人力でGO

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箱根旧道アウター縛り

2016-05-09 04:50:00 | 自転車/マラソン






■ キャノンボール ■
 

自転車乗りの勝手イベントに『キャノンボール』なるものがあります。「東京-大阪間 550Kmを24時間以内に信号や交通ルールを守って走る」という挑戦ですが、2006年頃に2chにスレが立ち、それ以来我こそはと言う猛者達が120人程挑戦して、達成は20人程度という過酷なチャレンジです。

単純に550kmを24時間で割ると平均時速は22.9km/hとなりますが、ここに信号待ちや、箱根や金谷や鈴鹿の上り坂のロス、そして休憩時間が加わりますので、メータ読みのAVは27kn/hを維持しなければ達成は難しい。

自転車乗りならば分かるかと思いますが、信号待ちの多い都会部ではAV25Km/hを維持しようと思うと、巡航速度は40-35km/hを維持する必要が有ります。これ、アマチュアではほとんど全力走行です。これを24時間維持するのは困難なので、信号の少ない区間でアドバンテージを貯めて速度が上がらない区間をカバーする事になります。何れにしても24時間近くをほぼ全力で走る事になるので、極めてハードルの高いチャレンジです。

■ 東京-金谷 プチキャノンボール ■

私などはチャレンジする前に無理と分かっているキャノンボールですが、達成者達がどんなに速いのか、GWを利用して東京から静岡県金谷町まで230Km程度でプチチャレンジしてみようかと思い立ちました。

何故ゴールが金谷かと言えば、母方の先祖のお墓が有るからです。実は母方の親戚にはもう10年近くご無沙汰しています。新幹線に乗ってしまえば大して時間は掛からないのですが、「自転車で行ける距離を電車で移動する」事に最近は「勿体無さ」を覚えてしまいます。お金が勿体無いのでは無くて、「自転車でロングライド出来る機会を失う」ことが勿体無いと感じてしまうのです・・・。「ああ、箱根超えの220kmって丁度良い距離だなぁ・・・」なんて思うと、どうも電車で行く気になれないのです。

そこで今回はプチ・キャノンボール企画として東京-金谷間にチャレンジしたいと思います。事前に親戚に連絡を入れると伯父や叔母が心配して全力で阻止されそうなので、サプライズで電撃訪問する事にします。突然の訪問ですから社会人の常識としては日帰り。そうなると、19時には静岡を出発したい。逆算すると17時には金谷に到着する必要が有ります。

220km/h程度なら12時間も有れば確実に到着するでしょうから、余裕を少し見て朝4時30分に浦安を出発します。

■ 10mを超える強風・向かい風に心が折れる・・・ ■



実は朝からゴウゴウという強風の音で目覚めました。風予報では静岡は午後から南南西の風5mですからちょっとキツメの向かい風・・・これなら行けると判断して家を出ます。

葛西橋通りは左前方からの強風でハンドルが取られて危険。江戸川と荒川の橋は風に煽られるので歩道を走って超えます。

隅田川を渡って進路を西に取ると・・・モロ向かい風になります。ビルの間を時折強い風が吹き付け、下ハン持っても27km/h以上はオーバーパワーになってしまいます。都心区間は時速35km
/h以上で走らないと信号に引っ掛かり易くなります。約300m置きの信号に一個飛びで確実に捕まる状態が続きます。

雨もポツリポツリ降って来て、なんだか既にやる気が削がれてしまい、八丁堀で「すき屋の牛丼」にピットインして朝食にします。

品川を過ぎて大森辺りまで来ると、風はさらに強まります。iPhoneの天気予報で確認した所、風速は11m/sと表示されました。道端の外灯の頭が風に煽られて揺れています。これをモロ正面から受けて走るので・・・心が折れる音がポキポキ聞こえてきそうです。「もう帰りたい・・」と妻にメールした所、「腹の肉を落としてこい」と返事が・・・・。仕方無い、進むか・・・。



