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「日銀への利払い費は国庫に納められるから問題無い」の限界・・・インフレに足をすくわれる?

2015-07-14 09:33:00 | 時事/金融危機
 

一部のリフレ論者の主張が現実可能なのか検証する第二弾。

1) インフレになれば全てが解決する

2) 「自国通貨建ての内国債は破綻しない」のだから国債はいくら発行しても構わない

3) 「国の借金は国民の資産」だから財政赤字の拡大は問題無い


が成立するかどうかを、素人なりに検証してみます。

前回記事はこちら。

「インフレになったら全部解決しちゃうんだからね!!」のウソ・・・「良いインフレ」と「悪いインフレ」

■ 「自国通貨建ての内国債は破綻しない」のか? ■

1) 日本国債は日本の通貨「円」建てで発行される
2) 日本国債の保有者は日銀と国内の金融機関が90%近くを占める

確かに彼らの主張する様に、日本国債は国内の金融機関の保有量が大部分を占め、国債を暴落させるメリットが存在しないので、通常は国債を売り込まれる心配は有りません。

3) 日銀が異次元緩和で新発国債の90%に相当する額を購入している
4) 日銀は既に既発国債の25%を保有しており今後もこの比率が上昇する

日銀が異次元緩和を続ける限り、需給バランスは日銀によって支配され、金利は低く抑えられます。さらに、日銀の保有比率が高まる事で、市場に流通する国債は不足気味になり、国債の需要は相対的に高まり国債金利の上昇を抑制します。

何だか一部のリフレ派の主張する「ウィン・ウィン」の関係が成立する様な気がしてきました。


■ 増大し続ける国債の利払い費 ■

以前から日本の財政の継続性に疑問を持つ人達が問題視するのは、一般会計における日本国債の利払費の割合です。

政府は先日「骨太の方針」を閣議決定し、経済成長によって財政赤字を改善する方針を発表しました。

1) 実質2%、名目3%の経済成長の継続を前提とする
2) 経済成長による税収増で赤字は徐々に縮小する



上のグラフは財政金融委員会調査室が発表している「我が国財政の利払費に関する一考察 」という資料から拝借しました。

http://www.sangiin.go.jp/japanese/annai/chousa/keizai_prism/backnumber/h27pdf/201513402.pdf

○ 名目3%成長が10年続く
○ 10年後から経済成長率と物価上昇率は横ばいとなる
○ 10年後から長期金利が上昇し始め徐々に4%を超えて行く

名目3%成長が10年続くという前提自体が既に実態からかい離しています。先進国の経済成長率は低下傾向に有り、アメリカでも実質2%成長が達成出来なくなる中で、少子高齢化が進む日本が、どうやって実質2%の成長を10年も持続出来るのか・・・この点だけでもアマアマの予測です。

このアマアマの予測に従って国債の利払い費を推測したのが次のグラフです。





○ 2025年までは利払い費が抑制されている
○ 2025年から長期金利が上昇すると予測しているので利払い費が増大する

このグラフのトリックは上の長期金利の上昇が前提になっている点です。2025年からの長期金利の上昇が無ければ、国債費の一般会計に占める割合はこれ程増えない事に注意が必要です。

■ 日銀に対する利払い費は国庫に返納される ■

ここで一部のリフレ論者はこう声高に主張します。

「日銀が買い入れた分の利払い費は国庫に返納されるのだから問題無い」
「日銀に払った償還費用は日銀が又国債を購入すれば政府に戻って来る」

確か日銀は国債購入の利益である利息を国庫に戻しています。日銀は諸経費を除いた後の利益の95%程度を政府に納めています。

一部のリフレ論者的の主張の様に、日銀の日本国債のほとんどを保有し、償還されたらロールオーバーを繰り返し、金利も国庫に納める限り、国債発行コストはほぼゼロに抑えられます。


しかし、日銀の国債保有量には技術的な限度が有ります。日銀がこのまま異次元緩和を継続できたとしても2020年には日銀は残存国債の60%以上を保有する事になります。金融機関は担保として日本国債保有の必要が有り、また生保各社も長期国債を満期保有前提で運用を行っているので、国債が市場で足りなくなるのです。現行では日銀の国債保有は60%程度が限界となります。

そこから先、100%保有などという事態は、国債暴落による投げ売りで日銀が全量買い入れに踏み込まない限り不可能となります。




何れにしても日銀は当初2年程度の予定で異次元緩和に踏み込んだので、これが4年も5年も継続する事態は異常です。

世界が明らかに財政ファイナンスである異次元緩和を看過しているのは、それが期間限定のイベントで、その後、日銀がテーパリングから買い入れ停止という出口戦略に入る事が前提となります。


■ 日銀が出口戦略に入るとどうなるのか? ■

仮に2年後に日銀が出口戦略の開始を宣言して国債購入額を減らし始めたとします。国債市場で最大の国債の買い手が購入額を減らして行くのですから市場は混乱します。

しかし、これだけで国債金利が跳ね上がるかどうかは疑問です。

○ 日本の金融機関は国債の安定維持を守ろうとする
○ 金利が上昇する様なら日銀はテーパリングのペースを緩めたり停止する事が出来る

多分、外国人投資家が日本国債を売却して市場は一時的に不安定になるかも知れませんが、日銀、財務省、金融庁、金融機関の完璧タッグで、金利上昇を抑制する事は不可能では無いと私は考えます。

