人力でGO

経済の最新情勢から、世界の裏側、そして大人の為のアニメ紹介まで、体当たりで挑むエンタテーメント・ブログ。

成長の限界を打開する方法は有るのか・・・イノベーションか破壊か

2020-04-14 11:15:00 | 時事/金融危機
 

色々とコメントを頂いていますが、お返事に替えて、又、トリトメの無い記事を書いてみました。コロナ自粛の暇つぶしに、突いてやって下さい。

■ 「実体経済」と「資産市場」という経済の二重構造 ■

現在のマネーを考察する時に気を付けなければならないのは、「実体経済」と「資産市場」ではお金の振舞い方が全く異なるという点です。

世界的な巨大な金融市場(資産市場)が存在しない時代は、お金の価値は「お金の量」と「モノの量」のバランスである程度決まりました。

しかし、現在の世に実体経済を越える規模の金融市場が存在する世界では、お金の価値は金融市場が決定します。本来は「実体経済の拡大の手段となるべきお金」は「金融市場に滞留する」事で、お金がお金を生むシステムのスコーアと化します。

その過程の中で、新興国の株や債券が買われたり、信用力の無い企業に社債が買われるなどして、副次的に経済が活性化されますが、それは「資産市場や金融市場のバブルのオマケ」になってしまいました。

金融市場は切った張ったの鉄火場と変わり有りません。何の価値の有るのか分からない合成金融商品を売った、勝ったで勝った負けたと一喜一憂する場所です。テラ銭が無いと遊べないので、借金をしまで勝負をする輩が後を絶ちません。

こうして、金融市場は実体経済を遥かに超える規模の資金需要を生み出し、「金が無いならゲームを止めるゼ」と中央銀行を脅し続ける事で、大量の資金を提供させ続けて来た。


■ 実体経済の成長を阻害する金融市場 ■

先進国の様な成熟した社会で、儲けを出す事は難しい。消費者はある程度豊で移り気なので、継続して利益を出し続ける事も難しい。その様なビジネスに投資しても、失敗する場合も多いのでトータルのリターン(金利)は低く抑えられます。

一方、金融市場には「もっとマシな金利」がゴロゴロしています。どこかの政情不安定な国の国債とか、将来の経営が危ぶまれる企業の社債とか、明日にも仕事を失いそうな人の住宅ローンがキレイにパッケージされて、高い金利が付けられて売られています。

どう考えても、寂れた街の拉麺屋に投資するよりは、安全で儲かる様に見えます。

こうして、本来ならば実体経済を刺激するハズのお金は、銀行システムや、投資システムによって集められ、煌びやかで怪しい金融商品に投資されて行きます。


■ インフレが発生しない限りお金は幾らでも刷れる ■

MMT支持者達が主張する万年筆マネーや、インフレが発生するまでお金は幾らでも刷れるという発想は、巨大な金融市場の存在がマルっと抜け落ちています。

現代の時代において、実体経済のインフレは抑制されています。先進国には労働生産性の低いサービス業しか残っていませんから労働者の賃金はどんどん低下しています。彼らは投資して稼ぐ資金すら持っていませんから「お金でお金を生み出す事」が出来ません。

一方、経営者や金融機関は大量のお金を資産市場で運用する事で、さらに多くのお金を稼いでいます。彼らにとってお金は「成功のスコア」でしか有りません。そして彼らの消費は無限には拡大出来ないので、国全体の消費は労働者の賃金的低下によって抑制され、インフレは発生し難い。

そこで持たざる者達は、「政府の借金は国民の資産」とか「政府と中央銀行は一つの家庭の中でのお金の貸し借り」などと言い出します。「政府と中央銀行を統一政府と考えるならば、中央銀行が国債を買い続ける限り政府の借金はチャラ」と主張します。これは全く持って間違いでは有りません。

しかし、彼らの目には、自分の周囲しか見えていません。自分達が手にしたお金が銀行を介して何処に行くのか、年金のお金が何処で運用されているのか、関連付けて考える事が出来ないのです。

政府がお金を刷れば刷る程、その多くは資産市場に流入して、そこで「資産インフレ=バブル」を生み出します。「インフレが起るまで政府は財政を拡大出来る」というのは正しいのですが、インフレは既に、今も起きています。


