■ このタイミングで野党が不信任案提出って敵に塩を送るだけ ■
サミット前に「野党が不信任案を提出したら衆議員解散も有りうる」と突然発言し出した自民党幹部。熊本地震で衆参同時選挙の可能性が低くなったので、衆議院を解散する奥の手として、野党が内閣不信任案を出せば解散出来ると・・・これでは大義名分など無くただ同時選挙をしたいと言っている様な物。
これに対して民進党からは「不信任案の提出も辞さない」などと呼応する発言も有りましたが、同時選挙で確実に議席を減らすであろう野党が不信任案を提出する事は有り得ません。もしそうなれば「自爆」に近く、野田政権時の衆議院解散の様な「わざと負ける為の選挙を仕掛ける」事になります。
政局が混乱し、民主党に対する世間の不満が高まっていた野田政権時には「自爆解散」に国民はあまり不自然さを感じませんでしたが、さすがに今の状況での野党の内閣不信任案提出には国民も納得出来ないはずです。
さらには衆議院で与党が多数を占める国会では不信任案は簡単に否決出来ます。その状況で解散となれば、「野党も与党と結託している」様にしか見えません。さすがにこれは民主主義の茶番劇としても出来が悪過ぎます。
■ 「増税延期」の民意を問う? ■
そこで今度はもう少しマシなシナリオが出て来ました。
安倍首相は「消費税増税延期」を自民党と公明党に打診しましたが、これに対して麻生財務大臣や谷垣幹事長、稲田政調会長など自民党幹部からは「消費税増税を延期するならば衆議院を解散して国民の信を問うべきだ」という声が上がっています。
これ、表面的には「財政の健全化に為に消費税増税は不可欠で、それを延期するならば国民の理解と支持が必要」とか、「法律的には来年4月の増税は決まっているのだから、それを変更する為には国民の支持が無ければ民主主義をないがしろにする事になる」的な正当な事を言っている様に見えます。
ポピリズムで増税延期を希望する安倍首相に対して、自民党幹部が民主主義のルールを説いている・・・そう錯覚させます。
ところが、国会のルール的には「増税延期」は国会の議決で「増税延期法案を可決」するだけで良い訳で、前回の解散も含めて「民意を問う為の衆議院解散」は必要ありません。
さらに言うならば増税は国民の多くが嫌いますから、「増税延期」を争点にしたら「増税延期」を主張する自民党が勝利するに決まっています。
オバマ大統領の広島訪問でポイントを稼いだ後だけに内閣支持率も上がっているでしょう。
■ 解散するのか? ■
安倍首相と麻生財務大臣の会談では衆議院の解散はしない方向で話が付いた様です。自民党役員会でも増税延期に異論は出なかった様です。
谷垣幹事長は「首相が解散すると判断すれば表に出るが、解散しないと表明することは多分ないだろう」と語った様ですが、これは解散というカードを最後まで捨てはしない程度の発言だと思われます。
解散のフラグはチョコチョコと立つ物の、自民党としても確実に衆参で2/3以上を与党が取れる確信が得られるまでは、解散するとは言えないのかも知れません。
■ 憲法改正の真の目的は?? ■
自民党が衆参同時選挙に拘る理由は「憲法改正」でしょう。与党或いは憲法改正派が衆参両院で3/2以上を占めれば憲法改正法案が国会で可決します。
その後は「国民投票で有効投票数の過半数を取る」という高いハードルが存在するので、中国が尖閣諸島にチョッカイを出すなどの援護射撃が無ければ憲法改正は難しいと思いますが、可能性はゼロでは有りません。
現行憲法の「戦争放棄」は独立国家としての憲法としては有り得ないものなので、「憲法改正」は当然行うべきなのですが、現実的には解釈改憲でPKOへの参加や集団的自衛権の行使は可能です。まあ、その都度国会でスッタモンダは在りますが・・・・。
一方、仮に南シナ海で中国とフィリピンやベトナムが衝突した場合、日本が現行憲法で戦闘に参加できるかと言えば微妙です。多分後方支援止まりかと。
ここで堂々と戦闘支援する為には、やはり憲法を改正して「集団的自衛権」を確立すると共に、「専守防衛」のタガも緩めておく必要が有ります。尤も、フィリピンやベトナムなどと日本は安全保障条約を結んでいませんから、直接は支援出来ません。多分、米軍を支援するという形で哨戒や艦隊護衛、さらには兵站輸送の一部を任される事になるでしょう。
中東有事という事態も想定されますが、米軍支援で地球の裏側の戦争に参加する事に国民は積極的では無いはずです。それよりも、アジア有事の方が自衛隊派遣のハードルは低い。
はたしてアジア有事が起こるのかは「確率」の域を出ませんが、可能性が高まっていますから「憲法改正」はアメリカにとっては必要なのだと思います。別に日本国民の為には・・・多分ならないのですが・・・。
【追記】
民進党が内閣不信任案を提出しましたが否決されました。麻生財務大臣と安倍首相も会談して「解散はしない」方向を確認した様です。
「解散ありき」で動いていた政局の様に見えましたが、安倍首相は解散しない事を選択した様です。うーん、「リーマンショック前夜」発言にしろ何か違和感が・・・・。
危機が起きるとすれば、新興国危機。アメリカの利上げで新興国の資金が一気にアメリカに還流するとアジア通貨危機の再来の様な事も起こり得ます。これに円が巻き込まれるとか・・・・??