本日はプチ・キャノンボールですから本来は高速巡航のはずでしたが・・・予定を変更して、とにかく「到達」する事を目標とします。この向かい風でどれだけ足を残せるかがカギになります。

1)立漕ぎ封印
2)速い人を追わない

この二つの封印を自分に課します。・・・しかし、横浜の手前でTIME乗りさんの後ろに付いた途端・・・自転車乗りの本能の赴くままに追走してしまいまいした・・・向かい風37km/h。パシフィコ横浜付近でふと我に帰りスピードを緩めます。その後も後ろから抜いて行ったTREKのマドンを追いそうになりましたが、ここは必死に我慢します。

信号待ちで空を見上げると・・・寒冷前線の雲が行く手に黒々と延びています。これを超えなければ強風は止みません。



平塚を過ぎた辺りでようやく前線を抜けた様です。あいかわらず向かい風は強く吹いていますが、先程よりは幾分和らぎます。大磯で小休止してカップラーメンで箱根超えのエネルギーをチャージします。



小田原の酒匂川から富士山がチラリと見えます。箱根の外輪山は雲の中です。南からの強風で「傘雲」の様な雲が山頂付近を覆っています。

■ 本日はアウター53t縛りで旧道チャレンジ ■



風祭のコンビニで小休止して、箱根のヒルクライムに取り掛かります。本日は初めての旧道チャレンジ。足を使いたくないのでタイムトライアルはしませんが、ただ登ったのでは面白く無いので53tアウター縛りを自分に課します。まあ、シングルギアーよりは全然軽いギアーを使えるので楽勝でしょう・・・そう思ったのもつかの間。旧道っていきなり10%超えから始まるんですね。一気に後ろのギアーは28tまで使い切ってしまいます。

いつも国道1号を登りますが、箱根の旧道って趣きがあって素晴しいコースですね。起伏にも富んでいて、登りっ放しの国道1号よりも楽しく登れます。

本当は写真を撮りながら登りたかったのですが・・・足を付きたく無いので写真は有りません。

温泉街をいくつか抜けると、旧道名物の「七曲」が現れます。ヘアピンカーブが連続する劇坂区間ですが、カーブの内側の斜度は瞬間的に20%を超えていそうです。ここだけ立漕ぎで凌げば、後はダラダラとシッティングで重いペダルを強引に踏みつけて進むだけ。


(ネットから写真を拝借します)

空から見るとこんな感じ。

ところで「七曲」、実は11個のコーナーが有るってご存知ですか?これを事前に知っておかないと予期せぬ8個目のヘアピンカーブの出現に心が折られて足付き必至。私は知っていたので、このトラップはクリアー。

ところが、七曲の上の傾斜が緩くなった所で、再びヘアピンが現れた時には、思わず足付きしそうになりました・・・。ヤバかった・・・。



一月前は46t-16tというギアー比2.875のシングル自転車で国道1号を登ったので、53t-28tのギアー比1.892は楽に感じます。実際、シングルでは「オールダンシング」状態でしたが、今回はヘアピンの内側意外はほぼシッティングで登れました。おかげで体力は温存。

旧道が終わる交差点で赤信号に捕まり、ここで足を付きます。11:06に旧道に入り、12:08に交差点に到着しました。1時間は切れなかったけど・・・タイムトライアルでは無いので、まあこんなモンでしょう。

■ 霧の芦ノ湖 ■




芦ノ湖までは一気に下ります。湖面は霧で見通しが利かず、強風による波が岸辺を洗っています。



GWも最後とあって人出は程々。午後からは日帰り客が増えるのでしょう。



コンビニに立ち寄りますが、固形物は食べたく無かったのでエナジージェルでパワーを補給します。さて、ここからはしばらく登りが続きます。静岡側の登る道は霧で視界不良。後ろから車に突っ込まれないか心配になります。「道の駅・箱根峠」で霧をやり過ごすために小休止。





道の駅でお土産を見ていたら・・・こんな物を発見!!そういえば『エヴァンゲリオン』の舞台って箱根だった。これは思わず買ってしまいます。当然、男なら「加持さんのスイカ」一択です。

