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中東を押し付けられるフランス・・・中東から撤退するアメリカ

2015-11-18 08:18:00 | 時事/金融危機
 

■ 世界の警察を辞めるアメリカ ■

オバマ大統領は就任以来、アフガニスタン、イラクからアメリカ地上軍を撤退させました。これはオバマ大統領が「平和主義者」だからという訳では無く、アメリカが中長期的に「世界のの警察」の座を降りようとしている事の一環です。

アメリカは日本同様に巨大な国家債務を抱えていかすが、将来的に発生する年金コストなど「隠れた負債」を含めると、アメリカの国家債務は公式に発表されている数字を遥かに上回ると言われています。

アメリカ議会は債務上限問題で度々紛糾しますが、あれは国家債務を適正に管理しているというパフォーマンスに過ぎず、既にアメリカは返済不能の債務を抱えています。世界の国々が米国債を買っている間はアメリカが財政破綻する事は有りません。しかし、アメリカの国力やドルの魅力が失われて米国債金利が不用意に上昇する様な事が起これば、ドルや米国債の継続性への疑問が急拡大します。

アメリカの財政は増え続ける軍事費の負担に耐えられなくなりつつあり、トランスフォーメーションという米軍縮小再編を全世界で進めています。予定では2016年からは在韓米軍が撤退し、沖縄の海兵隊のうち8千人がグアムやオーストラリアに移転します。

トランスフォーメーションの基本は、「世界に分散した戦力をコアとなる拠点に集約し、有事の際には航空輸送で速やかに戦地に展開する」事で、その為に戦車などの重量武装は減らし、ストライカー装甲車など軽い装備への転換が進んでいます。

■ 地上軍の投入を嫌う米軍 ■

ベトナム戦争以降、米軍は地上軍の投入で完全な勝利を収めていません。地上軍の展開には大きなコストと人的な被害を伴いますが、現在の非対称の戦争では、敵は雨後の竹の子の様に生まれて来るので、イラクやアフガニスタンの様に地上軍が縮小されれば、アメリカのプレゼンスは低下します。

それでは地上軍を半永久的に展開させられるかと言えば、財政の制約、国民の厭戦感の高まりなどからそれも不可能です。

オバマ政権は地上軍の投入を極端に嫌っており、シリアでも空爆はすれど、地上軍の派遣には慎重です。イラク、アフガニスタンの二の前になる事が明白だからです。

■ 「バランサー」としてのフランス ■

フランスはかつてアフリカやアジアの多くの地域で殖民地をイギリスと二分していました。中東ではシリアとヨルダンがフランス領でした。これは一見するとフランスの国力がイギリスに拮抗していたかに見えますが、実はオイシイ所はイギリスが抑えており、フランスは余り物を押し付けられていただけとも言えます。イギリス一国で広大な植民地を管理する事は不可能なので、フランスと分割統治する形を取っていたのです。

大戦後、フランスは米英とは異なる国際戦略を取ります。民主社会主義的な立ち位置で、東西連戦時代は米英と東側諸国の間で「バランサー」の役割を果たします。

イラク戦争でも、フランスは最後までイラクへの国連軍の派遣を否定し、その結果アメリカは「多国籍軍」という形でイラクに軍隊を派遣する事になります。

リーマンショック以降もフランスは中国の人民元をSDRに採用する動きを強めるなど、米英と距離を置く戦略を取っています。

この様な戦後のフランスの行動から、フランスは米英と対立していると見られがちですが、実は米英とフランスは補完的で、米英に反発する国の不満をフランスが代弁する形でガス抜きが行われているとも言えます。

■ フランスに中東の警察の役を押し付ける米英 ■

第二次世界大戦後、中東におけるフランスのプレゼンスは低下していました。各国の王室や富豪や支配層はアメリカやイギリスに留学して、その関係を深めています。

しかし、近年、フランスはイギリスの影響の強いアラブ首長国連邦のアブダビにフランス軍基地を設けるなど、中東におけるプレゼンスを拡大しています。さらに、リビア攻撃やシリア攻撃でも積極的な姿勢に転換しています。

これはあたかも、中東から退きつつ有る米軍の役割をフランスが肩代わりしている様に見えます。地理的にも中東に近いフランスは、軍の投入という意味からも中東の警察の役割に相応しいとも言えます。

■ パリのテロ事件は911同様、フランス人を中東の戦闘に巻き込んで行く ■

パリのテロ事件がヤラセかどうかは永遠に不明ですが、その結果は有る程度予測されます。フランス軍は既にISISの拠点の空爆を決行していますが、これは新たな対立の火種となり、再びフランス国内でテロが発生する確率を高めます。

今回のテロの様な、自国内での直接的な暴力の行使に対して、リベラルと思えるフランス人であっても態度を硬化させます。さらに移民問題から庶民の間ではアラブ系への反感も高まっており、国民戦線のルペン党首の様な分かり易いアジテーターも存在します。

フランス国民が態度を硬化させる程、フランスはテロの標的となり、フランスは中東での戦闘に巻き込まれて行くでしょう。

■ ハッスルするフランスの裏で、こっそりとフェードアウトする米軍 ■

今後、空爆などの主役がフランス軍やロシア軍に置き換わる影で、アメリカ軍はこっそりと中東での軍事活動を縮小してゆくかも知れません。

サウジアラビアやイスラエルがロシアとの連絡を密にし始めるなど、アメリカ一辺倒だった国々の態度が徐々に変化しつつ有ります。

■ 米軍ほど強硬になれないフランス ■

巨大な軍事力を誇ったアメリカと違い、フランスの戦力は限定的です。NATO軍として中東に展開するにしても、各国の思惑はバラバラですから、米軍の様な強硬な戦略は取れません。

結局、フランスやヨーロッパの国々は中東にとって「警察」あるいは「バランサー」的な役割を担う様になると思われます。シーア派とスンニ派が対立した場合、その調整役に駆けつける役割を担うのでしょう。

■ 対立の元に安定するであろう中東 ■

アメリカという暴君が去った中東では、シーア派とスンニ派の小競り合いが続き、それぞれの勢力、それぞれの国は容易に結束する事が出来ません。一方で、それぞれの国は、それぞれの利害においてロシアや中国、フランスを始めとするEU諸国などと関係を深めてゆくと思われます。

こうして、アメリカが退いた後の中東は、対立を残しながらも安定するかも知れません。ただ、そこに至るまでに邪魔物は排除されるでしょう。現在、その筆頭がシリアのアサド政権なのでしょう。

イスラエル、イラク、サウジアラビア、エジプト、トルコ、(アラブ首長国連邦)辺りがこれからの中東に主役になり、不安定な均衡を保ってゆく事になると思われます。



まあ、妄想に過ぎないのですが・・・