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経済の最新情勢から、世界の裏側、そして大人の為のアニメ紹介まで、体当たりで挑むエンタテーメント・ブログ。

2014冬アニメ私的ベスト

2014-04-14 01:29:00 | アニメ
 

 
忘れていた訳ではありませんが、ランキングが付け難い14冬アニメだったので・・・。
娘が「お父さん、アニメベストやらないの?」と聞くので、やはりケジメは必要だと思い恒例の「私的アニメベスト」の発表です。


第一位 『のうりん』



『私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!』『ココロコネクト』の大沼心の監督作品。
岐阜県の農業高校の日常をアニメパロディーの連射でコミカルに描く一方で、農業を巡るシリアスな問題も取り上げています。

農業アニメ(マンガ)と言えば『銀の匙』を思い浮かべますが、あちらが優等生的に農業高校生の生活を描くのならば、こちらはアニメ(ラノベ)らしいドタバタとしたタッチで物語が展開します。作品の質の違いではありますが、妙にコジンマリと纏まってしまった『銀の匙』よりも、アニメとしての魅力は『のうりん』に軍配が上がります。

特にアラフォー担任教師の「ベッキー回」は、「ここまでやるか!!」と思わず突っ込みを入れたくなりますが、その「振り切れ度」たるや最近にアニメでは群を抜いています。このベッキー回だけでも、充分今期ナンバーワンの破壊力。

農業を巡るシリアスな展開も面白いのですが、あくまでも、それはあくまでもギャグを引き立てる要素として機能しています。ギャグとシリアスの大きな落差を軽々と行き来する大沼監督の演出手腕に脱帽です。


第二位 『となりの関くん』



中学校の隣の席の男の子が授業中に机の上で意表を突いた遊びを繰り広げるのを、隣の席の女の子が迷惑に思いながらも目が離せなくて、ハラハラ・ドキドキと心の中で突込みを入れ続けるだけの10分アニメ。

しかし、これがメチャクチャ面白い。

特に2話目の将棋回は何度見ても抱腹絶倒。

10分アニメと侮る事なかれ!!


・・・・後は・・・・・全滅

本来ならは『スペース☆ダンディー』を入れるべきなのでしょうが、1話しか見れていないので。なんだかブームに乗れなかったので悔しくて見てません。こういう縁の無かった作品ってあるんですよね。


さて、ここからが本命です。


実は今回、私的ベストが遅くなった理由は、2期連続作品と1期だけの作品の扱いに悩んだから。2期連続作品に傑作が多かっただけに、同列に扱う事は困難と結論して、分ける事にしました。



第一位 『サムライフラメンコ』



ヒーローオタクが「ヒーロごっこ」の末に地球を救うというこの作品、非常に好みの別れる作品でもあります。

アニメのキャラクターは、物語世界の為に創造された擬似的な人格ですが、シナリオライターがキャラクターをどう扱うかによって作品の肌合いが大きく変わってきます。

『サムライフラメンコ』は、最初に物語の大筋が出来ていて、そこに必要とされるキャラクターを配置する典型的な作品ですが、キャラクターの存在は物語の為にあると言えます。ちょっと言い方が変かも知れませんが、世界は物語の為にあって、キャラクターは物語の従属物です。

こういう関係性の作品はSF作品に多いのですが、『サイコパス』などはこの典型かも知れません。この手の作品は、キャラクターがステロタイプに陥りがちですが、『サムライフラメンコ』の面白い所は、「ステロタイプ」を逆手に取って視聴者を攪乱する点ではないでしょうか。

「こういうキャラクターはこういう風に行動するハズ」という先入観を裏切る事で視聴者の興味を引く手法は、それを繰り返す内に鼻についてきます。この作品を嫌いな人も多いと思うのですが、そう言った一種の「あざとさ」に敏感な方達なのだと思います。

ただ、それを理由にこの作品を評価しないと、この作品の持つ様々な挑戦も一緒に切り捨ててしまう事になるのではないかと思い、今回ベスト1としました。

1) アニメや特撮におけるヒーローを再定義しようとするポストモダン的挑戦
2) 細かな脚本とあり得ないストーリーの対比の繰り返しによる展開の限界に挑戦
3) 一応、シリアスに「正義」の意味と「相対性」について考察している
4) ちょっと風呂敷を広げて「世界の正義とその相対性」について考えている。
5) 悪役に対する愛を感じる

このどれもがネタ的と言えばそれまでなのですが、ちょっとテンコ盛りの内要を、そつなくエンタテーメントとしてまとめて見せる倉田脚本は、やはりテクニカル的にも大したものだと思ってしまいます。

第二位 『ゴールデンタイム』



上手な倉田脚本に対して、志茂文彦の脚本は本当に下手・・・。
『とらドラ』の竹宮ゆゆこの原作ですが、アニメと違って『とらドラ』の原作は意外とクドイ感じの文章です。それをあれだけエッジの効いた作品にしたのは岡田麿里の脚本と長井龍雪の演出の功績は大きい。

