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名水って「まずい?!」・・・硬度と日本酒

2015-07-10 05:14:00 | 時事/金融危機
 

■ 名水が美味しいとは限らない ■





先週の土曜日、降り続いた雨も午前中に小降りになったので魔改造MTBのラレー君で出動。養老渓谷まで往復しようかと思いましたが、晴れ間が見えて来たので調子に乗って鴨川まで足を延ばす事に。いつもは帰路に使う久留里街道に姉ヶ崎から入って逆コースで走ってみます。

江戸時代の城下町の雰囲気を良く残す久留里は「名水の街」としても有名です。江戸時代に渇水で悩まされた事を契機に、「上総掘り」の井戸がいくつも掘られ、地下400m以上の深さから井戸水が自噴しています。街の至る所に自噴井戸が有り、その量43t/日だそうで、まさに「名水の街」の名に相応しい。

本日はMTBで先を急ぐ訳では無いので、井戸水をゆっくり味わってみます。

・・・・マズイ・・・・

何?このドブの様な匂いは。それに結構水が硬い感じです。
名水って美味しいはずでは、私の味覚に異常があるのでしょうか?

有名な井戸では車でいらした方達が大きなポリタンクに水を何本も汲んでいます。こんなドブ臭い水をいったいどうするのでしょう・・・???

■ ドブ臭さ(硫黄臭)は一晩汲み置きすれば消える ■

実はこのドブ臭さの正体は「硫黄」だそうです。房総半島は海底堆積岩の地層ですが、この地層には海底に堆積した生物の死体も沢山含まれています。君津市の七里川温泉や鴨川市の白岩温泉は単純硫黄泉ですが、これらの堆積物由来の硫黄が含まれていて、火山性の硫黄泉と比べて湯質は柔らかで温泉マニアの評価も相当高い。

地下400mから自噴する久留里の井戸水にも、この硫黄が含まれておりそれがドブ臭さの原因となっているそうです。この硫黄臭、一晩汲み置きすればすっかり消えるそうで、水も「まろやか」な味わいになるとか。

■ 水の硬度 ■

海底堆積層を通過した久留里の井戸水はカルシウムやマグネシウムといったミネラルも豊富な中硬水です。多分硬度が150近辺かと思われます。

一般的には飲用にはミネラルがあまり含まれていない「軟水」が適していると言われています。市販のエヴィアンは硬度が300を超える硬水ですが、あれを美味しいと感じる人はコマーシャリズムに毒された人でしょう。痩せると一時期人気のあったコントレックスの硬度は何と1500。あれをガブガブに飲める人を私は尊敬します。ちなみに、日本人の好きな「南アルプス天然水」の硬度は30程度です。外国産だとボルビックが60程度。

飲み水の元となる雨水は蒸留水なので硬度は0です。雨水が山などに降り、表層を伝わって沢になり河川となりますが、この表層水はミネラルがあまり溶け込まないので軟水となります。

ヨーロッパなどは河川が長いので、ミネラルが溶け込む量も増え硬水となります。日本の水道水ではでは千葉県などは硬度が高めで、これは利根川や江戸川など長い河川から取水している影響でしょう。

鴨川に住む娘のアパートの水も結構硬いなと調べてみたら、表層水ながら硬度が130もありました。

■ 酒造には硬水が適している ■





飲用としてはあまり美味しいとは言えない硬水や中硬水ですが、酒造りには最適の水です。水に溶け込んだミネラルが酵母の成長を促進させしっかりとした発酵を促すからです。日本一の酒所、兵庫県の灘地方も硬水です。

一方、新潟などは硬度2などという超軟水で実は酒造には向いていませんでした。酵母発酵の段階で雑菌が繁殖してしまい腐酒になる事も。その為、江戸時代の文献には「酵母発酵を促す為に海水を加えると良い」という記述も有る様です。

硬水で仕込んだ日本酒は発酵がしっかりと促進する為に味が濃厚に成り易く、一方、軟水で仕込んだ日本酒は淡麗な味わいになる傾向が有る様です。昨今の食生活の変化で、日本人はさっぱりした味わいの日本酒を好む様になり、新潟などの淡麗系の日本酒の人気が高まります。新潟の酒蔵も、軟水を生かした酒造りを探求して品質を向上させました。(白瀧酒造の「上善如水」なんて水じゃん!?って感じてしまうのですが・・・ゴメンナサイ)

さて中硬水の久留里はと言うと、城下町という事も有り酒蔵が沢山有ります。吉崎酒造の「吉壽 」などが有名でしょうか。

■ 隠れた名酒が多い千葉県 ■

酒所としてはほとんど無名で、全国区の銘酒が無い千葉県ですが、歴史の長い酒蔵も多く、佐倉、佐原(神崎)、勝浦、成田、酒々井、君津など県内各所に知る人ぞ知る酒蔵がいくつも有る様です。