■ 資産市場(金融市場)は不安定 ■

巨大な鉄火場に等しい金融市場は、お金をチラつかせてカモを集めるシステムです。元々、どんな価値が有るかも分からないイカガワシい商品に高い値を付けて売り買いする場所です。

人々は借金をして、ゲームに参加しています。勝てば大金が手に入る。

こうして資産市場(金融市場)は大量のお金を集めて、バブル化します。そして、ほぼ100%、10年程度の周期で崩壊します。


■ 実体経済をズタボロにする資産市場(金融市場)のバブル崩壊 ■

資産市場のバブル崩壊は、大きな痛手を実体経済に与えます。

借金を重ねた人達は借金が返せなくなります。彼らの当てにしていた利益など、元々存在しなかったからです。彼らのお金は、とっくの昔に詐欺師達に持ち去られています。

銀行も大きな痛手を負います。彼らの手にしている債券や金融商品は今となっては紙切れです。債務超過にならない為や、国際取引に必要な自己資本8%を維持する為に、銀行の多くはお金をかき集め始めます。そして、お金を貸す事に躊躇する・・・。

日本のバブル崩壊後の10年は、銀行の再生の為に費やされました。この間、銀行は国債金利というリスクの低いビジネスで徐々に体力を回復させます。国民の税金の一部が国債金利という形で銀行に渡りました。


■ バブルがイノベーションを作り出す ■

サマーズなどはバブルを肯定します。「生長の限界を迎えた経済で、バブルこそがイノベーションを生みだいて来た」と。ITバブルが無ければ今の電子化した社会は生まれていなかったかも知れません。債券バブルが無ければ、新興国や途上国の発展は無かったかも知れません。

成長して活力を失った経済を活性化させる為には、バブルという祝祭が必用だ・・・多分、これは間違っていません。

ただ、バブルは回を追う毎に巨大化し、その崩壊過程で経済や社会を無視できない程に痛め付ける様になります。


■ イノベーションの先に有るもの ■

私達は現在岐路に立たされています。
イノベーションの先が幸福なのかどうか、考える時が来ているからです。

コンピューター技術やプログラム技術の進歩は「AI(人工知能)」の将来的な発展を約束しています。いつかは、「AIが人を越える」時代が到来するかもしれません。

知的労働の多くがAIに奪われた時、AIを使役する企業は高い労働生産性を得ますが、一方、職をを奪われた人達は、労働生産性の低いサービス業、それもAI化やロボットによる自動化不可能な労働に従事せざるを得なくなります。

AIを使役する企業が国家に税金を納めるでしょうか・・・。AIならタックスヘブンに置く事も可能です。


事、ここに至る前に、私達は次に経済システムと社会システムを構築する必要有ります。ベーシンクインカムもその一つかも知れません。MMT的な財政政策も必要かも知れません。


ただ、それらを実現する為には、現座の実態経済と資産市場の二重経済のどこかに線引きをする必要が有ります。例えば、ベーシックインカムで配られるお金は、商品券の様なもので、資産市場で運用出来ない・・そんな制約は必要でしょう。

国民は、決められたレ―トでクーポンと資産市場で運用出来るコインを交換出来る様にする事も可能です。クーポンはマイナス金利を付けても良いでしょう。


来る未来がバラ色かどうか・・・そこまでコロナから生き延びるのが直近の課題な訳ですが・・・。コロナでは無く、過剰な自粛に国民が殺されかけている・・・。バラ色の未来を夢見られる人が生き残るのでしょう。



最新の画像もっと見る

16 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (777)
2020-04-14 12:48:30
そもそも現在は科学技術が進歩して、人間が働かなくても生活できる時代なんですね。

平成30年の農業就業人口は175万人だが、うち約68%の120万人が65歳以上となっている。

それで日本人の価格ベースで7割の農作物を作っている。

狩猟民族の労働時間は1日2時間程度なのですね。
現代人も2時間も働けば普通に生活できる筈なのです。

しかし、欧米人に搾取されたり、資産家に搾取されるので、毎日10時間働かないと食べていけないのです。

外人による搾取の実例としては

日経平均株価が上がる程、日本人はどんどん貧しくなっていく
アベノミクスがもたらした株価上昇による100兆円の損失
http://stockbondcurrency.blog.fc2.com/blog-entry-184.html