■ 国道1号線、静岡側はジェットコースター ■

道の駅から少し登ると、いよいよダウンヒルのスタートです。神奈川側と比べ、道幅の広く、コーナーも緩やかなのでスピードに乗ります。60km/hをリミッターにして慎重に下ります。先行する自動車が良いペースメーカーになってくれるので、これに付いて一気に三島まで下ります。途中、展望が開けた所で三島の街と駿河湾、そして伊豆半島が展望でき、「オオーー」と声が漏れてしまいました。

高速ダウンヒルは下ハンを握り放しで背中と肩が疲れましたが、何よりも緊張の連続で頭が疲れました。坂を下り切った所で路肩に自転車を止め、ウィンドブレーカーを脱ぎます。

■ 曇天の「田子の浦」と「千本松原」 ■









バイパスを回避して沼津市内に入ると信号が増えて来ます。そこで海岸沿にコースを取ります。千本松原を抜けて防波堤の上に出ると「田子の浦」が一望出来ます。

百人一首で山部赤人が

  田子の浦に うち出(い)でてみれば 白妙(しろたへ)の

                富士の高嶺(たかね)に雪は降りつつ
 

と歌った「田子の浦」。海岸は砂利の砂浜?が続きます。実は幼稚園の2年間、沼津の隣りの富士市に住んでいたので、ここへは観光地引網に来た記憶があります。シラスの中に小さなフグの子が沢山混じっていたのが印象に残っています。

海岸沿いの防風林の松林は「千本松原」と呼ばれる景勝地です。海岸は沼津から吉原港まで続いています。強烈な向かい風もようやく収まってきたので、防波堤の上を吉原まで走ります。

■ おぼろげな記憶を辿って幼稚園時代に住んでいた街を訪ねてみる ■



吉原から富士にかけては製紙工場が沢山有ります。私の父も製紙会社に務めていたので、幼稚園の2年間は父の転勤で富士市に住んでいました。


製紙工場はパルプを化学薬品で溶かす為に、かつては周囲に悪臭を撒き散らしていました。東海道線で吉原や富士を通過する時には、多くの方が窓を閉めました。技術が進んだのか悪臭は無くなりましたが、林立する煙突から白い煙を濛々と吐き出す姿は45年前と変わっていません。

かつて日本には大小様々な製紙会社が有りましたが、大手に吸収再編される形で今では王子製紙や日本製紙など数社に統合されてしまいました。今でこそカナダなどからの輸入チップを原料としていますが、その昔は日本の木材を原料にしていた製紙業。富士市周辺や北海道に製紙工場が集中している理由は森林資源が豊富だったからで、現在でも製紙会社は国内に広大な原料用の森林を保有しています。



吉原からは東海道線の北側を走ります。だんだんと富士駅が近づいて来ました。ここに寄り道をすると時間が無くなってしまいますが・・・懐かしくて思わず駅に向う道にハンドルを切ります。



私が住んでいたのは駅の南側の田んぼの中の一軒屋でした。田んぼや川の記憶は鮮明に覚えているのですが、駅の北口の記憶はほとんど有りません。唯一、貨物列車の操車場に日立のカラーTVのマスコットが来た時の事は鮮明に覚えています。「タイツを履いた人間の脚」が着ぐるみから出ているのを見て「中の人」の存在を確信した私は可愛く無い子供だったと思います・・。


(ネットから写真を拝借します)

これ覚えてますか?「ポンパくん」と言う名前だと今知りましたが、未だTVの多くが真空管だた時代、スイッチを押すと「ポン、パッ」と付く半導体のTVが出始めた頃でした。当時の我が家は真空管の白黒TV。カラーTVは高値の花でした。

その操車場は現在も同じ姿をしていました。輸送が鉄道からトラック主体に変った現在は、工場地帯と言えども貨物輸送の量は減っているとは思いますが。

昔は操車場の近くに木造のヤマト運輸の営業所が有りました。クロネコのマークの記憶は鮮明です。宅配便なんて無かった頃(昭和45年頃)なので、荷物を受け取りに良く利用していました。その横に三輪トラックがいつも停めて有りました。(若い人は知らないでしょう・・)


