産物を
 その国で民間に売却した代金(見返り資金)の一部は、
 事前にアメリカの協議のうえ経済復興に使える。

3.見返り資金の一部は、アメリカがその国での現地調達などの
 目的のほか、アメリカ農産物の宣伝、市場開拓費として
 自由に使える。

4.アメリカ農産物の貧困層への援助、災害救済援助及び
 学校給食への無償贈与も可能である。

というのがPL480の概略です。途上国は自国通貨で食料を調達でき、さらには後払いで良い事から、アメリカからの食料輸入に飛びつきます。

一方、アメリカは3、と4の項目で学校給食への無償供与などを行い、その国の伝統的な食事を変革していきます。

■ 食料と言う戦略物資 ■

アメリカからの食料支援や輸入によって途上国では自国の農業が衰退していきます。一方で途上国では自給型農業から輸出型農業へのシフトが起こり、外貨が獲得できるコーヒーなどへの転作進んでいきます。

さらに、肉食文化が浸透する事で、飼料穀物の輸入が増えていきます。

一方、アメリカでは穀物の国家備蓄を止め、カーギルなどの巨大穀物会社の在庫が備蓄を担うようになります。彼らは穀物の供給料を自在にコントロールする事で、穀物価格を支配していきます。

カーギルは自前の人工衛星で各国の穀倉地帯の出来高を調べるなど、農業をビジネス化してゆきます。

■ 種子を支配する ■



上のグラフは世界の種苗メーカーのシェアを示しています。

断トツでトップのモンサントは元々は化学メーカーです。ベトナムで使用された枯葉剤のメーカーと言えば分かり易いかもしれません。

モンサントは自社の除草剤の販売を促進する為に、除草剤耐性の遺伝子組み換え大豆を開発し、大成功を収めます。さらに種々の遺伝子組み換え作物を開発して、かつての化学メーカーから、一大アグリビジネスの会社へと変身します。

遺伝子組み換え作物の安全性には、いろいろな疑問点があり、ヨーロッパや日本では遺伝子組み換え作物に対する不安が強いのも事実です。

■ 日本の玉ネギの90%が遺伝子組み換え ■

私達は豆腐を買うにも「国産大豆、遺伝子組み換えで無い」という文字を確かめて買います。

しかし、私達が日頃食べている玉ネギの90%が遺伝子組み換え品種である事をご存知でしょうか。

■ 日本の種苗メーカーを支配するアメリカ ■

農家に種や苗を販売する会社を種苗会社と言います。

園芸が好きな方は「サカタのタネ」や「タイキ種苗」などは草花の種の会社としてご存知でしょう。ところが、これらの日本の種苗メーカーのほぼ全社にアメリカの種苗メーカーの資本が入っています。

私達の知らない所で、日本の農業は着々とアメリカの戦略の支配下に置かれているのです。

■ F1シード ■

「F1シード」という言葉をご存知でしょうか?

植物を交配して出来た第一世代を「F1」と言います。世代を重ねる毎に「F2、F3・・」となっていきます。

品種改良には2通りの方法があります。

① 突然変異によって発生する優れた特質を有する品種を固定化する方法
② 優れた特質を持つ親品種同士を交配して種子を取る方法

F1種子は②の方法に当たり、日本では江戸時代から用いられてきた手法です。優れた特性を持つ親品種2種を同じ畑に植え、自家受粉しない為に手作業で片方の雄しべを全て取り去ります。そうして交配して出来た種子(F1)は両方の親から優れた特質を引き継いでいます。こういった手作業の交配は、他の花粉で受粉しないように、離島などで行われています。

こうして作られたF1が実を結んでF2の種子が取れても、F2はF1の特質を全て持ってはいません。優れたものと劣ったものが現れてしまします。ですからF1シードは毎年メーカーから買う必要があります。

■ 遺伝子組み換え ■

一方、遺伝子組み換え作物は②の突然変異を固定化する方法によった生み出されます。

極小の金で出来た弾丸の中に、目的の遺伝子の断片をつめ、作物の遺伝子に打ち込んで遺伝子を組みかえる方法と、作物の遺伝子の目的の場所に、目的遺伝子を組み込む方法があるようです。