返信する
Unknown (ゆうこ)
2020-04-14 13:27:47
素晴らしい経済学です(*’ω’ノノ゙☆パチパチ

でも話題は1つ前

いま感染者が増えているという話そのものに疑問符を差しはさむのは、医療ガバナンス研究所の上昌広理事長である。

「この時期に突然、市中感染が増えているというのは、フィクションではないかと疑っています。
数週間前に感染者の死亡率は3・5%だったのが、いま2・3%ほど。

体制が整備され、PCR検査の件数が増えたとも考えられますが、むしろ、以前は保健所の窓口で断っていた軽症者まで診断しはじめた結果ではないか。
表面的な感染者数の増加をもって、感染が拡大しているとは言えないと思う。
ウイルスが日本に入ってきて3カ月。ピークをすぎている可能性すらあります」

へっそうか(笑)
返信する
Unknown (かえる)
2020-04-14 13:33:35
こんにちは。
素晴らしい内容で参考になりました
返信する
Unknown (人力)
2020-04-14 19:27:15
777さん

陰謀のスケールメリットを考えると、敵対勢力に見えて実は....と言うのが利益に最大化を実現する。だから私は「世界の経営者」の存在を妄想し、且つ彼らが自分の牧場の家畜の幸せを望んでいると妄想します。

放って置いたら共食いを始める家畜をどう育てて肥えさせるか、それが経営者の手腕の見せ所デス。

どうせ妄想だからスケールは大きい方がスカッとします。ただ宇宙人の陰謀とか、爬虫類型異種属ってヤツはチョットスケールが大きすぎるのでアニメに任せましょう。
返信する
Unknown (名無しの一読者)
2020-04-14 21:07:47
おっしゃる通りで、かつては実体経済が中心の社会構造
で、金融市場も自国中心で行われてきましたが、インタ
ーネットの普及とグローバル化によって、実体経済で回
っているお金の量をはるかにしのぐ天文学的な量のお金
がサイバー空間で瞬時に取引されるようになり、ここで
クラッシュが起こると実体経済にも甚大な被害を及ぼす
ようになってしまいました。

国内の銀行も日本全体の成長のりしろが少なくなって、
お金を借りてくれるところも激減し、かといってベンチ
ャー企業に投資する目利きの出来る行員もいないため、
グローバル金融市場で株や為替や怪しげなデリバティブ
商品で運用して利ザヤを出さざるを得なくなってしまい
ました。

収入も多くなく貯金もそれほどあるわけでもない、現在
の一般的日本人の部類に入る一個人としては、銀行の存
在って利息もほとんどつかないし、給与の受け取りや公
共料金等の引落しにしか使っていないわけで、また手数
料も最近上がったりして、こういったサービスってもは
や銀行で無くても出来るのでは?などと思っています。
どのみち今度の新型コロナウイルスが終息したら金融機
関の一段の統廃合は加速的に進むでしょうけれど。

今回の新型コロナウイルスで、リーマンショック以来の
倒産の危機に陥る金融機関が世界中で発生することが予
想されますが、怪しい金融商品を売りまくっているゴー
ルドマンサックスなどは経営危機に陥っても救済される
ことなくとっとと潰れて欲しいですね。世界を席巻する
サバクトビバッタのような金融市場は、実体経済にとっ
ては百害あって一利なしですから。

トランプがFRBにさらなる金融緩和をさせて、この新型
コロナウイルスの経済対策に240兆円規模の財政出動を
行っていますが、これってもしかしたら金融市場の崩壊
が起きても、もうこれ以上の金融緩和は不可能だし、財
政赤字も膨らんだので救済できる手立てがないと、見捨
てる算段でいるのかな?、などと希望的妄想をしていま
すが、果たしてバイデンとの大統領選に勝てるかどう
か?

