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外国人労働者を受け入れない選択は有るのか?

2018-11-14 07:15:00 | 時事/金融危機
 

本日は雑然とした走り書き


■ 移民を必要とする3K職場 ■

入国管理法の改正案の審議が国会で開始され、技能研修生制度や、留学生制度を利用した裏口移民の実体がようやく国民の知る所となりました。

現在の日本において、かつて「3K」と呼ばれて敬遠されて来た仕事の多くは、外国人労働者(移民)に支えられています。これは世界の先進国でほぼ同様の状況です。

ただ、ヨーロッパなどでは移民の歴史が長いので、移民2世、3世と、新しく流入した移民との間で仕事の奪い合いが発生するのに対して、日本では「3K職場」で働く若年労働者が圧倒的に不足しているので、仕事の奪い合いは現状は発生していません。むしろ労働力が不足して労働力の需要超過が発生しています。


■ 労働集約型産業は安い労働力を必要とする ■


生産を労働者の労働に頼る産業を「労働集約型産業」と呼びます。

かつては農林水産業や、鉱工業がこの筆頭に挙げられましたが、工場の自動化が進んだ事で、製造業の一部は労働集約型産業のカテゴリーからは外れています。

一方、産業構造が製造業主体からサービス業に移っていますが、物販や飲食などのサービス業は多くの労働力を必要とする「労働集約型産業」に分類されます。

「労働集約型産業」の特徴の一つが「労働生産性に低さ」です。一人の労働者が生み出す価値が少ないので利益を上げる為には沢山の労働者を必要とし、さらに利益を拡大するには賃金は低いほど好ましい。


■ 工業地帯や倉庫地帯も外国人だらけだ ■

私の住む浦安の湾岸地帯から千葉に掛けては、海沿いに軽工業の工場や、大規模倉庫が立ち並んでいます。湾岸の国道357号線を自転車で走ると、外国人の遭遇率は日本人よりも高い。特にインドネシアなどイスラム圏の方に出合う確立が高い。

実は東西線の行徳界隈は、イスラム圏の方達が多く暮らしていて、モスクが有ったり、ハラルフード(イスラム教式に処理された食材)の店があったりして、イスラム教の人が住み易い地域になっています。西葛西のインド人と並び、行徳のイスラム系住人の数は多い。


■ 外国人労働者が消えたらどうなるか? ■

池田信夫氏のブログを読むと、「利益が低いから外国人労働者が必用になるという悪循環に日本が陥っている」と主張しています。「安い労働力を必要とする産業は、元々経営が成り立っていない」と。

では、元々経営が成り立っていない企業や産業は日本に必要無いのでしょうか?

グローバリゼーションや自由貿易では、「商品はコストと技術的に最適な場所で生産される」というのは大前提ですから、日本から農業や漁業や軽工業、或いは製造業という産業は消えてしまいます。

長期的に考えれば、確かにこれらの産業は日本の中では衰退して行きますが、食料の安全保障の上からも、技術力の維持の観点からも、急激な衰退は国家として好ましくは有りません。

仮に今、外国人労働者が皆帰国してしまったら日本は産業や経済を維持出来ない国になっています。ですから、池田氏の主張は長期的には正しいのですが、短期的には合理的ではありません。


■ 自動化や機械化に向かない産業 ■

池田氏はブログで、労働力の不足が「自動化」や「機械化」を進め「生産性を高める」という仮説を紹介しています。これは正しい。

しかし、「自動化」や「機械化」は一気には達成されません。

自動化や機械化には初期投資のコストが掛かるので、儲かっている企業や産業でしか実現が難しい。さらに、同じさ作業を繰り返すだけなら良いのですが、様々が作業が組み合わさったり、同じラインで違う作業が発生する場合は、自動化のコストが回収できなくなる事が有ります。

自動化のトップランナーとも言える自動車組み立て工場ですが、テスラは生産車種が少ないの本格的な自動化にチャレンジしていますが、アメリカの日産の工場では、未だに人間がラインに張り付いて仕事をしています。様々な車種を同じラインで製造する日産の工場では、ロボットよりも人間の方が生産性が高いのです。

先に挙げた農業や漁業も自動化が難し産業です。最近では野菜の工場の様な施設も出来ていますが、作業の多くの行程に、未だに人の手が必用です。

■ 自動化に舵を切った外食産業 ■

外食産業は多くの外国人が働いています。日本語が不得意な方も多いのでオーダーで行き違いが発生する事も多かった。居酒屋で困った経験をお持ちの方も多いでしょう。

低価格の居酒屋などでは、オーダーシステムをタブレットとする事で、この問題を解消しました。外国人のアルバイトは、出来上がった品を客に運んだり、空いた皿を片付けるだけの単純作業をこなします。

