■ 「ポストコロナ」の意味をはき違えている世界 ■
最近、「ポストコロナ」という言葉を良く耳にします。
「コロナ後の世界は、コロナの再発が起きる可能性が常に在るので、人との関わり方も、仕事の仕方も大きく様変わりするだろう」
「コロナの後には、グローバリゼーションが抑制され、新自由主義の反省も見られるだろう」
こんな意味で使われる事が多いのですが、チャンチャラ可笑しい!!
「ポストコロナ」=「大崩壊」である事に気付いている人は一部しま居ません。
「大崩壊」を「大恐慌」と言い換えても良い。これから起こる事は1929年お世界大恐慌に似た何かです。
■ 財政拡大路線に歯止めが掛からなくなった世界 ■
「世界大恐慌」はNY株式市場の暴落に端を発した「バブル崩壊」でしたが、あの時代、実は現在と同様にグローバリゼーションが非常に進んでいました。帝国主義経済圏の中での、人や物、そして金の動きは現在同様に非常に活発だったのです。
「世界大恐慌」の結果、各国中央銀行は通貨防衛に入ります。日本も金の輸出を停止して円の価値を担保しようと試みますが、これは国内の不景気の出口を見えなくした。高橋是清が、中央銀行の国債買い入れ額を大きく増やして、事実上の財政ファイナンスに入ると、日本の景気は急激に回復します。世界もこれに倣って緩和的金融政策の入ります。
これをしてリフレ論者達は「緩和的金融政策がデフレを克服する」と主張していますが、当時の経済を牽引していたのは「軍需産業」です。大恐慌の結果、行き過ぎたグローバリゼーションに急ブレーキが掛かり、世界はブロック経済に突入します。経済ブロック内で資源を独占したので、日本やドイツやイタリアなどの「遅れてやって来た帝国主義国」は、資源争奪の為に軍事的拡張路線を取った。日本も軍部が予算拡大を望み、緩和的金融政策の出口を模索していた高橋是清は226事件で暗殺されます。これ以降、日本の財政拡大路線は軍主導で歯止めが掛からくなります。
イギリスやアメリカなども台頭する日独伊に対抗して、軍事費を増強させます。この結果、大恐慌以降の不景気は、軍需景気によって回復したかに見えますが、各国の財政状態は悪化して行きます。
■ 戦後のインフレによって債務を解消した世界 ■」
戦時中も通過を国債や軍債の発行によって各国とも増え続け、国家債務も増え続けます。物資も不足していたので、本来はインフレが進行しますが、「統制経済」によって物価は管理され、安定していました。しかし、闇市では相当なインフレが進行します。
戦時中の積み上がった国家債務を、各国とも戦後に清算する事になります。アメリカは復興景気に沸き、インフレ率も高かったのですが、国債の上限金利を低く設定する事で、比較的早い時期に債務の圧縮に成功します。これを「金融抑圧」と呼びます。
イギリスは戦場となったので復興の速度も遅く、経済も低迷するので、アメリカ同様に上限金利を設定しても債務の解消には15年程の歳月を要しました。
日本は通常では到底清算出来る債務残高ではありませんでしたので、円を大量に発行して軍事産業への支払いや、軍への支払いに当てました。国内の生産設備が壊滅状態だったので、主戦後の3年6カ月で物価は100倍となります。これを抑える為に預金が封鎖され、新円切り替えが実行されます。
タンス預金のお金は使えなくなるので、市中の現金は一度銀行に預金しなければならなくなります。そして、引出しは月額で上限が決められていました。こうして、預金が自由に引き出せない状況でも物価は上がり続け、預金の価値はどんどん減少して行きます。これを「インフレ税」と呼びます。同時に「富裕税」が徴収されますが、庶民の増税は限定的でした。
日本の経済が回復するのは朝鮮戦争特需が発生してからです。復興が本格化します。
■ 原爆投下の様なFRBのQE4.5 ■
Yahoo ニュースより
上のグラフはFRBと日銀のECBの2008年を100とした場合の資産購入額の推移です。ほぼマネタリーベースの推移に等しい。
FRBは昨年末より隠れQE4を実施していますが、コロナショックを受けて2兆3千億ドルの資産購入を実施しています。国債を中心にMBSなどを金融機関から買っている。日本円にして200兆円を越える額を、一瞬にして市場に投入した事になります。
この資金が株式市場や債券市場に流入したので、コロナショックは現在一段落しており、市場は一見落ち着きを取り戻しています。
■ 量的緩和とは損をする投資家を中央銀行が儲けさせる行為だ ■
リーマンショックで学んだFRBの行動は速かった。市場の崩壊を止めるには、底の抜けそうな市場のナベに札束をぶち込むしか手が無いと瞬時に判断します。そうしなければ、あらゆる市場が暴落して、信用収縮が止まらなくなる事が分かっているからです。
バブルが発生した市場では、含み「含み益」と呼ばれる「本来存在しない利益」が膨らんでいます。含み益を現金化する為には金融商品や債券や株やその他の資産を売却して利益を確定する必要が有ります。しかし、皆が売りに走れば、価格は瞬時に暴落して「含み益」は幻の如く消えてしまいます。
そうならない様に、市場に代わって中央銀行が資産を買い入れて通貨を投資家に私行為を「量的緩和」と呼んでいます。これは本来損をする投資家に中央銀行がお金を渡しているに等しい行為です。
日銀は不動産ETFや日本株ETFを購入し続ける事で、外国人投資家にお金を渡し続けて来ました。コロナショック以降は、この額を増やしています。