組み込まれる遺伝子は、バクテリアの遺伝子など、本来植物が有していた遺伝子で無い事も多く、そういった意味では不自然な遺伝子を持った作物が誕生します。

組み込まれた遺伝子が特定の除草剤の毒性を分解する遺伝子であれば、特定の除草剤に耐性を持つ作物が誕生します。

除草剤や農薬メーカーであったモンサントは自社の除草剤に耐性を持つ遺伝子組み換え作物を開発し、農薬と種苗の両方で大きな利益を上げます。

■ 遺伝子組み換えの安全性 ■

「遺伝子組み換え作物が危険である」という発想は、この技術の「不自然さ」に由来する点も多くあります。

しかし、イギリスで遺伝子組み換えジャガイモの安全性を検証したローワット研究所のアーパット・プースタイ博士とそのグループは、遺伝子組み換えジャガイモを与えたラットで癌が発生する結果を得ます。彼はTVで遺伝子組み換え作物の安全性をインタビューされ、「選択できるものならば、我々が遺伝子組み換えポテトについて行っている研究結果に匹敵するような化学的証拠を目にするまでは、私は食べようとは思わない」とコメントしてしまいます。

それ以降、彼は研究所の職を追われ、彼のチームも解散してしまします。研究所に圧力を掛けたのは当時のブッシュ大統領から圧力を受けたブレア首相でした。

遺伝子組み換え作物の安全性を疑う根拠は、非常に「気分」的なものがありますが、遺伝子組み換え作物お安全性に疑問を呈する実験結果が抹殺されている可能性も否定出来ません。

■ 種子という兵器 ■

アグリビジネスは種子を戦略物資と考えています。

F1シードはその国に昔から伝わる在来品種を駆逐しています。
在来品種は繰り返し種が取れる事から、自給方農業には欠かせません。
反面、F1シードは毎年種を購入する必要があります。

遺伝子組み換え作物は、農薬や除草剤とセットになる事で、二重に農業を支配します。

■ 在来品種の保護 ■

有事が発生し、種子やセットとなる薬剤の供給をアメリカがストップすれば、その国の農業は大きなダメージを受けます。

アメリカの食料戦略に対して、各国とも無防備ではありません。


インドは組織的に在来小麦や在来作物の種子を保存・保護する動きに出ています。
日本でも在来野菜が見直される動きが現れました。

■ TPPという罠 ■

アメリカの戦略の根幹は「石油と食料」です。

TPPはそのうちの食料戦略に深く関わっています。

工業製品の輸出を確保する為に農業を犠牲にすると、後々大きなしっぺ返しを受けます。

アメリカが崩壊すれば、アメリカへの工業製品の輸出は激減します。
その時、TPPによって、日本の国内農業がダメージを受けていれば、日本は海外から食料を高いコストで調達する必要に迫られます。

農業は長い時間をかけて、土から育てる産業です。
一度衰退してしまえば、生産が回復するまでには時間が掛かります。

■ 小沢一郎の警告 ■

小沢一郎がフジテレビに出演して、「TPPというアメリカの戦略に振り回されるな」と警告したそうです。(私は見ておりませんが・・)

自民党は良くも悪くも、農家を保護してきました。

小沢無き民主党は、国内の農家の改革もしないまま、TPPに突き進んでいます。
TPPに対しては多くの国民が、内容を良く知らないまま「自由貿易」に賛成しています。

マスコミは伝えるべき事を伝えず、またしても「TPP賛成」というコンセンサスを作っています。

皆さんはTPPに賛成されますか?