銘酒として有名なのは香取市神崎町の「寺田本家」の「五人娘」だそうで、無農薬米に蔵付きの天然酵母で醸造された自然志向の日本酒です。水郷の佐原周辺には銘酒が多い様です。

ランキングを見つけたので参考までに

1位 五人娘  寺田本家   香取市神崎町
2位 木戸泉  木戸泉酒造  いすみ市大原
3位 仁勇  鍋店     香取市神崎町
4位 甲子正宗 飯沼本家   印旛郡酒々井
5位 むすひ  寺田本家   香取市神崎町
6位 腰古井  吉野酒造   勝浦市
7位 東薫  東薫     香取市佐原
8位 梅一輪  梅一輪    山武市
9位 不動   鍋店     香取市神崎町
10位 寿萬亀  亀田酒造   鴨川市

私も自転車で酒蔵の前を通る事は有るのですが、自転車なので飲む訳にも、酒瓶を運ぶ訳にもいかず、飲む機会は無いのですが・・。


<追記> その後、私も千葉の地酒の探求を重ね、上のランキングは相当に「バイアス」が掛かってる事を知りました。

極私的 千葉の酒アランキング


1位  「叶」 大吟醸 東薫酒蔵  佐原   兵庫県産の1等級の山田錦を35%まで磨いた大吟醸。火入れ酒で、この香、濃厚な味わい。値段は高いけれど、千葉県の地酒の間違い無く「横綱」です。


2位  「鳴海」 純米吟醸 生無濾過原酒  東灘酒蔵 勝浦   濃厚旨口の微発泡酒。「端麗辛口」ブーム以降、人気がイマイチな甘口の日本酒ですが、このトロリとした飲み口、そしてサラリとした後味は癖になります。都内の日本酒バーでも知る人ぞ知る千葉の秘蔵酒。

3位  「福祝」  純米吟醸 生無濾過原酒 藤平酒造  久留里  「名水」の街、久留里で人気が高まっている酒蔵。麻生財務大臣の晩酌のお酒の一つとか。普通に丁寧にお酒を醸造すると、普通以上に美味しくなる見本。水も良いのでしょう。いわゆる「農大系」の華やかなお酒ですが、バランスが良いのが特徴。(コストパパフォーマンスも高い)

4位  「飛鶴」 森酒蔵   久留里  地元でしか手に入らない幻にお酒。何故かと言えば生産量が少ないから・・・。どこが美味しいのか?・・・実は私も分かりません。普通の美味しく、料理を引き立ててくれる。最近流行の華やかな日本酒と正反対の、地味だけど「美味しい」日本酒。久留里にあって、水は上総掘りの硬水では無く、愛宕山からの清水を使用。


5位  「腰古井」 吉野酒造 勝浦 これも飛鶴と並び、普通に「本醸造」が旨い。カツオのタタキとか、ナメロウなど、青魚系と良く合います。

6位  「岩の井」 岩瀬酒造 御宿 「山廃仕込」の伝統で作られるお酒は、乳酸発酵によって酸味が立ちますが、そのバランスが絶妙。「本醸造」でも「純米酒」でも充分に美味しい。「古酒」がフランスのワインのコンテストのアダムスで賞を取っていますが、普通に「本醸造」で充分。


7位  「東塊盛」 本醸造  小泉酒造 内房君津のお酒。これも普通に美味しい。

8位  「五人娘」 純米   寺田本店 神崎(こうざき)  知る人ぞ知る「自然酒」の有名な酒蔵。病気をきっかけに「無農薬米」「蔵付き酵母」の酒造りを始めた先代の努力が実を結び、手間暇かけたお酒は、自然食ファンのみならず、日本酒ファンも納得の味わい。結構しっかりとしたお酒。この他に、「日本一マズイ日本酒」を自称する「むすび」は、発芽玄米の日本酒。ヌカとビールを混ぜた様な味は一度飲んだら忘れません。これが「日本酒のルーツ」なのかも知れません。寺田本店の天然酵母はパンの生地を発酵させた時の発酵力が違うと自然食界隈でも有名だとか。

9位  「不動」 吟醸生無濾過原酒 神崎(こうざき) 成田山の近くに本店は有りますが、醸造所は寺田本店と同じ水郷の神崎。発酵の街として有名です。メインのブランドは「仁勇」ですが、特別醸造の「不動」は農大系のお酒としてもレベルが高い。最近、味が上っている様に感じます。蔵の規模が大きいので、ランキングは下にしていますが、千葉の酒、ベスト3に充分入る実力。

10位 「最上白味醂」 味醂 馬場本店 佐原  東薫酒蔵の隣に位置する馬場本店。勝海舟も逗留した事のある酒蔵ですが、ここのイチオシは宮内庁御用達の「白味醂」。添加物一切無の味醂は、芳醇ですが、後味がさっぱりした甘さ。そのまま飲むと「リキュール」です。料理に使うと、家庭料理が料亭料理に早変わり。マジでスゴイです。