(ネットから写真を拝借します)



■ 風景がミニサイズになった ■

駅から、昔住んでいた家までの道筋は曖昧です。そもそも道が随分と変わっています。ただ、友達と良く遊んだ「八幡宮」は直ぐに見つかりました。遠くからでも木立が目立つからです。夏になるとクマゼミが大合唱していました。拝殿の隣りの集会場の位置も当時のままだと思います。ここが公民館の役割を果たしていて、「ゴミをきちんと捨てよう」なんて映画を見せられた記憶が・・・。

幼稚園の頃100m程度に感じられた距離は、現在では30m程度なのには驚きました。あっと言うに行き過ぎてしまうのです・・・。そんなこんなで、ちょこちょこ道に迷いながらも何とか昔住んでいた場所に辿り付きました。家は当然建て替えられていて面影は残っていません。当時、田んぼの中の一軒屋だったのに、今では大型スーパーが目の前に建っています。

ドジョウを捕ったり、カワニナを捕ったりした用水路は今でもキレイな水が流れていますが、その水を必要とする水田はほとんど無くなり宅地に変わっています。ここら辺の農家は、今となっては「地主」ですね。

■ 新富士から新幹線で一気に東京へ ■

懐かしくてあちこちウロウロしていたら、すっかり時間を食ってしまいました。母親に昔の家の写真をメールで送り、叔母の家に行く途中と伝えたのですが、母が叔母に電話してしまったので「心配だから来ないで」と叔母に言われてしまったそうです。(そう言うだろと予想して、こっそりここまで来たのですが・・・)

結局、サプライズ訪問という目的も無くなってしまったので、本日はDNFです。足はまだまだ充分に残っているので残念ではありますが、気持が萎えてしまいました。

浦安から160Kmも離れてしまったので普通電車で帰ると時間が掛かります。ここはちょっと贅沢をして新富士駅から新幹線に乗る事にします。実は新富士駅がすぐ近くなのです。



駅前に到着して振り返ると、雲に隠れていた富士山がようやく姿を現しました。「富士市」と言うだけあって、ここから見る富士山が一番美しい。ほぼ左右対称ですが、右側の稜線に宝永火口がほんの少し盛り上がって見えるのがアクセントです。山梨の方には失礼かと思いますが、こちらが「表富士」です。



空腹もMAXなので駅弁を買います。富士市のお隣富士宮市の名物と言えば「焼きそば」。底に石灰?が入っていて紐を引くと過熱するお弁当を買いました。エビやイカや肉が沢山入っていてなかなか豪華でした。

ビールを飲んで一寝入りしたらもう東京に着いていました。「こだま」と言えども新幹線は早い。特急料金は2480円ですが、「時は金なり」とは良く言ったものです。


本日は「プチ・キャノンボール」として行程の半分にチャレンジする予定でしたが、強風で図らずも単なる「ロングライド」になってしまいました。


本日の走行距離

走行距離・・・160 km(富士駅入り口まで)
出発  ・・・4:30  -  到着 15:07
トータル時間・・・10時間37分
トータル平均速度・15.2 km

ウーン、強風とは言えブルベペースでしたね。キャノンボールへの道は遠い・・・。



本日の食費 (記憶) 

<八丁堀>
牛丼・・・・・・380円
レッドブル・・・240円
ポカリ・・・・・200円
キャラメル・・・100円

<大森>
おむすび・・・・160円

<大磯>
カップラーメン・170円
レッドブル・・・240円

<風祭>
おむすび・・・・160円x2
ポカリ・・・・・200円
ミネラル水・・・100円
レッドブル・・・240円


トータル・・・・・・2350円 (但し、駅弁とビールは含まず)


ウーン、これ電車の普通料金とほぼ同じだ・・・。電車って実はコストパフォーマンスが良いんですね。