PS

この記事にコメントを頂きました。ありがとうございます。
そのコメントでTPPの問題点を明確に説明しているYoutubeをご紹介いただきました。
大変分かり易いので、URLを貼り付けさせていただきます。

http://www.youtube.com/watch?v=nRmNJpUj5sI

具体的な数字を挙げられると、唖然としてしまう内容ですね。
菅内閣でいきなり降って沸いたTPP参加問題ですが、菅内閣の性格が良く現れているようです。

労働生産性は低い方が良い?・・・逆転の発想

2011-01-12 23:06:00 | 時事/金融危機



■ 産業構造の変化と農業人口 ■

アメリカに比べて集約化が遅れていると言われる日本の農業ですが、はたして集約化や労働生産性の向上が日本人の利益になるか私は疑問を持っています。

アメリカは18世紀に人口の95%が農業従事者でしたが、現在は2%となっています。
人口も少なく、農業以外の産業のほとんど無かった18世紀と現代を比較するのは強引かもしれませんが、工業やサービス業の隆盛と共に、農業から他産業へのシフトが発生しています。

一方、第二次大戦後アメリカ政府は農業を重要な輸出産業と捕らえ、戦略的な農業政策を実行していきます。アグリビジネスと呼ばれる農業企業に土地を集約させ、大規模機械経営によって生産性を高める事によって価格競争力を高めてきました。

■ 先祖伝来の土地を守る日本の農家 ■

一方、日本の農家は先祖伝来の土地を手放したがらず、又、山間地の農地も多い事から農業の集約化は進行せず(法制の問題も大きいですが)、兼業や高齢者の農業従事によって経営規模の小さな農家が生き残ってきました。

■ 農業改革で米の内外価格差は解消するの? ■

昨今、日本の農業が注目され、TPPに絡んで日本の農業の集約化を主張する議論が盛んになりました。

「やる気のある農家に土地を集約し、国際的に価格競争力のある農業を実現する」という尤もらしい主張がされています。多くの知識人が手放しにこの意見に賛成しますが、はたしてその結果どうなるかを正しく予見できる人がどれだけ居るでしょうか?

集約化によって日本のコメを輸出産業に育てる事が可能でしょうか?

答えはNOでしょう。価格差5倍~10倍に近い海外のコメに対抗する為には、日本のコメも生産コストを1/5にしなければなりません。八郎潟を始め、日本でも大規模農業を営む地域は存在しますが、1/5のコストで生産する事など不可能です。

昨年中国の旱魃のニュースで日本の米価が中国の1.4倍という情報がネットに流れているようですが、国際的な米価はタイ米が基準となっており1Kg当たり30円程度。中国は100%コメを自給しているので米価は比較的安定しており、2009年の旱魃で値上がりしても4元(70円)/1kg程度だという事です。日本の米価が230円/Kg程度(スーパーでは350円/Kgが中心価格ではないでしょうか)ですから、日本の米価はやはり海外と比べ5倍~10倍もします。

最近、私達はネットの情報を信用しがちですが、最近ネットでは「中国は旱魃の影響で米価が値上がりして60Kgで10000円になったとの情報が流れています。日本の米価は昨年12000円/60Kgだったので、日本も集約化を進めれば充分な国際競争力を持つ」との書き込みが多く見られます。

これは明らかに大間違いで、値上がりした4元/1Kgでも12.5円/元で換算すれば、3000円/60Kgです。

どこから中国の米価の偽情報が広がったのか分かりませんが、TPP推進派の多くがこの数字を信じている様です。常識的に考えて、物価水準が日本の1/10~1/20の中国で、コメの価格が日本の7割程度だったら、確実に暴動が起きます。


■ 集約化・機械化がもたらす雇用の消失 ■

工業の生産現場で自動機械に職人が職業を奪われました。同様の事が、農業でも発生します。

高い輸出競争力によって外貨を稼ぐ製造業に対して、輸出競争力の低い農業の機械化は、失業者を増やすだけの結果となります。

高度経済成長の時代ならば、農業から他産業への労働人口移動が可能でしたが、高失業率時代では、離農した人達は失業率を高めるだけの結果をもたらします。

少子高齢化で雇用環境は改善すると予測する人も多いでしょうが、製造業を中心に海外移転は確実に進行し、内需産業以外の確実に減少する事は戦後のアメリカを見れば明らかです。