「多分、普通の脚本家が書くとこうなっちゃたんだろうな・・・」という見本が『ゴールデンタイム』では無いかと思います。特に毎回の引きの悪さは特筆。

『ココロコネクト』や『のんのんびより』を手掛ける志茂文彦の脚本でありながら、どうしてこうなる?みたいな居心地の悪さが不思議ですが、多分シリーズ構成が上手く無いのでしょう。

一方で、アニメを見る時に得られる「多幸感」を何故だか感じる作品でもあって、それはひとえに「イタ可愛い」主人公の加賀 香子のキャラクターに依る所が大きいのでしょう。

決して出来の良い作品とは言えない『ゴールデンタイム』を私が評価する最大の理由は、主人公達が大学生である事です。最近のアニメは中高生向きに作られているので、登場人物もほとんどが中高生です。中高生は単純なのでキャラクターも作り易く、エッジも立ち易い。

一方で大学生は半分子供で半分大人という微妙なモラトリアル状態に在るので、彼らの生活を描くと『めぞん一刻』的と言うか80年代的な中途半端さが付きまとってしまいます。そんな大学生の生活を、アニメ(ラノベ)的ではあっても、比較的等身大に描こうとした原作(未読ですが)は評価出来ますし、アニメもその意味では評価すべきなのかも知れません。

ライトノベルにありがちですが、竹宮ゆゆこの主人公達は、物語の進行と共に肉付けされ、成長してゆきます。最初はステロタイプと言うか極端な造形をしていた主人公達が、だんだんと温度感を持って来る・・これは言わば『サムライフラメンコ』と正反対の人物造形の方法なのですが、技巧的ではありませんが、一度登場人物にシンパシーを覚えるとキャラクターに愛着が湧きます。これを「共感」と呼ぶ事も出来るでしょう。

『ゴールデンタイム』の面白い所は、事故で記憶を亡くした後の人格が、事故以前の人格の回復によって「自分は消えてしまうのでは無いか」という恐怖に怯えるという設定です。記憶喪失物は過去に色々な作品がありますが、概ね、記憶を亡くした人格が、元の記憶や人格を取り戻そうと周囲と努力する展開が主流です。

実は私の知り合いも、交通事故で昏睡になり、回復後の脳にダメージを負いました。事故前は活発な性格でしたが、事故後何年かして会った時には全く別の人でした。記憶などは失われていないのに、人格だけが誰か別の人になってしまった様で私もショックを受けました。ですから、この作品の主人公の多田万里の「事故後の人格が自己の消失に怯える」という設定は、あながち絵空事とも言えないと私は感じています。

「記憶にして1年しか無い」人格が周囲とどう付き合って行くのかという問題は「竹宮ゆゆこ」は丁寧に考察しています。昔の人格が戻る事を潜在的に望む家族との距離感。自分の知らない自分を知っている友人との距離感・・・そういった無言のプレッシャーに耐えかねて郷里を離れた多田万里は大学で新しい友人達に出会い、現在の多田万里としての青春を歩み始めます。

そんな彼を見守るのは、高校の同級生で万里が思いを寄せていたリンダ先輩。彼女は万里に自分との関係を告げる事無く、万里の面倒を大学の先輩として、それと無く見ています。リンダにとっても現在の万里は自分の知る万里では無く、彼の記憶を亡くした原因がリンダにある事が、彼女の心の重しとなっています・・・。

そんな複雑な状況の多田万里が、病的に他人に依存する性格の加賀 香子に出会って恋をする所から、多田万里は現在の人格を肯定して行きます。今が大事だと心から思うのです。相互依存に過ぎない、おままごとの様な恋愛ですが、大学生に限らず恋愛なんてそんな物なのかも知れません。

周囲の友人も出来て大学生活が充実する程に、多田万里は現在の人格を肯定して行き、過去の自分とも向き合おうとしますが・・・・そんな彼に人格消失の時は刻々と近づきます。


『とらドラ』の様な傑作ではありませんが、物語の為にキャラクターを犠牲にしない意味において好感が持てる作品です。


第三位 『凪のあすから』



PA WORKSと岡田麿里のタッグは外れがありませんが、これも良作です。

ただ、『True Tears』にあった様な瑞々しい痛みが無い事が残念な作品です。中高生が相手の作品ですから、リアルな内要を避けた現代のファンタジーとしては良く出来ていますが、何か物足りないので第三位。


第四位 『キルラキル』



良くも悪くも『グレンラガン』には到底及ばない作品止まり。

ただ、面白い事は確か。
永井豪の残した遺産を継承する意味において、この作品は価値があるかと。






長々と書いて来ましたが、実はパチンコになった事で、バンダイチャンネルが再放送している『ウィッチブレイド』を娘と見直しています。

この作品を見ると、上で紹介した作品の「薄さ」に気づかされます。


『進撃の巨人』や『ジョジョ』で今やその地位を不動のものとした小林靖子の最高傑作が『ウィッチブレイド』である事を私は疑いません。そして、この時代のGONZOは素晴らしかった・・・。


次回は『ウィッチブレイド』を紹介したいと思います。