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中央銀行のニューノーマル・・・コロナ騒動の目的

2020-05-26 02:49:00 | 時事/金融危機
 


■ ジャンク債まで買い入れ始めたFRB ■

FRBは今回のコロナショックを受け220兆円を瞬時に市場に供給しました。これは日本の国家予算の凡そ2倍。日本のGDPの4割。

1) 国債の購入
2) MBS(住宅担保証券)の購入
3) 社債の購入(BB格=ジャンク債まで)
4) 民間銀行の企業融資の債券の買い取り(6000億ドル)

コロナショックが始まった当初、株価が急落し、国債金利が上昇、社債やジャンク債の金利も急上昇しましたが、市場が短期間に正常化したのは、FRBが「最後の貸し手」として大量の資金を供給した為です。

この資金供給が無ければ、資産市場は確実に崩壊していた。その規模はリーマン超級だったハズです。

■ 増大する各国の国債発行 ■

アメリカの借り入れが額(国債発行額)は4-6月期3兆ドル(320兆円)で前年の75倍。リーマンショック時と比べても9倍に達しています。コロナショックで税収が落ち込み、対策費や補助金が増え続けるので、今年度中は「狂った様な国債発行」が続くでしょう。

日本もコロナ対策として39兆円の財政支出を発表していますが、第二段は13兆円のなる様です。景気の落ち込み具合によては第三弾、第四弾もあり得るので最終的には70兆円程度になるのでは無いか。

これらの「狂った様に発行される国債」を中央銀行が「狂った様に買い入れ」て、現在、世界の国債市場は金利を抑え込んでいます。これは日銀の異次元緩和が世界中で始まった事に等しく、かつ規模はそれを上回ります。

■ 100年債など超長期債の発行が検討される ■

これらの大量に発行される国債ですが、10年債、30年債などで発行すると、10年後、30年後に償還時期を迎え、将来的な財政の継続性に大きな圧力が掛かります。そこで60年債とか100年債といった超長期債を発行するのでは無いかと言われています。

日本では建築国債が60年債ですが、実際には10年毎に借り換えられています。借換債は年間160兆円程有りますが、過去の金利よりも現在の金利の方が低いので、借り換えによって金利コストは下がります。異次元緩和以降、日本の国債金利はゼロに押さえ込まれているので国債の借り換えによって政府は国債の金利負担を軽減しています。これは表立っては言われていませんが異次元緩和の大きなメリットです。(実際には銀行の金利が消える事で国民が金利負担を肩代わりしているだけ)

現在の日本の国債金利はゼロなので、100年債を発行しても金利コストは掛かりません。借り換えなどという手間を掛けずに、一気に100年先に財政負担を押し付けても金利負担はゼロです。100年先に日本のインフレがどの程度進んでいるかは分かりませんが、このままマイナス成長やゼロ成長が続かない限り、償還時には負担は普通は相当軽減されているハズです。

各国ともに50年債、100年債という超長期債の発行が本気で検討されるかも知れません。


■ 統合政府では中央銀行の発行する通貨は政府通貨に近い ■

リーマンショックの際には「政府が1兆ドルのプラチナコインを発行してFRBに買い取らせる」という冗談の様な奇策を主張する人も居ましたが、これではFRBのバランスシートに問題が生じます。1兆ドルと刻印されたプラチナコイン1枚には1兆ドルの実質的な価値は無いからです。国債ならば、建前上は「将来的な国民の税金によって支払われる」事になるので、バランスシート時価会計にしない中央銀行の国債は評価損を生む事は有りません。

政府と中央銀行を一体の存在、すなわち「統合政府」と捉えるならば、政府の発行する国債の大部分を中央銀行が市場から買い入れる場合は、中央銀行の発行する通貨は「政府通貨」にほぼ準じた存在となります。特に国債金利がゼロの日本では、ほぼ政府通貨と言っても構わないでしょう。