■ 財政破綻後のシナリオ ■

日本の財政破綻リスクが新聞やニュースなどでも取りざたされていますが、破綻後の明確なビジョンを示した記事などは見かける事がありません。

国債を国内で消化している日本は、財政破綻してもデフォルトという選択肢は取れません。

① 日本国債がデフォルトる。
② 国債を大量に保有する銀行も生保も年金も経営破綻する。
③ 日本国民の貯蓄が消失する。
④ 厚生年金も破綻する。

これでは国民が納得しません。政府日銀の選択肢は「インフレ」しかありません。

① 日本国債が暴落する
② 日銀が金融機関や年金から日本国債を買い上げる
③ 700兆円以上の資金が市場に溢れる
④ 急激にインフレが進行する
⑤ インフレにより国債コストと年金財政コストが目減りする

インフレは年金世帯には恐怖ですが、住宅ローンを抱える現役世帯の返済負担は軽減します。(雇用が確保され、固定金利ならば)

インフレ政策は、「世代間格差」解消という効果も発揮します。

■ 大量の年金難民の発生 ■

日本の財政破綻は、大量の失業者と年金難民を発生させます。財政破綻した国や自治体が彼らを支える事は不可能です。

失業者と年金難民は、自活の道を模索しなければなりません。
とにかく、食べていかなければなりません。

■ 低労働生産性 = 雇用増大 ■

ここで注目されるのが農業です。

日本の農業は労働生産性が低いので、人手を必要とします。
耕作放棄地が多いのも、山間部の不便な農地で耕作する人手が無いからです。

職や年金を失った人達は、都会から農村に移動してゆくはずです。
農村では65歳は若者です。

■ 産業から自給自足へ ■

産業としての農業を考えた場合は労働生産性の高さは重要です。

しかし、福祉として農業を捉えるならば、労働生産性の低さが重要になります。
限られた土地で、より多くの雇用を作る為には労働生産性は低い方が良いのです。

日本は現在3人の現役世代が1人の老人を支えています。
近い将来、2人で1人の老人を支えざるを得なくなります。

財政破綻しなくても、不可能な事は目に見えています。

その為、政府は定年延長を指導していますが、企業にとって高齢者は「老害」以外の何者でも無く、若くて成長力に富んだ新興国の企業との競争に負けてしまいます。これでは、企業は日本を棄てて海外に逃げてしまい、さらに雇用と税収を失う事になります。

■ 日本の中に生まれる途上国 ■

世界規模の金融危機や、日本の財政破綻は、グローバリゼーションを加速します。

グローバリゼーションとは、アフリカやアジアの新興国や途上国が豊かになる事と同時に、日本などの先進国の中に、途上国が発生する事と同義です。

一部の都市部では高い国際競争力を背景に従来の先進国が存続しますが、地方はむしろ実物経済や自給型経済に後退してゆくでしょう。


■ 最小不幸社会とは ■

菅総理の言う「最小不幸社会」は、現状の福祉政策では財政コストの増大に繋がります。
農業でも補助金や助成金をばら撒き続けていますが、財政が破綻すれば継続不可能です。これでは「不幸の再生産」の連鎖を断てません。

一歩、地方の途上国化が不幸かと言えば、一概にそうとは言えません。

農村の高齢者は都会の高齢者と比較して健康です。
労働は体の健康を維持するだけで無く、生き甲斐を与え、精神の健康を維持します。
健康保険の存続する危ぶまれる状況で、健康こそが最大の幸福です。

物質至上主義の時代には現金収入の少ない農業は嫌われました。しかし、来るべき破綻後は若者を中心の価値観の大きな変化が訪れる事が予想されます。物質的な豊かさより、精神的な豊かさを求める人たちは確実の増えています。

尤も、自給型農業は人力や畜力に頼る農業です。肉体労働を嫌う人達が幸福になれる保障はありませんが・・・・。

毎度のバカ話ですが、歴史がいつも前進するとは限らない事は歴史が教えてくれています。