先日、近くの「天屋」(天丼のチェーン店)に行ったら、オーダーシステムがタブレットに代わっていました。同時にメニューが増えていました。何だか味気ない感じがしましたが、複雑なオーダーの処理は日本人でも間違い易い。昼時など少人数でオペレーションする為に、自動化は不可欠になっています。

中国でロボットレストランが出来たとニュースになっていますが、調理から品出しまで自動化されています。日本には回転寿司という自動化レストランの元祖が有りますが、人件費を節約したい外食産業は、あの手、この手の自動化を進めて行くでしょう。

■ 介護の自動化は難しい ■

人手不足や離職率の高さが問題となる介護ですが、今後、ますます人手不足が深刻化します。一方、財政における介護費用の負担は拡大するばかりなので、国は安い労働力として外国人労働者を当てにしています。

「日本語もろくに出来ない外人に世話して貰いたくない!」という金持ちは、高いお金を払って高級な介護施設に入り、一般の老人は外国人の介護スタッフのお世話になる時代がすぐにやって来ます。

介護は人間を相手にする仕事ですから、自動化が最も難しい分野の一つでしょう。ベットに寝ているだけで自動にオムツを交換してくれる機械を開発するという方法も有りますが・・・何だか『老人Z』の様になりそうで怖い。

むしろ、恒温空間にハダカの老人をズラリと並べ、チューブで栄養供給して、糞尿は垂れ流し式に処理して、後は自動洗浄の方が現実味が有るかも知れません。でも、こんな老後は誰も望みませんから、外国人であっても、手のぬくもりがあって、コミュニケーションが出来る人間に世話をして欲しいですよね。

■ 建築分野も自動化が難し ■

バブルの頃から外国人労働者を多く必用とする建築分野も自動化が難しい産業です。建築物は「特注」が多いので、同じ作業の繰り返しを得意とするロボットの苦手とする分野です。

さらに行程が日々刻刻と変化する中で、多くの業者が入り乱れて作業を行うので、人間の判断力が不可欠です。

■ 輸送や物流は自動化して行くだろう ■

自動運転という遠い未来と思われていた技術の実用化が10年以内に達成されそうです。車の運転は楽しいものですが、自動運転が実現すると、人々は運転の時間を別の事に振り向ける事が出来ます。きっとマニュアル運転をする人は減るハズで、さらには事故を防ぐ為にイレギュラーな挙動をするマニュアル運転は制限される時代になるでしょう。

そうなると、輸送の自動化は一気に加速します。物流倉庫の自動化も進んでいるので、この分野での労働力不足は将来的には解消します。

■ 長期的には過剰労働力が問題になるかも知れない ■

10年位の間は日本の労働力は不足するかも知れれませんが、自動化が様々な分野に浸透し、AI化が進み、人口バランスが改善して来ると、国家は過剰労働力の問題に悩む様になるかも知れません。

私は日本政府が少子高齢化に本腰を入れず、外国人労働者を一時的に受け入れを容認する背景には「将来的に人間が余剰になる」事への対策なのでは無いかと妄想しています。

今までは「人口=国力」でしたが、これからの時代は「人口=国家の負担」という時代になります。効率を考えれば、高い生産性の産業に優れた人材を集中して、稼いだ外貨で食料や工業製品を買う・・・シンガポールの様な都市国家が有利な時代になります。

一方で第一次産業は世界的にフラット化して行く。関税が撤廃される流れは止めらませんから、日本の農業や漁業が生き残る為には、それなりの工夫の努力が必用になります。


農業に続き、漁業の構造改革にも政府は着手する様ですが、今のままの零細漁業では漁港の港湾施設の改修すら出来ずに沿岸漁業は衰退する事が目に見えています。



結局、外国人労働者は「一時しのぎ」というのが政府や官僚達の本音なのでは無いか。そして「10年後の事は誰にも分からない」というのが今の官僚の主流なのかも知れません。国家を50年、100年単位で設計していたら時流に付いて行けない時代なのです。


優秀な技術や人材はお金を出してでも外国からでも買う、安い人材も安く買う・・・正に、海賊や狩猟民族のルールに支配された世界で日本が生き残る為にどうするか?

外国人労働者との共存は理想では有りますが、競争相手が海賊達なので、日本人の知恵が試されるでしょう。



本日は、落書き程度で失礼します。