■ 日銀は償還国債をロールオーバーし続ける ■

日銀がテーパリングの次に着手するのは「利上げ」です。

一般的に「日銀の国債売却」を思い浮かべてしまいますが、FRBですらQEで膨らんだ国債の市場売却は不可能でしょう。償還期限まで国債を持ち込し、場合によってはロールオーバー(借り換え)に応じる事で、金利上昇をコントロールするハズです。

当然、日銀の国債の市場売却はせずに償還、あるいはロールオーバーで金利を抑制するはずです。

■ 実は内閣府の予測より金利上昇は抑制されるのでは無いか ■

私は財務省と日銀は上記の様な戦略で、内閣府予測よりも金利上昇を抑え込めると予測していると思います。

これには日本の金融機関の協力が必要ですが、異次元緩和で残存年数を圧縮しているメガバンクは柔軟に対応出来ますし、長期国債を大量に保有する地銀や信金などは、生き残りの為には、国債の買い増しで金利を抑制する必要が有ります。

経済成長率を考慮しても、日本の長期金利は2%から先には、なかなか上昇しないのでは無いでしょか?

■ 自由な為替市場が存在する世界で円はどう評価されるか? ■


確かに国債需給と財政維持だけみれば、そこそこの継続性が有る様に見えます。「なんだ、財政破綻なんてしないじゃないか!!」と思えて来ました。

しかし、元になっている経済成長率がアマアマなので、こんなに事は上手くは運びません。
現在のまま少子高齢化が進んだ場合、異次元緩和の継続如何に関わらず日本の経済成長はマイナスに転じます。税収は予測程伸びず、財政悪化の速度が加速します。ここで、自民党が有効な手段を講じなければ、日本の国力低下によって為替市場で円が下落を始めます。

黒田総裁は先般口先介入で過度な円安を牽制しましたが、異次元緩和やアベノミクスの効果が疑われ、第三の矢の効果が出るには時間が掛るとなれば、為替市場でジリジリと円安が進行します。

ここで日銀はジレンマに陥るはずです。為替を円高に戻すには、異次元緩和を縮小するしか有りませんが、それでは財政を支えられなくなります。

円安による輸入物価上昇でインフレが発生しますが、日銀がテーパリングに踏み込めなければ悪いインフレの進行に従って国内金利は上層しますが、国債金利は日銀が抑え込むという不自然な状況が生まれます。

金融機関は手持ち国債の金利では預金者に金利が払えず逆ざやが生じるので、国債を手放さざるを得なくなります。生命保険各社もインフレ率の上昇が保険のリターンを大きく上回る状況が発生すれば保険が解約されてしまいます。

この様な状況に陥らない為にも、黒田総裁は先日も口先介入で過度な円安を牽制しました。しかし、これは何回も通じる手では有りません。

一部のリフレ論者が「良い物」としている円安とインフレですが、過度にこれが進行すると日銀と財務省の計画に狂いが生じるでしょう。

日銀と財務省、そして金融機関の完全タッグが継続出来ずに国債金利が上昇する事態が起きたら、日本の財政維持に赤信号げ点灯します。




★★★ ここからは陰謀論の世界(陰謀論ファンサービス) ★★★


■ 日本の財政破綻の前に、世界の通貨制度が揺らぐのでは無いか? ■

実は、私は日本の財政の継続性を本気では心配していません。何故なら、日本がコケる前に世界経済がコケる可能性が大きいからです。

リーマンショック以降、各国中央銀行が供給した莫大な緩和マネーは世界のリスクと金利のバランスを大きく崩してしまいました。アメリカが利上げに入る事で、リーマンショックの様な危機が発生する可能性が高くなります。

世界の中央銀行はリーマンショックの後、膨大な資金供給で世界経済の崩壊を一時的に食い止めましたが、再び巨大な危機は発生した場合、金融緩和では危機が防ぎ切れないと人々は考えます。そうなると、通貨と国債の信用が一気に失われます。

この時、膨大な財政赤字を抱える日本やアメリカの国債や通貨の価値は根底から揺らぎます。ユーロだって無事では居られませんし、元などは言わずもがな・・・。

■ 「エーイ、戦争でウヤムヤにしてしまえ」といういつのの手段 ■

実は世界が混乱に陥った時、必ず使われる便利な手段が有ります。それは戦争です。

リーマンショック後の世界は1929年の世界恐慌後の世界に良く似ています。各国は様々な金融、財政政策を試みますが、結局経済の立て直しは思う様に進ますに戦争という手段で経済の失敗を誤魔化します。

中東で、東シナ海や南シナ海で、ウクライナで様々な仕込みが進行しています。安倍政権が安保法制の改正を急ぐのも、来るべき事態に備える為でしょう。

現在の戦争は大国が総力戦で勝敗を決する必要は有りません。ちょっとした地域限定の軍事衝突でにらみ合いの均衡を作り出す事が出来ます。

これだけで、十分に各国は「戦時体制」となり、経済も統制されるでしょう。

先日、上海市場で中国政府は強引な手で株価暴落を防ぎましたが、「非常事態」ともなれば自由な市場は制限され、規制の中で新たな通貨制度と国際関係が構築されて行くのだと思います。



・・・・最後はかなり雑な考察となりましたが、財務省が異次元緩和に踏み込んだ最大の理由は、結果が問われない事が確定しているからかな・・・などと陰謀論的には考えてしまいます。