返信する
Unknown (団塊年金老人)
2020-04-14 21:43:04
高齢者3500万人の株式、債券等を所有しない全体の7割、2500万人(実際の株式、債券の所有者所謂「お金持ち」は多くて数十万人でしょうか?)は今後の国政選挙で以下の条件をコミットする政党・政治家(官僚の現在の立場の保証も含め)に投票するよう運動を開始したいと思います。

1.現在の年金制度維持(年金額)の保証
2.現在の医療・介護保険制度の維持(個人負担額比率)の保証
3.社会保険制度の廃止(GPIF等の解散)
4.日銀の株式100%取得(国有化)
5.全ての日銀、GPIF等所有の上場株式、社債等の売却(2,3年内に)
6.日本政府、GPIF等の所有する米国債等の売却(2,3年内に)
7.新規発行国債の日銀直接引き受けの実施

実際には1.2だけで、3-7は無視して戴いても結構ですが、ご意見頂けますか。(運動開始はコロナ騒ぎで無期限延期します。)
返信する
Unknown (777)
2020-04-15 11:29:27
>3.社会保険制度の廃止(GPIF等の解散)

そもそも GPIF は世界中の株・債権に投資しているから世界の平均GDP上昇率と同じだけ増えているよ
一時的に評価額が減ったと騒ぐのは何も知らないアホだけ


>4.日銀の株式100%取得(国有化)

日銀は一切議決権はなくて、日銀に対しては、株主は全くないです。

で、政策は誰が決めてるかっていうと、日銀の政策委員会が決めてますね。

政策委員会総裁がいて、副総裁が2人いて、あと、審議員みたいな人が6人ですかね、9人の政策委員会で。

この人たちはどうやって任命されるかっていうと、内閣が任命しますね。
で、国会の承認を得てっていうかたちになるんで、結局、株主一切関係ないです。

だから、よくそういう、あまり仕組みを知らずにそういう陰謀論みたいなものに結びつける人たちがいるんですけど、実際、日銀の株主の半分近くが誰だかわからなかったとしても、僕にしてみれば、だから何なの?って話なんですよね。

返信する
Unknown (メルカッツ)
2020-04-15 22:07:13
お金は擦れる、強い経済大国の強み。
ならば、なぜ米国からの貿易摩擦の時に擦れなかった

擦る権利は米国にしかない、暗黙なのかと

平成の日本の低迷。令和以降の暗黒。
米国の属国であるが故。

バブル前の預金利率は5%とかでした。
今は0.3%もつかない。
ジャパンプレミアムを受け入れる名目で、
金融機関を守った功罪は、自由主義ではない。
そもそも、経済は民間や個人が支えるもの。
金融は何も生まない。助ける価値はマイナスのみ。

それをあの当時の自民が助けた。
郵政民政化以降も、民業の金融を苦しめ、今に至る。
農業や官業を助けるために金利をマイナスにした。

1%でも平成30年で30%の利息が民間に入ったはず

その功罪は官僚や公僕、首を縦に振った政治家に、
負わせるべきでしょう。
今のコロナで、現実に高官が死ぬシーンはでてくるかと

日本人は我慢してきましたが、今こそ過去の過ちを
振り返り、必要なことをすべき。
とりあえずは、マスコミの浄化が必要かと
今のコロナ対策からしても、
正義と大儀を履き違えている。


返信する
Unknown (団塊年金老人)
2020-04-15 22:44:45
人力様

余りにも未熟な内容ゆえ、出来ればメルアドの方に内緒で一言、二言ご指導いただければと思っての投稿でしたが、掲載までして頂き正直、びっくりしています。そうであれば、以下を補足させて戴きますので宜しくご配慮下さい。
1.「実体経済」と「資産市場」という経済の二重構造ということで、MMT的、財政政策が許されるようであれば、今の高齢者だけの問題としてではなく若い人も含む国民の全体の生涯保障を構築できないかという考えです。高齢者だけを取り上げたのは彼らに限定すれば話が判り易い事、実現可能性が高い事です。
2.3以下についてはコロナ以降何が起こるか予測不能の状況で、旧システム維持に積極的に協力してきた我が国の政策を新システム構築の段階で多少でも修正可能であればという思いです。

宜しくお願い致します。

777様

返信ありがとうございます。GPIF仰る通りですね。一時的に評価額が下がったからといって騒ぐべきではありませんね。

内閣がしっかりコントロールしているのなら、全く問題ありませんね。仰る通りです。

又、ご指導宜しくお願いします。
返信する
Unknown (鍛冶屋)
2020-04-16 06:05:07
長文記事をほぼ毎日アップされておられる、人力さんのそのモチベーションにただただ敬服します。
返信する

コメントを投稿