日経の記事などは「日銀はERBやECBに比べコロナショック以降でお金を刷り負けている」と主張します。これは、「もっと外国人投資家にお金を渡せ」と言っているに等しい。この様な記事を書く記者は「恥」という概念が欠如しているのでしょう。
■ 金融市場の崩壊は止められない ■
リーマンショック以降、金融市場は、「含み益」を膨大な額に膨らめて来ました。銀行が投資家に融資をする形で信用想像の歯車を回し、ファンドなどが個人のリアルマネーをかき集め、個人が信用取引の規模を拡大して、「含み益」が膨らみ続けます。
しかし、この歯車が逆転すると「含み益」は一瞬で「含み損」に変わります。投資家は損失を最小限にする為に金融商品や資産を一気に売却します。
コロナショック直後の「売却」はFRBやECB、そして日銀が受け皿となる事で、どうにか止める事が出来ました。
しかし「ポスト・コロナ」の経済の惨状に世界が気付いた時、再び投資家は恐怖の駆られます。そこから先の市場の崩壊は、中央銀行にも止める事が出来ないでしょう。
■ リーマンショックから10年回で回復した以上の雇用を一瞬で失ったアメリカ ■
日経新聞より
コロナショックで世界の経済が止まった結果、アメリカの失業率は一瞬にしてリーマンショック後の10余年で回復した雇用以上を失いました。
今後、数か月は経済の本格的稼働は望めませんから、失業率の回復も限定的です。これは個人商品の落ち込みに直結します。
これを補う為に各国政府は、狂った様な財政出動で国民にお金を配り、金融市場の崩壊を防ぐ為に大規模な量的緩和を繰り返します。
■ 市場は「悪性インフレ」を予想し長期金利が上昇する ■
各国が財政を狂った様に拡大し、中央銀行が狂った様にお金をバラ蒔く様を見て、市場は将来的なインフレ率の上昇を確信します。これは景気回復を伴わない「貨幣効果によるインフレ」です。要は、お金をバラマキ過ぎて通貨の価値が棄損すると判断するのです。
長期金利の上昇で売られるのは債券です。ゼロ金利の日本国債や、2%程度の金利の米国債を持っていても損をするだけなので、投資家は我先にと国債や債券を売り始めます。市場では債券価格が急激に下がり、債券金利は上昇します。
これで多くの企業が社債の発行が出来なくなります。米国企業を支えていた社債による資金調達や自社株買いによる無意味な業績のお化粧は出来なくなります。
各国国債も金利が上昇し始め、財政の継続性は絶望的になります。こうなったら各国中央銀行は市場の国債の全量買い取りに入らざるを得ません。これにより国債市場は事実上機能しなくなります。「異次元緩和=日銀スキーム」は良識的な範囲で財政ファイナンスを実行していましたが、ポストコロナの「中央銀行スキーム」は、完全な財政ファイナンスとなるハズです。
その結果、国債金利の上限は固定されますが、市場に大量の通貨が出回るんので物価に上昇圧力が掛かります。金融市場や債券市場は事実上崩壊しているので、溢れ出したお金は、コモディティーと土地などの不動産に殺到します。
今は底値となっている原油価格が暴騰します。あらゆる資源価格が上昇します。こうしてコストプッシュインフレが止められなくなり、市中の物価の上昇が始まります。庶民の生活はインフレによって破綻します。
■ 銀行が耐えられない ■
「お金に異変が起きている」と感じた時、人々はどの様な行動に出るか。「銀行からお金を引き出しておこう」と考えるのが常です。
特に金融市場がパニックになり、「〇〇地銀が危ない」とか「ちゅうちょ銀行が〇〇兆円の損失を出した」などという噂が広がると、メガバンクの預金も引き出されるでしょう。
こうなると銀行は経営が瞬時に破綻します。規模の大小など関係無いのです。
ここで、混乱が収まるまで預金封鎖が宣言されるでしょう。
■ 終わりの始まりに過ぎない ■
1929年の世界大恐慌の時代は、リアルな資産の裏付けがあるバブルの時代でした。NY株式市場こそ現在のバブルに似ていますが、その他の金融市場や現物市場は現在の様には肥大化していませんでした。
結果的にバブル崩壊以降の信用収縮の規模にも限りがあった。
しかし、現在の様に、実体経済に比べ、資産市場の規模が異常に肥大化した時代には、市場の崩壊や、信用収縮の速度は加速度的です。危機が顕在化してから崩壊まで一瞬で進みます。
リーマンショックが発生した直後、短期金融市場は一瞬で金利が沸騰し、銀行間決済が出来なくなり、ドルの流動性が完全に枯渇しました。これを「システマティックの危機」とか「流動性の危機」と呼びます。
当時、既に「ドル基軸体制の存続」に疑問が持たれ、フランスや中国が主導して「IMFの特別引き出し権(SDR)を元に新しい基軸通貨を作る」話し合いが何度も持たれまいた。
今回の危機はリーマンショックの比ではありませんから、ドルの基軸体制が崩壊する可能性はかなり高いと私は妄想しています。それを無理に留める為に中東で大規模な戦争が起こされる可能性もかなり高い。原油価格が高騰すれば、ドルの需要が生まれるからです。
これからは「古いペトロ・ダラー」と「新しい時代の通貨」のせめぎ合いが始まります。通貨を支配する者が世界を支配するのですから、まさに「覇権争い」が始まるのです。
「ポスト・コロナ」とは「終わりの時代の始まり」であって、決して「人々の生活様式がコロナ時代に適応する」なおという牧歌的な話で無い事を、人力でGOの読者の方ならご理解いただけるでしょう。
だから私は「大崩壊=ハイパー・クラッシュ」と言う言葉を使いたい。