人力でGO

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グレートリセットって何?!・・・妄想が止まらない

2020-10-29 05:43:00 | 時事/金融危機
 

■ 陰謀論者に人気のトランプ ■

米大統領選が近づいていまうが、私はどちらが勝つかには、あまり興味が有りません。米大統領選はガチ対決では無く、シナリオの有る「民主主義のお祭り」だと妄想しているからです。

陰謀論者の一部には、「トランプはアメリカのディープステイトの抵抗している」などと妙に持ち上げる人達が居ますが、そんな人物がアメリカの大統領になれるハズは有りません。叩いて埃の出ない人物など居ませんから、選挙戦の最中に悪いニュースが広がって、しっかりと候補者の中から消えているハズです。或いは、間違って大統領になってしまったとしても、アメリカの伝家の宝刀によって消されている。

田中宇氏の陰謀論に私も一時期影響を受けました。「イギリスの資本家達は、アメリカの隠れ多極主義者となって、ネオコンなどを使いアメリカの覇権を壊そうとしている」「イギリスの帝国主義者はアメリカの軍産複合体を操り、世界支配を続け様としている」世界はこの二つの勢力の相克の上に成り立っている。」「トランプは隠れ多極主義者で中国がアメリカの影響から自立して多極化が進む事を推し進めている」

「隠れ多極主義=ロックフェラー」「軍産複合体=ロスチャイルド」などと考える人達も居ます。

彼の「多極主義」は日本人のルサンチマンをクスグリます。戦後、アメリカの属国と化した日本ですが、「多極主義者は日本や韓国の自立を促している」という説は、私達のねじ曲がった自尊心をクスグリます。「多極主義」による日本のアメリカからの独立を夢見る人達にはトランプは英雄に見える。

■ 世界はもっとズブズブの関係だと妄想する人力流陰謀論 ■

人力でGOの陰謀論は「誰得の陰謀論」です。権力やお金を有する人達は、対立より結託を選んだ方が利益が拡大します、ゲーム理論の一種です。個々も利害の衝突は有りますが、大勢では協調した方が利益が拡大する。

仮に、トランプがアメリカの力をワザワザ削いだとしても、それは世界の経営者の総意であって、トランプがディープステイトや世界の経営者に逆らっている訳では有りません。

アメリカにおいてトランプが大統領になったとしても、バイデンが大統領になったとしても、世界の経営者のアジェンダには変更は有りません。ダボス会議が指摘する通り、戦後資本主義システや通貨システムは既に成長の限界に有り、それら自身が世界の発展の妨げになっています。だから大統領が誰になろうとも、「グレートリセット」への準備は着々と進められています。

■ トランプは分断の装置 ■

トランプを世界の経営者が大統領にした理由は、「アメリカの分断」です。

アメリカには元々多くの「対立」が有りましたが、移民国家アメリカの歴史は「対立の克服」の歴史でした。南北戦争の結果の統一。黒人の人権獲得。女性の権利の獲得。移民の社会への受け入れ。アメリカは多くの対立を抱えながらも、それを克服する努力を惜しまない。

ところが、トランプは「対立」を強調する事で「分断」を作り出してしまった。一般的には「支持者拡大の為の政治手法」と捉えられていますが、その結果、露わになった「分断」はアメリカに致命的な影響を与えるハズです。元々、バラバラだったアメリカを人々の意思がかろうじて繋いでいたのに、その意思を無効化するウィルスがバラ撒かれた。それがトランプ。

今回の選挙でどちらが勝利したとしても、アメリカ国内では選挙結果を不服とする人々が大規模なデモを起こし、対向する勢力と衝突する。銃撃が発生すれば、この衝突はエスカレートしアメリカは内戦状態になるかも知れません。

■ 資本主義の限界とグレートリセット ■

グローバリゼーションによって世界は一つになると人々は考えた。中国やロシアの民主化が達成され、新興国や途上国はキャッチアップされ、市場は一体化される。

資本主義にとっては理想の世界が出来上がる様に見えましたが、その結果は大きな歪しか生まなかった。マルクスの予言の通り、発展し過ぎた資本主義は貧富の差を修復不可能にまで拡大した。

資本主義は資本効率を最大化する事を目的としていますから、効率の高い所にお金はどんどん集まってしまいます。政府が税金でこれを集めて再分配する事で社会は成り立っていましたが、企業に政府が隷属する現代においては、再分配はまともに機能しません。

タックスヘブンに売り上げを隠す企業を政府は本気で取り締まる事が出来ません。何故なら、政治家は献金によって企業の奴隷となっているからです。

タックスヘブンはヨーロッパの一部の国や、イギリスの周辺の島々に存在しましたが、今ではアメリカが最大のタックスヘブンとなりつつ有ります。州によって法人税が異常に低い州がそれに相当します。ある地域のタックスヘブンの顧客情報がリームされれば、他の地域に資金が写るだけです。「リーク」は正義では無く、資金移動の道具に過ぎません。

この様な「資本の最大化」を続けた結果、1割と9割の世界が出来上がってしまった。富は1割が独占し、結果的に中間層が貧困化して消費にブレーキが掛かり、資本の拡大を阻害する。これが成長の限界の正体です。