■ 国債市場は機能するのか ■

コロナショックで狂った様に発行される各国国債ですが、通常ならば国債金利が旧上昇してもおかしく無い状況です。しかし、国債金利は充分に抑え込まれています。

これは異次元緩和と同様に、発行される膨大な国債の多くは、中央銀行が高く買ってくれる事を市場が理解しているからです。そして、国債市場のプレーヤーは「中央銀行には勝てない」事を日銀の異次元緩和で知っています。要は「国策には逆らうな」です。

それにコロナショックで国債暴落を仕掛けたら国にどんな仕返しをされるか分かったものではありません。トランプが激怒したら逮捕さえる可能性も有ります。

こうして、一時的とは言え、コロナショックで世界の中央銀行は全て「日銀化」を信じで果たし異次元緩和(超次元緩和)に突入します。国債市場は日本国債市場同様に金利変動の少ない「ツマラナイ市場」になってしまうのでしょう。

■ 金融抑圧によるインフレ税を私達は払い続ける ■

コロナショックで世界は中央銀行システムが本質的に変化してしまった事に未だ気付いていません。国債市場がツマラナイ市場になってしまった事にも気づきません。

市井の物価は様々な要因で変動し、金利も変動するでしょうが、国債金利はしばらくの間、中央銀行によて低く抑え込まれます。これは国債の再高金利を低く設定する「金融抑圧」という手段
で政府債務をインフレによって解消する時に使われる手法です。「インフレ税」とも言われています。

増税によって政府債務を解消する事は難しいのですが、インフレ税によって国民や投資家が本来受け取るべき金利を政府が掠め取る「インフレ税」は誰にも「通税関」が無く、国会承認も必要無く、国民は自分達が税金相当額を負担している意識も持ちません。

■ コロナ戦争による統制経済 ■

戦時中、各国政府は戦費調達の為に大量の国債を発行しました。日本でも世界大恐慌の後、高橋是清が中央銀行による国債の発行に踏み切りますが、彼が出口戦略を取ろうとしたので226事件で暗殺されます。それ以降は軍は軍備拡張を政府に要求し続け、政府は大量の国債発行でこれに応え、日銀は粛々と国債を買い続けた。

本来ならば軍需産業を通してその資金が市中に流れインフレが進行しますが、物価が統制されていたのでインフレは見掛け上は押さえ込まれていました。これを「統制経済」と呼びます。

今回も大量の資金が市中に流れます。しかし、その多くがコロナショックで消えたGDPの補填に回るので、市中の資金はあまり増えません。むしろ、しばらくは不景気でデフレ傾向に陥るでしょう。

何となく「コロナ戦争による統制経済」の形が出来上がっています。


■ 中央銀行にリスクを押し付ける「ニューノーマル」 ■

一方、インフレが発生するのは資産市場です。FRBや日銀はコロナショック直後に資産買い入れを急拡大させており、市場に大量の資金が流入しています。これは本来はコロナショックで投資家が被る予定の損失でしたが、それを中央銀行が一時的に肩代わりした形となっています。

リーマンショックではFRBも出口を模索しましたがが、はたして今回は出口が存在するのか?例えばFRBがBB格の社債(ジャンク債)を手放すと発表したら、ジャンク債金利はどうなるのか・・・。

FRBはリーマンショックで大量のMBS(住宅担保証券)を購入し、出口戦略でそれらを投資家に売却しましたが、コロナショックで再びMBSの購入に踏み切り、さらにはコマーシャル・ペーパー(社債)やジャンク債まで購入しています。そして、間接的ではありますが、企業に融資までし始めた。出口はどこを見渡しても見つからないでしょう。

日銀も似たり寄ったりで、日本株のETFや、不動産REITの購入を増やし、さらに銀行を通じて企業に資金を供給しています。

これは中央銀行のバランスシートに市場がリスクを押し付けた事と同義です。そして市場の混乱を避ける為に、中央銀行は今後もリスク資産を買い続ける。

■ 「国民にお金を渡せ」と主張させて「漁夫の利」を得る投資家 ■

今回のコロナ危機で一番得をしたのは誰か・・・それは投資家です。

資産市場は昨年半ばから変調が始まっていましたが、FRBが「隠れQE4」でこれをどうにか支えていた。しかし、これは永続的では無く、いつかはバブルが崩壊する事を市場関係者は予感しておいました。

ところが、コロナショックで中央銀行はリスク資産の買い入れを拡大して「HYPER-QE」に突入したので、彼らは暴落するハズだったリスク資産をちゃかり中央銀行に押し付けて、本来手にする事の出来なかったお金を、がっぽり手に入れました。

・・・・これでコロナショックの首謀者がだいたい予想出来るでしょう。

「誰がウイルスを撒いたのか」は問題ではありません。インフルエンザに毛の生えた程度のウイスるを、WHOや感染学の権威や、政府やメディアが「殺人ウイルス」に仕立て上げ、投資家に一儲けさせた・・・・これがコロナショックの本質だと私は妄想しています。


■ 市場の神様がこんなモラルハザードを見逃すハズは無い ■

80年代にマネタリズム経済が始まって以来、市場はバブル崩壊を繰り返して来ましたが、その都度、中央銀行が大量の資金を供給して、次のバブルを生み出し続けて来ました。

リーマンショックでは金融システム崩壊の危機にまで事態は発展しますが、その後の金融緩和で市場はさらに拡大しました。そして、次なるバブル崩壊を、コロナショックで一時的に抑え込んでいるのが現状です。

そして、これからしばらく、コロナ対策という名目で、中央銀行は市場に大量の資金を流し込み続ける。しかし、これは永続的では有りません。実体経済が悲惨な状況になる中で、資産市場のみが値を上げる事に、人々は疑問を抱き、中央銀行のモラルハザードを指摘し始めるハズです。

バブルは中央銀行が金利を上げたり、資金調達を絞ると弾けるのは歴史が証明しています。

市場に神様が居るとして、このモラルハザードを見逃し続けるでしょうか。尤も、市場の神様は角が生えて、尻尾と翅を持つ姿をしていそうですが・・・。


■ 次なるショックで注目される国債市場 ■

次なるショックで注目されるのが国債市場です。米国債の保有者達は、米国債を売るのか?

ここで米国債金利が上がり始めると、FRBは米国債の無制限買い入れを宣言して、世界の国債市場が一気に混乱します。

各国中央銀行が全量買い入れを宣言して(日銀は既に無制限買い入れを宣言していますが)、現在の通貨システムは終焉を迎えます。

暫く混乱が続いた後に、世界は通貨のニューノーマルを構築し始めるでしょう。それが政府通貨様なものになるのか、金兌換制度に戻るのかは誰にも分かりません。

もしかすると、金とリンクした電子マネーかも知れません。通貨のオールドスタンダードとニュースタンダードは案外相性が良いかも知れません。「金幻想」は人類のDNAに刻み込まれていますから。


ドイツやフランスなどはリーマンショック後に米国に預けていた金を取り戻そうと必死です。フランスは軍艦で金を輸送しました。ドイツはなかなかアメリカから金を返してもらえません。日本もフォートノックスの金庫に預けっぱなしです。中国も金の買い入れに余念が有りません。民間も含めて世界から金をかき集めています。

ビットコインはマイイングという「電力消費」によって暗号通貨の価値を保存しようと試みましたが、これには無理が有ります。暗号通貨は現状は「投機の対象」でしか無く、価値は大きく変動しています。

「金」は算出量が限られていると同時に、歴史的に「価値のあるもの」と人々に認識されています。少なくとも「電力消費」よりも有難い物と認識されています。

10年程掛けて、通貨のニューノーマルが達成されると思われますが、同時にポストコロナの混乱によって社会の姿も大きく変わっている事でしょう。2か月に及ぶ自粛生活で「さぼる」事を覚えてしまった世界の人々ですが・・・はたしてポストコロナに楽園は訪れるのか。

最悪は田舎で自給自足の覚悟ぐらいはしておこうかな・・・。