金融によって庶民も金利利益を得ている幻想に囚われていますが、それはお金が水膨れしているに過ぎません。実体経済の拡大が原則すれば、人々は徐々に貧しくなります。

■ AI化や自動化が分断を加速する ■

さらに高齢化やAIの普及が限界を早めます。

先進各国の少子高齢化は解決の出来ない問題です。将来的な高齢者の数は既に確定しており、将来的な労働者の減少も既に確定している。移民による労働力の導入は、分断を助長し、将来的な社会コストの増大を国家に押し付けますが、企業はこれを法人税という形では負担したがりません。

労働力の不足をAIや自動化で補えば人々は労働から解放されると夢見る人も居ますが、単純な頭脳労働から仕事は奪われ、次第に高度な判断を必要とす高給な仕事までAI化する。人々は一部のエリート以外では、「AI化で採算の合わない仕事=安い給料の仕事」に追いやられます。

AIに「人頭税」を掛ける事は難しいでしょうから、AIの導入は人件費を削減し、仕事の効率を高める事で資本の拡大を加速します。自動機械も同様です。

こうして、AI化も自動化も資本の偏在を加速する事で、資本主義経済自体は衰退して行く。これは一種の合成の誤謬であり、資本主義が抱えるジレンマとも言えます。


■ 通貨システム・金融システムの閉塞 ■

中央銀行制度も、金融システムも行き詰っています。

1980年代以降、アメリカを始めとする先進国は、労働と生産による成長拡大の時代が終わりを迎えます。近代化や戦後復興が一段落すると生産拡大による経済成長が不可能になります。さらに、資本家を効率を高める為に、日本やドイツを世界の工場にし、さらに韓国や中国へとそれは動いて行った。

そこで、イギリスやアメリカでは「お金でお金を稼ぐシステム」が急激に発展します。債権化や証券化といた「金融」です。

「金融」は絶えず資金が流入拡大していないと維持出来ないシステムですが、一方で制御が難しく直ぐに暴走を起こします。いわゆるバブルです。金融システムが暴走してシステムが崩壊しそうになる度に、中央銀行が金利を下げたり、量的緩和を実施して崩壊を食い止めて来ましたが、これも限界を迎えています。

ピーキーな金融システムの悪影響が実体経済に及ぶ様になったからです。始めの頃は「金融」に投資した一部のお金持ちが資金を失いましたが、現在では庶民の預金までもが「金融」によって運用されています。バブル崩壊の被害は庶民にまで及び、銀行システムの存続性が疑われる状況が生まれつつ有ります。

既に、リーマンショックでアメリカの投資銀行の多くは事実上破綻しました。次に起こる金融危機では、商業銀行を含む全ての銀行の存続が危険に晒されるでしょう。「銀行の信用喪失=お金の信用喪失」となります。人々が銀行に殺到して、預金を下そうとした瞬間、現在の「信用創造システム」は終焉を迎えます。同時に中央銀行は大量の通貨を刷りまくるので、通貨の信用が失われます。

■ 通貨のグレートリセットとしての電子マネー ■

金融システムの崩壊を元にした「通貨のグレートリセット」がどの程度の期間で進行するかは予想が難しい。長ければ10年~15年掛かるでしょう。

しかし、仮に、大統領選の結果、アメリカが内戦状態になれば、ドルの信用は一瞬にして失われ、同時にドルを基軸とした現在の世界の通貨制度も一瞬で崩壊します。そして、ドルで構築された金融システムも破壊される。

主だった中央銀行は「電子通貨の実験」に来年から着手すると発表しましたが、これは追加のグレートリセットを念頭に置いていると思われます。

「電子通貨」は単なる紙幣の代わりでは無く、国民のNOと結び付ける事で、年金の給付や、税金の徴収を直接行えるシステムの構築が可能です。お金の流れがガラス張りとなる事から、税金を逃れる事も難しくなります。結果的に税の公平が保たれる。

一方で様々な給付も楽になります。その最たる例が「ベーシックインカム」でしょう。年金や生活保護もこれに一本化が可能です。電子マネーならば給付金にマイナス金利を掛ける事も可能です。


■ グレートリセット後の世界 ■

グレートリセット後の世界がどうなるか、非常に不透明ですが、私は「新な冷戦構造」になると妄想しています。

大きな社会変革の中で国民を統率する為には「敵」が必要です。かつて共産主義国家は自由主義国家を敵とする事で、革命後の社会を維持し、国民の不満を強権的に抑え込みました。

私はグレートリセット後の世界は、かなり強権的に様々なシステムの再構築が行われるので、国民を従わせる為に「戦時経済」の様な非常事態が演出されると妄想しています。

これが第二次世界大戦の様な直接的な戦争である必要は有りません。中東や東アジアで紛争が起こり、小規模な米中や米露の直接戦闘が起きれば、世界は再び鉄のカーテンが降ろされれます。

尤も、大統領選の後に、アメリカが今の形を保っているかは定かでは有りません。3つか4つの国家群に分断している可能性だって十分に有ります。


陰謀論的には妄想の暴走が泊まらない「グレートリセット」ですが、SFの描くバットな未来が実現しない事を願って止みません。